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寝取り令嬢と呼ばれた私に元恋人が愛を囁く

6 一難去ってまた一難

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お姉様が、私の見合い相手だったクルトと結婚するということになった。

てっきりあの狸さんと結婚するのだろうと思い喜んだ私に紹介されたのは、王子顔負けのイケメンだった。



──誰ですか貴方っっ!?





一難去ってまた一難だ。



折角お姉様に纏わりつく駄目男を一匹退治したというのに、またお姉様の駄目男ホイホイが発動したらしい。

胸中焦りまくりながら、何とか相手の本性を見極めるまでは引き伸ばしたかった。



「お姉様、狡い……っ!私を騙したでしょう!?」

狸さんは何処に行ったの!?あの人なら反対しないのに!!こんなイケメン、怪しすぎる!!

「そんな訳がないでしょう、ミランダ」

お姉様は困り顔で私を宥めるが、私は苦肉の策で「クルト様と結婚したい」と言って泣きまねをするしかなかった。



流石にお姉様の前でクルトを誘惑する訳にはいかない。

困っていた私に助けの手を差し伸べたのは、意外にもクルト本人だった。



「リュシー、ここは私に任せて下さい。貴女はもう、ドレスの試着の時間ですよ」

「お姉様、我儘言ってごめんなさい。少しだけクルト様を借りますね」

不安そうなお姉様を見送り、私達は二人になる。

「……クルト様、私の部屋でお酒でもどうですか?」

私は笑顔でクルトを誘う。

しかしクルトは、少し困ったような顔をしただけだった。



「……ミランダ嬢。失礼ながら、貴女のことは調べさせて頂きました」

つまり、寝取り令嬢と呼ばれていることがバレたということか。

「そうですか。でしたら話は早いですね」

私はクルトの腕に自分の腕を絡ませたが、するり、とそれを躱され少し驚いた。



お姉様に気のある人を私が誘惑して、のって来なかった男は初めてだ。

少なくとも、浮気をする心配はないのかもしれない。

けれども、お姉様は無自覚駄目男ホイホイだ。裏があるのかもしれない。



私は態度を変えてクルトを睨み、腕を組んだ。

「……それで?大人しいお姉様を商団に引き込んで、何をさせるつもりですか?」

「私は彼女が好きで、結婚を申し込んだんだ」

「お姉様を好きになる人は、お姉様が大人しく従順で、優しく文句を言わない性格を好きになる男が多いのです。つまり、何をしても謝れば済むと思っている……浮気性の男です」

「そうか、だから君はずっと、そうやってリュシーを守って来たんだな」



クルトに優しくそう言われて、私は思わず渋面になる。

「……知ったようなことを言わないで下さい。お姉様のお陰で、我が家は破産せずに何とか食べられているのです。自分より私を優先し、大切にする人です。……当たり前じゃないですか。誰よりも幸せになって欲しいのです」

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