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5 驚くべき親友の提案
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僕はアカデミーで彼女に出会った。
同郷という話で僕たちの仲は一気に縮まり、孤児だという話をしても変わらず接してくれる彼女に好意を抱いていたのは間違いない。
ただ、彼女にわかりやすくベッドに誘われても、早く彼女を抱きたい、触れたいなどの感情は持ち合わせていなかった。
思えば彼女に対して、恋焦がれるような気持ちとか、独占欲とか、嫉妬とか、いわゆる恋慕の中で抱えるはずの感情はなかったのだ。
彼女の傍は居心地が好くて、大事で、大切に、幸せにしたかった。
彼女と家族になれたなら、それはどれだけ幸せな暮らしなのだろうと思っていた。
家族とは、僕が知らない温かな世界だ。
街角で、公園で、お祭りで、孤児院の仲間と手を繋ぎながら、そんな「家族」を見かけるたびに羨ましくて仕方がなかった。
僕は家族が欲しかった。
小さな頃から喉から手が出るほど欲しかったけど、簡単には手に入らないものだった。
孤児院では、男の子が欲しいと養子を探す夫婦に僕は女の子のように映ったそうだし、女の子が欲しいと養子を探す夫婦は僕が男だと知ってがっかりするのが常だった。
僕が大きくなったら、好きな子と結婚して、家族になるんだ。
それが、僕の人生の目標だったのかもしれない。
僕がショックだったことは、彼女が僕を選んでくれなかったことだったのかもしれない。
僕が両親から捨てられてしまったように、彼女も僕を捨てたことが、辛かった。
「そっか、なるほど。家族ね」
「うん。これじゃあ、彼女に愛想をつかれてしまっても仕方がないかなって思うんだ」
「うーん、じゃあなるか、俺と。家族に」
「……え?」
アリスターの唐突な申し出に、僕は目を見開く。
「俺がお前を好きなら、問題ないだろ? お前が俺を嫌いなら、仕方がないけど」
「ええと、アリスターのことは大好きだけど、男だし……」
「この国では、男同士でも結婚できるんだって」
「それは、そうかもしれないけど。子どもは欲しくないの?」
「言ったろ、この国は同性婚が普通だから、養子も当たり前だ」
「そ、そうなんだ……」
僕を慰めるために食い下がろうとするアリスターに、思わずふふ、と笑ってしまう。
きっとまた、思いつきで話しているに違いない。
いつも突拍子もないことを言い出すけれど、それがアリスターの面白いところでもある。
「でももしアリスターにとって本当に好きな人ができた時、僕と別れるよね?」
それは、耐えられないかもしれない。
僕はせっかくできた家族を、失いたくはない。
「俺はお前と別れる気なんてない。それに、他に好きな人ができたらって仮定は俺に限った話じゃないだろ?」
「それは、そうかもしれないけど……!」
確かに、アリスターの言う通りだった。
もしリアナと結婚していたとしても、彼女が心変わりをしない、などという保証はどこにもない。
「俺はお前が好きで、お前も俺を好き。相思相愛ならいいじゃないか。あの女はよくて、なんで俺は駄目なんだ」
いつも頼りになるアリスターが子どものようにむくれる姿なんて、初めて見た。
僕は笑って返事をする。
「いくら僕たちが相思相愛だったとしても、家族は急すぎない?」
「俺としては全然急じゃないけど。ならまずは、恋人から試してみるのはどうだ?」
「恋人?」
アリスターにサラリと提案され、僕は首を傾げる。
それは、今の関係と、何か変わるのだろうか。
できたら、アリスターの国でまで、気まずい思いはしたくないんだけど。
「俺と試しに付き合ってみて、違うと思ったらそう言ってくれればいいから」
そんな軽い感じでいいのだろうか。
うーん、と考える僕に、アリスターは畳み掛ける。
「お前は彼女に恋をしていなくても、一緒に幸せになりたくて家族になろうと決めたんだろう? だったら俺も、お前を幸せにしたい、家族になりたいと思ったっていいだろ?」
「それは……確かに」
親友だったアリスターが恋人になったところを想像してみた。
友人と恋人との違いは、性的な意味合いを含むかどうかだろう。
けれども考えてみたら、男同士で性行為は出来ないはずだ。
だったら、今と大差ないのでは。
違うと思ったら違うと言えばいいらしいし、選ばれたことのない僕とは違って、僕と別れてもアリスターが相手に困ることはないだろうから、たいした問題ではないはずだ。
「うん、わかったよ」
