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5巻
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しおりを挟む第一話 動き出す事態
『訓練合宿』のために僕らが訪れたトロンの村。その宿屋に、以前から何かとお世話になっている軍人、スウラさんがやってきた。
仕事で偶然この村に来たらしいが、僕、ミナト・キャドリーユは、彼女の様子にちょっとだけ驚く。
忙しい人だから、ただ雑談しに来たんじゃないだろうとは思ったけど、まとっている空気からして、予想以上にシリアスな話を持ってきたっぽい。
僕の仲間であるエルクやザリー、そしてトロンで知り合った奴隷身分の少女、ナナさんの視線が集まる中、スウラさんは前置きなどもなく、さっそく本題に入った。
「ここ数日のことなのだが、三件ほど奴隷商人が被害に遭う事件の報告が届いていてな……それに関して、何か心当たりがないだろうかと思い、訪ねさせてもらった」
「奴隷商人が?」
「ああ。具体的には……商隊ごと行方不明になった事件が二件、襲撃を受けて壊滅した事件が一件だ。それも、全てトロンの周辺で」
そして、さらに二週間ほど前。
それらの事件とは別に、この山のふもとの道中でも、奴隷商人の馬車の残骸が見つかっているらしい。
ただし他の三件とは違い、被害者は違法な奴隷商人で、どこかから攫ってきた孤児を売ろうとしていたようだ。
そいつらは人目に付きにくい裏ルートを使っていた。そこは危険で、魔物なども結構出るらしい。しかし――。
「ここが重要なのだが……違法な商人達の襲撃現場を調査した結果、襲撃は魔物によるものではなく、人為的なものだとわかった」
「盗賊か何かに襲われた、と?」
「現場には、金目のものがほとんど残されていなかったからな。当初は我々も盗賊を疑った。しかし、どうも気になるところが多くてな……」
「?」
スウラさんによると、そのままになっていた違法商人の死体や馬車の残骸を検証した結果、妙なことがわかったらしい。
「力任せに斬りつけられていたがゆえにわかりにくかったが、死体や馬車の損傷は、形状から見て、いずれも同じ刃物によって斬りつけられたものだった」
「全員が同じ種類の刃物を武器としてた、ってこと?」
「いや、それも考えにくい。馬車はともかく、ほとんどの死体には、同じ方向から切りつけられた傷しか残っていなかった上に……全員ほぼ一撃で絶命させられていた」
……なるほど、確かに妙だ。
もしそれが盗賊による襲撃で、武器が同じものに統一されていたのなら……一つの死体に、いろんな方向からの傷が複数なければおかしい。
盗賊って基本、集団戦法で、一人相手に数人でかかるから。
そうなると……圧倒的な実力を持つ個人ないし少人数によって襲撃され、全員殺された挙句に積荷を奪われた、って考えるのが自然だろう。
「この近辺で、盗賊の目撃情報とかあるんですか?」
「いや、目撃情報どころか、そのような類の盗賊が出没したという噂もない。少なくとも、ここ十数年の間は、な」
それを聞いて、情報通のザリーが眉をひそめる。
「おかしいね、それ。もしそんな盗賊が出没するなら、噂になってるはずなのに」
「……もしかして、先にスウラさんが言った、まっとうな方の奴隷商人の失踪と襲撃事件も?」
「ああ。失踪の方はわからんが……襲撃事件の現場には、似た痕跡が残っていた」
これもよく見ないとわからなかったらしいけど……現場に残されていた残骸や死体から、山のふもとの一件と同じ形状の傷がいくつか見られた。
さらに驚いたことに、こちらは魔法による攻撃痕も残っていたという。
……うーむ、確かに気になる。
ここ一、二ヶ月のうちに、立て続けに四件の奴隷商人襲撃事件や失踪事件があった。
二件は、同じ犯人(と仲間)によるものである可能性大。さらに、その中の一件では魔法使いが関わっている。
現場からは金品が持ち去られているから、一見すると盗賊の犯行に……ん?
