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春
ウンディーネ寮4
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これも何かの縁だ。もし、メル君が道を踏み外すようなことになったら僕が引き留めよう。せっかくの友達、だもんね。
そうこうしているうちに、ロビーにはほとんどの寮生が集まっていた。新入生は目を輝かせてたり、肩で息をしていたりさまざまだ。「みんな揃っているね」とお兄様が言えば、ざわついていたロビーはしんと静まり返る。
「改めて、新入生君たち、ウンディーネ寮へようこそ。私たちは君たちを歓迎するよ。男子代表は私で、」
「女子の代表はあたしだ。ロベルティナ・ジェーペス。挨拶ができない子は嫌いよ」
あれっ? ジェーペス先輩いつの間にお兄様の隣に……? 向かいに座っていたはずの先輩はちょっと離れたお兄様の隣にいる。ミコガミ先輩はふわふわ笑ってた。
メル君も驚いたみたいでジェーペス先輩と先輩がいた場所を交互に見て目をぱちぱちさせている。黙ってればお人形さんみたいに可愛いのに、勿体ないよなぁ。
「規則的にはきっとうちの寮が一番厳しいだろうね。帰寮時間は二十時。消灯時間は二十三時だよ。帰寮、消灯時間を過ぎてからの寮外への出歩きは罰則対象になるから気を付けるように」
罰則かぁ。掃除当番とか、そういうのしか浮かばないんだけどきっと違うんだろうな。それとなく、小声でミコガミ先輩に聞いたら白い顔をサッと青くして「時間には気を付けるんだよ」とお言葉をもらってしまった。この様子だとミコガミ先輩は罰則経験アリだな。
そっとメル君を見れば神妙な顔付きで頷かれた。ごめんね、視線一つで会話できるほどコミュニティ築けてないから僕たち。
「それじゃ、二年から上の学年は解散。新入生は部屋に案内をするよ。女の子はそっち、男の子はこっちに集まってね」と、解散を言い渡された先輩たちはおのおの行動し始める。ロビーから出て言ったり、階下へと階段を下りて行ったり。ミコガミ先輩も用事があるとかで行ってしまった。
さて、と遅れないように集合しようと立ち上がる。ちょん、とローブが何かに引っかかった。
「……メル君?」
ちょこんと抓んで、なんて可愛らしいものじゃなく、ぎゅっとシワになってしまいそうなくらいローブを握りしめてるメル君。口をへの字にして、形のいい眉が寄っている。
「僕は、クリスちゃんと同じ部屋がいい」
「……」
目を丸くした。え、なに、それでヘソ曲げてるの? 中身男の子なんだよね? 不良男子高校生だったんだよね? 部屋が一緒じゃないから不機嫌になるってなにそれ! 可愛すぎかよ!
僕としても一緒の部屋が嬉しいんだけど、間違いが起こらないにしても男女一緒の部屋ってのは外聞が悪いよねぇ。今の時代、どこに人の目があるかわからないし、十四歳ってなれば思春期もそうでしょ。好きな人ができただの、あの人が気になるだの。
「あの、ね、本音を言えば僕もメル君と一緒の部屋がいい。だけど、ここは学校なんだからここの規則に従わないと。それに自分のコミュニティを築かないとハブられるとか当たり前でしょ。部屋は仕方ないと思って、ほかの時間一緒にいればいいでしょ」
「だけど」
「だけどじゃないの。ほら、みんな集まってるから行くよ」
ぐい、とローブを握っていた手を掴んで引っ張っていく。集合してないのはあと僕たちだけで、申し訳ない。いつもお兄様がしてくれるみたいに、頭をぽんぽんってしてから女の子のほうにメル君を送り出した。確かに、中身男の子のメル君からしたら女の子だらけってのは居心地が悪いんだろうね。僕だって、男の子に囲まれた生活とかすごく怖い。せめて、お風呂は個室でありますように。大浴場とかだったら死ぬ。確実に死ぬ。中身は乙女ですからね。
「じゃ、みんな集まったね」
ほんと、遅れて申し訳ないですお兄様。
「男子寮は左側の階段だよ。右側は女子寮だから、間違っても入っていかないように。女の子たちに何をされても文句は言えないんだ。そこらへんは自己責任だよ」