「……はは、うわ、すげー嬉しい。これから恋人としてよろしくな、ルーマン」
本当に愛しい相手を見るかのように微笑まれて、僕の鼓動はドキリと鳴った。
同郷という話で僕たちの仲は一気に縮まり、孤児だという話をしても変わらず接してくれる彼女に好意を抱いていたのは間違いない。
ただ、彼女にわかりやすくベッドに誘われても、早く彼女を抱きたい、触れたいなどの感情は持ち合わせていなかった。
思えば彼女に対して、恋焦がれるような気持ちとか、独占欲とか、嫉妬とか、いわゆる恋慕の中で抱えるはずの感情はなかったのだ。
彼女の傍は居心地が好くて、大事で、大切に、幸せにしたかった。
彼女と家族になれたなら、それはどれだけ幸せな暮らしなのだろうと思っていた。
家族とは、僕が知らない温かな世界だ。
街角で、公園で、お祭りで、孤児院の仲間と手を繋ぎながら、そんな「家族」を見かけるたびに羨ましくて仕方がなかった。
僕は家族が欲しかった。
小さな頃から喉から手が出るほど欲しかったけど、簡単には手に入らないものだった。
孤児院では、男の子が欲しいと養子を探す夫婦に僕は女の子のように映ったそうだし、女の子が欲しいと養子を探す夫婦は僕が男だと知ってがっかりするのが常だった。
僕が大きくなったら、好きな子と結婚して、家族になるんだ。
それが、僕の人生の目標だったのかもしれない。
僕がショックだったことは、彼女が僕を選んでくれなかったことだったのかもしれない。
僕が両親から捨てられてしまったように、彼女も僕を捨てたことが、辛かった。
「そっか、なるほど。家族ね」
「うん。これじゃあ、彼女に愛想をつかれてしまっても仕方がないかなって思うんだ」
「うーん、じゃあなるか、俺と。家族に」
「……え?」
アリスターの唐突な申し出に、僕は目を見開く。
「俺がお前を好きなら、問題ないだろ? お前が俺を嫌いなら、仕方がないけど」
「ええと、アリスターのことは大好きだけど、男だし……」
「この国では、男同士でも結婚できるんだって」
「それは、そうかもしれないけど。子どもは欲しくないの?」
「言ったろ、この国は同性婚が普通だから、養子も当たり前だ」
「そ、そうなんだ……」
僕を慰めるために食い下がろうとするアリスターに、思わずふふ、と笑ってしまう。
きっとまた、思いつきで話しているに違いない。
いつも突拍子もないことを言い出すけれど、それがアリスターの面白いところでもある。
「でももしアリスターにとって本当に好きな人ができた時、僕と別れるよね?」
それは、耐えられないかもしれない。
僕はせっかくできた家族を、失いたくはない。
「俺はお前と別れる気なんてない。それに、他に好きな人ができたらって仮定は俺に限った話じゃないだろ?」
「それは、そうかもしれないけど……!」
確かに、アリスターの言う通りだった。
もしリアナと結婚していたとしても、彼女が心変わりをしない、などという保証はどこにもない。
「俺はお前が好きで、お前も俺を好き。相思相愛ならいいじゃないか。あの女はよくて、なんで俺は駄目なんだ」
いつも頼りになるアリスターが子どものようにむくれる姿なんて、初めて見た。
僕は笑って返事をする。
「いくら僕たちが相思相愛だったとしても、家族は急すぎない?」
「俺としては全然急じゃないけど。ならまずは、恋人から試してみるのはどうだ?」
「恋人?」
アリスターにサラリと提案され、僕は首を傾げる。
それは、今の関係と、何か変わるのだろうか。
できたら、アリスターの国でまで、気まずい思いはしたくないんだけど。
「俺と試しに付き合ってみて、違うと思ったらそう言ってくれればいいから」
そんな軽い感じでいいのだろうか。
うーん、と考える僕に、アリスターは畳み掛ける。
「お前は彼女に恋をしていなくても、一緒に幸せになりたくて家族になろうと決めたんだろう? だったら俺も、お前を幸せにしたい、家族になりたいと思ったっていいだろ?」
「それは……確かに」
親友だったアリスターが恋人になったところを想像してみた。
友人と恋人との違いは、性的な意味合いを含むかどうかだろう。
けれども考えてみたら、男同士で性行為は出来ないはずだ。
だったら、今と大差ないのでは。
違うと思ったら違うと言えばいいらしいし、選ばれたことのない僕とは違って、僕と別れてもアリスターが相手に困ることはないだろうから、たいした問題ではないはずだ。
「うん、わかったよ」
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