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第二章 カップル(ABC)編
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「良ちゃん、このお店、何だか物凄く高そうなんだけど……!」
クリスマスディナー予約しておいたよ、と良ちゃんに言われてホイホイ着いてきたら、ホテルの最上、六十階のレストランに連れて行かれました。
「大丈夫、ここはドレスコードのない普通のお店だから」
良ちゃんはにこやかにエスコートしてくれるけれども、周りは皆、大人のカップルだらけでとても大学生カップルが入れる雰囲気じゃなくて怖気づく。
「お待ちしておりました、山田様」
レストランの案内係が私達を素晴らしい夜景が眼下に広がる個室に案内してくれた。女性だったら誰でも憧れそうなシチュエーションで凄く素敵なのに、私の胸に何故かモヤっとした感情が広がる。
「……ぅわあー!凄いっ!良ちゃん、凄い景色だねぇ!」
「うん、喜んでくれたなら良かった」
良ちゃんが全て料理のコースを既に注文してくれていたみたいで、ドリンクの注文だけすると早速料理が運ばれて来る。緊張で味なんてわからない、と思っていたけど、個室だったから誰に見られることもなく自然でいられた。メニュー表には値段が載っていなくて凄く驚いたけど、わからないものはどうしようもない。もうこの際値段は気にしないで、楽しもう!と決めた私は運ばれてきた料理を堪能した。
「どれも美味しかったー!」
いっぱいになったお腹をすりながら満面の笑みでデザートまでしっかりと完食する。本当に、本当に美味しかった。でも、何故か先程胸に湧きあがったモヤモヤは消えてくれない。何でだろう?嬉しくて、楽しくて、美味しくて、大好きな良ちゃんと素敵な時間を過ごしている筈なのに。
「うん、美味しかったね」
良ちゃんは同じ大学生だというのに、このお店に圧倒されることなく最初から最後まで馴染んでいるように見えて不思議な感じがした。「普通」な筈の良ちゃんが、まるで「普通じゃない」ように見えて。
「今日はお母さん、何時までに帰宅すればいいって?」
良ちゃんに聞かれ、私は腹を括って「……ええと、明日の昼まで」と返事をする。
「き、今日の朝急に言われたの!またデートで一日家にいないから、貴女も友達と遊んでらっしゃいって!」
決して朝まで一緒にいられるって期待している訳じゃないよ!と私は顔の前で両手を振って一生懸命弁明する。
そりゃ、クリスマスイブだから良ちゃんとずっと一緒にいられたら、とは思うけど、急に言われたって良ちゃんにも予定があるだろう。
「そうなんだ。それはラッキーだな」
良ちゃんは笑って、カードのようなものをテーブルの上に置いた。
「今日は特別に奮発して、予約しておいたんだよね」
「これって?」
「ここのホテルの部屋の鍵」
一番安い部屋だけど、という良ちゃんの言葉にぐらり、と視界が傾ぐ。プロポーズをする時にでも予約しそうなホテルだ。一体いくらするのだろう?恐ろしくて聞けない。私がもし今晩一緒にいられなかったら、良ちゃんはいくらを無駄にすることになるのかな?というか、一緒にいられるかどうかわからないのにこのホテルの予約を取れるなんて、普通じゃ出来ない気がする。クリスマスイブにこのホテルの一室予約するには、一体何ヶ月前から予約しておかなければならないのか、想像もつかない。
「もうキャンセルもきかないし、勿体ないから一緒に泊まっていかない?」
「……出世払いでいいですか?」
私が真剣に聞けば、良ちゃんはきょとんとしてから笑った。
「俺が勝手に予約したんだから、お金のことなんてキララは気にしないでいいんだよ」
いやいやそういう訳にはいかない。初デートの時にも思ったけど、良ちゃんは自分が奢るのを当然と思っている人のようだった。今までどんな人とお付き合いをしてきたのかはわからないし、それが悪い訳ではないけれども、高額過ぎると流石に気になってしまう。
「……そう言えば、良ちゃんって……」
「ん?」
「誰かとお付き合いしたこと、あるの?」
気になったので、つい聞いてしまった。私にとっては良ちゃんが初彼だし誰かと比べることなんて出来ないけれども、良ちゃんは違うのかもしれない。
「……うーん、真剣なお付き合いというのは、キララが初めてだよ」
どどどどういう意味だろう!?真剣なお付き合いじゃないお付き合いなら、していたという意味かな?でも、良ちゃんにはそんなイメージが全くなくて、想像がつかない。いつも誠実で、真面目で、心配性で……私と真摯に向き合ってくれる人だから。
「でも急に、どうしたの?」
良ちゃんは優しく微笑みながら、私の目をしっかり見て聞いてくる。
「えと……」
私はその目を真っ直ぐに見れず、つい逸らしてしまった。
「うん」
「今までの彼女とも、こうしてホテルの予約とか取ってたのかなぁって……だ、だって、慣れてる気がしたから!」
