悪役令嬢は傍観に徹したい!

白霧雪。

文字の大きさ
18 / 46
編入生なんてシナリオイベントなかったわ。

05

しおりを挟む
 
使い魔パートナーがいなくなったなんて大変だ! 優しいヴィオレティーナはもちろん探してあげるんだろう?」

 ――という、スヴェンの余計な一言のせいで使い魔探しをすることになってしまった。

 ニコニコ笑うスヴェンに、喉奥まででかかった抗議の言葉は飲み込んでしまう。きっと、私が断ってもスヴェンは探すのを手伝ってあげるんだろう。
 目の届かないところで妹と関わってしまうのなら、目の届くところで関わらせればいい。
 深く溜め息を吐いたヴィオラをスヴェンは目を細めて眺める。

「一週間前から姿が見えない、ねぇ」

 羊皮紙にまとめられた情報は以下の通りだ。

 カトレアの使い魔は一尾の狐で、名前をフォーリアと言う。
 非常に賢く、人間の言葉を理解していたらしい。
 いなくなったのはちょうど一週間前の夜から、次の日の朝にかけて。その日は朝からそわそわして、落ち着かない様子だった。
 朝、いくら呼びかけても出てこず、今日まで時間があれば探して回っていたが、影も形も見当たらず、途方に暮れていた。

「なにか事件に巻き込まれたとか!」
「もし、事件ならもっと多くの使い魔が犠牲になっていてもおかしくないわ」
「じゃあ、家出とか!」
「彼の使い魔……フォーリアの思念は寮内で途切れてた。それも、忽然と」

 太陽の寮の監督教師に許可を得て、カトレアの寮部屋を覗かせてもらったのだ。綺麗に整頓された部屋に、確かにフォーリアの残り香があった。
 細く、今にも消えてしまいそうな残りがは、寮内を漂い、ぷつりと途切れていた。

「……そういえば、スヴェン、貴方が編入してきたのも一週間前だったわね」
「それがどうかした?」

 にっこりと、笑うスヴェンに首を振った。
 偶然だろう。なんでもない、と告げ、はたと首を傾げる。

「スヴェン、貴方の使い魔は?」
「散歩だってさ。きっと森の方を探検しているんじゃないかな」

 思い浮かべたのは細長いシルエットの使い魔。真っ白くつるりとした胴体に、理知深い青の瞳。しゅるしゅると舌をチロチロ出しながらスヴェンの体に巻き付く使い魔の蛇。
 とても大人しく、イブと名付けられた美しい使い魔だ。

「イブが、彼の使い魔を食べたとかないわよね?」
「まさか! まず、食べたとしたらお腹が大きくなっていてすぐにわかるだろ。それに、僕の使い魔を疑うよりなら、もっと疑う使い魔がいるはずだよ。狼とか、ね?」

 きらりと、瞳が怪しげに色光らせる。
 狼と言われて思い浮かんだのは、友人の使い魔。そういえば、彼の使い魔もイヴという名前だった。
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...