何って、何されるんですか……。めちゃくちゃ怖いんですけど。
「遅れないように着いておいでね」と、ローブを翻したお兄様美しい。隣に行きたいけど、最後に集合したせいで僕は一番後ろだ。
足音がやけに響くのは階段も同じらしい。螺旋状になった階段を下りて行く。真っ白で、傷とか汚れが目立ちそうな内装だ。高い天井には蒼いシャンデリアが光を降らせている。
一階分下りたところで小さな談話室に出た。数人の先輩方が寛いでいた。確か、地下二階は四年、五年、寮長ってことは六年生の部屋って言ってたっけ。じゃあ、お兄様の部屋もどこかにあるんだ。そう考えると高まってくるね。端の方に置かれたひとり掛けのソファに座って本を読んでいる先輩が目についた。どこかで、見たことある気がするんだけど……どこだったっけ。
ふと沈みかけた思考を浮かばせて、進み始めていた列を追いかける。どこで、見たんだっけかなぁ。あとでメル君にも聞いてみよう。ゲームに出てたらわかるだろうし。
三階、四階、と下りていってようやく地下五階。階段からの灯りだけで薄暗い室内は、窓から差し込んでくる蒼い光も相まってどことなく不気味な雰囲気だ。「灯りよ」とお兄様が指を振った。壁に設置されてるランプが、入り口に近いところから光を灯していき、小さな談話室が姿を現す。
「ここが一年生の談話室だ。ほかの階の談話室を使っちゃいけないなんて規則はないから、交流も兼ねて他の階の談話室にも足を運んでみてほしいな。アル、ノーム寮寮長みたいにサプライズとかはないけれど、個性的な先輩たちだからね。勉強で分からないこととかあれば聞いてみればいいよ。喜んで教えてくれるだろうからね」
さて、とお兄様が手を打った。
「部屋組みを決めようね」
コミュ障には辛いイベントですね、わかります。
そうこうしているうちに、ロビーにはほとんどの寮生が集まっていた。新入生は目を輝かせてたり、肩で息をしていたりさまざまだ。「みんな揃っているね」とお兄様が言えば、ざわついていたロビーはしんと静まり返る。
「改めて、新入生君たち、ウンディーネ寮へようこそ。私たちは君たちを歓迎するよ。男子代表は私で、」
「女子の代表はあたしだ。ロベルティナ・ジェーペス。挨拶ができない子は嫌いよ」
あれっ? ジェーペス先輩いつの間にお兄様の隣に……? 向かいに座っていたはずの先輩はちょっと離れたお兄様の隣にいる。ミコガミ先輩はふわふわ笑ってた。
メル君も驚いたみたいでジェーペス先輩と先輩がいた場所を交互に見て目をぱちぱちさせている。黙ってればお人形さんみたいに可愛いのに、勿体ないよなぁ。
「規則的にはきっとうちの寮が一番厳しいだろうね。帰寮時間は二十時。消灯時間は二十三時だよ。帰寮、消灯時間を過ぎてからの寮外への出歩きは罰則対象になるから気を付けるように」
罰則かぁ。掃除当番とか、そういうのしか浮かばないんだけどきっと違うんだろうな。それとなく、小声でミコガミ先輩に聞いたら白い顔をサッと青くして「時間には気を付けるんだよ」とお言葉をもらってしまった。この様子だとミコガミ先輩は罰則経験アリだな。
そっとメル君を見れば神妙な顔付きで頷かれた。ごめんね、視線一つで会話できるほどコミュニティ築けてないから僕たち。
「それじゃ、二年から上の学年は解散。新入生は部屋に案内をするよ。女の子はそっち、男の子はこっちに集まってね」と、解散を言い渡された先輩たちはおのおの行動し始める。ロビーから出て言ったり、階下へと階段を下りて行ったり。ミコガミ先輩も用事があるとかで行ってしまった。
さて、と遅れないように集合しようと立ち上がる。ちょん、とローブが何かに引っかかった。
「……メル君?」
ちょこんと抓んで、なんて可愛らしいものじゃなく、ぎゅっとシワになってしまいそうなくらいローブを握りしめてるメル君。口をへの字にして、形のいい眉が寄っている。
「僕は、クリスちゃんと同じ部屋がいい」
「……」
目を丸くした。え、なに、それでヘソ曲げてるの? 中身男の子なんだよね? 不良男子高校生だったんだよね? 部屋が一緒じゃないから不機嫌になるってなにそれ! 可愛すぎかよ!