「あれ? スウラさん、そういえば……その、運ばれてた奴隷はどうなったんですか?」
「いいところに気がついたな、ミナト殿。話そうと思っていたんだが……襲撃を受けた、もしくは失踪した奴隷商人が運んでいた奴隷は、一人も見つかっていない。現場には、奴隷商人と護衛の死体だけがあり、奴隷の死体はなかった」
「犯人が奴隷を連れ去った、ってことですか? だとしたら、それが目当てで襲撃を?」
「かもしれん。だが、襲撃犯は相当に周到でな。粗い砂利道で襲われたがゆえに、馬車の車輪のあとなどは見つけられなかった」
「連れ去られた奴隷が見つかっていないってのも不自然だね。表と裏、どちらの市場にも出回った様子はないんでしょ?」
と、ザリー。続いてエルクが疑問を口にする。
「それじゃ、利益は出ないわよね? 自分達で使うために奪った、とか?」
ん~……なんか、よくわからない事件だな……。
ただの強盗殺人事件のようにも見えるけど、不自然な点が多いというか……何だか、嫌な予感がするというか……。
するとザリーが何か思い出したらしく、「あ!」と頭上に豆電球を浮かべたような顔で言った。
「奴隷って言えば、ついさっき、市場で奇妙な情報仕入れてきたんだけど、聞きたい?」
「? どんな情報だ?」
「この村でここ数年、奴隷が売り買いされる数がかなり多い理由は知ってる?」
ああ、それはナナさんに聞いた。
このトロンは最近急成長した村だから、ここで一旗揚げようとする新米商人が大勢やってくる。
そんな人達にとって、『奴隷』っていうのは、最低限の衣食住を与えるだけで使えるし、人を使う練習にもなる便利な存在なんだって。
それがどうかしたのかと思っていると、ザリーは意外なことを言い出した。
「実はさ、このトロンで毎年買い取られる奴隷の数と、商人に連れられて外に出て行く奴隷の数が、違いすぎるみたいなんだ」
僕は首をかしげた。
「……どういう意味?」
「つまり、毎年このトロンでは、外部から大量の奴隷が連れて来られているのに、商人が村の外に連れて出て行く数は、その半数ほどらしいんだ」
「買い取られた奴隷のうち、残り半数がこの村にとどまっているということか? それも、毎年」
スウラさんの問いにザリーが答える。
「そうなるね。けど……そこまで極端に村中の奴隷が増えている様子もないんだ。しかも、翌年に購入される数が減ったりすることもない。同じ数か、それ以上がまた買われている」
「確かにそれはおかしいわね……普通に考えれば、脱走したか、使い潰した分を補給している、と考えられるけど」
エルクが言うと、ザリーは首を横に振った。
「それにしたって、限度ってもんがあるよ。何せ何十人単位、下手すれば百人以上だ。まともな扱いをしてたんじゃ、そんなペースで奴隷が逃げたりダメになったりするはずがない」
「……あのー、あらためて、割と真剣に頼むんですけど……ミナトさん、ホントに私のこと競り落としてくれませんか? 一生懸命働きますから……」
不穏な推測を立て続けに聞いたナナさんは、たらりと額に汗を流して提案してきた。
……無理もないだろうな。この間から、僕らのところで働くのは楽しいから、よかったら自分を買ってほしい、ってちょくちょくアプローチかけてきてたくらいだし。
しかしホントに、妙な話がどんどん出てくるな。しかも、どれも奴隷がらみ。
奴隷商人を狙った謎の襲撃者。その際、金品も奴隷も持ち去っている。そして、毎年買われる奴隷とこの村を出て行く奴隷との、数の不一致。
どちらも、奴隷がどこにいったのか、どうなったのか不明……か。
普通に考えれば、奴隷商人から奴隷を奪ったら、自分のものにするか、裏で売りさばいて金に変える。けど、後者の手段を取った形跡が無いとスウラさんは言う。
すると、襲撃犯は奴隷を逃がしたのか、連れ去ったままなのか……。
もし連れ去られたままだとすると、奴隷がかなりのペースで大量に使い潰されてる、ってことになる。
一体、どんな酷使の仕方をしてるんだ? しかも、そんな噂は全く聞いたことがないし。
すると、ふとザリーが何かに気付いたように言った。
「そう言えば……奴隷の購入が増えたのって、この村が発展し始めて間もなくだよね?」
「それはそうだろう。新天地で新たに商人を志す者が増えたのは、村が急成長したためだからな」
「あー確かに。別におかしなことでもないか」
スウラさんの答えに、ザリーは納得したようだった。
……ん? 待てよ? 今、何か引っかかったぞ?
