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3 手に入れたいもの(side:アリスター)
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都合のいい奴。
最初の印象は、それだった。
お人好しで自己評価と自己肯定感が低くて、そこに付け込まれては毎回貧乏くじを引くような奴。
だから、討伐隊の中でも人の言うことなんて聞かずに好き放題をしていた俺に、あてがわれたのだろう。
最初は、あてがわれた仕事相手のことなんて、どうでも良かった。
一人で行動するほうが性に合っていたし、他人と馴れ合う気もなかった。
俺の言動に振り回されてはオタオタするルーマンを見ては笑っていたし、俺のあとを一生懸命付いてくる姿を見てもそれに合わせようという気は起きなかった。
それが、いつの頃からだっただろうか。
毎夜祈りを捧げるルーマンに、神への信仰が深いんだなと声を掛けて、「これは故郷に残した婚約者の健康と無事と幸せを祈っているんだよ」と言われた時か。
ルーマンが大事にしていたお守りを仲間がからかって取り上げた時に、必死になって取り返そうと手を伸ばす彼のために俺がそいつを半殺しにして取り返した時か。
「僕の国では、婚姻前の性交は禁止されているんだよ」と、彼女との経験がまだないことを照れたように、けれども恥じることなくこっそり教えてくれた時か。
ルーマンが、男は勿論、女相手にも経験がないことを聞いて、仄暗い喜びを感じた時か。
いつからか、俺がルーマンを振り回すのではなくて、色々無自覚なルーマンに俺が振り回されるようになっていた。
ルーマンは誰の目から見ても、飛びぬけて綺麗な造作をしていた。
討伐に同行する奴等で彼に良からぬ下心を抱えていそうな奴は片っ端からひっそりボコって討伐隊から除隊させたが、それでも決定的な危機が三年も彼に訪れなかったのは、ただこの国が宗教的にそれを禁止しているからに過ぎない。
「リアナ……」
俺は居酒屋で寝入ってしまったルーマンを背負い、借りた宿へと夜道を歩く。
寝ている人間は重たいというのに、驚くほど軽かった。
それでも俺の背中は確かに温かくて、俺の心にもその温もりは染み渡るようだった。
「ルーマン、大丈夫か?」
「ん……」
俺はルーマンをベッドに寝かせ、着替えさせる。
その白い肌をなぞりたくなる手を、衝動を、必死に抑えた。
まだだ。
この国で、同性との同衾は禁忌で異端と見なされる。
俺の国では、同性婚も合法だというのに。
だから、ルーマンは知らない。
俺がルーマンに懸想していることも、その結果、婚約者との未来を奪ったことも。
――こいつから大事なものを奪ったのだから、責任を持って、俺が幸せにすればいいだけだ。
まだ新しい涙のあとをそっと親指でなぞると、ルーマンはすり、と俺の手に頬を摺り寄せた。
愛しさが込み上げて、ルーマンの顔に触れるだけのキスを落とす。
何も知らない、ルーマン。
出会った頃は女と遊びまくっていたから、いまだに俺が女好きだと思っている。
お前の婚約者にわざと誤報を送った時から、お前の手紙を握りつぶした時から、俺にはお前だけというのに。
どんなに汚れたとしても、お前を手に入れるためには、なんだってするよ。
ルーマンの首に手を回して、彼女から貰ったという彼のお守りを、この手で外した。
最初の印象は、それだった。
お人好しで自己評価と自己肯定感が低くて、そこに付け込まれては毎回貧乏くじを引くような奴。
だから、討伐隊の中でも人の言うことなんて聞かずに好き放題をしていた俺に、あてがわれたのだろう。
最初は、あてがわれた仕事相手のことなんて、どうでも良かった。
一人で行動するほうが性に合っていたし、他人と馴れ合う気もなかった。
俺の言動に振り回されてはオタオタするルーマンを見ては笑っていたし、俺のあとを一生懸命付いてくる姿を見てもそれに合わせようという気は起きなかった。
それが、いつの頃からだっただろうか。
毎夜祈りを捧げるルーマンに、神への信仰が深いんだなと声を掛けて、「これは故郷に残した婚約者の健康と無事と幸せを祈っているんだよ」と言われた時か。
ルーマンが大事にしていたお守りを仲間がからかって取り上げた時に、必死になって取り返そうと手を伸ばす彼のために俺がそいつを半殺しにして取り返した時か。
「僕の国では、婚姻前の性交は禁止されているんだよ」と、彼女との経験がまだないことを照れたように、けれども恥じることなくこっそり教えてくれた時か。
ルーマンが、男は勿論、女相手にも経験がないことを聞いて、仄暗い喜びを感じた時か。
いつからか、俺がルーマンを振り回すのではなくて、色々無自覚なルーマンに俺が振り回されるようになっていた。
ルーマンは誰の目から見ても、飛びぬけて綺麗な造作をしていた。
討伐に同行する奴等で彼に良からぬ下心を抱えていそうな奴は片っ端からひっそりボコって討伐隊から除隊させたが、それでも決定的な危機が三年も彼に訪れなかったのは、ただこの国が宗教的にそれを禁止しているからに過ぎない。
「リアナ……」
俺は居酒屋で寝入ってしまったルーマンを背負い、借りた宿へと夜道を歩く。
寝ている人間は重たいというのに、驚くほど軽かった。
それでも俺の背中は確かに温かくて、俺の心にもその温もりは染み渡るようだった。
「ルーマン、大丈夫か?」
「ん……」
俺はルーマンをベッドに寝かせ、着替えさせる。
その白い肌をなぞりたくなる手を、衝動を、必死に抑えた。
まだだ。
この国で、同性との同衾は禁忌で異端と見なされる。
俺の国では、同性婚も合法だというのに。
だから、ルーマンは知らない。
俺がルーマンに懸想していることも、その結果、婚約者との未来を奪ったことも。
――こいつから大事なものを奪ったのだから、責任を持って、俺が幸せにすればいいだけだ。
まだ新しい涙のあとをそっと親指でなぞると、ルーマンはすり、と俺の手に頬を摺り寄せた。
愛しさが込み上げて、ルーマンの顔に触れるだけのキスを落とす。
何も知らない、ルーマン。
出会った頃は女と遊びまくっていたから、いまだに俺が女好きだと思っている。
お前の婚約者にわざと誤報を送った時から、お前の手紙を握りつぶした時から、俺にはお前だけというのに。
どんなに汚れたとしても、お前を手に入れるためには、なんだってするよ。
ルーマンの首に手を回して、彼女から貰ったという彼のお守りを、この手で外した。
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