僕としても一緒の部屋が嬉しいんだけど、間違いが起こらないにしても男女一緒の部屋ってのは外聞が悪いよねぇ。今の時代、どこに人の目があるかわからないし、十四歳ってなれば思春期もそうでしょ。好きな人ができただの、あの人が気になるだの。
「あの、ね、本音を言えば僕もメル君と一緒の部屋がいい。だけど、ここは学校なんだからここの規則に従わないと。それに自分のコミュニティを築かないとハブられるとか当たり前でしょ。部屋は仕方ないと思って、ほかの時間一緒にいればいいでしょ」
「だけど」
「だけどじゃないの。ほら、みんな集まってるから行くよ」
ぐい、とローブを握っていた手を掴んで引っ張っていく。集合してないのはあと僕たちだけで、申し訳ない。いつもお兄様がしてくれるみたいに、頭をぽんぽんってしてから女の子のほうにメル君を送り出した。確かに、中身男の子のメル君からしたら女の子だらけってのは居心地が悪いんだろうね。僕だって、男の子に囲まれた生活とかすごく怖い。せめて、お風呂は個室でありますように。大浴場とかだったら死ぬ。確実に死ぬ。中身は乙女ですからね。
「じゃ、みんな集まったね」
ほんと、遅れて申し訳ないですお兄様。
「男子寮は左側の階段だよ。右側は女子寮だから、間違っても入っていかないように。女の子たちに何をされても文句は言えないんだ。そこらへんは自己責任だよ」
何って、何されるんですか……。めちゃくちゃ怖いんですけど。
「遅れないように着いておいでね」と、ローブを翻したお兄様美しい。隣に行きたいけど、最後に集合したせいで僕は一番後ろだ。
足音がやけに響くのは階段も同じらしい。螺旋状になった階段を下りて行く。真っ白で、傷とか汚れが目立ちそうな内装だ。高い天井には蒼いシャンデリアが光を降らせている。
一階分下りたところで小さな談話室に出た。数人の先輩方が寛いでいた。確か、地下二階は四年、五年、寮長ってことは六年生の部屋って言ってたっけ。じゃあ、お兄様の部屋もどこかにあるんだ。そう考えると高まってくるね。端の方に置かれたひとり掛けのソファに座って本を読んでいる先輩が目についた。どこかで、見たことある気がするんだけど……どこだったっけ。
ふと沈みかけた思考を浮かばせて、進み始めていた列を追いかける。どこで、見たんだっけかなぁ。あとでメル君にも聞いてみよう。ゲームに出てたらわかるだろうし。
三階、四階、と下りていってようやく地下五階。階段からの灯りだけで薄暗い室内は、窓から差し込んでくる蒼い光も相まってどことなく不気味な雰囲気だ。「灯りよ」とお兄様が指を振った。壁に設置されてるランプが、入り口に近いところから光を灯していき、小さな談話室が姿を現す。
「ここが一年生の談話室だ。ほかの階の談話室を使っちゃいけないなんて規則はないから、交流も兼ねて他の階の談話室にも足を運んでみてほしいな。アル、ノーム寮寮長みたいにサプライズとかはないけれど、個性的な先輩たちだからね。勉強で分からないこととかあれば聞いてみればいいよ。喜んで教えてくれるだろうからね」
さて、とお兄様が手を打った。
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