バニラ風味のトランキライザー

夜現 黎

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6話

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 恵秀さんは本格的に体調を崩してしまったのかもしれない。詳しいことは教えてもらっていないから、憶測でしかないけれど。
 それまでと変わらず、俺に時間がある日は、前日なり当日なり恵秀さんに連絡を入れている。恵秀さんの都合が良ければ、じゃあこの時間に会いましょう、となるけれど、向こうの都合が悪ければ日を改めて、となる。ただ、ここのところ全部後者だ。
 はじめの一週間は、体調不良に無理はさせられないから、と具合が良くなるまで止めときましょう、と俺から言った。恵秀さんもそれに了承して、一週間くらいは予定を送るのを止めていた。落ち着いたら恵秀さんから言ってくるかな、と思っていたけれど、それはなかった。もしかして長引いているのかも、と心配して送ったら、体調はもう大丈夫だよ、と返事が来た。安心していつもの連絡を入れるようになったが、返ってくるのは都合が合わない、というものばかりだった。
 俺自身は正直何の影響もないから、これと言って問題はない。ただ、会うようになってから週単位でプレイをしていないのは、今回が初めてだ。今まで安定していたから、それが続いて問題がないならいいのだけど、長くプレイをしないことで、恵秀さんの体調に影響が出ないかが、ただただ心配だった。
 本当はあれからずっと体調を崩していて、俺に心配をかけないようにもう良くなった、と嘘を吐いているのかもしれない。体調が落ち着いたことで、正社員に復帰できて仕事が忙しいのかもしれない。俺に何か問題があって、会いたくないのかもしれない。恵秀さんの強いドム性に応えられるサブミッシブに出会って、ヴァニラとままごとのプレイをしなくてもよくなったのかもしれない。――正解が分からないから、俺はあれこれ想像することしかできない。詳しく聞きたくても、教える気がないらしい恵秀さんには、はぐらかされてしまう。しばらく忙しいなら、落ち着いた時に連絡してください、と送りかけたものの、なんとなくもやもやして結局それは消してしまった。
 押しかけて行って理由を尋ねたい気持ちもあるけれど、あいにく俺は恵秀さんの所在を知らないし、それこそ、あくまで疑似パートナーでしかない俺がそこまで踏み込んでいいものかも分からない。……また、分からないが増えてしまった。
 そんなもやもやを抱える日々を送っていると、風早先生から経過を聞かせてほしいからこの日に病院に来てもらいたい、と連絡があった。経過も何も、と思いつつ、恵秀さんのことを話せるのは先生しかいない。吐き出してもやもやが消えるとは思わないけれど、どうせなら一人で溜め込んでいるよりも、聞いてもらった方が多少気が楽になるかもしれない。先生が日時を指定してくるのは珍しいな、と思いつつ、これ幸いと俺はその日に風早医院に行くことにした。

 二ヶ月ぶりの風早医院は、珍しく待合に誰もいない状態だった。いつも空いてはいるけれど、誰もいないのは珍しい。どうにも落ち着かない気持ちで長椅子に腰を下ろす。時計の秒針の音が、人のいない待合に妙に響いていた。
 待合には誰もいなかったけれど、診察室には先客がいるらしく、俺の名前はなかなか呼ばれない。前の人が予定より長引いてるのかもな、と思いながら、診察室の扉をぼんやり眺めていると、ガラッと扉が開かれた。
「え?」
「あ、よ、よすが、くん……?」
 扉を開けて出てきた人物に、思わず声が漏れた。半月――いやそろそろひと月になる――顔を合わせていなかった、俺の疑似パートナーが、俺と目を合わせて固まっていた。
「……お久しぶりです」
「う、うん……」
 想定外の場所で会う気まずさからか、お互いものすごくぎこちない。そんな俺たちのやり取りが聞こえたからか、診察室の中から風早先生の笑い声が聞こえてきた。
「月山さんは中に戻って、よすがくんも入りなさい」
 先生の言葉に、恵秀さんは難しい顔をしてから大人しく診察室の中へ戻っていく。それを追うように、俺も部屋の中へ入った。
 診察室に入ると、患者用の椅子に座った恵秀さんが、両手で顔を覆ってうなだれていた。向かいに座る先生はにっこりと微笑んでいる。その対比が奇妙で、俺は思わず眉を顰めてしまった。
