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第二章 カップル(ABC)編
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「うん、いいよ」
あれ?やけにあっさり。
「本当に良いの?迷惑じゃない?」
「え?そんな訳ないよ。じゃあ、今日の試験対策うちでやろうか?あーっと、うちの冷蔵庫何もないかもしれないから、出前とかでもいい?」
「う、うん。楽しみ。ありがとう!」
おかしいな。普通、一人暮らしの人の部屋は片付けとかあるから急にお邪魔するって事はまずないって聞いてたんだけど……。
明日とか明後日とかを想像していたのに、まさかの今日なんて口から心臓が飛び出そう。
「うち、殺風景だし狭いけど」
「一人暮らしなんてそんなものだよね」
正直、どんなに狭くても一人暮らしは羨ましい。でも、シングルマザーの母親にそんなお金の掛かることはお願い出来ないし、大学に通わせて貰えるだけで有難い。だから近くの通える範囲の大学に進学したのだけど。
……って、あれ?
「良ちゃんって高校一緒だったんだよね?この大学って、実家から通える範囲じゃないの?」
私は首を傾げて聞いた。
「……ああ、大学に入るタイミングで親が転勤したんだ」
「ああ、そっかー。じゃあ、ご両親は遠くに住んでるの?」
「うん。さ、そろそろ移動しようか。今からなら、電車が混み始める前に移動出来るよ」
「うん」
電車に二人で揺られて、初めて良ちゃんの最寄り駅でおりた。他の路線の乗換駅でもあるから、かなり便利な場所に住んでいるようだ。
「えっ?……ここが良ちゃんのお家?」
「うん」
それは徒歩五分位の物件だった。外観もとても綺麗で、オートロックで防犯もしっかりしてそう。
「……ここの家賃って、凄く高そうだね」
「……いや、一人暮らし用で部屋自体は凄く狭いから、多分そんなに高くないよ」
そんなものなのかな?物件探しなんてした事がないから、よくわからない。まぁ、良ちゃんがそう言うならそうなんだろう。
良ちゃんはエレベーターの六階のボタンを押し、廊下の一番奥の部屋まで案内してくれた。
「ここだよ。どうぞ」
「……お邪魔します」
どきどきしながら、良ちゃんが開けてくれた扉の向こうへと滑り込む。
「私の部屋より確実に広いんですけど……!!」
「物がないからそう見えるだけだよ」
そうかなぁ!?でも、ベッドとパソコンデスク以外何も置いていない部屋だった。テレビもテレビボードもソファーもないから、確かに広く見えるのかもしれない。服とかもクローゼットの中に入れているのか、引き出しの類も皆無だった。本人が「殺風景」というのも頷ける。ただ、殺風景かもしれないけれども、床に物が一切置いてないから手入れや掃除や片付けがしやすく、常に清潔な部屋というイメージの方が強くてむしろ好印象だ。
「テレビは見ないの?」
一人暮らしの部屋であっても、テレビがないのが衝撃でつい聞いてしまう。
「パソコンで見てるんだよ。そうだ、お茶入れるけど何が良い?」
「良ちゃんが普段飲んでいるもので良いよ」
「じゃあ、コーヒーで良いかな?」
「うん、ありがとう」
「ベッドか椅子か、好きな方に座って待っててね」
「うん」
ベッド、という単語に胸が跳ね上がった。でも確かに、ソファーがなくて丸テーブルとかもないから、他に座るところがない。良ちゃんが深い意味で言っているとも思えないし、だから緊張しなくても平気……!!
