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「俺の父は、俺が十歳の時に死んだのを知っているか?」
私は頷く。剛健で知られた領主様だったが、私が十歳の時に、喪に服された。

「父は俺に盛られたのと同じ毒で死んだ。盛ったのは恐らく……俺の、叔父だ」
領主様には弟がいて、領主様亡き後、その弟が領主代理として一旦跡を継いだ。そこからだ、領土に活気がなくなり、領民が去るようになったのは。

「俺は生き延びたが、その時医者が俺は勃起不全になり男性の機能を失った、と叔父の前で断言したんだ。その時の、叔父の……喜びを隠し切れない表情を、忘れることが出来ない。父は叔父を信頼していたし、俺も叔父を慕っていたから」
つまりアクイットは、信頼していた大切な人間に裏切られたのだ。だから、笑えなくなってしまったのかもしれない。昔のアクイットはもっと喜怒哀楽を素直に出す子供だったと、領土視察で小さい頃の彼を見かけたことのある私は記憶していた。

「叔父は、今後俺が女性を孕ませることが出来ないことを知ると、命だけは狙わなくなった。代わりに、領主代理の叔父の跡は、従兄に継がせるのが家門と領民の為だ言い張りだしたんだ。幸いなことに、俺には少しだけ魔力があった。だから、俺はあの地を去ることにしたんだ」
私は再び涙を流しながら頷いた。どんな気持ちだったのだろう?信頼を寄せていた人からずっと生まれ育った土地を追い出され、本来の能力を活かすことなく魔導士の道を選ばされた時の気持ちは。

「後で知ったんだが、俺は父が高齢になって生まれた子供だったから、それまでずっと、次の後継は叔父と叔父の子供だと信じて疑っていなかったらしい」
仮にそうだとしても、アクイットの命を狙っていい理由には全くならない。
「……叔父さんに、復讐したいとは思わないの?」
「父を殺されたからな、そりゃ思う。思うけど……当時十歳の俺には証拠も、手掛かりも、証言も、何も得られなかった。侯爵家がごたごたすれば結局困ったり大変になるのは領民だ。俺が勃たなければ、結局後々後継者問題で迷惑を掛けるし……それに、叔父がやったんだという確固たる証拠が出なければ、合法的に問い詰めることも出来ない」
「そっか……」
馬鹿なことを聞いた、と思った。
何の非もないのに、親を殺され自分もそんな目にあわされて、許せる訳がない。

「悔しいが、俺には何の力もない。お手上げだ」


そんな会話をした一年後。
私は、二十歳を迎えていた。先に誕生日を迎えていたアクイットがお祝いをしてくれるというのでいつもは入れない高級なレストランで食事して、帰りに急な豪雨に見舞われ、二人で私の持っていたローブを傘代わりに走って帰った。
そして公舎に入った時……何故だか、アクイットの股間が元気になったのだった。
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