魔拳のデイドリーマー

osho

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第22章 双黒の魔拳

第510話 やりすぎ安定の防衛戦線

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 突然だが、『パンジャンドラム』って知ってるだろうか。

 第二次世界大戦だかの時に、とある紳士の国で開発された……一応、兵器である。

 分類としては爆弾、ないし地雷なんだけど、これ自体が移動して敵に突っ込んでいく機能を持たされていたため、『自走地雷』という謎なカテゴリーに区分されている。

 『ボビン型』って言うらしいんだけど……爆弾である本体を、両側から車輪で挟んであり、ごろごろと転がるような形になっている。これにロケット噴射式の推進機を動力として積み込んであるため、その勢いで転がって標的に激突・爆発……という感じでの運用を見込まれていた。

 しかし、実際使おうとして見ると、ロケット噴射の強さや向きがバラバラで、どこにどう転がっていくかわからなかった。時には味方に向けて突っ込んでいくことすらあり、てんで狙ったところに転がって行かなかったそうだ。

 加えて、さっきも言ったようにこの兵器は『転がす』ことで動かすもの。
 ロケット噴射は、その転がるための勢いをつけるだけのものだった。それ自体の推進力で飛んでいくとかいうわけじゃない。

 そしてこの兵器、もともとは海岸付近での使用を見込まれてたものだったんだけど……車のタイヤとかもそうだけど、砂地とか雪道って、タイヤとか回転するもの、空回りするじゃん?
 この『パンジャンドラム』ももれなくそうなって、まともに運用できなかったんだよね。

 その他にも、バランスをとれずに結構な確率で横転してしまったり、推進機構のロケットが脱落してしまったり……色々問題がある、いや、問題しかない兵器だった。

 結局、正式採用されずにお蔵入りとなり、今では『パンジャンドラム』といえば、『残念な兵器』の代表格としてその名を語り継がれているわけだ。

 さて、長々と喋ってしまったけども……このたび僕は、その『パンジャンドラム』を、この異世界でマジックアイテム、ないしマジックウェポンとして作ってみました。

 理由? 特にない。なんとなくやりたかったからやった。

 で、今まさにそれが大活躍中である。

 ――ギャリリリリリィ!!
 (超高速で突っ走る)

 ――ドガガガガガ!!
 (敵兵を跳ねながら敵陣に突っ込む)

 ――ドゴォオオォン!!
 (爆発)

 ロケットエンジンの代わりに、風属性の魔力で暴風を起こし、それを纏わせることで高速回転させ、時速120km以上の速さで突っ込んでいく『自走地雷』。
 構造は簡素化してとにかく量産性を高くして、それを拠点の『ファクトリー』で生産。

 この『ローザンパーク防衛線』で文字通り投入してみたんだが……猛威を振るっております。

 起動すると同時に高速回転して、足場の悪さをものともせずに――暴風に加えて水流を纏わせることで、悪路走破性や空回りの問題も解決してある――標的目掛けて突っ込んでいく。

 しかも、激突してもすぐには爆発しない。ぶつかった敵を轢いて潰して跳ね飛ばして、そのままの勢いでちょっとだけ奥まで進み、全方向に敵がいるような状況になってから爆発する。

 そんな、自分で言うのもなんだけど、割と極悪な兵器が、割と弾幕な勢いで数十数百転がってくるもんだから、相手からしたらたまったもんじゃないだろう。

 たまにイレギュラーな跳ね方をして、空中高く飛び跳ねたかと思うと、敵陣の結構奥の方に突っ込んで爆発することもあるので、敵軍の皆さんはさぞかし油断できない、スリルたっぷりの時間を過ごしていることだろう。

「圧倒的じゃないか、わが軍は」

「いやいやいや、軍って。1人も兵士が出ていってない状態で敵軍が蹂躙されてますけどぉ」

 と、感心半分、呆れ半分、あとちょっとだけ敵への同情すら混じってそうな声で、ここ『ローザンパーク』の幹部である、ルフェニアさんが言う。

 上半身がおっとり系の美女で、下半身が大蛇になっている彼女は、亜人種族『ラミア』であり、イオ兄さんの側近として、ローザンパークの参謀役を務めている人だ。
 今回、イオ兄さんが留守にしている間の留守番のため、そして、来ることがわかっていたチラノース軍への対応の指揮官として、ここにいる。

