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幼馴染みに「君を愛することはない」と言われて白い結婚契約したのに、なぜか溺愛されています。
3.聖水
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「あ~ら、フィックス様、今日二度目の訪問嬉しいわ」
フィックスが家をノックすると、ミランダの美しくもおぞましい笑顔で出迎えられた。
「妻も一緒だ。話がある」
「ふふ、中へどうぞ?」
「いいえ、ここで結構ですわ」
中にどんな呪いの道具や魔法陣があるかわからない。私たちはむしろ一歩後退した。
「単刀直入に言うけれど、フィックスの呪いを解除してもらいたいの」
「彼が私を抱いてくれたら解除できるのよ。簡単でしょ?」
「それは何度も断ったはずだ」
「じゃあ無理。ずっと呪われていて?」
ミランダは、無条件で解除することはしないらしい。
それをしてくれる人なら、フィックスも苦労はしなかったはずだ。
「どれだけ頼んでも無駄だというなら、こちらにも考えがあるわ」
「あら、なにかしら?」
ちらりと視線を送ると、フィックスは聖水を取り出した。
私はすかさず、フィックスの後ろに隠れるように位置取る。
「ふふ、なぁにそれ? 水?」
「これは、妻の家に代々伝わる聖水だそうだ」
「せいすい~? 悪霊じゃあるまいし、そんなもの効くと思って?」
「効くわ」
「じゃあどうぞ、試してごらんなさい!」
自信満々のミランダに、フィックスは蓋を開けると躊躇せず彼女にばしゃりとふりかけた。
その瞬間、私は即座に魔法陣を展開し、呪い返しをフィックスの後ろから発動する。
「きゃああ、あああああああああああああああ!!」
聖水が彼女にかかった瞬間、フィックスの体から呪いが弾き出されてミランダの体に返っていく。
呪われた文字や紋様が、ミランダの顔や手、至るところに浮き上がり始める。
「いやあ!! どうして! 聖水にこんな効力が……!!」
「あなた、自覚していないだけで悪霊だったのではなくて?」
「そんな、ばかな……!」
苦しんで倒れるミランダに、私は彼女を見下ろしながらそう言ってやった。
呪い返しをすると、呪った時の何十倍もの効力になり、多数の呪いに化けて使用者に返っていく。
返された時のリスクが高いのが、魔女の呪いなのよ。
だから魔女は呪いを扱える分、葛藤する。
使うべきか、否かを。
欲に負けて使ってしまった人が負けなの。
私の、お母様のように。
呪いと言っても、普通の魔女は大したことはできないから。
使うだけ、損をするだけ。
「フィックス、呪いは消えた?」
もちろん、呪いが返っているんだから消えてるに間違いないんだけど。
フィックスは自分の胸を確認して、首肯した。
「ああ、消えてる」
「じゃあもう用はすんだわね、帰りましょう。さようなら、ミランダさん」
「さようなら、ミランダ」
「あああああああ、どうして、どうしてこんなことにぃいいいい!!」
私は泣き叫ぶ彼女を置いて、フィックスと共に魔女の家をあとにした。
「後悔してる? 彼女をあんな目に遭わせて」
誰もいない帰り道。
すっかり日の暮れた空を仰ぎながら、私はフィックスに聞いてみた。
「いいや。さっきも言ったけど、僕は彼女を憎んでいるんだ。アヴェンタリス教徒として未熟だとは思うけれど、呪いが解けたなら、彼女がどうなっても僕にはもう関係ない」
意外。そういう面も、フィックスにはあったのね。
「それにこれで、ようやく抱きたい人を……抱ける」
その言葉に、私は家でのやりとりを思い出した。
抱きたい人……そういえばフィックスは、好きな人がいるからとミランダのことを断っていた。
なんだ……結局私は、お飾りの妻だったんじゃない。
私の心に、また暗雲が立ち込めてくる。
愛する人を抱けないのは可哀想だから、その人と結婚はせずに、手頃な私と結婚したのだろう。
でももう、フィックスは自由の身なんだから。その人と幸せになるためには、私からも解放してあげないといけない。