「こんにちは、よすがくん。来てくれてありがとう」
「こんにちは。……あの、これは一体、」
 状況が理解できずに、隣の恵秀さんと向かいの風早先生を交互に見る。自分に問いかけられたと思ったのか、恵秀さんの方が僅かにびくっと跳ねた。
「本当はこういうのはルール違反だから、怒られちゃうんだけどねぇ。君たちはきちんと話し合った方がいいと思ってね、月山さんの診察の日によすがくんを呼んだんだよ」
「や、やっぱり恵秀さんずっと体調悪かったんですか!? ……え、でも、ここに来てるってことは……ダイナミクスの……? ひと月近くプレイできてなかったからですか?」
 風早先生の言葉に悲鳴のような声をあげてしまった。せっかく恵秀さんは薬を飲まずに過ごせるようになったのに、と俺がショックを受けてしまった。一人でおろおろする俺に、先生は苦笑を浮かべた。
「月山さん、きちんと話した方がいい。君のためにも、よすがくんのためにも」
 恵秀さんに向けられた言葉の意味を、俺は理解することができない。どういう意味だ、と思いながら恵秀さんの丸まった背中に視線を向けると、恵秀さんは返事の代わりに大きな溜め息を吐いた。
「……すみません」
 そう呟くと、恵秀さんはゆっくりと体を起こした。俯きがちな顔が、少しだけ俺の方を向いた。さっきは驚いてしまって、まじまじと恵秀さんの顔を見ていなかったから気づかなかったけれど、たれ目がちな恵秀さんの目元には隈ができていた。
「え……?」
 出会ったばかりの頃の恵秀さんがよぎる。それは出会った時ほど濃くはなかったけれど、眠れていないのだろうか、と俺に思わせる程度には主張していた。このひと月で、そんな副作用が出るほどまた薬を飲むようになってしまったのだろうか。それならどうして俺とプレイをしなかったのだろうか。恵秀さんが、分からない。
 どうして、という困惑が顔に出ていたらしく、恵秀さんは俺から視線を逸らした。そんなちょっとした仕草に、妙に胸が軋んだ。
「調子が、良くなかったんだ。……十月の頭くらいから、ずっと」
「十月……? え、だって、その頃はプレイもしてたのに……」
 恵秀さんの言葉に、俺は再び戸惑ってしまった。恵秀さんと最後に会った日、具合が悪そうだと俺が指摘したのは十月の頭じゃなくて、十月の末だったはずだ。それからはずっとプレイをしていないから、その後から不調になったならまだ分かる。それまでと同じようにプレイをしていたのに、どうして調子が悪くなってしまったんだろう。そう考えて、自分のダイナミクスを振り返って、ハッとした。
「や、やっぱりヴァニラ相手に効かないコマンドを使ってたから……悪い影響が出ちゃったって、ことですか……?」
 ショックを隠せずに風早先生にそう尋ねると、先生は静かに首を横に振った。先生は視線を俺から恵秀さんに移して、肩を竦めた。
「ううん、それは違うよ。君のダイナミクスは関係ない」
「え、じゃあ、なんで……?」
 あっさり否定されて拍子抜けした俺は、改めて恵秀さんを見る。狭い診察室の中、二人分の視線を受ける恵秀さんは、再び両手で顔を覆ってしまった。
「…………僕の、欲求不満のせいだ」
 小さな声でぼそりと呟かれた言葉を、頭の中で繰り返す。欲求不満。欲求不満? プレイをしていても恵秀さんは満たされていなかったということなんだろうか。頭上に疑問符をいくつも飛ばす俺を察してか、風早先生が口を開いた。
「月山さんはね、自分の欲求を抑えたプレイを続けていたから、負荷がかかってしまっていたんだ。それが原因。まあ、ここ一ヶ月は加えて基本のプレイも出来ていなかったから、それもあるね」
「自分の欲求を抑えたプレイ……」
 風早先生の言葉を俺が繰り返すと、隣の恵秀さんが小さく呻いた。相変わらず俺と先生の視線は、恵秀さんの頭に突き刺さっている。
「月山さん」
 促すように風早先生に名前を呼ばれ、恵秀さんの方がまた跳ねる。なんだか妙に恵秀さんが小さく見えるような気がした。
「……よすがくん」
「はい」
 両手で顔を覆ったままの恵秀さんが俺を呼ぶ。身体ごと恵秀さんの方を向いたけれど、顔を隠している本人には見えていないだろう。小さく深呼吸の音が聞こえた。
「前に、前に君と、スキンシップをするコマンドを使いたいって言ったでしょう。それを我慢して今まで通りのコマンドだけを使ったプレイをするのが、その……なんと言うか……。ある意味生殺しのような状態で君とプレイを続けるのが、だいぶ苦しくなってきていたんだ。でも君に無理を言って……嫌われたくなかったから。……結局会って我慢するのが苦しいなら、いっそ会うこと自体我慢した方が、マシかと思って……。いきなり、ごめんね、」
