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第1章
1-3.昨日の敵は今日の仲間?
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次の街ハルナへの道のりはブロガンから数日離れた場所にあった。そんな道中、シリウスたちは一日目の終わりを迎えようとしていた。
日も暮れてきたことから、シリウスたちは山中で野宿をすることに決めた。
シリウスは基本座ったまま、ウィズ一人がてきぱきと野宿の支度をしていた。決してシリウスが命じているわけではない。むしろ、シリウスが何かをしようとするとウィズが制するのだった。
すべて自分の仕事だと言い張るため、シリウスは大人しく座って待っているのだった。
「ねぇ、ウィズ」
「なんでしょうか?」
「なんでそんな知識まで持ってるの?」
「そう申されましても、体が勝手に動くのです。シリウス様の知識と、魔力は多くの知識を蓄えているものです。その魔力から情報が引き出されているのではないかと考えられます」
「へぇ。魔力にはそんな作用もあったのか。これはウィズが出来たからこそ分かったことだね。誰にも魔力に情報が眠っているなんて知らないんだから」
「はい」
「ふふ、誰も知らないことを知ってるって楽しいね。もっと色々と知りたいな」
「魔法使いの性というものですか?」
「そうだね。知識欲は魔法使いにとっては何よりも貪欲に求めてしまうもの。僕も研究は大好きだし、色々と知るのは楽しいよ」
「左様でございますか。それはようございました」
シリウスの準備が整い、二人は夕食を取った。そうしてすぐに日は暮れて夜が訪れる。
しかし、シリウスはすぐ眠るわけでもなく自宅から持ってきた魔導書に目を通していた。その本は古くから読み返しており、ほぼ内容は頭に入っていたがなぜか一頁ずつ捲る感覚がやめられない。
そのため多くある書物の中で唯一持ってきたいと思ったこの一冊に毎晩目を通すのだった。
「何でそこまで執着しちゃうんだろ? 別段特別な魔導書でもないんだけど」
「それは基礎の魔導書ですね。魔法とはなにかという道徳的な面と、基礎魔法が記してある書物」
「うん。なんだかこれだけは捨てれなくてずっと残していたんだ」
「思い出の一冊、というわけではないのですか?」
「それがいまいちわからないんだよね。けど、これに思い入れがあるっていう強い思い出だけはあるんだ。けど、それがどんな記憶だったのかが思い出せない」
「そのようなこともあるのですね」
「そう。これも人間の性質だよ。無意味な物ですら捨てられないっていうね」
「そういうものがあるのですね、人という存在は」
「うん。まぁ、だからこそ面白いわけだけど」
言葉が途切れ、ウィズの仕事も一段落した。そしてシリウスの家から持っ来た竪琴を取り出す。
「竪琴なんて引けるの?」
「はい。私が初めてこの世に生を受けたときに。そこから毎晩、シリウス様の安眠にと思い、弾いていました」
「そうなんだ。いつもありがとう。どんな曲を弾いてるの? 僕、あんまり音楽って知らないけど」
「そうですね。まだ一曲しか知りませんが、よろしいですか?」
「うん。その一曲でいいよ」
「仰せのままに」
数回竪琴の弦を軽く弾いたあと、ウィズは毎晩弾いている曲を弾いた。それに耳を傾けていたシリウスは最初こそ眠るように聞いていたが、ハッと気づいたようにウィズを見た。
「どうなさいましたか?」
「その曲は……母さんの……」
「お母様……シリウス様のお母様のことですか?」
「うん。その曲は、よく母さんが子守唄で歌ってくれた曲だよ。歌詞までは覚えてないけど……また聞けるなんて……」
「左様でございましたか。それは良うございました」
「僕の情報だね。つまり本人が忘れた内容でも蓄積された情報は消えない、ということか」
「続きを聞かれますか?」
「うん、聞きたい。弾いてよ」
「かしこまりました」
シリウスの言葉を受け、ウィズは止めていた手を再び動かし始めた。ウィズにとって譜面を覚えているわけではない。
けれども、手はまるで譜面を覚えているかのようにすらすらと動くのだった。
ふと、手を止めるとシリウスはすやすやと寝息をたてていた。その姿は年相応の顔をしている。彼の言動は一見年相応に見えるが、時折見せる顔は大人びた顔をするときがあった。
