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「お久しぶりです、南出先輩」
「え?」
俺は、目の前の陽キャ寄りのキラキライケメンに微笑まれて、首を傾げた。
誰だ?
こんな知り合い、いたか?
しかし、南出翼……それが俺の名前であることは確かだ。
そして、この苗字はそこまで一般的ではない。
今は全ての関係を絶った大学時代の友人を思い浮かべるが、やはり思い当たる人物はいなかった。
大学時代の友人は確かに陽キャだらけだったが、バカ騒ぎが大好きなチャラいやつらばかりだ。
こんなにいかにも仕事できます、女に困っていません、頭も良いですって雰囲気からはかけ離れている。
次に地元の高校時代の友人を思い浮かべようとした俺の思考を遮るように、キラキライケメンは早くも答えを教えてくれた。
「忘れてしまいましたか?僕です、如月知久です」
「如月……」
俺の頭に、大学時代の映画サークルで一緒だったひとりの後輩がポンと思い浮かんだ。
因みに待ち合わせ相手でもある。
「え?マジで?本当に、如月……?」
俺はつい、目を見開いてまじまじと目の前の人物を見上げる。
真っ黒だった髪は綺麗な茶色に染められ、当時はなんのスタイリング剤も使っていなかったであろうその髪は、ところどころ嫌味なく跳ねていた。
「はい、恐らくその如月です」
瞳を隠していた長い前髪はさっぱりと切られ、当時は見えなかった切れ長の瞳と目元の黒子が露になっている。
綺麗な鼻筋に整った顔立ちをしていそうだとは思っていたが、まさかこんなに化けるとは思わなかった。
「随分とまあ……変わったな」
呆けながらも辛うじてそう言えば、如月は薄い唇を軽く持ち上げてくすくすと笑う。
その笑い方には見覚えがあり、本当に本人なのだと理解した。
切れ長の目が細められて、男相手に少しドキリとする。
そうか、この笑い方をしていた時にはこんな表情をしていたのかと、如月の素顔を初めて知った。
「ははは、南出先輩の好みから離れましたか?」
好みってなんだ?と思いながらも、俺は首を横に振る。
「いや、すげーカッコよくなったよ」
「そう言っていただけるなら、イメチェンして良かったです。しかし、南出先輩も……随分と、変わりましたね」
「ああ、俺もイメチェンしたんだ」
如月に突っ込まれて、俺はニヤリと笑った。
社会人二年目、一年目で真っ黒に染めた髪は、とうに地毛のままだ。
コンタクトをやめて真面目そうな黒縁の眼鏡をかけ、毎日無難なスーツを着て満員電車に揺られている。
煙草も酒もやめて、夜遊びもせずに真っ直ぐに帰宅。
どこかに寄りたくなってもバーには行かず、少しお高い個人の喫茶店で一杯のコーヒーを楽しむ程度だ。
「遠目では本当にわかりませんでしたよ」
「そうだろ」
如月に言われて、ホッとした。
わかるような変化だったら、逆に困る。
縁を切りたいやつらがいるからな。
そう。
俺は如月とは逆に、社会人になって、陰キャデビューを果たしたのだった。
「え?」
俺は、目の前の陽キャ寄りのキラキライケメンに微笑まれて、首を傾げた。
誰だ?
こんな知り合い、いたか?
しかし、南出翼……それが俺の名前であることは確かだ。
そして、この苗字はそこまで一般的ではない。
今は全ての関係を絶った大学時代の友人を思い浮かべるが、やはり思い当たる人物はいなかった。
大学時代の友人は確かに陽キャだらけだったが、バカ騒ぎが大好きなチャラいやつらばかりだ。
こんなにいかにも仕事できます、女に困っていません、頭も良いですって雰囲気からはかけ離れている。
次に地元の高校時代の友人を思い浮かべようとした俺の思考を遮るように、キラキライケメンは早くも答えを教えてくれた。
「忘れてしまいましたか?僕です、如月知久です」
「如月……」
俺の頭に、大学時代の映画サークルで一緒だったひとりの後輩がポンと思い浮かんだ。
因みに待ち合わせ相手でもある。
「え?マジで?本当に、如月……?」
俺はつい、目を見開いてまじまじと目の前の人物を見上げる。
真っ黒だった髪は綺麗な茶色に染められ、当時はなんのスタイリング剤も使っていなかったであろうその髪は、ところどころ嫌味なく跳ねていた。
「はい、恐らくその如月です」
瞳を隠していた長い前髪はさっぱりと切られ、当時は見えなかった切れ長の瞳と目元の黒子が露になっている。
綺麗な鼻筋に整った顔立ちをしていそうだとは思っていたが、まさかこんなに化けるとは思わなかった。
「随分とまあ……変わったな」
呆けながらも辛うじてそう言えば、如月は薄い唇を軽く持ち上げてくすくすと笑う。
その笑い方には見覚えがあり、本当に本人なのだと理解した。
切れ長の目が細められて、男相手に少しドキリとする。
そうか、この笑い方をしていた時にはこんな表情をしていたのかと、如月の素顔を初めて知った。
「ははは、南出先輩の好みから離れましたか?」
好みってなんだ?と思いながらも、俺は首を横に振る。
「いや、すげーカッコよくなったよ」
「そう言っていただけるなら、イメチェンして良かったです。しかし、南出先輩も……随分と、変わりましたね」
「ああ、俺もイメチェンしたんだ」
如月に突っ込まれて、俺はニヤリと笑った。
社会人二年目、一年目で真っ黒に染めた髪は、とうに地毛のままだ。
コンタクトをやめて真面目そうな黒縁の眼鏡をかけ、毎日無難なスーツを着て満員電車に揺られている。
煙草も酒もやめて、夜遊びもせずに真っ直ぐに帰宅。
どこかに寄りたくなってもバーには行かず、少しお高い個人の喫茶店で一杯のコーヒーを楽しむ程度だ。
「遠目では本当にわかりませんでしたよ」
「そうだろ」
如月に言われて、ホッとした。
わかるような変化だったら、逆に困る。
縁を切りたいやつらがいるからな。
そう。
俺は如月とは逆に、社会人になって、陰キャデビューを果たしたのだった。
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