「え、あ……そ、そうだったん、ですか……」
 恵秀さんの口から溢れてくる懺悔のような告白に、頭が追い付かない。恵秀さんの体調を安定させるためにしていたプレイだったのに、逆に恵秀さんには負担になっていた? 俺に嫌われないために恵秀さんが我慢していた? 我慢の結果、会うことも止めていた? ――意味が分からなくて、なんだか腹が立ってきた。
 うなだれたままの恵秀さんは、顔を上げる様子がない。困った俺が縋るように風早先生を見ると、先生も困ったように笑った。
「よすがくんは信じがたいかもしれないけど、これはドムがよくぶつかる悩みと不調なんだよ」
 優しくそう告げた先生の言葉に、恵秀さんが再び呻いた。どうにも居た堪れなくて、丸まった恵秀さんの背中をそっと撫でる。大袈裟なほどその身体が跳ねたと思ったら、飛び起きた恵秀さんが驚いた顔で俺を見ていた。ムカムカした気持ちは消えたわけじゃないけれど、恵秀さんの反応がおかしくて、俺は少しだけ笑ってしまった。
「最初に君たちが二人で来た時にも言ったと思うけど、こればかりは二人できちんと話し合うしかないんだよ。今まで薬に頼りきりだったから、月山さんがそこに縋りたくなる気持ちも分かるけどね。どちらかが我慢をするのも、無理をするのも、解決にはならないし、場合によっては悪化することだってある。疑似云々は一旦置いておくとして、君たちはパートナーでしょう。思い込みで終わらせず、よく話し合ってお互いの妥協点を見つけなさい」
 基本的に穏やかな風早先生が、少し厳しい顔をして俺たちにそう言った。俺と恵秀さんは一度顔を見合わせてから、素直に先生の言葉に、はい、と頷いた。
 二人揃って病院を出ると、はあ、と二人分の溜め息が重なった。見事にハモったそれに顔を見合わせ、揃って肩を竦めた。
「よすがくん」
「はい」
 疲れた顔をしている恵秀さんが俺を呼ぶ。それに俺が返事をすると、恵秀さんは嬉しそうにはにかんだ。呼びかけに返事をしただけでそんな顔をするくらい、この人は限界に近いのかもしれない。そんなことを思って、またもやもやしてしまった。
「この後、予定はある?」
「ないです。帰るだけです」
「……じゃあ少し、時間をもらえないかな? 君とちゃんと、話がしたい」
 恵秀さんは、まっすぐ俺の目を見ながらそう言った。断る理由なんてない。むしろ俺の方が恵秀さんに言いたいことがたくさんある。
「もちろんです。俺も貴方と話がしたい」
 俺がそう答えると、恵秀さんは力なく笑った。
「ありがとう。……できればしっかり、ゆっくり話がしたいんだ。あの、……誓ってやましい気持ちは無いから、僕の家に来てもらっても、いいかな?」
「……恵秀さんの家、ですか?」
「うん。トライアルルームだとどうしても時間の制限があるし、落ち着いて話ができる個室ってあまり……それこそ、そういう所に君を連れて行くのは流石に――っていう、理由なんだけど」
 恵秀さんの言うそういう所というのは、きっとホテルのことだろう。ビジネスホテルにしろ、ラブホテルにしろ、好きだと宣言している人間をほぼベッドだけの部屋に連れていくことに抵抗があるんだろう。さっきも俺に嫌われたくなかったと言っていたし、恵秀さんは紳士だと思う。――消去法で自宅が出てくるのは、まあ置いておくとして。
 言ってから心配そうに俺を見つめる恵秀さんに苦笑が漏れた。流石にそんなことでこの人を疑ったりしない。恋愛感情はさておき、きちんと信頼はしているつもりだ。
「俺は大丈夫です。ご迷惑でなければ」
「迷惑なんかじゃないよ、大丈夫。じゃあ行こうか」
 俺の言葉にパッと目を輝かせて歩き始めた。久しぶりに見たその顔が、なんだかすごく眩しかった。
何度か乗り換えを繰り返し、しばらく電車に揺られてから、恵秀さんの最寄り駅に着いた。初めて降りる駅だ。勝手に会社の近くに住んでいると思っていた、と話したら、恵秀さんは肩を竦めて、流石にそれは嫌だなぁ、と笑った。
 改札を抜けてしばらく歩く。恵秀さんは綺麗な外装の三階建ての建物の前で足を止めた。賃貸サイトで見たことがある、部屋数の少ない賃貸マンションみたいだ。
「……俺、勝手に恵秀さんは高級マンションの高層階に住んでるんだと思ってました」
「どういうこと?」
