陰キャデビューの南出先輩

イセヤ レキ

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「僕、ずっと先輩を捜していたんですよ。良かったです、こうしてご連絡をいただけて」
「ああ、ずっと借りてたDVD返せてなくて悪かったな」
「いいえ、そうではなくて……」


違うのか?


俺が愛用している個人の喫茶店に入り、静かなBGMの流れる店内で借りっぱなしだったDVDを鞄から取り出して丸いテーブルの上に置いた。


「南出先輩、大学四年で、何かありましたか?」
「んー?ああ、まあ、色々と」

如月からの質問に、俺は曖昧に言葉を濁して躱す。



色々と、というより、自分が付き合っていたやつらが大麻だかなんだか、とにかく葉っぱをやるやつらだと知って縁を切ることにしただけだ。


俺は大学時代、わかりやすく遊んでいた。

つるんでいたやつらは気安く、馬鹿話していれば時間が潰れる、深い付き合いではない、そんな、遊びにだけは困らないやつらばかりだった。


当時入っていたサークルは映画サークル含め全てヤリサー。

特定の彼女は作らず、群がってくる女たちと適当にエッチして日々を消化した。

俺は映画が好きで、映画サークルだけは真面目に語りたくて入会したから、そこもヤリサーだと知った時は落胆した。

しかし、一年遅れで入って来た陰キャの如月が、俺の理想とする時間を与えてくれたのだ。


俺は如月と一緒にいる時間が増え、夢中で好きな映画について語り明かしたものだが、それまで俺がつるんでいたやつらはそれを良しとしなかった。

当時の俺はモテモテで、俺が遊びに参加するだけで女子の参加率がぐんと変わるからだ。


如月にちょっかいや嫌がらせをしそうな雰囲気を察知した俺は、如月とはこっそり会うことにして、必要最低限のイベントには出席して他のやつらの不満が溜まらない程度にコントロールした。


そして、問題が起きたのは大学四年の時だ。

就活や卒論だけであまり集まりが盛んでなくなった頃、久しぶりに集まろうってことで行った先で、友人のひとりが葉っぱを出してきたのだ。


正直、ドン引きした。

チャラいやつらだとは思っていたが、犯罪をするやつらだとは思っていなかったから。

俺はさっさとその輪から抜け出て、従兄弟に連絡をした。

従兄弟は警察一家だから、情報提供をしたのだ。

俺はあっさりとそいつらを警察に売ったということだ。


恐らくそいつらに対して情報源は明かされなかっただろうが、さっさとそいつらと縁を切ることにした俺は、大学四年でほとんど学校に行く必要がないタイミングで良かったと思いながら地元に戻るからとだけ連絡して別れの挨拶をし、卒業式には行かずにそれまで使っていた自分の連絡先を捨てたのだ。
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