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寝取り令嬢と呼ばれた私に元恋人が愛を囁く

7 姉離れチャンス

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ポタ、と床に何かが零れた。

初めてだった。

才女の姉に比べて、何でも与えられ姉に守られ続ける妹と言わなかった人は。

私が愛した人ですらも、私が何を守ろうとしたか気付かなかったのに。



「確かに、リュシーは商才はあるが、人が良すぎる。今まで騙されなかったのが不思議なくらいだ」

「お姉様を幸せにして下さい。騙すなら、絶対にお姉様が気付かないように、一生かけてお姉様を騙し続けて貰えますか?」

ザイック商団はやり手の商団だ。

ならそのトップも、頭が切れるのだろう。

ポタポタ、と涙が流れる。



「ああ、幸せにするよ。ずっと守って来た君に代わって、これからは私が彼女を守る。だから……そうだな、君も無理してあんな駄目男のところに嫁ぐ必要はない」

私は首を振った。

「いいえ、私が今婚約破棄をすれば、お姉様が気にしてずっと伯爵家を援助し続けるでしょう。あの人はそういう人ですから」

クルトは「じゃあ潰してもいいけど」と言ったが、今度は慌てて首を振った。

「そういうことも、これからはお姉様にはバレないようにして下さいね!?いいえ、伯爵家のことは私がけりをつけますので、大丈夫です」

「そうか。……もし、何か困ったことがあれば直ぐに話してくれ。必ず助けよう」

「ありがとうございます」



恐らく、あの駄目男のことだ。直ぐに私に飽きて、愛人を作るだろう。

愛人を作ってさえ貰えれば私があの家を出る大義名分になるし、その理由であればお姉様も伯爵家への支援を打ち切るだろう。



「お姉様は私があの伯爵家にいる限り支援をし続けるでしょう。一年だけ、我慢して貰えませんか?」

「……わかった」



そして一年後、私は無事に伯爵家から失踪することが出来た。




***




「クルト様、これは万が一お姉様が私を探そうとした時の為に渡しておきますね」

私は伯爵家からいなくなる前に、クルト様に「私を探すなオーラ」の詰まった手紙を渡した。

手紙の中には、お姉様への不平不満が書き連ねてある。

本心ではないが、仕方がない。

これくらいしないと、身重だというのに国中私を探し回りかねないだろうから。



「絶対に、お姉様を引き留めて下さいよ?」

「……わかった。はぁ、リュシーに一生隠し続ける秘密が増えた」

苦笑いしながらクルト様は私に言う。

仕方ないだろう、私とお姉様は共依存関係にあるのだ。

でも、もうお姉様は大丈夫だ。

クルト様と一緒にいるお姉様は間違いなく幸せだから。

けれどもお姉様の子供が生まれでもすれば、私は本当にお姉様の傍から離れられなくなる。



今しかチャンスはないのだ。
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