「だって、恵秀さん、いわゆる御曹司じゃないですか。なんかこう、いろんな意味でめちゃめちゃ高いところに住んでるんだろうなぁって」
 我ながらだいぶガキっぽい発言をしている自覚はある。恵秀さんはきょとんとした後、声を上げて笑った。流石に恥ずかしい。
「っはは、そっかそっか。中に入ってがっかりさせちゃったらごめんね?」
「いや全然。むしろ本当にそうなら、緊張してどうしたらいいか分からなかったと思うんで、安心してます」
「ふふ、それならよかった」
 くすくすと笑う恵秀さんの後に続いて、俺はマンションの中へ入る。恵秀さんの部屋は、三階の角部屋だった。どうぞ、と促されるまま中に入る。玄関からすでに広くて、俺が借りているあの狭いアパートと比べてちょっと笑ってしまった。恵秀さんはいきなり笑った俺に首を傾げてはいたけれど、特に何も言うことはなかった。
「どうぞ、かけて」
 恵秀さんはソファを示してそう言った。今日はコマンドを使わないんだな、と思っていると、それが顔に出ていたのか、恵秀さんが苦笑を浮かべた。
「まずはお話ししてから、かな。今はコマンドのことは気にしないで」
 そんなに分かりやすかっただろうか、と若干恥ずかしくなる。俺が大人しくソファに腰を下ろしたのをみとめた恵秀さんは、キッチンへ入って行った。
「お茶を淹れるから、ちょっとだけ待っててね」
「はい」
 投げられた言葉に返事をする。広い部屋の中、落ち着かない気持ちできょろきょろと中を見てしまう。生活感がない、というほどではないけれど、恵秀さんの部屋は物が少なくて、ちょっと寂しい感じがした。ずっときょろきょろしているのも気が引けて、俺はスマホを取り出した。何を見るでもなく、ぼんやりとSNSを眺めていた。
「お待たせ。ごめんね、僕が普段飲まないからコーヒーがなくて……。紅茶でも大丈夫だった?」
「ありがとうございます。大丈夫です」
 マグカップを差し出す恵秀さんは申し訳なさそうな顔をしていた。気にしなくていいのに、と思いながらカップを受け取ると、恵秀さんは俺の隣に腰を下ろした。
「……今日は、ごめんね」
 軽く深呼吸をしてから、恵秀さんは謝罪の言葉を漏らした。いつもなら気にしなくていいです、と言うところだけど、今日はそうもいかない。理由も分からず避けられたから、心配もしたし、不安にもなった。理由を聞いても結果ムカムカしてしまったけれど。
「いえ。……でも、俺、今回のことは怒ってますからね」
「うん」
「俺ずっと心配してたんです。入院とかしてるんじゃないかとか、俺が何かして、もう会いたくないと思われてるのかもとか、相性のいいサブに出会ったから俺とはもうプレイする必要がなくなったのかもとか……」
「……うん、」
「忙しいんですかとか、体調大丈夫ですかとか、俺が聞いても恵秀さんはちょっとバタついてるとか、大丈夫とか、それしか言ってくれなくて、はぐらかされてるような感じがしてました、」
「うん、」
 口を開いたら、止まらなくなった。堰を切ったように言葉が溢れてくる。紅茶の入ったマグカップを両手でぎゅっと握り込む。そこそこ熱いはずなのに、温度はさほど気にならなかった。そんな俺の訴えに、恵秀さんは弁明も言い訳もなく、ただただ相槌を打つだけだった。
「いきなり何でですかって聞きに行きたかったけど、俺は貴方がどこにいるかも知らないし、踏み込んでいいのかも分からなかったし」
「うん、」
「そしたら、ただ我慢してただけって。……意味が分かりませんでした。俺は貴方の体調とかが落ち着くようにプレイをしてたはずなのに、貴方の不調の原因になっていて、しかも俺に嫌われないために貴方が我慢して、それでまた具合が悪くなって……本当に、本当に意味が分からない」
「……うん、」
「…………俺はそんなに、信頼できませんか?」
「っ、ちがう、違うよ! そんなことない!」
 最後に零れたのは、自分でも驚くほど弱々しくて、情けない声だった。そのせいか、恵秀さんは叫ぶように否定の言葉を俺に投げてきた。手の中のカップに視線を落としていた俺は、その声に顔を上げる。隣に座る恵秀さんは、泣きそうな顔をしていた。
「違うんだ、本当に……君を信頼していないんじゃない。僕が、僕がただ怖くて、弱かっただけなんだ。ごめん、ごめんなさい、よすがくん……」
「……そんなに、謝らないでください」
「僕の気が、済まないんだ。……よすがくんが僕とのことを真剣に、無意識かもしれないけど前向きに考えてくれていたことが本当に嬉しかったんだ。だから、無理を言って君に幻滅されたり、嫌われたり拒絶されたりするのが怖くて……きちんと君と向き合わずに逃げたんだ。本当に、申し訳ない」
