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思惑(しわく)は交わる
奴隷の正しい救い方【悪役令嬢視点】
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何故【白銘(びゃくめい)】が自分に背いたのか。
それを考えるのは後にして今はとにかくどうにか振りほどこうにも大人と子ども、ましては騎士と一般人では到底力量では敵(かな)うはずもない。
「放して頂戴。今上げなきゃあの人はっ…」
「だから、駄目なのです」
そうこう護衛と言い争っている内に等々あの人は他の貴族に買われてしまった。とても綺麗な女性は、親子ほど年の離れた肥えた貴族に…。
無事彼女を競り落とし満足そうな貴族はその周囲にいた他の下卑(げひ)た貴族達に散々自慢しているようだ。まるで『モノ』を買って満足するかのように…。
「なぜ放さなかったの…っ」
そんな貴族の様子にどうしようもない憤(いきどお)りだけが募(つの)り、吐き出せなくなった怒りは完全な八つ当たりと言えど私の行動を止めた【白銘(びゃくめい)】に向かった。
「奴隷を救いたいお嬢様の御気持ちは十分に理解しています。だからと言って、このオークションに競り出される全ての奴隷を買うことも、その後の職をつけることもお嬢様にはできません。中途半端に誰かを助けるぐらいなら、いっそ見限ってください」
【白銘(びゃくめい)】の言葉に、…私は何も言い返すことができなかった。
だってそれは全て事実だったから。今回持っている所持金では、全ての奴隷を買うなど到底できない。本来の目的のモノを買えなくなったらそれこ本末転倒も良いところだ。
今の自分の私情(しじょう)を優先して後日公爵家に請求したところで、噂が広まって奴隷の人達に変な期待を集めるだけ。
もしそんな彼らが公爵邸に押し寄せたとき、収集をつけるのは騎士や侍従の皆になる。私の我が儘で、大勢の人に迷惑をかけることはできない。基盤(きばん)すらない行動は自分の首を閉める行為だ。
それは分かってる。分かってるのに…っ。彼らを救えないことが、自分をとても惨(みじ)めにさせた。こういう時のために身分も、お金もあるのに、何一つ役立てない自分が嫌になる。
「…ごめんなさいっ。私が考えなしだったの。本当に、…ごめんなさい」
「お嬢様の彼らを救いたいという思いはご立派です。だからこそ、勢力をつけて、確実に助けられるまでになるまでお待ち下さい。我ら【白銘】はそんなお嬢様の支えとして万事を尽くします」
私に、引いてはグラニッツ家に本気で尽くそうとするその頑(がん)として忠誠を誓う眼差しに、応えないわけにはいかなかった。
「うん…。分かった。私は彼らを助けるために、今は助けない。ちゃんと実力をつけて、絶対に助けるから」
そう自分に固く誓って、奴隷の競売を見続けた。ぎゅっと目を瞑(つむ)りたくなることも何度も会ったけど、最後まで見届けた。この悔しさが、報われるように…。
そうしていると等々オークションも終りが近づいてきて、最後に出される目玉商品の一つ前に、【それ】は出された。
先程までのような王室や古来の名称を持つような名のしれた物ではなく、特別な輝きを放つものでもない。何の変哲もない少し錆(さ)びれた指輪。
もはやなぜこのオークションに出品されたかですら分からない一品だろう。だが、誰もその指輪がこのオークション一(いち)価値を誇る物だということに気づきはしない。
目の肥えた貴族たちでさえ見向きもせず、早く目玉商品を出せとさえ不平不満を垂(た)れている。彼らは今目の前に出された指輪こそ真骨頂(しんこっちょう)だとは夢にも思わないのだろう。
やはりと言うべきか今まで初めは金貨十枚以上から始まっていたはずが、指輪に関してだけは金貨一枚からのスタートになった。周囲を見ても指輪に興味を持つ貴族はいない。
予想より遥かに安く競り落とせる。そう確信して私は司会のスタートの合図と共に札を上げ…、
「白金貨十」
そう、上げようとしたのだ。だけどそれは叶う方法をなくした。私よりも早く、札を上げた人がいたからじゃない。