 もうわかった人も多いと思うけど……今回、チラノース軍は、イオ兄さんやその他の幹部達数名がこの『ローザンパーク』を留守にしている隙を狙って、ここを攻め落とすべく軍を送ってきた。

 しかし、その情報自体が、言ってみればあいつらをおびき寄せるための罠だったのだ。
 こっちはこっちで、準備を万全にしてそれを待ち受けていた。

 イオ兄さんや幹部達がいないのは本当だけど、僕作成の愉快なマジックアイテムが地獄の布陣を組んで待ち構えているし、個々を守る精鋭たちを、指揮官であるルフェニアが指揮しての防御態勢も健在である。

 もっとも、そんなルフェニアさんに、今回指揮官としての出番があるかどうか、ちょっと心配な勢いでこっちが押し返してるけども。今。

「ええと、何でしたっけぇ、アレ……『パンジャンドラム』? いくつくらい用意してきたんですかぁ?」

「キリよく10000個ほど」

「敵兵が、見た感じおよそ15000から20000程度としてぇ……アレ1個の爆発で5人前後は仕留めてますからぁ……下手すると本当に出番ないですねえ……」

「まあでも。そこまで上手くはいかないでしょうね……ほら、だんだん応戦し始めましたし」

 見ると、後方から進み出て来た、魔法使いらしき連中が、次々にパンジャンドラムに向けて攻撃魔法を放っている。火炎弾や風の刃、電撃に岩石の砲弾など、いろんなものが殺到して、こっちに到着する前にパンジャンドラムを破壊して爆発させようと。

 ただ、機体を覆っている水と風、あれは実は同時に防御力を上げるのにも一役買っていて……生半可な攻撃なら、兵士同様弾き飛ばして、無視して突っ込んでいく。
 あー、迎撃のために前に出てきてた魔法使い、半分くらいイったな、今ので。

 残りの半分は、どうにか強力な……最低でも中級魔法数発くらいをぶつけることで、どうにかパンジャンドラムを破壊している。
 しかし、完全には防げずに、何個か転がってきて……それらは前線の兵士達が必死で止めている。

 必死でって言うか、文字通り死んで止めてるだけだな。最初と何ら変わってない。

 そんな状況をどうにか打開するためだろうか、チラノース軍が次の手に打って出た。

(……お、来たか、『龍騎士』)

 後方の本陣あたりから、調教された龍(召喚された『神域の龍』では、多分ない)に乗った、チラノース軍の虎の子である『龍騎士』が、えーと……1、2、3……20騎ほど飛び上がって、一斉にこちらに向かってきた。

 当然ながら、地上を転がるだけのパンジャンドラムでは、空を飛んでいる『龍騎士』は相手にできない。普通にスルーされていく。

 地上を転がる無数のパンジャンドラムを無視し、一直線に『ローザンパーク』の本陣を目指して飛ぶ『龍騎士』達は……その5秒後、

 飛行中、突如として発生した爆炎の本流に飲み込まれ、騎龍共々丸焦げになり、悲鳴を上げながら墜落していった。
 そしてそこに、新たに投入されたパンジャンドラムが直撃し、順次脱落していった。この世から。

「ええと……あれは?」

「対空火炎放射です。もっとも、ただ只の炎じゃなく、『陰陽術』を組み合わせた……言ってみれば『呪いの炎』になってるんで、ただ炎熱系の攻撃に耐性があるだけじゃ、空中で呪いに絡めとられて動けなくなって、どっちみち墜落するようになってます。あと、多少の耐性は貫通しますし」

 そんな話をしている間にも、パンジャンドラムの大行進で着々と敵は砕け散っていく。

 このまま何の成果もあげられないまま、兵士達だけが損耗していくのはまずいと思ったのか、チラノース軍は正真正銘の『秘密兵器』を繰り出してきた。

 そう……『神域の龍』である。

 さっきの龍騎士が乗っていた『亜龍』とは比べ物にならない迫力の龍達が現れ――見た目はそんなに、地上にいる龍と大きく違わないな。ワイバーン系もいればドラゴン系もいる――猛スピードでこっちに突撃してくる。