良ちゃんに責められている訳じゃないのに、つい焦って言い訳がましくまくし立ててしまう。私が顔を赤くして俯いていると良ちゃんの笑った気配がして、ちら、とその様子を窺った。
クリスマスディナー予約しておいたよ、と良ちゃんに言われてホイホイ着いてきたら、ホテルの最上、六十階のレストランに連れて行かれました。
「大丈夫、ここはドレスコードのない普通のお店だから」
良ちゃんはにこやかにエスコートしてくれるけれども、周りは皆、大人のカップルだらけでとても大学生カップルが入れる雰囲気じゃなくて怖気づく。
「お待ちしておりました、山田様」
レストランの案内係が私達を素晴らしい夜景が眼下に広がる個室に案内してくれた。女性だったら誰でも憧れそうなシチュエーションで凄く素敵なのに、私の胸に何故かモヤっとした感情が広がる。
「……ぅわあー!凄いっ!良ちゃん、凄い景色だねぇ!」
「うん、喜んでくれたなら良かった」
良ちゃんが全て料理のコースを既に注文してくれていたみたいで、ドリンクの注文だけすると早速料理が運ばれて来る。緊張で味なんてわからない、と思っていたけど、個室だったから誰に見られることもなく自然でいられた。メニュー表には値段が載っていなくて凄く驚いたけど、わからないものはどうしようもない。もうこの際値段は気にしないで、楽しもう!と決めた私は運ばれてきた料理を堪能した。
「どれも美味しかったー!」
いっぱいになったお腹をすりながら満面の笑みでデザートまでしっかりと完食する。本当に、本当に美味しかった。でも、何故か先程胸に湧きあがったモヤモヤは消えてくれない。何でだろう?嬉しくて、楽しくて、美味しくて、大好きな良ちゃんと素敵な時間を過ごしている筈なのに。
「うん、美味しかったね」
良ちゃんは同じ大学生だというのに、このお店に圧倒されることなく最初から最後まで馴染んでいるように見えて不思議な感じがした。「普通」な筈の良ちゃんが、まるで「普通じゃない」ように見えて。
「今日はお母さん、何時までに帰宅すればいいって?」
良ちゃんに聞かれ、私は腹を括って「……ええと、明日の昼まで」と返事をする。
「き、今日の朝急に言われたの!またデートで一日家にいないから、貴女も友達と遊んでらっしゃいって!」
決して朝まで一緒にいられるって期待している訳じゃないよ!と私は顔の前で両手を振って一生懸命弁明する。
そりゃ、クリスマスイブだから良ちゃんとずっと一緒にいられたら、とは思うけど、急に言われたって良ちゃんにも予定があるだろう。
「そうなんだ。それはラッキーだな」
良ちゃんは笑って、カードのようなものをテーブルの上に置いた。
「今日は特別に奮発して、予約しておいたんだよね」
「これって?」
「ここのホテルの部屋の鍵」
一番安い部屋だけど、という良ちゃんの言葉にぐらり、と視界が傾ぐ。プロポーズをする時にでも予約しそうなホテルだ。一体いくらするのだろう?恐ろしくて聞けない。私がもし今晩一緒にいられなかったら、良ちゃんはいくらを無駄にすることになるのかな?というか、一緒にいられるかどうかわからないのにこのホテルの予約を取れるなんて、普通じゃ出来ない気がする。クリスマスイブにこのホテルの一室予約するには、一体何ヶ月前から予約しておかなければならないのか、想像もつかない。
「もうキャンセルもきかないし、勿体ないから一緒に泊まっていかない?」
「……出世払いでいいですか?」
私が真剣に聞けば、良ちゃんはきょとんとしてから笑った。
「俺が勝手に予約したんだから、お金のことなんてキララは気にしないでいいんだよ」
いやいやそういう訳にはいかない。初デートの時にも思ったけど、良ちゃんは自分が奢るのを当然と思っている人のようだった。今までどんな人とお付き合いをしてきたのかはわからないし、それが悪い訳ではないけれども、高額過ぎると流石に気になってしまう。
「……そう言えば、良ちゃんって……」
「ん?」
「誰かとお付き合いしたこと、あるの?」
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「でも急に、どうしたの?」
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「えと……」
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「うん」
「今までの彼女とも、こうしてホテルの予約とか取ってたのかなぁって……だ、だって、慣れてる気がしたから!」
良ちゃんに責められている訳じゃないのに、つい焦って言い訳がましくまくし立ててしまう。私が顔を赤くして俯いていると良ちゃんの笑った気配がして、ちら、とその様子を窺った。
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