異世界転移? ふざけんな。

そら

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すると、宝石じゃらじゃらのじじいが、それに気づいた。

「! おい、小娘が何か仕掛けて来そうだぞ!」
「何だと!? まだ腕輪に魔力がこもっとらん!」
「わしもだ! おい、ラドクリフ! この娘の動きを止めろ!」

「ラドクリフ…?」

 どっかで聞いた名前だなー、……あ、そうか。さっきこのくそじじいどもが言ってた女の子の……。

「………承知いたいました」

 じじいの声に、一人の青年がこうべをたれる。

 ……この人か。

頭をあげてこちらに向けられた瞳は無機質で、まるで何も見えていないかのようだった。

 さらりと風になびきそうな細い金の髪に、深い海を思わせる紺碧の瞳。ぬけるような白い肌。
 容姿だけ見れば、まるで絵本から抜け出たような王子っぷりだ。

 ―――ちょっとで笑ったら、気絶する女の子が続出しそうだなー。
 ま、わたしは寡黙な男の方が好きだけど。よくわたしがしゃべるから。

「茉凛、ラドクリフって子がSランクだよ」
「へえ…」

 この会場にいるなかで、一番強いのが彼か。

「ちなみにじじい共は?」
「ん~? 鎧の子とローブの子がAランクで、宝石つけてる子はBランク~」
「……よわっ。」
「んでもほかの子たちはCランク以下だからね~」
「なるほど」

 まあ自分が強ければ、無双して頂点に登っちゃえばいい話だもんね。
 それができないから、わたしが誘拐されたわけで。

「つーかさ、異世界に人一人誘拐するとか、ほんとに非常識っていうか勘弁して欲しい。って言うか帰れるのかわたし。さらに言うなら、わたしは何故に初対面のフェレット(?)の言葉を全面的に信用してるんだろう?」
「それはぼくがかわいいから」
「まあそうねー。かわいいは正義」

 でも不思議とこの不可思議なフェレットもどきな生き物(?)を疑う気持ちが起きない。

 だって、話してても全然悪意感じないんだもん。―――あのじじい共と違って。

「あれ、ていうかフェレットくん? じじい共をあの子呼ばわりする君はいったいいくつなのかね?」
「ん? あ、来るよ?」
「ん?」

 フェレットの呼びかけに合わせて視線を向ければ、金髪碧眼王子さまがこちらに向かって手をかざしているのが見える。

『フロストフラワー!』

碧眼王子が小さく呪文を唱えると、かざした手から氷の結晶が発生した。
 彼は、その手を下に向ける。
 
 …………足元を凍らせて、動けなくするつもりだな。

 フロストフラワーは、氷の結晶で相手を包み込んで、動きを封じる呪文だ。

 一時的にわたしの足を拘束して、じじい共が腕輪に魔力を込めるのを待つつもりか。

 そう思った時にはすでに、わたしの両足は白く光る氷の結晶で固められていた。
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