 さっき同様、パンジャンドラムはスルーされたのは当然として……途中に設置した対空火炎放射も突破された。
 個体によって、全然効いた様子がなかったり、墜落はしないまでも動きが悪くなったり、差があるみたいだ。けど……結果的には1匹も落とせはしなかった。

 その光景に、挫けかけていたチラノース軍の士気が回復していくのがわかった。雄叫びとか上がってるし……『やはり『龍』さえいれば勝てる!』とか思ってるんだろうか。思ってるんだろうな。

 よかろう、その自信……へし折ってやる。

 僕は、収納空間から、『CPUM』が格納された、缶ジュースの缶くらいの大きさの円筒2つを取り出し、両手に1つずつ持つ。それら両方のスイッチを押して、上に放り投げた。
 すると、缶は解けるように消えて、その場に魔法陣が現れ……

「? ミナトさん、何ですかぁ、あの龍……龍?」

 ルフェニアさんのいうとおり、現れた次なる人工モンスターは……『龍?』というような見た目をしていた。

 形は、確かに龍だ。西洋のドラゴンっぽい見た目をしている。

 しかし、それ以外の外観は……まあ、異様という他ない。

 一言で言うと、それは『機械の龍』だ。

 全身を覆う装甲は、光沢のある黒の輝きを放っているが、金属なのかと言われると、微妙にそうでもない。どちらかと言えば、磨かれた黒曜石か何かに近い。
 そんな謎の物質で全身のパーツが作られており……その体の各所には、怪しい光を放つ紫色のラインが、まるで血管のように走っている。

 全体としてはかなり細身で、ひきしまった肉体っぽくは見えるが、体の大きさから考えると、痩せているようにも見えなくもない、かも。流線型のようになっているパーツが多いので、スピードは出そうではあるかな。

 さっき『機械の龍』とは言ったものの、明らかに人工物であることはわかるけど、一方でそこまでメカメカしい部分はそんなにない。デザインだけを見れば、自然界の生き物から逸脱してはいるものの……この異世界にならいてもおかしくはない感じにはなってる。
 ただ、翼だけは、飛ぶのに必須の翼膜がない上に、思いっきりスラスター……噴射口がついてるので、ガッツリ『メカだ』ってわかるけどね。

 飛んでくる『龍』達はというと、そんなわけのわからない見た目をした『龍?』達を見て、弱そうだとでも思ったのか、全く躊躇せずに突っ込んでくる。

 このまま体当たりして粉々にするのか、それとも食らいついて噛み砕くつもりか。
 どういうつもりだったのかは……永遠にわからなくなった。

 なぜなら、激突するより前に、謎ドラゴン達が放った、拡散レーザーみたいなブレスが、薙ぎ払うように『神域の龍』を襲ったからだ。

 今の一撃で、『龍』の中でも弱い個体と思われる奴ら……さっきの『対空火炎放射』でダメージを受けてよろけていた何匹かが、一撃で撃墜され、地上に落ちて行った。
 そして、さっきの『龍騎士』同様、パンジャンドラムの餌食になっていく。

 どうにか持ちこたえた龍も、さっきまでとは違い、警戒心をあらわにした目で、僕が出した謎ドラゴン……もとい、『デストロイヤー・ドラゴン』を睨みつけている。

「……ミナトさん、あれは?」

「『デストロイヤー』って知ってます? 古代遺跡なんかにたまに現れる、AAAランクの魔物なんですけどね……あれを参考にして作った、いわば、ドラゴン型の『デストロイヤー』ですね。本家の『デストロイヤー』より強いですよ?」

 細身に見える体躯は、全て特殊合金の上、1つ1つに『陰陽術』によるブーストと、パーツそのものを『式神化』することにより強化を施しているので、あの見た目でもパワーもスピードも一級品だ。むしろ無駄な肉や装甲がない分、高速・軽快に動いて飛べる。

 加えて、体中に非実体ミサイルやレーザー発射装置など、様々な兵器が内蔵されている。
 爪や牙は振動破砕ブレードだし、装甲は多層構造で衝撃吸収機能がついている上、破損しても自己再生する。また、翼だけでなく実は手足など複数個所に可動性スラスターが組み込まれているので、前後左右上下に高速かつ三次元的な動きができるようになっている。