「ザリー、その頃から、奴隷の出入数の不一致って起こってたの?」
「あー、ごめん、そこまでは調べてないや。それがどうかしたのかい?」
「仮にさ、その不一致の原因が、奴隷の酷使による使い潰しだと仮定して……それらの奴隷は、何に使われているんだと思う?」
「村の発展に伴う労働力ではないか?」
と、スウラさん。
「だとしたら、今も状況が変わらないってどうなんだろう? 今って、昔ほど急激なスピードで村は成長していないんだよね?」
「ああ、うん。確かに最近、成長はスローペースっていうか、停滞気味だね。けど、むしろ奴隷の消費量は上がっているかも」
「経済発展したがゆえに大量の奴隷を買えるようになった結果だと思っていたが……あらためて指摘されると、確かに不自然だな」
僕の言葉に、ザリーとスウラさんが頷き合う。
「……あんたって、普段バカなのに時々変なとこに気付くわね」
「エルク、今一応シリアスな場面だから、突っ込みはできれば後に」
至極もっともなエルクの指摘は軽く制しておく。
毎年大量に購入され、その用途、原因がわからないまま消失する奴隷。そして、奴隷商人が襲撃されて荷の奴隷が行方不明になる事件の多発……。
この二つ、無関係だろうか?
話を同時に聞いたせいかもしれないが、襲撃・失踪事件でいなくなった奴隷も、不一致の奴隷も、全員行方不明になったんじゃないかと思えてしまう。
でも、手がかりなんて何も無いし、それぞれの奴隷がどうなったのかもわからない以上、推測しかできない。使い潰されたってのも、あくまで想像だし。
結局、なんとなく頭に引っ掛かりを残したまま、その日はスウラさんと別れた。「一応、頭の隅にとどめておいてくれ」と親切な注意をいただいた上で。
……ただ。
「ところでナナ殿。おかしなことを聞くようだが……以前、どこかで会ったことがないか?」
「? そう、ですか? すみません、私は覚えていませんが……」
「そうか……すまない、私の勘違いだったようだ」
そんなことを、去り際にスウラさんがぽつりと言って、何やらぶつぶつつぶやきながら去っていったのは、少し気になったけど。
そして、その数時間後。
今日で『身柄預かり』の期限が終わったナナさんは、現所有者である奴隷商人が危惧していたようなこともなく、無事にきれいな体のまま、僕らの元を後にした。
去り際に、「私のこと、どうぞよろしくお願いしますね」と言い残して。
☆☆☆
その夜、無性に甘いものを食べたくなった僕は、露店を回っておいしそうなものを片っ端から買いあさった。エルクと一緒に。
特に前世で言う『大判焼き』に似た、フワフワ生地の中にクリームが入ってる焼き菓子がツボに入ったので、大量に買ってしまった。
銀貨一枚分も買って、エルクに呆れられたけど、こういうの一回やってみたかったんだ。
宿に戻ると、ちょうど仕事を終えたところらしい僕の兄……ダンテ兄さんとウィル兄さんがロビーでくつろいでいたので、エルクも入れて四人でプチ宴会を開くことに。
ちなみにアルバには、残り少ない魔力芋をちょっと加工して、お菓子風にしてあげた。
ダンテ兄さんがぽつりと一言。
「宴会、って割に酒はねーのな」
「うん。欲しけりゃ自分で用意してね、主催者の意向だから」
「いや、別にいいさ。俺もウィルも、どっちかってーと酒苦手だからな」
「ええ。職業柄、繊細な作業や分析も多く、気を使いますしね」
頷くウィル兄さん。相変わらず愉快な人達である。
最近知ったんだけども、この二人は酒や食べ物の好みが僕と似ていて、話も合う。なので、こうして一緒に食事とかしているとけっこう楽しいのだ。
他の兄弟と食事をする時も、三人一緒に座ることが多く、話をすればいろいろ面白い話も聞ける。
医者と生物学者、二人とも生命科学に造詣が深い職業だけあって、専門知識も多いんだこれが。
そして僕、前世の勉強の中では『生物』が美術と並んで一番好きだったので、学問色の強い話でも結構興味を持って聞くことができる。
「そういえば、気になっていたんだけどさ」
「ん? 何でしょう、ミナト?」
「ブルース兄さんに聞いたんだけど、ウィル兄さんって人間なんでしょ? 八十歳超えてるのに、なんでそんなに見た目も中身も若々しいの?」
「え、八十歳!?」
と、初めて聞いたエルクが驚く。無理もない。
「ああ、そういえば話していませんでしたね。実は私、『先祖がえり』なんですよ」
「『先祖がえり』……っていうと、アイリーンさんと同じ?」
「ええ。もっとも、私の場合はエルフではなく、ピクシーですが。まあ、姿かたちには全く表れてはいませんから、わからなくても当然ですがね」
ピクシー……えっと、聞いたことはあるんだけど。どんな種族だっけ?