…『白金貨』十枚という、馬鹿げた金額の前に札を上げる理由がなくなったからだ。
それを考えるのは後にして今はとにかくどうにか振りほどこうにも大人と子ども、ましては騎士と一般人では到底力量では敵(かな)うはずもない。
「放して頂戴。今上げなきゃあの人はっ…」
「だから、駄目なのです」
そうこう護衛と言い争っている内に等々あの人は他の貴族に買われてしまった。とても綺麗な女性は、親子ほど年の離れた肥えた貴族に…。
無事彼女を競り落とし満足そうな貴族はその周囲にいた他の下卑(げひ)た貴族達に散々自慢しているようだ。まるで『モノ』を買って満足するかのように…。
「なぜ放さなかったの…っ」
そんな貴族の様子にどうしようもない憤(いきどお)りだけが募(つの)り、吐き出せなくなった怒りは完全な八つ当たりと言えど私の行動を止めた【白銘(びゃくめい)】に向かった。
「奴隷を救いたいお嬢様の御気持ちは十分に理解しています。だからと言って、このオークションに競り出される全ての奴隷を買うことも、その後の職をつけることもお嬢様にはできません。中途半端に誰かを助けるぐらいなら、いっそ見限ってください」
【白銘(びゃくめい)】の言葉に、…私は何も言い返すことができなかった。
だってそれは全て事実だったから。今回持っている所持金では、全ての奴隷を買うなど到底できない。本来の目的のモノを買えなくなったらそれこ本末転倒も良いところだ。
今の自分の私情(しじょう)を優先して後日公爵家に請求したところで、噂が広まって奴隷の人達に変な期待を集めるだけ。
もしそんな彼らが公爵邸に押し寄せたとき、収集をつけるのは騎士や侍従の皆になる。私の我が儘で、大勢の人に迷惑をかけることはできない。基盤(きばん)すらない行動は自分の首を閉める行為だ。
それは分かってる。分かってるのに…っ。彼らを救えないことが、自分をとても惨(みじ)めにさせた。こういう時のために身分も、お金もあるのに、何一つ役立てない自分が嫌になる。
「…ごめんなさいっ。私が考えなしだったの。本当に、…ごめんなさい」
「お嬢様の彼らを救いたいという思いはご立派です。だからこそ、勢力をつけて、確実に助けられるまでになるまでお待ち下さい。我ら【白銘】はそんなお嬢様の支えとして万事を尽くします」
私に、引いてはグラニッツ家に本気で尽くそうとするその頑(がん)として忠誠を誓う眼差しに、応えないわけにはいかなかった。
「うん…。分かった。私は彼らを助けるために、今は助けない。ちゃんと実力をつけて、絶対に助けるから」
そう自分に固く誓って、奴隷の競売を見続けた。ぎゅっと目を瞑(つむ)りたくなることも何度も会ったけど、最後まで見届けた。この悔しさが、報われるように…。
そうしていると等々オークションも終りが近づいてきて、最後に出される目玉商品の一つ前に、【それ】は出された。
先程までのような王室や古来の名称を持つような名のしれた物ではなく、特別な輝きを放つものでもない。何の変哲もない少し錆(さ)びれた指輪。
もはやなぜこのオークションに出品されたかですら分からない一品だろう。だが、誰もその指輪がこのオークション一(いち)価値を誇る物だということに気づきはしない。
目の肥えた貴族たちでさえ見向きもせず、早く目玉商品を出せとさえ不平不満を垂(た)れている。彼らは今目の前に出された指輪こそ真骨頂(しんこっちょう)だとは夢にも思わないのだろう。
やはりと言うべきか今まで初めは金貨十枚以上から始まっていたはずが、指輪に関してだけは金貨一枚からのスタートになった。周囲を見ても指輪に興味を持つ貴族はいない。
予想より遥かに安く競り落とせる。そう確信して私は司会のスタートの合図と共に札を上げ…、
「白金貨十」
そう、上げようとしたのだ。だけどそれは叶う方法をなくした。私よりも早く、札を上げた人がいたからじゃない。
…『白金貨』十枚という、馬鹿げた金額の前に札を上げる理由がなくなったからだ。
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