 総合的には今言った通り、戦闘能力は本家の『デストロイヤー』を大きくしのぐ。Sランク相当は確実にあるだろうな。

 欠点があるとすれば、高火力・高機動すぎて、閉所では性能を生かしきれないことかな。

 そして、数ある武器の中で、最もというか、個人的にこだわって作った武装が……コレだ。

 今、僕らの目の前で、数匹の『神域の龍』と、2体の『デストロイヤー・ドラゴン』が、壮絶な戦いを繰り広げている。

 2体は龍達の攻撃をものともせずに突っ込んで、爪で引き裂き、尻尾で薙ぎ払う。レーザーブレスは、龍の分厚い甲殻や鱗をものともせずに貫通して風穴を開けた。

 そんな2体の一瞬のスキを突く形で、背後から襲い掛かった龍が、2体のうちの1体の首元に背後から食らいつく。
 動きを封じたところに、別なもう1匹の龍が突っ込んでいって……鋭く太い角の生えた頭から激突。その衝撃で、『デストロイヤー・ドラゴン』の体をバラバラにした。

 猛威を振るっていた『龍?』が討伐された瞬間を見て、チラノース軍は沸き立ち、ローザンパークの軍(1人も出撃せず、城壁の中で見てる。現状出番ないから)は動揺している。

 そんな彼ら、彼女らの見守る前で……『デストロイヤー・ドラゴン』を背後から抑えていた龍は、自分が食らいついていたパーツ……首から上の部分を放り捨て、勝鬨を上げるように、空に向かって大きく吼えて……



 たった今投げ捨てた首が放ったレーザーブレスに貫かれて、翼に大穴が空いた。



「…………え?」

 誰かが、呆けたような声で言ったのが聞こえた。
 さて、チラノース軍が言ったのか、ローザンパークの兵が言ったのか……はたまた、隣にいるルフェニアさんが言ったのか……まあ、誰でもいいか。

 さっきまでと違い、向けられる視線のほぼ全てが『困惑』に染まっている状況で……たった今ブレスを吐き出した『首から上』は、そのまま空中に浮かび続けている。
 そこに、集合の号令でもかかったかのように……今しがたバラバラに破壊されたはずのパーツ達が集結してきて、自動的に組み上がり……元の『デストロイヤー・ドラゴン』になった。

 もう、お分かりだろうと思うが、さっきの激突の際、『デストロイヤー・ドラゴン』は、バラバラに壊されたわけじゃない。
 自分から体中のパーツをバラバラに分離して衝撃を受け流し、元に戻ったのだ。そういう能力を、最初から持たせてあった。

 復活したその直後、翼に大穴が空いて飛ぶことすらできなくなっている『龍』を睨みつけ、即座にもう1発ブレス(しかも拡散タイプ)を吐いて、もう片方の翼も穴だらけにした。

 墜落していく『龍』。しかし、『デストロイヤー・ドラゴン』はそれすら許さなかった。

 地面に激突するより前に、今度は拡散させずに収束させて放ったレーザーブレスが、その頭部に直撃し、貫通。空中にいる間に完全に絶命させた。

 そんなことをしている間に、もう1体の方も暴れ続けていたわけで。
 気が付けば、『神域の龍』も、さっき突っ込んだ角の1匹を除いて全滅していた。

 全て墜落。そのままパンジャンドラム大行進の餌食になるところを……僕がその前に放っていた、回収用の『CPUM』によって死体を回収されている。

 『神域の龍』を調べるための貴重なサンプルだからね。そりゃ回収しますとも。1匹残らず。

 そして最後の1匹は、最早勝ち目はないと悟ったのか、逃げ出そうとする素振りを見せて……しかしその瞬間、2体の『デストロイヤー・ドラゴン』は、これまでにない挙動を見せた。

 攻撃も受けていないのに、自ら2体ともバラバラになり……再度組み上がっていく。
 しかし、明らかに元の形にじゃあない。
 というか、2体分のパーツが1体に集まって構築されていく。

 ええ、その通り。合体ですよ。
 2体分のパーツが上手いこと組み合わさって、より強くなるようになってるんですよ。

 出来上がったドラゴンは、より強く、より禍々しくその姿を変えていた。

 翼は、2体分の翼が組み合わさって巨大になり、さらに1体の腕を組み込んだことで、ワイバーン系の魔物のそれのような、翼の途中に腕がついている『翼腕』になっている。

 腕は、足のパーツが1体分プラスして組み込まれ、重厚な籠手でも装着したかのように、長く太い、力強い腕になっている。指や爪部分は足のそれなので、見た目的にもかなり凶悪。