だめだ、思い出せない。後でエルクに……。
(小人系の亜人よ。人間よりも長い寿命を持っていて、エルフほどじゃないけど魔法にも精通してるっていう話)
聞く前に教えてくれた。さすがエルク。必要な時に、必要なことをきっちり教えてくれる。
ここ最近は、僕の顔色を的確に読み取って対処してくれることも多いからすごい。もうなんか僕、エルク無しじゃダメになりそうなくらい。
……ってことをこないだ言ったら、殴られた。お約束。
ちなみにその時、ダンテ兄さんからは「もうお前ら、さっさとくっつけよ」と茶化されている。
その時、ふと僕の目が、ウィル兄さんが卓の横に置いた、分厚い専門書に引き寄せられた。
さっきまで読んでいて、開かれたままのそのページには、見覚えのある図形がいくつも載っている。
その視線に気がついたらしいウィル兄さんは、意外そうに尋ねた。
「おや? ミナトは生物学に興味があるのですか?」
「え? あ、いや、特にそういうわけじゃないけど……」
そんなやりとりをしていると、エルクも気がついたようだ。
「ん? ミナトそれ、教会の地下室で見た、壁画に描かれていた模様に似てない?」
「うん、似てるね。僕もそう思ったとこ」
そう、僕もまさにそう思っていた。
いくつもの小さな図形が描かれていて、それらは一つ一つ微妙に形が違う。
そして何より、そのうちのいくつかは、組み合わせて一つの図形にできそうな、凹凸の特徴が見て取れた。
「この図が……ですか? これは、十年以上前に発見された理論の説明図ですよ。まだ記憶に新しい。当時としては、かなり画期的な発見でした」
そう言って、ウィル兄さんに説明してもらっていた、その最中――。
(!!)
僕の頭の中で唐突に、今まで積み重ねられてきた疑問が氷解した。
まるで濃霧が突風で吹き飛ばされたかのように、脳内は澄み渡っている。
「――というわけで、これらは次に体が同じ……ミナト、どうかしましたか?」
「……」
なんとなく意識の端っこで、ウィル兄さんの声は聞こえていたが、すでに僕は思考の海に沈んでいた。
……奴隷の数の不一致、大量失踪。
ブラックマーケットが動いた様子のない現状から、何らかの形で奴隷は使い潰されたと考えるのが自然。しかし、そんな過酷な労働がこの村で行われている様子はない。
が、それ以前に、僕らには気にしなければならないことがあった。
仮にそんな、奴隷を一年に百人も使い潰すような労働があったとするなら、最重要なのは『何を』やっているのかではなく……『誰が』やっているのか、だ。
内容はわからないけれど、奴隷が何百人も命を落とす大掛かりな事業なのだから、個人や小規模の組織じゃない。資金も、相応に必要になるだろうし。
そんな巨大な資金力を持ってる存在なんて、そういない。
そして、トロンが発展した理由である薬草の有用な使い方の発見。その、加工方法の確立。
僕の予想通りなら、確かにその過程で奴隷が必要になる。この村の技術力を考えれば、『再利用』したとしても、かなり大量に。
さらに、前に見た壁画の図形。
初めて見た時からどこかで見覚えがあったけど、ようやく思い出した。
前に見たのは、ウォルカや、生まれ育った洋館でじゃない……前世だ。それも、中学校か高校生くらいの、保健体育の教科書だ。
『襲撃』に関する謎だけは解けていないけれど、代わりに、今まで疑問に思わなかったところから、その答えと思しき予想が浮かんできていた。
黒幕と思われる存在の目的。
教会のシスター、テレサさんが言ってたあの壁画の言い伝えの、真の意味。
そして、リュートが決意と共に語っていた言葉の裏に隠された、リュート本人すら気付いていないであろう、黒い思惑。
それらが示すことをつなぎ合わせると、導き出される答えは……。
十秒後。
「――今日かぁっ!?」
「!?」
びっくりさせたことを謝りつつ、ホントに非常にすっごくまずい状況が進行中である可能性が高いため、急いで説明した。
すでに夜。僕の推測が正しければ……まさにこれから、完ッ全に予想外だった大騒動が巻き起ころうとしている。
やばい。本当にやばい。スラムに住む人々がやばい。
今この村に来てる、奴隷商人の方々もやばい。奴隷もやばい。
別にどうでもいいけど、リュートもやばい。
そして何より……ナナさんがやばい!!
