突然ヒロインとなったマリアンナの恋愛事情〜女装の王子様に囲い込まれました

牧場のばら

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番外編

いつか王子様が〜Someday my Prince will come 2

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 翌日、久しぶりに学校へ行ったロレッタは、友人の令嬢たちに取り囲まれた。
 エインズワース領の学校は、王都の学院よりものんびりしている。貴族も平民も通えるところはおなじだが、両者の間の垣根は低かった。
 ロレッタの友人たちのうち三分の一は平民で、オルコック家の使用人の子どもであったり、付き合いのある商会の子どもたちだ。

「ロレッタ様、お身体の具合はいかがですの?寝込んでらっしゃると聞いて心配しておりましたの」

 友人達は口々に心配そうに声をかけてくる。

 ただの我儘の引き篭もりで、本を読んだりお菓子を食べたりダラダラと過ごしていたロレッタだったが
「心配をかけて悪かったわ。ええ、もうすっかり良いのです。ありがとう」と、にっこり笑った。

 教室の反対側ではローレンスが、男友達たちと楽しげに会話している。時折、ちらちらと視線を寄越すが、あれはきっと昨日の本屋での事を根に持ってるに違いない。ロレッタは無視することにした。

 ずっと話しかけたそうな素振りをしていたローレンスだったが、隙のないロレッタに諦めたようだ。

 そうなると逆にロレッタの方がローレンスを気にしてしまう。つい、目線をやって、ローレンスと目があって、そのたびにツンと頭を逸らすのはロレッタの方だった。

(嫌だわ、わたしったら何やってるの)

 そんなロレッタの姿を、友人達は生暖かく見ていた。



 授業が終わり、帰り支度を始めたロレッタの元へとローレンスがやってきた。

「ロレッタ、ちょっといいか?」

「お生憎様。わたくしはすぐに帰らないといけないの」

「それなら、俺、後でオルコック家へ行くから」

 ロレッタは、ローレンスと視線を合わせた。一瞬どきりとしたが、平静を装った。
「何か用かしら?来られても会うかどうかわからなくてよ」

「昨日の本を「あー、わかりました。今、話を聞くわ」

 ローレンスはロレッタを誘って学校の中にある庭園にやってきた。迎えの従者にはすぐに終わるので待つように伝えた。
 先を歩くローレンスは、いつの間にか背丈が伸び、細くてひょろひょろしていた身体には筋肉がついたようだ。

(剣の腕前はかなりのもの、とジェーンが言ってたわね。
 去年まで同じくらいの身長だったのに、いつのまにか抜かれているのって、癪に触るわ。
 男の子ってどうしてあんなにガサツなのかしら。ローレンス様なら、庭園に案内するのにもきっと、エスコートする筈よね。手を取ったら、指先に唇を落とすくらいはするわよね、大人の男性なんだもん)

「ロレッタ。昨日はごめん」

 妄想に浸っていたロレッタは、現実に引き戻された。
 目の前には小説のローレンス様ではなく、幼馴染のローレンスがいる。そして自分はヒロインのオリビエ様ではなく、オルコック代官の娘、ロレッタなのだ。

 ロレッタは改めてローレンスを見た。

 柔らかい茶色の髪はゆるくカーブして耳元にかかっている。瞳の色はヘーゼルで優しげだ。すっと通った鼻筋、子どもの頃と違ってシャープな顎のライン、やや薄い唇はきゅつと一文字に結ばれている。
 背はまだまだ伸びそうだ。すらりと長い手足をうまく扱えなくて持て余しているように見える。

 もちろんロレッタにはそれ以上にじっくり観察する余裕などない。久しぶりにちゃんと見たローレンスの顔に、ドギマギしてしまったのだ。

「な、何の事かしら?」
「いや。だから本を横取りしてしまってごめん。悪かった」
「仕方ないわ。貴方が先に買おうとしたのでしょう?なら、謝る必要はないわ。 
 もう用は済んだ?それならわたくし帰るわね」

「待って。あの、その、ロレッタはああいう小説が好きなんだな」
「貴方こそ、そうではなくて?驚いたわ。貴方が恋愛小説を読んでいるなんてね。
 貴方に恋焦がれてる女の子達が知ったら幻滅しちゃうわよ。わたくしだったから良かったようなものよ」

「あれは……あーえっと、姉上に頼まれて仕方なく買いに行ったら、お前がいて」

「ふうん、そういう事にしといてあげる。で、話は終わり?それなら帰るわね」

 帰る素振りを見せるロレッタに、ローレンスは慌てた。
「あ、待って!これを受け取って欲しい」

 そう言うと、ローレンスは紙袋を押しつけてきた。
じゃあ、と走りさるローレンスをロレッタは呆然と見送った。

「何、あれ? それでこれは何よ?」

 ロレッタが袋を開けると、そこには『恋人たち外伝』の本と、髪飾りが入っていた。

 
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