 二度目の恵秀さんの懺悔は、さっき病院で聞いた時よりも弱々しくて、震えた声で紡がれた。この人は本当に、どうしてここまで気を遣ってしまうんだろう。俺はその強さは感じることはできないけれど、強すぎるドム性を持っているからこそなのか、恵秀さんはものすごく優しくて、ものすごく臆病な人なのかもしれない。
 俺は手にしていたマグカップをローテーブルに置いて、恵秀さんの手からもそれを取り上げた。
「……よすがくん?」
 俺の行動の意図が読めず、首を傾げる恵秀さんの手を両手で包み込むようにそっと握る。わかりやすく恵秀さんの身体が跳ねて、俺を見つめる瞳がわずかに揺れた。
「ちゃんと話しましょう、恵秀さん。正式なものではないけど、俺は貴方のパートナーです。確かに抵抗のあることもあるけど、きっと全部が全部無理じゃないはずです。できそうなことを探せばいいと思います。俺は無理をしないから、恵秀さんも我慢をしないでほしいです。……俺は、俺のせいで貴方が苦しいのも、また薬を飲まなくちゃいけないのも嫌です」
 今度はまっすぐ恵秀さんの目を見て言葉を紡ぐ。恵秀さんは顔をくしゃりと歪めてから、隠れるように顔を背けた。握っている手と、肩が震えている。俺はそっと手を離し、黙って恵秀さんの返事を待った。
少し経って、恵秀さんが俺の方を向いた。赤くなった目で、俺を見つめてくる。俺が見つめ返せば、恵秀さんがはにかんだ。
「……うん、ありがとう。よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
 最初にプレイをした時のように、俺たちはぺこぺこと頭を下げあった。やっぱりそれがどうにも滑稽で、二人揃って吹き出してしまった。
「恵秀さんのやりたいプレイというか、使いたいコマンドなんですけど、ちょっと細かく挙げてみませんか? それが大丈夫か難しいか、俺一個ずつ言ってきますから」
 俺の提案に、恵秀さんは素直に頷いてくれた。それが嬉しくて、ホッとして、さあどうぞ、とオーバーに両腕を広げて見せると、恵秀さんはくすくすと笑ってくれた。
「じゃあお言葉に甘えて……。ハグはできそう?」
「それは大丈夫です」
 了承しつつ、今の自分の体勢が思い切りハグをねだっているように感じて、広げた腕をすすす、と下げた。それがおかしかったのか、恵秀さんがまた笑う。ちょっと照れくさい。
「よかった。キス、は……唇はちょっと厳しいんだよね?」
「そう、ですね。それは抵抗があります」
「分かった。君にお願いするんじゃなくて、僕が君の唇以外……手とか頬とかにキスをするのはどうかな?」
「……されるのは、たぶん、大丈夫だと思います」
「うん、ありがとう。……とりあえず一旦、これでいこうかな」
 もっとあるのかと思っていたら、恵秀さんは早々に例を挙げるのを止めた。我慢しているんじゃないか、と俺が眉を顰めると、恵秀さんをゆっくりと首を横に振った。
「気にしてくれてるんだよね、ありがとう、大丈夫だよ。これを試して、もう少し欲張りたくなったら、また相談する。――どうかな?」
「恵秀さんが我慢してるわけじゃないなら、いいですけど」
「してないよ、今度は大丈夫」
 俺の念押しの言葉に、恵秀さんが笑って頷く。流石に俺もそこまで恵秀さんを信用していないわけではないので、その言葉を信じることにした。
「コマンドは……ハグは『抱き締めさせて』でいいかな。僕が腕を広げたら、腕の中に入るか、抱き着いてくれたら嬉しいな」
「わ、かりました。頑張ります」
 俺が少しばかり顔を強ばらせて頷くと、反対に恵秀さんは頬を緩ませた。本当に嬉しそうな顔をしてくれるから、それだけでくすぐったい気持ちになる。
「キスの方は……そうだなぁ、『目を閉じてごらん』でどうだろう。君が目を閉じたら、頬やおでこにキスをさせてもらう感じで」
「……はい、大丈夫です」
「そうだ、キスなんだけどね、コマンドを使ってするのと、頭を撫でる時のように、褒める時にキスをするのと、二パターンできたらなぁって思うんだけど、どうかな?」
「え、あ、……大丈夫、です」
「本当? 無理してない?」
 俺が若干口籠ったからか、恵秀さんは眉を寄せてじっと俺を見つめてきた。頷くのに数秒かかったのは、嫌だからじゃなくて、照れくさかったからだ。とは言え、そんなことは、言わなきゃ恵秀さんには正しく伝わらない。――もしかして俺がすんなり頷かなかったら、毎回恵秀さんにこれを疑われるんだろうか。
