突然ヒロインとなったマリアンナの恋愛事情〜女装の王子様に囲い込まれました

牧場のばら

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番外編

アリッサの屈辱〜Road to Alyssa 4

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 「母を亡くし、連れて行かれた公爵様の屋敷で、貴女を見た時からアリッサ様のことが、好きだった。
 ずっとずっと、、貴女を思い続けてきた。
 ヘンドリック卿は、あれは地位や体面を気にする女だから、平民のお前を相手にすることはない、だから諦めて自分の幸せを探せと、そう仰った。
 でも、俺の幸せは貴女とともにある事なんです。どうか、俺を受け入れて欲しい。俺は貴女を幸せにしたいのです」


「勝手なことを言わないで。
 イアン、わたくしは誇り高いノイマン家の娘よ。
 町で拾った痩せっぽちの男の子が、お兄様の後を犬のようについて回っていた男の子が、立派な大人になったからといって、貴方を好きになる事があるだなんて、わたくしも見くびられたものね」
 
「好きになってくれなくてもいい。
 俺が貴女のそばにいたいんだ。手を伸ばしても絶対に届かない位置にいた貴女が、今ならこうして手を伸ばせば触れる事だって出来る」
 
 イアンは、恐る恐る、そっと伸ばした手で、アリッサの頬を撫でた。
 アリッサはびくりとしたが、イアンの手を拒む事はなかった。

「あ、あなたみたいな男に触れられるなんて、屈辱だわ」

 真っ赤な顔で抗議をしたが、イアンはただ笑うだけだった。

「そんな顔をして、何を言っても無駄というものですよ、アリッサ様」

 アリッサは降参したとばかりに、頬をなでるイアンの手に触れた。

「アリッサ、と呼んで。今日から貴方の妻になるのでしょう?」

「アリッサ!」
イアンは彼女を抱きしめた。



 ふたりがたどり着いたのは、修道院と反対側、王都からは3日かかる位置にある田舎で、山々に囲まれた静かな村だった。
 イアンはノイマン侯爵(元は公爵)家で培った知識と技術で、国の調査員という名目の王族専用の影となっていた。
そのために用意されたのが、ストーン男爵という地位だった。

 イアンを引き抜いたのは、アリッサのかつての婚約者である王太子。
 その王太子が今回のアリッサ救出に関わっていることを本人は知らない。

 そもそもの発端が、自分との婚約解消にあることを王太子はよく理解していた。
 気位の高いアリッサゆえに、新しい婚約者が見つからず暴走してしまったことは問題であったが、当事者のマリアンナ・オディール子爵令嬢、現デヴィッド・エインズワース子爵夫人からの減刑嘆願も出ていたことから、近いうちに修道院から出ることは決まっていた。

 問題は、表向きの理由が必要なことだった。

 ノイマン侯爵家とは既に絶縁しており、実家へ戻ることは叶わない。身元引受人を探すにしても、評判の悪い娘の後見人となる人間がいなかった。
 そこで目をつけたのがイアンだった。

 かねてより、イアンの隠された能力をノイマン家に置いておくのは勿体ないと、嫡男ヘンドリックは考えていた。
 誘拐事件実行日に敢えてイアンを遠ざけたのは、彼が無関係であることを証明するためでもある。あの日イアンが出向いた先は王太子の元であった。

 王太子より王家の影となることを打診され、引き換えに男爵位とストーン領を与えると申し出られたイアンは、アリッサの引き起こした事件と逮捕を知って、王太子の申し出を受けることを決めた。
 そうする事で、恩義あるノイマン家を助けられるかもしれないと思ったからだ。

 いろんな思惑が重なりあっていた。

 事件から約2年、王太子からの命令でイアンはアリッサを娶ることになった。アリッサを監視するという名目の下で。
 もちろんそれは建前で、イアン本人がアリッサを慕っていることを、王太子もノイマン家の人々も知っている。

 結婚を申し込んで断られたら、王命であると脅して連れ去るつもりでいたが、アリッサは素直に応じてくれた。
 修道院での厳しい暮らしが彼女の棘を削っていったのかもしれない。



 ストーン男爵家に到着すると、執事に出迎えられた。
 アリッサはメイド達に湯浴みに連れて行かれた。
 長らくお湯に浸かることのなかったアリッサは、身体の隅々が生き返る気分になった。
  
 香油を塗られ、身だしなみを整えられたアリッサは、メイド達がはっとするほど美しかった。
「奥様、お美しいですわ」
 口々に褒められて、旦那様がお待ちです、と寝室へ連れて行かれた。

 アリッサを見たイアンは、ようやく手に入れた愛しい人を前に、まるで少年のように落ち着きなくうろうろと歩き回っていたが、やがて意を決した。

「アリッサ、ようやく貴女を迎え入れることができました。10年間、ずっと想っていた。いつかこの想いが貴女につながることを信じて諦めなくて良かった。
 俺を受け入れてくれてありがとう。一生貴女を大切にします」

「全く、こんな屈辱はないわ。拾ったイアンの妻になるなんてね」

 アリッサの言葉は思いもよらぬもので、イアンは青い顔になった。やはり、平民の俺は受け入れられないのか。

「傲慢で高慢で嫌味なこんな女が、イアンの妻になるなんて、こんなこと許されていいの?
 貴方にはもっと良いお相手がいるかもしれないのに、わたくしでいいの?
 父に世話になったからその恩返しのつもり?それとも、子どものころ貴方をいじめたからその意趣返し?
 ねえ、こんな女でいいの?わたくしが貴方の妻になっていいの?」

 アリッサは震えていた。泣きそうになる気持ちを必死で堪えていた。

「俺は、アリッサがいい。どんな女よりアリッサがいい。貴女を愛しているんだ」

 イアンは震えるアリッサを落ち着かせるように優しく抱いた。

「わたくしも……イアンを愛しているわ。多分、ずっと前から」

 アリッサは強がるのをやめることにした。
どうしたって、イアンの愛情には勝てそうにはないからだ。

 アリッサはようやく、自分を求めてくれる相手と安心できる居場所を見つけた。









+++++++++

(後書)

王太子のセリフの中の、何に似ているかというところは、飼っているペットの長毛種の犬、でありました。
大事なところをアリッサは聞き漏らしていました。

文章力がなくてややこしい感じになっていますが、王太子はアリッサがあんな風になってしまったことへの責任を感じています。
生きることを諦めているアリッサにも救いはあっても良い。
男は婚約破棄すら勲章ですが、いつも犠牲になるのは女です。

そんな思いからアリッサ救済のお話でした。










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