と自らに言い聞かせながら、パソコンデスクの椅子に座らせて貰う。
「あ、鞄はクローゼットのところに鞄掛けがあるよ」
良ちゃんは台所で作業をしたまま私に声を掛けてくれた。
「うん、ありが……」
上下にフックの分かれたその鞄掛けにいる先客を見て、私はつい動きを止める。
「あれっ……!良ちゃんもこのエコバッグ、持ってたんだ!」
私はつい、それを見つけて走り寄った。
少し広げさせて貰って、全体を眺める。これを手に入れる為に高校時代頑張ったんだよね、懐かしい。
「やっぱり……ブサカワ犬キャラクターエコバッグ!私の持っていた奴とお揃いのやつ!可愛いよね、これ」
私がそのエコバッグを台所にいる良ちゃんに見せようとして振り向くと、良ちゃんはこちらを見て優しく微笑んでいて、どきりとした。
あれ?やけにあっさり。
「本当に良いの?迷惑じゃない?」
「え?そんな訳ないよ。じゃあ、今日の試験対策うちでやろうか?あーっと、うちの冷蔵庫何もないかもしれないから、出前とかでもいい?」
「う、うん。楽しみ。ありがとう!」
おかしいな。普通、一人暮らしの人の部屋は片付けとかあるから急にお邪魔するって事はまずないって聞いてたんだけど……。
明日とか明後日とかを想像していたのに、まさかの今日なんて口から心臓が飛び出そう。
「うち、殺風景だし狭いけど」
「一人暮らしなんてそんなものだよね」
正直、どんなに狭くても一人暮らしは羨ましい。でも、シングルマザーの母親にそんなお金の掛かることはお願い出来ないし、大学に通わせて貰えるだけで有難い。だから近くの通える範囲の大学に進学したのだけど。
……って、あれ?
「良ちゃんって高校一緒だったんだよね?この大学って、実家から通える範囲じゃないの?」
私は首を傾げて聞いた。
「……ああ、大学に入るタイミングで親が転勤したんだ」
「ああ、そっかー。じゃあ、ご両親は遠くに住んでるの?」
「うん。さ、そろそろ移動しようか。今からなら、電車が混み始める前に移動出来るよ」
「うん」
電車に二人で揺られて、初めて良ちゃんの最寄り駅でおりた。他の路線の乗換駅でもあるから、かなり便利な場所に住んでいるようだ。
「えっ?……ここが良ちゃんのお家?」
「うん」
それは徒歩五分位の物件だった。外観もとても綺麗で、オートロックで防犯もしっかりしてそう。
「……ここの家賃って、凄く高そうだね」
「……いや、一人暮らし用で部屋自体は凄く狭いから、多分そんなに高くないよ」
そんなものなのかな?物件探しなんてした事がないから、よくわからない。まぁ、良ちゃんがそう言うならそうなんだろう。
良ちゃんはエレベーターの六階のボタンを押し、廊下の一番奥の部屋まで案内してくれた。
「ここだよ。どうぞ」
「……お邪魔します」
どきどきしながら、良ちゃんが開けてくれた扉の向こうへと滑り込む。
「私の部屋より確実に広いんですけど……!!」
「物がないからそう見えるだけだよ」
そうかなぁ!?でも、ベッドとパソコンデスク以外何も置いていない部屋だった。テレビもテレビボードもソファーもないから、確かに広く見えるのかもしれない。服とかもクローゼットの中に入れているのか、引き出しの類も皆無だった。本人が「殺風景」というのも頷ける。ただ、殺風景かもしれないけれども、床に物が一切置いてないから手入れや掃除や片付けがしやすく、常に清潔な部屋というイメージの方が強くてむしろ好印象だ。
「テレビは見ないの?」
一人暮らしの部屋であっても、テレビがないのが衝撃でつい聞いてしまう。
「パソコンで見てるんだよ。そうだ、お茶入れるけど何が良い?」
「良ちゃんが普段飲んでいるもので良いよ」
「じゃあ、コーヒーで良いかな?」
「うん、ありがとう」
「ベッドか椅子か、好きな方に座って待っててね」
「うん」
ベッド、という単語に胸が跳ね上がった。でも確かに、ソファーがなくて丸テーブルとかもないから、他に座るところがない。良ちゃんが深い意味で言っているとも思えないし、だから緊張しなくても平気……!!
と自らに言い聞かせながら、パソコンデスクの椅子に座らせて貰う。
「あ、鞄はクローゼットのところに鞄掛けがあるよ」
良ちゃんは台所で作業をしたまま私に声を掛けてくれた。
「うん、ありが……」
上下にフックの分かれたその鞄掛けにいる先客を見て、私はつい動きを止める。
「あれっ……!良ちゃんもこのエコバッグ、持ってたんだ!」
私はつい、それを見つけて走り寄った。
少し広げさせて貰って、全体を眺める。これを手に入れる為に高校時代頑張ったんだよね、懐かしい。
「やっぱり……ブサカワ犬キャラクターエコバッグ!私の持っていた奴とお揃いのやつ!可愛いよね、これ」
私がそのエコバッグを台所にいる良ちゃんに見せようとして振り向くと、良ちゃんはこちらを見て優しく微笑んでいて、どきりとした。
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