「無理してないです。大丈夫です。……ちょっと想像したら、照れくさいというか、恥ずかしいというか……そんな感じだったので」
「そっか、それなら良かった」
 居た堪れなさから顔を背けて白状すると、恵秀さんの声が嬉しそうに弾んだ。別に良くはない、俺的には。なんだろう、これ、ちょっと余計に恥ずかしくならないか。
 視線を恵秀さんに戻すと、嬉しそうに笑っていた。恥ずかしい気持ちが消えるわけじゃないけれど、恵秀さんのこういう顔を見ると、俺も嬉しくなる。ただ、その目元に戻ってきてしまった隈の存在がどうにも気に入らない。
「恵秀さん、」
「よすがくん、」
 改めて話しかけようと、名前を呼ぶと、同じタイミングで恵秀さんが口にした俺の名前が重なった。示し合わせたように重なった二人分の名前を呼ぶ声がおかしくて、吹き出すと、恵秀さんも俺と同じように笑った。
「なあに、よすがくん」
「いえ、ふふ、恵秀さんからどうぞ」
「ふふ、うん、ありがとう」
 笑いながらそんなやり取りができるのが心地好くて、幸せだな、と漠然と思った。
「あのね、さっそくプレイをしてみたいんだけど、……いかな?」
「俺もそれ、言おうとしてました。しましょ、プレイ」
 タイミングだけじゃなく、言おうとしていたことも同じだったらしい。俺の返事に恵秀さんはぱちぱちと数回、目を瞬かせてから、声を上げて笑った。
 いつもと同じ流れになるだろう、と俺がソファから腰を上げると、恵秀さんも一緒に立ち上がった。隣で俺が首を傾げると、恵秀さんは、ちょっと待ってて、とはにかんで隣の部屋に入って行った。その行動の意図が分からず、恵秀さんの入った部屋のドアをぼーっと眺めていると、さほど時間を置かずに家主が出てきた。何かを持ってものすごく嬉しそうな顔をしている。久しぶりにこの犬っぽい表情を見たなぁ、なんて俺は関係ないことを考えてしまった。
「お待たせ。ふふ、これね、いつか使えたらいいなって、よすがくん用に用意してたんだ」
 そう言いながら、恵秀さんはソファの足元に一枚のラグを敷いた。グレーの楕円形のラグは、毛足が長く、見た目からしてふわふわだ。嬉しそうに話す恵秀さんにつられて、俺も頬が緩んだ。
「ありがとうございます」
「ふふ、こちらこそ」
 さっき泣きそうだったのが嘘のように、恵秀さんはすっかりご機嫌だ。
 恵秀さんは再びソファに腰を下ろす。流石に近いか、と思って俺は少しソファから離れる。恵秀さんを振り返ると、柔く微笑んだ恵秀さんがいつものように俺に両手を差し出した。
「おいで、よすがくん」
 ほぼひと月振りに向けられた恵秀さんのコマンド。久しぶりで、少しだけ緊張しながら恵秀さんの元へ向かう。一歩一歩、ゆっくりと。差し出された両の手の平に自分のそれを乗せる。きゅっと俺の手を握る力が、いつもより少し、強いような気がした。
「いい子、いい子だね、よすがくん」
 いつものように俺を褒めた恵秀さんが、握ったままの俺の手を軽く引く。初めての時みたいだな、なんて呑気なことを考えていると、左の手の甲に、柔らかいものが触れた。びくっと俺の肩が跳ねると、それは右の手の甲にも触れる。優しく、ひどく優しく、恵秀さんの唇が俺の手に押し当てられた。そう来ると思っていなかった俺が固まっていると、手にキスをしたまま、恵秀さんが俺を見上げてきた。
「いい子」
 ぶわっと顔に熱が集まったのを感じた。なんか、なんだろう、これ、すごくまずい気がする。初めての時とはまた違った羞恥を覚えて、身体が強張ってしまう。
「よすがくん、座ってごらん」
「、ぁ……」
 続くコマンドで我に返る。さっき恵秀さんが敷いてくれたばかりのふわふわなラグの上でぎこちない動きをしながら正座をする。俺が姿勢を正して恵秀さんを見上げると、左手が解放された。空いた手を俺の方に伸ばした恵秀さんは、優しく労るような手つきで俺の頭を撫でた。
「いい子、いい子だね」
 指で俺の短い髪を梳くように、何度も何度も恵秀さんの手が俺の頭を往復する。指先が頭皮に触れるのが少しくすぐったい。幸せそうな顔で俺を撫でるよなぁ、と恵秀さんを下から眺めていると、捕まったままの右手がまた引かれた。え、と思うよりも先に、今度は指の関節あたりに恵秀さんの唇が押し付けられた。さっきから変わらず赤面しっぱなしの俺の目を見つめながら、恵秀さんは右手で俺の頭を撫でて、左手で引いた俺の手の指一本一本に順番にキスを落としていく。
