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寝取り令嬢と呼ばれた私に元恋人が愛を囁く

1 無自覚駄目男ホイホイ

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私は、見たことのない封蝋が押されたお姉様宛の手紙を二度見する。
差出人は、ある意味有名なマルンナータ伯爵、の息子。


私の長年の経験が告げる。
──嫌な予感しかしない。





私は遠慮なく、その│自分宛でない《・・・・・・》手紙を開封した。



「……は?」



怒りで手紙を持つ手が震えた。
誰が誰とお見合いですって?
顔だけ底辺男と、私のお姉様?



お父様から生まれたとは到底思えない、賢く美しく慎み深くそれでいて慈悲深い、我がヒラクスナ男爵家の唯一の誉れである、お姉様と?



──気を付けていたのに、一体どんなツテで話が回ってきたのだろう?



私が代わりに行きたいって言う?

いや、どうやらお姉様と伯爵家では既に話がついているような文面だ。



ほんっとうにもう!



私はイライラしながらその手紙を自分の部屋の机の中に隠し、鍵を掛けた。


しかし、この手紙に返事がなければ相手は変に思ってお姉様に再び手紙を出すかもしれない。

私は手紙よりも簡略化された「可、不可」のみを記載して返事をする信書サービスを利用することにし、ため息をついた。



……久しぶりに、寝取り案件かも。



本人に自覚はないが、私の自慢のお姉様にも唯一と言ってよい欠点があった。



お姉様は、無自覚な「駄目男ホイホイ」だった。



***



お姉様の駄目男ホイホイの始まりは、アカデミー時代に遡る。

とは言っても、常に家計が火の車だった我が男爵家の娘が行けるのは、貴族以外も通う三流アカデミーだ。



三流アカデミー出身ながら当時から才女として有名だったお姉様は、とても控え目な性格で勉強しか興味がなかった。

私はあまり人付き合いが得意ではなく、基本的に人見知りだったので、アカデミー内でもそんなお姉様にべったりだった。



そこで、お姉様に想いを寄せる男性がいることに気付いた。当然、お姉様は気付いていない。

なんと見る目のある男なのだろうと、シスコンの私はお姉様が幸せになるようにとお姉様とその男をくっつけるべく、奔走しようとした。



結果、勘違いしたその男に薬を盛られて乱暴された。



私は知らなかったのだ。

お姉様一筋だと思っていた男でも、少し綺麗な女に言い寄られるだけで、簡単に浮気するのだと。



一昔前の時代でなくて良かったと思う。

王女や公爵令嬢は違うかもしれないが、今はそこまで貴族令嬢の処女性は重要視されない時代で、私は既に当時お付き合いをしていた大好きな男性と経験を積んでいたから。



だから、狂わずにすんだのだと思う。

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