私は想いを振り切るようにして、くすりと笑って見せた。
「じゃあ、早く離婚手続きをしてしまいましょう」
フィックスが家をノックすると、ミランダの美しくもおぞましい笑顔で出迎えられた。
「妻も一緒だ。話がある」
「ふふ、中へどうぞ?」
「いいえ、ここで結構ですわ」
中にどんな呪いの道具や魔法陣があるかわからない。私たちはむしろ一歩後退した。
「単刀直入に言うけれど、フィックスの呪いを解除してもらいたいの」
「彼が私を抱いてくれたら解除できるのよ。簡単でしょ?」
「それは何度も断ったはずだ」
「じゃあ無理。ずっと呪われていて?」
ミランダは、無条件で解除することはしないらしい。
それをしてくれる人なら、フィックスも苦労はしなかったはずだ。
「どれだけ頼んでも無駄だというなら、こちらにも考えがあるわ」
「あら、なにかしら?」
ちらりと視線を送ると、フィックスは聖水を取り出した。
私はすかさず、フィックスの後ろに隠れるように位置取る。
「ふふ、なぁにそれ? 水?」
「これは、妻の家に代々伝わる聖水だそうだ」
「せいすい~? 悪霊じゃあるまいし、そんなもの効くと思って?」
「効くわ」
「じゃあどうぞ、試してごらんなさい!」
自信満々のミランダに、フィックスは蓋を開けると躊躇せず彼女にばしゃりとふりかけた。
その瞬間、私は即座に魔法陣を展開し、呪い返しをフィックスの後ろから発動する。
「きゃああ、あああああああああああああああ!!」
聖水が彼女にかかった瞬間、フィックスの体から呪いが弾き出されてミランダの体に返っていく。
呪われた文字や紋様が、ミランダの顔や手、至るところに浮き上がり始める。
「いやあ!! どうして! 聖水にこんな効力が……!!」
「あなた、自覚していないだけで悪霊だったのではなくて?」
「そんな、ばかな……!」
苦しんで倒れるミランダに、私は彼女を見下ろしながらそう言ってやった。
呪い返しをすると、呪った時の何十倍もの効力になり、多数の呪いに化けて使用者に返っていく。
返された時のリスクが高いのが、魔女の呪いなのよ。
だから魔女は呪いを扱える分、葛藤する。
使うべきか、否かを。
欲に負けて使ってしまった人が負けなの。
私の、お母様のように。
呪いと言っても、普通の魔女は大したことはできないから。
使うだけ、損をするだけ。
「フィックス、呪いは消えた?」
もちろん、呪いが返っているんだから消えてるに間違いないんだけど。
フィックスは自分の胸を確認して、首肯した。
「ああ、消えてる」
「じゃあもう用はすんだわね、帰りましょう。さようなら、ミランダさん」
「さようなら、ミランダ」
「あああああああ、どうして、どうしてこんなことにぃいいいい!!」
私は泣き叫ぶ彼女を置いて、フィックスと共に魔女の家をあとにした。
「後悔してる? 彼女をあんな目に遭わせて」
誰もいない帰り道。
すっかり日の暮れた空を仰ぎながら、私はフィックスに聞いてみた。
「いいや。さっきも言ったけど、僕は彼女を憎んでいるんだ。アヴェンタリス教徒として未熟だとは思うけれど、呪いが解けたなら、彼女がどうなっても僕にはもう関係ない」
意外。そういう面も、フィックスにはあったのね。
「それにこれで、ようやく抱きたい人を……抱ける」
その言葉に、私は家でのやりとりを思い出した。
抱きたい人……そういえばフィックスは、好きな人がいるからとミランダのことを断っていた。
なんだ……結局私は、お飾りの妻だったんじゃない。
私の心に、また暗雲が立ち込めてくる。
愛する人を抱けないのは可哀想だから、その人と結婚はせずに、手頃な私と結婚したのだろう。
でももう、フィックスは自由の身なんだから。その人と幸せになるためには、私からも解放してあげないといけない。
私は想いを振り切るようにして、くすりと笑って見せた。
「じゃあ、早く離婚手続きをしてしまいましょう」
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