「ね、いい子だ」
 無茶苦茶恥ずかしくて仕方がないのに、俺は恵秀さんから目を離すことができない。恵秀さんが俺の指にキスをしているところを見せつけてきているようで、恥ずかしいだけじゃなくて、なんというか、すごく、いけないものを見せられているような気分になる。何も、何もおかしいものなんてないのに。
「立ってごらん、よすがくん」
 キスをするのと撫でるのに満足したらしい恵秀さんは、聞き慣れた次のコマンドを俺に投げる。羞恥で固まっていた身体をどうにか動かし、立ち上がる。
 ただ近づいて、座って、立ち上がる――何度も繰り返したそれだけの動作なのに、どうしようもないくらい心臓が騒いでいた。
「うん、いい子。じゃあ隣、こっちに座ってごらん」
 嬉しそうに目を細めた恵秀さんが、空いた右手で自分の隣をいつものように軽く叩く。握ったままの俺の右手は、変な緊張で汗が滲んでいる気がする。それがものすごく、居た堪れない。
 コマンドに促されるまま、恵秀さんの隣に腰を下ろす。心なしか、さっき座った時よりも距離が近い気がする。心臓は、まだ落ち着きそうにない。
「うん、いい子だね、よすがくん。とってもいい子」
 甘くて優しい声が、俺の鼓膜をくすぐる。今度は手の平全体で頭を優しく撫でられた。もう何回もされているはずなのに、今日はいつもより緊張している。多分、これから新しいことをするのが分かっているからなんだろう。
 ひとしきり俺の頭を撫でた恵秀さんが、俺から両手を離した。少しだけ身構えながら、恵秀さんを見つめる。俺と視線が絡むと、恵秀さんはうっとりと、ただでさえ幸せそうにしている顔をとろけさせながら、すっと両腕を広げた。
「……よすがくん、お願い、抱き締めさせて?」
「っ、!」
 コマンド、これはコマンドのはずなのに、恵秀さんは俺にねだるような言い方をした。今までそんな言われ方をしたことがなくて、一瞬戸惑ってしまった。顔が熱い。ドミナントのコマンドは命令のはずなのに、どうしてこの人は、俺にこんな、懇願するようにコマンドを使うのだろう。混乱しながらも、コマンドを無視するわけにはいかない。嫌なわけじゃないんだ、ただ、すごく、どうしようもないくらい恥ずかしい。
 さっき腕を広げて笑っていた自分が嘘のように、俺はおずおずと腕を伸ばして、恵秀さんの胸元に身体を預け、腰の辺りを軽く掴んだ。耳元で恵秀さんが小さく息を飲んだのが、聞こえた。
「っ、ああ、いい子……! 君は本当にいい子だ、よくできたね、よすがくん……!」
 感極まった様子の恵秀さんに思い切りぎゅうっと抱き締められる。人とハグをするのは別に初めてじゃないくせに、俺は信じられないくらい緊張していた。
 何度も何度も、いい子、と繰り返している恵秀さんは、抱き締めたまま俺の背や頭を撫でたり、時折頭――というか髪にキスをしたりしていた。時折聞こえるリップ音が恥ずかしくて、くすぐったい。
「……いい子だね、」
「ん、っ……!」
 密着したまま俺を撫でくり回していた恵秀さんの、俺の耳元でうっとりと呟いた囁きが、吐息とともに俺の耳孔に注がれた。くすぐったさと、ぞくっとした感覚が背を走って、肩が跳ねる。驚いて妙な声を出してしまった。
「っ!? あ、ご、ごめんね!?」
 それに驚いたのか我に返ったのか、恵秀さんがガバッと抱き締めていた俺の身体を離してそう叫んだ。その勢いに驚いて、俺はまたちょっと肩が跳ねた。
「だ、大丈夫です、びっくりしただけで」
「……調子に乗ってたかも、ごめんね」
 さっきまでの様子が嘘のように、恵秀さんは肩を落とした。気にしなくていいのに、と俺が見つめていると、こっちを向いた恵秀さんが再び腕を広げた。
「もう一回、やり直したい。よすがくん、抱き締めさせて?」
 恵秀さんは相変わらずねだるようにコマンドを使う。俺はもう一度、恵秀さんの腕の中に納まるように、身体を預けた。今度はそっと腰のあたりに腕を回す。恵秀さんは少しさっきより控えめな力で俺の身体を抱き締めた。
「ありがとう、本当によすがくんはいい子だ。……いい子だね」
 嬉しそうに呟きながら、再び俺の頭や背を撫でる。相変わらず緊張はしているけど、さっきよりは、マシになった気もする。
 しばらく俺を撫でた後、恵秀さんが少し俺の肩を押した。至近距離で見つめられて、また顔が熱くなった。落ち着いていた鼓動が、またやかましくなってきた。
「……緊張、してる?」
「ものすごく、」
