世界の秩序は僕次第

虎鶫

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メインストーリー2

続々々々・メムロの章:遭遇編

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「あの、オオカさん、僕が森についていっても大丈夫ですか?」
「もちろんやで、たぶんその方がおもろい事になると思うねん。知らんけど」
僕は面白半分で誘われたのか。

続々々々・メムロの章:遭遇編

ワニナを出て、森へと近づいた。
「セイドちゃんの言う通り、いつもの森っぽい感じもあるけど、変な感じもあるなぁ」
『ドンちゃん、なんか感じる?』
『いや、わからない』
僕は蚊帳の外だ。
ドンリンさんには言葉が通じないが、オオカさんにこの森の秘密を伝えるべきか。
いや、また冗談言うなと笑われてしまうだけだろう。

しばらく歩くと森の外が見えてきた。
「ほんまや!元の場所に戻っとる。おもろいなー」
オオカさんは面白がっている。

「もっかい、いくでー!」
オオカさんはスキップしながら入っていった。
ドンリンさんを見ると、やれやれといった感じの顔をしている。

ブーン・・・

前方から何かが飛んでくる音が聴こえてくる。
オオカさんとドンリンさんが構えた。
「まって!」
「メムロちゃん、どないしたんや」
「敵意が無いので大丈夫です」
「なんでそんなんわかんねや」
「とりあえず、ちょっと待っててください」

『もー!どうなってるのよー!』
『ストーップ!』
『あんた誰よ!っていうか、こっちはそれどころじゃないのよ!』
『僕はメムロ。攻撃しないから安心して』
『私はイウンよ。っていうか、出られなくて困ってるのよ!』
『わかってるから、もうちょっとじっとしておいて』
『わかってるってなにがよ!っていうか、じっとなんかしてられないわよ!』
『とにかく待って!』

「メムロちゃん、ビビーと話できんのかいな」
「はい、いろいろありましたので」
「アッハッハ、ほんまおもろいやっちゃなー。で、なんてゆーてる?」
「森から出られないって」
「オレらは入られへんけど、そいつは出られへんのか」
「そんな感じみたいです」

オオカさんがドンリンさんに説明してくれた。

「ま、急に現れたヤツを倒せばえぇっちゅーことやな」
「そうなんでしょうけど、中に入れないから倒すどころか会うことすらできませんよ?」
「せやなー、手ぶらで来たからおうてくれへんか。ケチなやっちゃなー」
「あはは・・・」
オオカさんのノリに僕が苦笑いをした時、急に森の雰囲気が変わった。

「地獄耳かいな。冗談のわからんやっちゃなー」
「え?え?」
オオカさんの言葉も気になったが、それよりも何度か感じたことのあるこの嫌な感覚。
もしかして!?

「ようおこし、って事みたいやからいくでー」
そういうと、オオカさんは森の中に向って歩いていった。
僕とドンリンさんもあとに続いた。

また外に出るだけでは?
と、思ったが見覚えのある光景が目の前に現れた。
あの小屋である。

「なかなか趣のある小屋やなぁ。こないなところでのんびり暮らしたいところやで」
意外とオオカさんと僕の理想は一緒だった。

「ハッハッハ、オマエらのようなのが会いに来てくれるのが一番の手土産だ」
そういいながらプリファイが小屋から出てきた。

「あれ?オマエどこかで・・・せや、ガイアちゃんか?」
「!」
オオカさんの言葉に僕はハッとした。
やっぱりそうだ。
見間違えではない、プリファイと名乗るヤツはガイアさんと同じ顔だ。

「ガイア?誰だそれは。さっきは追い出してすまなかったな」
「謝らんでえぇえぇ、おもろい経験させてもーたのに、手土産なしですまんなー」
そう言いながらもオオカさんの顔つきが変わった。

「ほんで、こないな所で何をおもろいことしてんのや?」
「面白い事をしていたら、ここに居るだけで面白い相手が会いに来てくれるだろ?」
「効率えぇな、自分やっぱりおもろいで」
「で、遊んでくれるのか?それとも引き返すか?」
完全にこっちを下に見ている。
プリファイは強いがオオカさんも強い。
それにドンリンさんもいる。

「ほんなら、ちょっとだけ遊んでくれるか?」
「もちろんだ。オレはプリファイ、オマエの名前は?」
「オオカや。なるほど、顔はガイアちゃんやけど、中身はちゃうって感じか」
「そっちのでっかいのも一緒に遊ぶか?」
プリファイはドンリンさんを指差しながらそう言った。
なんて自信家なんだろう。