超早口で説明しつつ、僕は今から何をすべきか考えた。
まずは、スウラさんに連絡。ザリーにもだ。
情報の確認と……この事態をどうにかするには、彼らに別個で動いてもらう必要がある。
あと、できればノエル姉さん達にも声かけて……とにかく、どこで何が起こるかわからない以上、人手がいる。一人でも多く。
ダンテ兄さんとウィル兄さんに要点だけ説明を済ませ、僕とエルク、それにアルバは……今すぐ動く!!
全然知らない赤の他人なら、わざわざこんな夜遅くに動いて助けるほど、僕らは酔狂じゃない。
リュートも同様。あれがどうなろうが、知らん。
けど……ナナさんは、身内だ。
☆☆☆
同じ頃――。
ミナトの兄であるブルース一行が泊まっている宿にて、いつもの軽い感じとは違った雰囲気で、ブルースとミナトの姉、ノエルが言葉を交わしていた。
その内容は、弟の教育方針や、ビジネスの方針……ではない。
「……何やて? 『あの人』がこの村に!?」
「おー……偶然見つけたんだけどな? 俺もびっくりしたわ、遠目で見た時。しかも、何か知らんけどミナトと話してると来たもんだ」
「ど、どういうことやそれ? 何やってこんな辺境に!? あの人、今はもう荒事に関わらんと、一般人に混じって普通に暮らしとったんちゃうの!?」
「いやあ、単なる偶然じゃねーかな? 普通にしてても、立場や場合によっては、一応あちこち回るような職業だろ?」
「せやったら、何でミナトと話したり……オカンがあの人に何か話したんか?」
「お前も聞いてねーことを俺が知るか。狭い村だ、多分それも偶然だと……まあでも」
一拍置いて、ブルースは続ける。
「……ミナトがお袋の血を引いてる、ってことには、もしかしたら気付いたかもな」
いつものグータラな感じが見受けられない表情で、ブルースは目を細め、ぽつりとつぶやいた。
☆☆☆
そして、また別の場所。
具体的には、スラム街の入り口付近。外から来た商人が利用する、馬車の停留所がよく見えるところ。
三人の若い冒険者――ミナトが予想していたまさにその三人が、各々、何やら神妙な、決意に満ちた表情を胸に立っていた。
「いいかい二人とも、計画を確認するよ……モンド氏が言っていた奴隷商人は、事前に打ち合わせた通りの場所に、それぞれ現れる。まずはそこだ」
「そしてその後、スラムの入り口に拠点を置いている、スラムの人々を連れ去ろうとする奴隷商人を止めるのよね。まずは説得するけど、だめだったら……」
「ああ。力ずくだ。遠慮なんていらねえ……人の未来を奪おうとするような連中相手にはな」
「そうよね。それにきっと、解放された奴隷も感謝するし、後でみんな、リュートが正しいってわかってくれるわ。解放された人の笑顔を見れば、きっと」
「ああ、そう信じて頑張ろう……いくよ二人とも!」
直後、リュート達はムダに力強く地を蹴ると、それぞれの持ち場へ向けて走り出した。
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