陰キャデビューの南出先輩

イセヤ レキ

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「南出先輩と急に連絡が取れなくなって、本当に驚きましたよ。ほとんど知らないようなサークルメンバーからも、南出先輩の連絡先聞かれましたし」
「すぐに連絡しなくて悪かったよ。ただ、如月も就活で忙しいだろうと思ってさ」


鼻の頭を人差し指でこしこしと擦りながら、平気で嘘を吐く。


最近、家の整理をしていたら、如月から借りたDVDが出てきたのだ。

大学時代の友人とは縁を切りたくて連絡先を一新したものだから、正直如月に連絡するのも躊躇った。


それでも、如月だけはあの連中とは違う、と頭のどこかで理解していたため、俺は如月だけに連絡を入れたのだ。


「そうでしたか。南出先輩、SNSとかのアカウントも大学卒業後に全て削除したじゃないですか。僕、なんの連絡もなくて本当に寂しかったんですよ。南出先輩からのお誘いなら何を置いても駆け付けますから、これからはまた連絡くださいね」
「ああ、わかった。また如月とは映画語りたいしな」


前髪が邪魔で、手で掻き上げてから、少し冷めてしまったコーヒーを啜る。

猫舌の俺には、ちょうどいい熱さだ。


その時視線を感じて、如月を見る。

丸テーブルを挟んではいるものの近距離で目が合って、少し驚いた。


露になった切れ長の如月の眼光は結構強烈だ。

今までも同じ距離で映画について語ったものだが、顔が見えるだけでこんなに近く感じるものなのか、と目を瞬く。


「ん?どうした?」
「いえ。……ええと、先輩ってこの辺に住んでいるんですか?」
「ああ。お前が俺の利用駅まで来てくれるって返事くれたから、お言葉に甘えてがっつり来て貰ったよ。あ、如月って明日休み?良ければこれからウチに来て、映画一本観てく?」


飲み屋でも入って食事をするつもりだったが、相手が如月だったこともあり、昔みたいにピザとコーラとポップコーンを準備して映画を観るのもいいなと思って提案してみた。


「いいんですか?ぜひ、そうしたいです」
「おう、じゃあそうしよ。帰り道にピザ屋もスーパーもあるからさ。商店街を抜けていくから、つまみになるものも買っていこうぜ」


ちょうどいいタイミングで如月がコーヒーを空にしたところで、俺は喫茶店の会計伝票をさっと掴んで立ち上がる。


「僕が払います」
「いや、ここまで来てもらったんだから、いいよ。俺が払う」


如月の新居の住所や仕事の話をしながら、俺たちは自宅に向かった。
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