辺境勤務の魔法少女 ~怪物すぎる新人と、おいしく食べられそうになる先輩~

いかぽん

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第八話

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 村に現れたゴブリンたちは、どうやら巣穴へと逃げ帰ったらしい。

 そう聞いたユニスとイルマは、村人から教わったゴブリンの巣穴と思しき洞窟へと向かっていた。

 木々が鬱蒼と茂る森。
 ところどころ木漏れ日の落ちる中、獣道を二人の魔法少女が歩いていく。

 そんな中、前を歩くユニスが、後ろをついてくるイルマにいつもの課外授業だ。

「イルマ、お前の魔法少女としての有能さは、これまでのことでよーく分かった。だが先輩魔法少女として、これだけは言っておく」

「はい、ユニス先輩」

「たとえゴブリン相手でも、油断はするな。オレたち魔法少女の力をもってすれば、仮に十体や二十体のゴブリンを同時に相手にしたってどうにかなる。しかしそれでも、全国の魔法少女支部で、ゴブリン退治に向かった魔法少女が帰らなかったって事例がゼロじゃない」

「……ごくり」

「ま、そのほとんどが、本来ツーマンセル──二人一組で動くはずの魔法少女が、何らかの理由で一人で出動せざるをえなかったときなんだけどな。いずれにせよ、自分の能力を過信はするなよ」

「わかりました! 私、ゴブリン相手でも油断しません!」

「……こういうところだけ見てると、普通にいい後輩なんだけどなぁ」

「え、私って、ユニス先輩にとって悪い後輩ですか?」

「…………」

 ユニスはその言葉に立ち止まり、後ろのイルマへとジト目を投げかける。

「まともないい後輩は、先輩を抱きしめたいとか言わないと思うぞ」

「それは先輩が可愛すぎるのがいけないんですよぉ」

「……そういうとこだ」

 ユニスは頬を染めて、話は終わりだとばかりに再び前を歩き始める。
 イルマはそれを見て、嬉しそうにあとをついていった。

 やがて二人は、ゴブリンの巣穴であると教えられた洞窟の近くまでやってきた。

 洞窟の入り口から距離はまだだいぶ離れているが、木々の陰から覗くと、入り口前の見張りのゴブリンの姿が確認できるという位置だ。

 ゴブリンというモンスターは、小柄で醜い人型の怪物である。

 人間の子供のような体型で、緑色の肌、尖った鼻や耳、裂けた口、ぎょろっとした目玉などを持ち、体にはボロボロの腰布を身につけ、手には粗末な武器を携えている。

 見張りのゴブリンの数は一体。
 ユニス達の存在には気付いていない様子だ。

 その姿を確認したユニスが、再び木の陰に隠れるとイルマに小声で伝える。

「……と、ああいう風に、ゴブリンどもは巣穴の前に見張りを立てていることが多い。──さてイルマ、ああいった見張りを相手にする際の、注意点は分かるか?」

「えっと……仲間に敵襲を伝えられると面倒なことになるから、騒がれたりしないようにこっそり忍び寄ってサクッとぶっ殺す、ですか?」

「……ま、まあ、表現が不穏当だが、だいたいそんなところだ」

「だってゴブリンは女の敵、魔法少女の敵です。圧倒的ギルティです。慈悲は必要ないですよ?」

「お、おう、そうだな」

 学園で何を教わったのだろう。

 現場でモンスターを殺したくないとか言われても困るのだが、ここまで筋がいいのも逆に怖いと思うユニスだった。

「よし、じゃあやってみるか? 本来ならオレがまず手本を見せるところだけど、イルマ、お前ならぶっつけ本番でもやれるだろ」

「はい! 全力でこっそりぶっ殺してきます!」

「……うん、その『ぶっ殺す』って言葉、あんまり使わないほうがいいと思う。せっかくの美人が台無しっつーか、お前が言うと普通に怖いから」

「大丈夫ですよぉ。ユニス先輩のことは、食べちゃいたいだけですから」

「怖えぇよぉ……」

 そんなやり取りをしつつ、見張り攻略に入る二人。

 イルマはその場でトントンと跳び、体の調子を確認する。

「ん、いい感じです。それじゃ、行ってきていいですか?」

「おう。さっきも言ったが、くれぐれも油断はするなよ」

「分かってます。では──」

 ──ひゅんっ!

 ユニスの目の前から、後輩魔法少女の姿が消えた。

「へっ……?」

 ユニスが、目をぱちくりとしばたかせる。

「ど、どこ行ったあいつ。……あっ」

 ユニスが見張りゴブリンのほうへ視線を向けると、そのゴブリンの首がすぽーんと飛んだ。

 一瞬のちに、胴体、首ともにパッと輝いて消え去り、そこに宝石が一つ落っこちる。
 モンスターを倒すと落とす、魔石と呼ばれる宝石だ。

 そしてゴブリンがいた場所の背後には、いつの間にか赤髪ポニーテイルの魔法少女が立っていた。

 彼女は手刀をピッと振り払ってから、ユニスに向かっていつものユルい笑顔を投げかけてくる。

「怖えぇよぉ……うちの後輩、怖えぇよぉ……」

 ユニスは木の陰から後輩の姿を見ながら、ガタガタと震えていた。
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