 足は、2体の体のあちこちについていたスラスターの一部が組み込まれているので、ロケットブースターみたいな見た目になっている。足として使うのは難しくなったかもしれないけど、機動力は今までの比較じゃないレベルのそれを発揮できるだろう。

 尻尾は、単純に2体分の尻尾が合体しているため、長く太くなっている程度の違いかな。……馬力の上昇幅は2倍どころじゃないけど。

 そして頭は、色々なパーツが組み合わさって、より力強く、よりカッコよく組み上がっている、とだけ。

 余計に勝ち目がないことを悟って逃走を始めた『神域の龍』だが……『デストロイヤー・ドラゴン2』の脚部のスラスターが火を噴いた瞬間、猛スピードで飛翔。
 秒で『龍』に追いつき、爪のブレードを一閃させて……空中で八つ裂きにした。



 その後のことは、まあ……わざわざ語るまでもないとは思うが、一応簡単に。

 『龍騎士』も『神域の龍』も失ったチラノース軍は、あっという間に総崩れに。

 少しの間は、毎度おなじみ『督戦隊』が『逃げるな、戦え』と元気に味方を撃っていたものの、すぐにそんな場合じゃなくなったので、全軍で退却を開始した。
 殿軍を置いて粛々と退却、って感じではない。もう何か、とにかく皆で逃げろって感じに、バラバラに逃げ出した。統率もへったくれもない感じで、前線の兵士達とか普通に置き去りにして。

 そしてそんな総崩れの敗走軍達の横っ腹に襲い掛かる、あらかじめ設定しておいた伏兵パンジャンドラム軍団。もちろん、こっち側に用意していた10000個とはまた別に用意していたもの。

 さらに、船で逃げる者達には、直径が船体の全高と同じかそれ以上ある超巨大パンジャンドラムが襲い掛かった。しかも複数。
 まるで、遊園地の観覧車がそのまま転がって襲い掛かってきたかのような迫力である。

 結果的に、10隻あった軍艦は、8隻が大破して轟沈、2隻が中破しながらもそのまま逃走。
 それを追う形で、おいて行かれた兵士達が徒歩で退却していくという悲惨な絵面で、チラノース軍は逃げ帰って行った。

 なお、途中にあるエリアも当然のごとく危険区域なわけだが……はたしてあの船の状態で、そして兵士の皆さんも心身ともに疲労困憊で、どれだけが故郷に帰りつけるだろうね?

「いやー、いいデータが取れました。それじゃ、ルフェニアさん、お疲れ様でした。僕帰りますね」

「は、はい、お疲れ様ですぅ、ミナトさん……えっと、あの……なんか今回、前より遠慮も容赦もない感じでした……ね?」

 と、恐る恐る、といった感じで、ルフェニアが言ってきた。
 以前、ローザンパークで僕も協力してチラノース軍を追い返した時と比べての感想みたいだ。

 まあ、確かにそうかもね……だって今、僕……

「はい、まあ……今僕、意図して自重をやめてるというか、思いっきりやりたいことやるような感じでやってますんで、万事」

「そ、そうなんですか……」

 そうなんですよ。

 先日、スウラさんが……僕が仲間ないし友人判定している人が被害にあったので、本格的にあの国ぶっ潰す方針で動いてるから、僕。
 ただし今、他の国も色々絡んでるのに加えて、あの悪の秘密結社とかも出張ってきてるから……以前の『リアロストピア』の時みたいに、直接乗り込んで一方的に蹂躙、とは違うやり方になるかもとは思ってる。色々考えて動く必要はあるかな、と。

 それと……こないだ、ふと思いついたもんでね。
 きっと僕の場合、そうすることが……やりすぎるつもりで思いっきりやりたい放題やることが、今よりもっと強くなることに、先に行くことに繋がるって。

 ちょうど、今から2週間くらい前かな……僕が母さんに呼び出されて、エレノアさんちにお邪魔したあの時に……我が嫁の言葉で、そこに思い至ったんだ。



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