大概それはシリウスが無理をしているときに見せていた。そのため、すやすやと子供のように眠るシリウスに、ウィズはホッとした表情で見守っていた。
しかし、そこで疑問に思うのだった。自分の沸き上がってくる感情は何なのか、と。
シリウスを安心させるのも、過ごしやすくするのも。それはシリウスによってウィズが作り出された人形だから、ということもある。けれど、今のように安心して眠るシリウスに、ホッと胸を撫で下ろしたのはなぜなのかが分からなかった。
(シリウス様が欲しておられたのは友達……だからだろうか)
シリウスが提示した条件には友達として味方でいることを要求した。その友達という存在が何であるかは、ウィズにはわからなかった。
ウィズに情報がないのは、シリウス本人が、友達という存在を知らないことが要因となっている。
そのためウィズはシリウスの味方で居続けることに意識を向けていた。ウィズにとって、シリウスは大切な主である。
契約があるにしろ、シリウスに敵対する理由はないのだった。
「何者ですか?」
思考の海に浸っていたウィズだが、不意に感じた人の気配に敏感に反応した。
しかし、シリウスを起こさないように、最小限の声でその存在へと問いかける。
「この位置でバレるなんて、初めてだぜ。お前ら、ここで野宿してんのか?」
驚いたような声音で返答してきたその人物は二人へと近づいてくる。その人物は十七歳ほどの青年のようだった。
短い髪型に、服装からでも分かるほど鍛練された肉体のせいか、ずいぶんと体がしっかりしているように見える。
「あなたは?」
「自分から名乗るのが礼儀とは思うが……まぁ、いいか。俺はリード・マキナー。しがない傭兵だ」
「私はウィズ。何用で近づいてきたのですか?」
「おりょ、どっから気づかれてたのやら……ま、いいか。ここら一体の魔物は強くてな。一人より強そうなやつと一緒にいたくて近寄ってきたんだよ」
「私たちが強い、と?」
「そうでなきゃ、俺が易々と気づかれるはずないからな」
「それはまた随分と自信があるのですね。しかし、気づかれたからといって相手が強いとは限らないのでは?」
「まぁ、そうだな。正直に言えば町での一件を見てたから知ってるんだよ。そこの眠ってる子供は分からないが、あんたはけっこうな手練れだってな」
「……」
シリウスのことを子供呼ばわりされても、ウィズの表情は崩れなかった。ただヒタと相手を見据え、力量を推し量っているようにも見える。
「そう警戒しなさんなって。あんたたちを襲うつもりならわざわざ自分から姿を現さないだろ」
「油断させるために近寄ってきたとも考えられますよ」
「それもそうか。なぁ、腹の探り合いは明日にしようぜ? 今日はもう夜が深い」
「いいえ、今でないと。私にはシリウス様をお守りしなければなりません」
「子供相手に様って……なに、何かいいとこのボンボンの護衛なのか?」
「ぼんぼん?」
「あー……、お坊っちゃまってことだよ。貴族とかお偉いさんの子供なのかって聞いてんだ」
「そうではありませんが。この方は私のご主人様なのですよ。主に危害を加える者かどうかを判断しなければ一緒にはさせれません」
そう言って、ウィズはリードと名乗った青年を見続けた。その視線に耐えかねたのか、リードはその場にドサッと腰を下ろした。
「わかったよ。正直に言えば、お前たちを追っていたんだよ」
「私が倒した二人でないとすると、先に逃げたのは貴方でしたか」
「気づいてたんだろ? だから、俺に対してそんなに警戒してた」
「さも今会ったというように近づいてきた相手を怪しむな、というほうが無理なお話ですよ」
「あぁ、そうかい。それで、どうだ? 俺は敵か、味方か?」
「まだ味方と判断するわけではないですが、ひとまず敵ではなさそうですね」
「お、やっと信じてくれたか?」
「信じたわけではありません。貴方のことを、シリウス様はお気になられていらっしゃったのです」
「げっ、その子供も俺のこと気づいてたのかよ?」
「当然です」
ウィズの台詞に、リードは肩を大袈裟に下ろした。わざとらしいその様子に、ウィズは少し警戒の色を強める。
「だから、そう警戒するなって。まぁ、改めての自己紹介は明日にしようぜ。俺ももう眠いからな」
「……」
ウィズはリードを無言で見つめる。ウィズは眠る気がないと判断したリードはゴロリと寝転がって目を閉じた。すると、瞬く間にリードから寝息が聞こえてきた。