「んや、遊びやからタイマンや」
「ハッハッハ、面白いヤツだ」
「メムロちゃん、下がっときや」
「は、はい」
僕は邪魔にならない位置まで下がった。

2人とも剣を抜いて間合いをはかっている。

ゴクリ。
緊迫した雰囲気に息を呑んだ。
どっちから先に仕掛けるのだろうか。

お互いジリジリと間合いを詰めていく。
動く!なんとなくそう思った。

「いくでー!」
そういうとオオカさんはまっすぐプリファイに向って走り出した。
真正面から行くのか?
と、思ったらオオカさんの姿が消えた。

カキンッ!
いつの間にか、オオカさんはプリファイの後ろに移動していた。
が、プリファイはそれを剣で防いでいた。

「おお、えぇ目してるやないの」
「なかなかすばやいな。でも、それが本気の速度か?」
プリファイはオオカさんを挑発する。

「こっからやでー」

カキンッ!
カキンッ!
カキンッ!

正直、僕の目にはオオカさんの姿が見えないぐらい速い。
それよりなにより、プリファイはその場から動くことなく全ての攻撃を剣で防いでいる。

「守ってるだけやとオレを捕らえられへんでー」

カキンッ!
カキンッ!

どんどん、オオカさんの速度があがっている・・・はず。

サッ!

剣で防ぎきれないと判断したのか、初めてプリファイが引いた。

ピタッ!
オオカさんが動きを止めた。

「なぁ、その剣は飾りか?攻撃してきてもえぇんやで」
「オオカと言ったか。オマエいい感じだな。では、次はこちらから行くぞ!」
そう言うと、今度はプリファイから動いた。

ザッ!
カキンッ!

あっという間に、プリファイは間合いを詰めていた。
オオカさんも速いがプリファイも速い。

ガキンッ!
ガキンッ!

今度はオオカさんが防戦状態になった。

ガキンッ!
ガキンッ!

ピタッ!
プリファイの動きが止まった。

「いいっ!実にいいぞ、オオカ!」
「プリファイちゃんもえぇやんけ」

そう言いながら2人ともニヤリとした顔をしている。

「オオカ!オマエの本気を見せてくれ」
「見せたらえぇもんでもくれんのか?」

あの速度でもまだ本気じゃないのか・・・世界が違いすぎる。

「もちろん、タダとは言わん。面白いものを見せてやろう」
プリファイはなにやら唱えだした。

「やっぱり魔法も使えるんかいな。器用なやっちゃなぁ」
「もっと面白いものだ」
そういうと、プリファイは左手に持った剣を上段からの攻撃を防ぐかのように横にして自分の目の前の位置にして構えた。
そして、剣の柄の部分に右手を這わせるとそのまま剣先へと手を移動させた。
「自分やるやん。ほんま器用なやっちゃで」

良くみると、プリファイの剣の刃には魔法がまとっていた。
僕の短剣のように攻撃をしたら炎が出るとかいうレベルではない。
それを器用で片付けてしまうオオカさんも凄いが。

「じゃ、こっちも期待にこたえたらんとな」
そういうとオオカさんは両手に剣を持っていた。
もしかして二刀流?

カキンッ!
カキンッ!
ガキンッ!

カキンッ!
カキンッ!
ガキンッ!

オオカさんの二刀流は凄かった。
剣に羽でもついているかのように軽々と振り回している。
そして、華麗な舞いのような動き・・・サーカさんと同じ流派?

というか、その攻撃をすべて防いでいるプリファイが凄い。
魔法をまとったプリファイの攻撃は2本の剣を駆使して防いでいる。

と、思う。
2人の姿を捉え切れなくて剣と剣がぶつかった時に出る火花を見るのが精一杯だ。

パキンッ!

「あっ!」
オオカさんの剣が耐え切れなくなったのか、1本折れてしまった。

ピタッ!
それと同時に2人の動きが止まった。

「あー、これまぁまぁえぇ剣やったんやけどなぁ・・・弁償してくれるか?」
「ハッハッハ、面白いヤツだ。また会おう」

そう言うと、プリファイは小屋へ向っていった。

「ちぇっ、ケチなやっちゃで。ほな、帰るでー」
オオカさんも森の外へと向って歩いていった。
何がなんだかわからないまま、僕とドンリンさんはあとをついていった。

「もうちょいしたら、サーカ達もギルドに戻ってくるころやろ。作戦練り直しや」
オオカさんはいつものような口調だが、少し悔しそうである。

続々々々・メムロの章つづく
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