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 でも話を聞いていたら、フィリップの騎士団での仕事が気になりだしてきた。

「あの、騎士団の仕事ってどんなことを? 話せないなら無理には聞きませんが!」
「いや、全ては話せないが、話せる範囲でよければ」
 フィリップが柔らかく微笑む。では、お言葉に甘えて。

「基本は、遠隔地へ赴く修道士たちの護衛かな。それ以外では、突発的に発生した獣害への対応だろうか」
「遠隔地へ、ですか?」
「聖地から離れれば離れるほど、魔獣の被害は多くなるんだ。そのせいもあって、どうしても治安が悪くなってしまう。だから定期的に各地を見廻り、土地が清浄に保たれているかを修道士に確認してもらっているんだ」
「オレはその治安の悪い辺境の村出身なんス。フィリップ様に会った頃は商人やってたンスけど、教会騎士団贔屓の『何でも屋』に鞍替えしたほうが儲かるんで!」

 2人はそうやって知り合ったらしい。なんだか面白いエピソードが持ってたくさん聞けそうだ、と思っていたんだけど、料理が運ばれてきて、セルジの関心はそちらに移ってしまった。私も人の事は言えないんだけど。

「それにしても、ここは随分と変わった食堂なんですね。私が本当の食堂に行ったことがないからそう感じるのでしょうか?」

 家の食堂と違うからそう思ったわけじゃない。食堂がどういったものなのかは知ってる。使用人たちの楽しげな会話を聞いていた。話に加わることはできなかったけど。

「確かに食堂っスけど、ここは冒険者組合ギルドッスよ?」
「組合? 冒険者???」
「冒険者組合は国や教会の影響力が低い、というかほぼないんだ。あの状態から逃げるには、1番良い避難先だと思った」
「そう、なんですね」

 そういう権力構造だから、私の耳にはあんまり入らないようにしていたのだろうか?

 冒険者という職業は初めて聞いた。冒険というと、子供の頃に読んだ冒険活劇の本を思い出す。子供の頃に読んだ冒険活劇は、私にとっては憧れの話だった。何者にも縛られず、弱き者を檻の中から連れ出して大空に羽ばたいていく物語。どれほどの困難が待ち受けていようとも、それが自分で切り開いた未来の中にあるものなら。希望に満ちた物語だ、と思ったことを覚えてる。

「国や教会の権力を受けない組織など、本当に作ることができるのですか?」
「確かにそれはごもっとも!」

 待ってました! と言わんばかりの笑顔でセルジが語り始めた! あの瞳の輝きはもしや、私と同じように冒険者に憧れたクチ?

「その辺の傭兵や常備軍なんかより明らかに強い連中が所属するようになってからですね、実際に効力を発揮するようになってきたのは」
「じゃあそれまでは」
「まあ、不遇の時期はそれなりにありましたよ。打開のきっかけになったのは多分、流行った活劇小説じゃないですかね」
「冒険活劇の小説、もしかしたら知ってるかも。タイトルはえっと――」

「『7つの水晶』!!!」

 私とセルジがタイトルを思い出せずに悩んでいると、上から見知らぬ高い声が割り込んできた。
 10歳くらいかな? 金髪のツインテールが可愛い女の子だ。
 可愛いんだけど、変わった格好をしている。
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