特に警戒を解くわけでもなく、ウィズは火の番へと戻る。リードのことはシリウスがどう判断するかで決まる。仲間になろうが敵になろうが、ウィズにとってシリウスを害するものかどうかは重要なのである。
シリウスが彼を拒絶するならば早々に帰ってもらうだけだった。
日も暮れてきたことから、シリウスたちは山中で野宿をすることに決めた。
シリウスは基本座ったまま、ウィズ一人がてきぱきと野宿の支度をしていた。決してシリウスが命じているわけではない。むしろ、シリウスが何かをしようとするとウィズが制するのだった。
すべて自分の仕事だと言い張るため、シリウスは大人しく座って待っているのだった。
「ねぇ、ウィズ」
「なんでしょうか?」
「なんでそんな知識まで持ってるの?」
「そう申されましても、体が勝手に動くのです。シリウス様の知識と、魔力は多くの知識を蓄えているものです。その魔力から情報が引き出されているのではないかと考えられます」
「へぇ。魔力にはそんな作用もあったのか。これはウィズが出来たからこそ分かったことだね。誰にも魔力に情報が眠っているなんて知らないんだから」
「はい」
「ふふ、誰も知らないことを知ってるって楽しいね。もっと色々と知りたいな」
「魔法使いの性というものですか?」
「そうだね。知識欲は魔法使いにとっては何よりも貪欲に求めてしまうもの。僕も研究は大好きだし、色々と知るのは楽しいよ」
「左様でございますか。それはようございました」
シリウスの準備が整い、二人は夕食を取った。そうしてすぐに日は暮れて夜が訪れる。
しかし、シリウスはすぐ眠るわけでもなく自宅から持ってきた魔導書に目を通していた。その本は古くから読み返しており、ほぼ内容は頭に入っていたがなぜか一頁ずつ捲る感覚がやめられない。
そのため多くある書物の中で唯一持ってきたいと思ったこの一冊に毎晩目を通すのだった。
「何でそこまで執着しちゃうんだろ? 別段特別な魔導書でもないんだけど」
「それは基礎の魔導書ですね。魔法とはなにかという道徳的な面と、基礎魔法が記してある書物」
「うん。なんだかこれだけは捨てれなくてずっと残していたんだ」
「思い出の一冊、というわけではないのですか?」
「それがいまいちわからないんだよね。けど、これに思い入れがあるっていう強い思い出だけはあるんだ。けど、それがどんな記憶だったのかが思い出せない」
「そのようなこともあるのですね」
「そう。これも人間の性質だよ。無意味な物ですら捨てられないっていうね」
「そういうものがあるのですね、人という存在は」
「うん。まぁ、だからこそ面白いわけだけど」
言葉が途切れ、ウィズの仕事も一段落した。そしてシリウスの家から持っ来た竪琴を取り出す。
「竪琴なんて引けるの?」
「はい。私が初めてこの世に生を受けたときに。そこから毎晩、シリウス様の安眠にと思い、弾いていました」
「そうなんだ。いつもありがとう。どんな曲を弾いてるの? 僕、あんまり音楽って知らないけど」
「そうですね。まだ一曲しか知りませんが、よろしいですか?」
「うん。その一曲でいいよ」
「仰せのままに」
数回竪琴の弦を軽く弾いたあと、ウィズは毎晩弾いている曲を弾いた。それに耳を傾けていたシリウスは最初こそ眠るように聞いていたが、ハッと気づいたようにウィズを見た。
「どうなさいましたか?」
「その曲は……母さんの……」
「お母様……シリウス様のお母様のことですか?」
「うん。その曲は、よく母さんが子守唄で歌ってくれた曲だよ。歌詞までは覚えてないけど……また聞けるなんて……」
「左様でございましたか。それは良うございました」
「僕の情報だね。つまり本人が忘れた内容でも蓄積された情報は消えない、ということか」
「続きを聞かれますか?」
「うん、聞きたい。弾いてよ」
「かしこまりました」
シリウスの言葉を受け、ウィズは止めていた手を再び動かし始めた。ウィズにとって譜面を覚えているわけではない。
けれども、手はまるで譜面を覚えているかのようにすらすらと動くのだった。
ふと、手を止めるとシリウスはすやすやと寝息をたてていた。その姿は年相応の顔をしている。彼の言動は一見年相応に見えるが、時折見せる顔は大人びた顔をするときがあった。
大概それはシリウスが無理をしているときに見せていた。そのため、すやすやと子供のように眠るシリウスに、ウィズはホッとした表情で見守っていた。
しかし、そこで疑問に思うのだった。自分の沸き上がってくる感情は何なのか、と。
