35 / 55
第二章 カップル(ABC)編
20
「ごめん、嫉妬してくれたのかなって思って、ちょっと嬉しくなっちゃった」
「……」
良ちゃんの言葉に、そうか、私は見たこともない人達に嫉妬をしていたのか、と気付かされて、やっと胸に巣食っていたどうしようもないモヤモヤに名前をつけることができた。
過去のことだとわかっていても、良ちゃんが私の知らない誰かの為にクリスマスディナーの予約をし、ホテルを取ったのだろうかと思うだけで、胸が痛んで涙が溢れそうになる。
「あのね、キララ。俺が予約を取ってまで誰かと一緒にいたいって思ったのはキララが初めてだよ」
「……そうなの?」
慣れている気がしたから、まさか初めてだとは思わなかった。
「うん。今は凄く無理して格好つけてるだけ。キララの前だからさ」
照れ隠しなのか、困ったように笑う良ちゃん。私が良ちゃんに可愛いと思われたくて頑張るのと同じで、良ちゃんも私にカッコいいと思われたくて背伸びをしている、なんて考えたことなかった。本当はそんなこと相手に言いたくないだろうに、私を安心させる為に平気で口にしてくれる、飾らなくて優しい良ちゃんが私は大好きだ。
「良ちゃん……折角予約してくれたのに、つまらない嫉妬して、勝手にモヤモヤしてて、本当にごめんね。あと、今日は付き合って初めてのクリスマスだったのに、バイト入れちゃったこともごめん。私の為に色々考えてくれて、ありがとう」
「ううん、鐘崎さんが教えてくれたんだけど、俺の誕生日プレゼントを買う為に頑張ってくれたんでしょう?忙しい時期にこちらこそありがとう。今日一日一緒にいられなくても、今、一緒の時間が持てるだけでも俺は嬉しいよ」
うわー!繭ちゃん!!いつの間に良ちゃんに話しちゃったの!!お金がないんですって言ってるみたいで、ちょっと恥ずかしい。でも、十二月は良ちゃんの誕生日プレゼント以外に、クリスマスプレゼントも渡したかったから先月と今月は本当に頑張って働いた。
お互いそう言い合えば、変なわだかまりは胸からスッと消えて。
「じゃあ、そろそろ部屋に行こうか」
私は良ちゃんの言葉に、笑顔で頷いた。
「この部屋、レストランの景色とまた違った夜景だね」
天井まで伸びる大きな扉を開けて中に入れば、そこにはまるで自分がお姫様になったかのような空間が広がっていた。といっても、決して母親が好きそうなメルヘンな空間ではなく、シックで落ち着いた雰囲気の高級感溢れる空間だけど。
緊張で毛並みの長い絨毯の上をもつれそうになりながら足を運び、声が裏返りそうになりながらも、私はキョロキョロとその部屋を見回してしまう。母親との旅行はほぼバスツアーでしか行かないので、安いビジネスホテルに泊まるのが普通だ。
部屋の広さは勿論、それに付随してベッドの広さも格段に違う。ベランダにも出られるようになっていてお洒落な椅子とテーブルが設置されているし、トイレとお風呂が別だし、アメニティがブランド品に詳しくない私ですら聞いたことのあるブランド品で揃えてある。
単なる大学生がこんな部屋に泊まっていいのだろうか、と気後れしながら私はつい呟いた。
「普通のカップルって、こういう時ってラブホテルに行くのかな?」
「キララがラブホの方がよければ、来年はそうするよ」
「えっ!?いい、イイです……っっ!」
私は、慌てて首を横に振った。私達は、ラブホテルに入ったことがない。というか、良ちゃんに誘われても恥ずかしすぎて入れないのだ。入り口の前を素通りする私を見て、良ちゃんは笑って「やっぱり俺の部屋にしよっか」といつも折れてくれた。
ラブホテルでエッチをするのが嫌なのではなくて、ラブホテルに入ることそのものが私にとってハードルが高いのだ。でも、誰でも普通に使っているというし、いつかは私も平気になるだろう、とは思うのだけど。
「キララ、一緒にお風呂入る?」
良ちゃんに聞かれて、「入らないっ!」と叫びながら部屋の隅に逃げる。
「一緒にお風呂入るなんて、普通のカップルならいくらでもやってると思うんだけどなぁ?」
そう言われて、ぐ、と詰まる。「普通」が一番、だとは思うけれど……お風呂に一緒に入るカップルの割合はどれ位なのだろうか?