「ふふ、僕も」
 そんなやり取りをして、二人で少しだけ笑う。俺は恵秀さんがコマンドを使うのを緊張しながら待った。
「……よすがくん、目を、閉じてごらん」
 囁くように告げられたコマンドで、ぎゅっと目を瞑った。コマンドで言われたからというよりも、熱を孕んで甘くとろけた瞳で俺を見つめる至近距離の恵秀さんに耐えられなくなったから瞑った、とも言える。……恵秀さんには、分からないはずだけど。
「いい子だね」
 再び囁かれた声が、さっきよりもすごく近くで聞こえて、まだ恵秀さんの唇が触れたわけでもないのに、僅かに身体が強張った。それに気づいたのかは分からないけれど、恵秀さんが小さく笑ったのが聞こえた。それがちょっと悔しいと思っていたら、額に柔い感触が押し当てられた。顔を背けそうになるのをどうにか堪えて、ゆっくりと目を開けようとすると、今度は瞼にそれが降ってきた。
「っ、!」
 思わず息を飲む。一回だけだと思っていたら、そうじゃなかったらしい。驚いて固まっていると、いい子だ、という囁きと一緒に今度は頬に恵秀さんの唇が触れて、後頭部を撫でられた。
 もしかしたら、これは、唇にされるよりも恥ずかしいんじゃないだろうか、そう思う頃には、俺は恵秀さんの腕の中でぐったりしていた。
「よ、よすがくん、大丈夫?」
「だい、大丈夫です……。なんか、すごい緊張したというか、なんというか……」
 気が済んだらしい恵秀さんに解放されると、俺は相当消耗していたらしく、恵秀さんがものすごい心配そうな顔で俺を見つめていた。いつ離されたのか覚えていないけれど、俺はいつの間にかソファの背もたれに寄りかかっていた。
 あはは……と力なく笑う俺に、恵秀さんは眉を寄せた。
「無理してない? ヴァニラの君は具合が悪くなることはないと思うけど、ストレスに感じたりしてない? やめてほしいことがあったら改めるから、ちゃんと言うんだよ?」
 恵秀さんは、じっと俺の目を見つめながら問い詰めてくる。さっきまでの熱を孕んでいるようなあの瞳が嘘のようだった。
「大丈夫です、本当に……。ただ、恥ずかしかっただけで、嫌じゃ、なかったので……」
「そ、っかぁ……」
 ふるふると首を横に振りながら訴える。これを言うのも正直恥ずかしい。嫌じゃない、という俺の言葉に、今度は恵秀さんが脱力した。ソファの背もたれにボフッと身体を沈めて大きな溜め息を吐く。そのまま両手で顔を覆った恵秀さんが、よすがくん、と俺を呼んだ。
「はい?」
「ありがとう、ごめんね」
「? いえ、どういたしまして?」
 唐突なお礼と謝罪の言葉に首を傾げる。なんのことだろう。増やしたコマンドのことだろうか。ありがとうは分かるが、ごめんはよく分からない。
「今すごく、身体が軽くて、心も穏やかで――いや、ある意味、心は全然落ち着いてないんだけど……。君に触れられるだけで、こんなに変わるんだなぁって、今すごく、驚いてる」
「そうなんですね。それなら、良かったです」
「うん、ありがとう。……それで、その、プレイの最中が心地好すぎて、いろいろと自制が利かなくなってて……ごめんね?」
 そう言って謝る恵秀さんの耳は、赤い。俺は毎回最中がめちゃくちゃ恥ずかしいけれど、恵秀さんは我に返ってから恥ずかしくなるみたいだ。プレイの時、恵秀さんが幸せですオーラを一ミリも隠せていないのは、今に始まったことでもない。ただ、確かにさっきのはすごかった。主に恵秀さんの色気が。恐ろしいくらいだった。
「……懲りずに相手を続けてもらえたら、嬉しいんだけど……」
 顔を隠していた手を外して、恵秀さんが俺の方を見る。格好いいお兄さんが、捨てられた子犬みたいな顔をするのは、ちょっとずるいと思う。もともと嫌です、と言うつもりもなかったけれど、この顔を向けられて首を横に振ることは不可能に近いと思う。顔がいいって、恐ろしい。
「嫌だったら、ちゃんとセーフワード使ってますよ。大丈夫です。頑張って恵秀さんの色気に慣れますね」
「うん、ありが……色気?」
 俺の言葉に恵秀さんは疑問符をいくつも浮かべていた。どうやらこの人、自覚はないらしい。
本当に、この人のドム性が極端に強くなかったら、色んなサブミッシブの人がパートナーになりたいって、言っていたんだろうな、としみじみと思う。そんなことを考えて胸が軋むのが、俺にはどうしてなのか分からなかった。
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