辺境勤務の魔法少女 ~怪物すぎる新人と、おいしく食べられそうになる先輩~

いかぽん

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第九話

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 見張りのゴブリンを倒した二人は、ゴブリンの巣窟と思しき洞窟の中へと踏み入っていく。

 洞窟内は狭く、二人が横に並んで歩くのは厳しいぐらい。

 先輩のユニスが前に立ち、イルマがその後ろにつく形で、トンネル状になった洞窟を進んでいく。

 するとその途中、イルマがくんくんと洞窟の匂いを嗅ぎはじめた。

「ねぇ、ユニス先輩」

「どうした、ゴブリンの匂いが気になるのか? 確かに連中、小便は垂れ流すは水浴びはしないわで悪臭の塊みたいなもんだが、こればっかりは慣れるしか──」

「いえ、そうじゃなくて。……なんか、魔力の残り香がしません?」

「……んん?」

 後輩に言われてユニスも匂いを嗅いでみるが、ゴブリンの悪臭にやられてうぇっとえずいただけだった。

「おえぇっ……お前さぁ……。ていうか、魔力に匂いなんてあるのか?」

「はい。かすかにですけど、感じる気がします」

「相変わらずお前、非常識だよな。……奥に古代の魔法遺跡でもあんのかね?」

「そこまでは分からないですけど……」

「ま、だとしても、そんなの気にしてもしょうがないだろ。あとで報告書を作るときに気になった点として書いておくぐらいか」

「…………」

 このときイルマはいつになく真剣な顔つきだったのだが、前を歩くユニスがそれに気付くことはなかった。


 ***


 一方その頃。

 洞窟の奥の、そのまた奥の小部屋では、一人の少女が薄暗いランプの灯りひとつを頼りに、机の前で書き物をしていた。

 少女が紙にペンを走らせるかたわらでは、淡い輝きを放つ水晶球が、洞窟内を歩く二人の魔法少女の姿を映し出している。

 少女は一度手を止め、水晶球が映す絵へと視線を向ける。

 そして彼女は恍惚とした表情を浮かべると、その麗しい唇を開く。

「ふふふっ……さあいらっしゃい、辺境勤務の子猫ちゃんたち。たぁっぷりと可愛がってあげるわ」

 少女は立ち上がると、その小部屋を出ていく。

 小部屋の扉を開けた先にはまっすぐな廊下があり、廊下の左右には鉄格子の嵌まった小さな牢がいくつも並んでいた。

 それぞれの牢には、きぃきぃと鳴く小柄な人型の生き物がいて、暗闇の中で目を光らせている。

 少女は懐から鍵束を取り出すと、牢の鉄格子をひとつひとつ開けていく。

「さあ出番よ、私の可愛い子供たち。あなたたちの力を、辺境の子猫ちゃんたちに見せてあげるのよ」

 少女は闇の中で、愉しそうにくすくすと笑っていた。
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