「でも、お風呂の中って明るいよね?明るいところで良ちゃんに身体を見せる勇気は流石にないよ」
「そっか、残念。俺の部屋の狭い風呂とは違って、このホテルなら余裕で一緒に入れるのになぁ」
良ちゃんは本当に残念そうに言うが、お風呂は一日の疲れをとる場所だ。一緒に入ったら、お互いが本当にリラックスできるのか疑問が残る。
「お、女はお風呂で色々処理しなきゃならないこともあるのっ!もう……言わせないでよぉ」
「そっか。まぁ、お風呂に入る前のキララも食べてみたいけど」
「良ちゃん!」
からかう良ちゃんに私は口を尖らせる。エッチの前にシャワーを浴びないなんて、考えられない。
「ここの部屋はいつでもお風呂が沸いているから、入っておいで」
「うん」
私は実家の風呂の倍の広さのある湯船に贅沢に浸かりながら、バイト上がりの疲れを癒す。普段使わないシャンプーやボディソープをたっぷりと使って、身体をピカピカに磨き上げた。
ううう、いかにもエッチする為に綺麗にしていますって感じで恥ずかしすぎる。でも、良ちゃんの前に裸を晒すのであれば、より見目よい状態でいたいというのは乙女心としては当たり前だと思う。
お風呂から出ると、下着は付けずにフワフワの肌触りの良いバスローブに腕を通した。
「……」
良ちゃんの言葉に、そうか、私は見たこともない人達に嫉妬をしていたのか、と気付かされて、やっと胸に巣食っていたどうしようもないモヤモヤに名前をつけることができた。
過去のことだとわかっていても、良ちゃんが私の知らない誰かの為にクリスマスディナーの予約をし、ホテルを取ったのだろうかと思うだけで、胸が痛んで涙が溢れそうになる。
「あのね、キララ。俺が予約を取ってまで誰かと一緒にいたいって思ったのはキララが初めてだよ」
「……そうなの?」
慣れている気がしたから、まさか初めてだとは思わなかった。
「うん。今は凄く無理して格好つけてるだけ。キララの前だからさ」
照れ隠しなのか、困ったように笑う良ちゃん。私が良ちゃんに可愛いと思われたくて頑張るのと同じで、良ちゃんも私にカッコいいと思われたくて背伸びをしている、なんて考えたことなかった。本当はそんなこと相手に言いたくないだろうに、私を安心させる為に平気で口にしてくれる、飾らなくて優しい良ちゃんが私は大好きだ。
「良ちゃん……折角予約してくれたのに、つまらない嫉妬して、勝手にモヤモヤしてて、本当にごめんね。あと、今日は付き合って初めてのクリスマスだったのに、バイト入れちゃったこともごめん。私の為に色々考えてくれて、ありがとう」
「ううん、鐘崎さんが教えてくれたんだけど、俺の誕生日プレゼントを買う為に頑張ってくれたんでしょう?忙しい時期にこちらこそありがとう。今日一日一緒にいられなくても、今、一緒の時間が持てるだけでも俺は嬉しいよ」
うわー!繭ちゃん!!いつの間に良ちゃんに話しちゃったの!!お金がないんですって言ってるみたいで、ちょっと恥ずかしい。でも、十二月は良ちゃんの誕生日プレゼント以外に、クリスマスプレゼントも渡したかったから先月と今月は本当に頑張って働いた。
お互いそう言い合えば、変なわだかまりは胸からスッと消えて。
「じゃあ、そろそろ部屋に行こうか」
私は良ちゃんの言葉に、笑顔で頷いた。
「この部屋、レストランの景色とまた違った夜景だね」
天井まで伸びる大きな扉を開けて中に入れば、そこにはまるで自分がお姫様になったかのような空間が広がっていた。といっても、決して母親が好きそうなメルヘンな空間ではなく、シックで落ち着いた雰囲気の高級感溢れる空間だけど。
緊張で毛並みの長い絨毯の上をもつれそうになりながら足を運び、声が裏返りそうになりながらも、私はキョロキョロとその部屋を見回してしまう。母親との旅行はほぼバスツアーでしか行かないので、安いビジネスホテルに泊まるのが普通だ。
部屋の広さは勿論、それに付随してベッドの広さも格段に違う。ベランダにも出られるようになっていてお洒落な椅子とテーブルが設置されているし、トイレとお風呂が別だし、アメニティがブランド品に詳しくない私ですら聞いたことのあるブランド品で揃えてある。
単なる大学生がこんな部屋に泊まっていいのだろうか、と気後れしながら私はつい呟いた。
「普通のカップルって、こういう時ってラブホテルに行くのかな?」
「キララがラブホの方がよければ、来年はそうするよ」
「えっ!?いい、イイです……っっ!」
私は、慌てて首を横に振った。私達は、ラブホテルに入ったことがない。というか、良ちゃんに誘われても恥ずかしすぎて入れないのだ。入り口の前を素通りする私を見て、良ちゃんは笑って「やっぱり俺の部屋にしよっか」といつも折れてくれた。
ラブホテルでエッチをするのが嫌なのではなくて、ラブホテルに入ることそのものが私にとってハードルが高いのだ。でも、誰でも普通に使っているというし、いつかは私も平気になるだろう、とは思うのだけど。
「キララ、一緒にお風呂入る?」
良ちゃんに聞かれて、「入らないっ!」と叫びながら部屋の隅に逃げる。
「一緒にお風呂入るなんて、普通のカップルならいくらでもやってると思うんだけどなぁ?」
そう言われて、ぐ、と詰まる。「普通」が一番、だとは思うけれど……お風呂に一緒に入るカップルの割合はどれ位なのだろうか?
「でも、お風呂の中って明るいよね?明るいところで良ちゃんに身体を見せる勇気は流石にないよ」
「そっか、残念。俺の部屋の狭い風呂とは違って、このホテルなら余裕で一緒に入れるのになぁ」
良ちゃんは本当に残念そうに言うが、お風呂は一日の疲れをとる場所だ。一緒に入ったら、お互いが本当にリラックスできるのか疑問が残る。
「お、女はお風呂で色々処理しなきゃならないこともあるのっ!もう……言わせないでよぉ」
「そっか。まぁ、お風呂に入る前のキララも食べてみたいけど」
「良ちゃん!」
からかう良ちゃんに私は口を尖らせる。エッチの前にシャワーを浴びないなんて、考えられない。
「ここの部屋はいつでもお風呂が沸いているから、入っておいで」
「うん」
私は実家の風呂の倍の広さのある湯船に贅沢に浸かりながら、バイト上がりの疲れを癒す。普段使わないシャンプーやボディソープをたっぷりと使って、身体をピカピカに磨き上げた。
ううう、いかにもエッチする為に綺麗にしていますって感じで恥ずかしすぎる。でも、良ちゃんの前に裸を晒すのであれば、より見目よい状態でいたいというのは乙女心としては当たり前だと思う。
お風呂から出ると、下着は付けずにフワフワの肌触りの良いバスローブに腕を通した。
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。