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「……ところで、君は何時までここにいるつもりなんだ?」
「何時まで、とは?」
シェリルが離宮に来てから、半年が経過しようとしていた。

「このままここにいては、本当に婚期を逃してしまうだろう?」
シェリルは目を丸くした。
「私は、キリアン王子殿下のお傍にいると、始めから決めてこちらに参りました」
「しかし、豚だぞ?」
「はい。……寿命が気になるところですが……」
呪いと共に、キリアンの寿命が豚の寿命まで短くなってしまっているのかを、シェリルはずっと案じていた。

「気になるところはそこだけか!?」
「はい」
「何故豚と添い遂げる気になるんだ……」
クランクは、本当に意味がわからないという気持ちで頭を抱えた。

「豚ではなく、キリアン王子殿下です」
シェリルはきっぱりと言う。

「……醜い姿になる呪いを掛けられ、キリアン王子殿下の周りから人が消えました。私だったら、孤独だと思います。だから……私だけは、許される限り、ずっとキリアン王子殿下の傍にいると決めたのです」
お陰でこんなに仲良くなれました、とシェリルは笑った。

クランクは、眩しいものを見るようにシェリルを見る。

「それに、今のお姿でも可愛いです。つぶらに見えなくもない瞳。くるんと丸まり上を向いた尻尾。ピンク色の肌。巨体を支えるしっかりとした細い足……」
「……豚だな」
「まぁ、豚ですが……それでも私、キリアン王子殿下が好きです」
「……そうか」
「あ、クランク様も好きです」

いきなり話を自分に振られ、クランクは固まる。
「……私が?」
「はい」
「私だって、年老いて醜いだろう」
「え?何を言ってらっしゃるのですか!誰だって、年は取るものです。クランク様は、私が何をお願いしても直ぐに協力して下さいますし、どんな失敗しても許して下さいますし、何より優しいじゃないですか。……私、ここに来てから、本当に毎日楽しいんです。恐れながら、家族のような温かさを感じております」
実際には、実の家族といるよりも心が和むのだが、それはシェリルの胸にしまっておく。

「それに、最近何だか……クランク様、若々しくなった気が致しますが」
「え?私がか?」
「ええ、そうです。鏡とか、ご覧になって下さい」

シェリルが初めて来た時と比べると、クランクの背筋や腰が伸びてきた気がするし、皺々だった指先や落ち窪んでいた目の周りがふっくらと張りがでてきた気がしていた。

「……鏡を見るのは、嫌いなんだ」
「そうなんですか?……あ!そうだ、私、以前からやりたいと思っていたことがあるのですが!!」
「……今度は何だ」
クランクに恐る恐る問われ、シェリルはにっこり笑った。
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