シリウスを安心させるのも、過ごしやすくするのも。それはシリウスによってウィズが作り出された人形だから、ということもある。けれど、今のように安心して眠るシリウスに、ホッと胸を撫で下ろしたのはなぜなのかが分からなかった。
(シリウス様が欲しておられたのは友達……だからだろうか)
シリウスが提示した条件には友達として味方でいることを要求した。その友達という存在が何であるかは、ウィズにはわからなかった。
ウィズに情報がないのは、シリウス本人が、友達という存在を知らないことが要因となっている。
そのためウィズはシリウスの味方で居続けることに意識を向けていた。ウィズにとって、シリウスは大切な主である。
契約があるにしろ、シリウスに敵対する理由はないのだった。
「何者ですか?」
思考の海に浸っていたウィズだが、不意に感じた人の気配に敏感に反応した。
しかし、シリウスを起こさないように、最小限の声でその存在へと問いかける。
「この位置でバレるなんて、初めてだぜ。お前ら、ここで野宿してんのか?」
驚いたような声音で返答してきたその人物は二人へと近づいてくる。その人物は十七歳ほどの青年のようだった。
短い髪型に、服装からでも分かるほど鍛練された肉体のせいか、ずいぶんと体がしっかりしているように見える。
「あなたは?」
「自分から名乗るのが礼儀とは思うが……まぁ、いいか。俺はリード・マキナー。しがない傭兵だ」
「私はウィズ。何用で近づいてきたのですか?」
「おりょ、どっから気づかれてたのやら……ま、いいか。ここら一体の魔物は強くてな。一人より強そうなやつと一緒にいたくて近寄ってきたんだよ」
「私たちが強い、と?」
「そうでなきゃ、俺が易々と気づかれるはずないからな」
「それはまた随分と自信があるのですね。しかし、気づかれたからといって相手が強いとは限らないのでは?」
「まぁ、そうだな。正直に言えば町での一件を見てたから知ってるんだよ。そこの眠ってる子供は分からないが、あんたはけっこうな手練れだってな」
「……」
シリウスのことを子供呼ばわりされても、ウィズの表情は崩れなかった。ただヒタと相手を見据え、力量を推し量っているようにも見える。
「そう警戒しなさんなって。あんたたちを襲うつもりならわざわざ自分から姿を現さないだろ」
「油断させるために近寄ってきたとも考えられますよ」
「それもそうか。なぁ、腹の探り合いは明日にしようぜ? 今日はもう夜が深い」
「いいえ、今でないと。私にはシリウス様をお守りしなければなりません」
「子供相手に様って……なに、何かいいとこのボンボンの護衛なのか?」
「ぼんぼん?」
「あー……、お坊っちゃまってことだよ。貴族とかお偉いさんの子供なのかって聞いてんだ」
「そうではありませんが。この方は私のご主人様なのですよ。主に危害を加える者かどうかを判断しなければ一緒にはさせれません」
そう言って、ウィズはリードと名乗った青年を見続けた。その視線に耐えかねたのか、リードはその場にドサッと腰を下ろした。
「わかったよ。正直に言えば、お前たちを追っていたんだよ」
「私が倒した二人でないとすると、先に逃げたのは貴方でしたか」
「気づいてたんだろ? だから、俺に対してそんなに警戒してた」
「さも今会ったというように近づいてきた相手を怪しむな、というほうが無理なお話ですよ」
「あぁ、そうかい。それで、どうだ? 俺は敵か、味方か?」
「まだ味方と判断するわけではないですが、ひとまず敵ではなさそうですね」
「お、やっと信じてくれたか?」
「信じたわけではありません。貴方のことを、シリウス様はお気になられていらっしゃったのです」
「げっ、その子供も俺のこと気づいてたのかよ?」
「当然です」
ウィズの台詞に、リードは肩を大袈裟に下ろした。わざとらしいその様子に、ウィズは少し警戒の色を強める。
「だから、そう警戒するなって。まぁ、改めての自己紹介は明日にしようぜ。俺ももう眠いからな」
「……」
ウィズはリードを無言で見つめる。ウィズは眠る気がないと判断したリードはゴロリと寝転がって目を閉じた。すると、瞬く間にリードから寝息が聞こえてきた。
特に警戒を解くわけでもなく、ウィズは火の番へと戻る。リードのことはシリウスがどう判断するかで決まる。仲間になろうが敵になろうが、ウィズにとってシリウスを害するものかどうかは重要なのである。
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