再び大地(フィールド)に立つために 〜中学二年、病との闘いを〜

長岡更紗

文字の大きさ
82 / 92

82.墓参り

しおりを挟む
 俺は、敬吾と一緒にバスに乗った。マツバの墓が少し離れているためだ。
 俺と敬吾は、バスの中で色々な話をした。マツバや病気の話だけじゃなくて、学校とか、高校はどんな所に行くのかとか、友達の話とか、成績とか部活の話とか。

「僕はさ、別に兄貴の夢を継ぐとかじゃないんだけど、看護師になりたいなって思ってる」

 そう、優しい声で言った敬吾の顔が印象的だった。
 きっと、敬吾も色々と思う所があったんだろう。俺なんかよりずっと成績は良いみたいだし、敬吾みたいな優しい奴なら良い看護師になれそうだ。

「ハヤトはサッカー選手だろ?」
「もちろん! 中学で全国は行けなかったけど、高校では絶対行ってやるからな。有名になって、プロリーグに入ってやるから見てろよ!」
「すごいなぁ。今のうちにサイン貰っておこうかな?」
「プロになってからだって、いくらでも書いてやるよ! まぁまずは……高校が受かるかだけどな」

 思った通り、スポーツ推薦は無理だったから、最近は真面目に勉強をやっている。母さんには勉強時間が少ないって言われてるけど。
 そんなこんなを話していたら、目的の場所に着いたみたいだ。バスから降りて少し歩くと、墓場にやってきた。
 墓の数は多くて広いけど、どこもかしこも綺麗に手入れされてある。雲ひとつない青空も手伝って、墓場だけど明るい雰囲気だ。

「ここに兄貴が眠ってる」

 ひとつの墓の前まで来ると、敬吾がそう教えてくれた。敬吾は慣れた様子で、新しい花と水に替えている。
 俺も線香を点けると、マツバの墓の前で手を合わせた。

 ああ、やっと会えたなマツバ。
 俺は退院して、元気にやってるよ。
 ずっと応援していてくれて、ありがとうな。

 俺はそうやって長い間手を合わせていた。
 そりゃあ、最初に思い描いていた会い方ではなかったけど……それでも、マツバは喜んでくれている気がして。

「また、来るよ。頑張るから、見ていてくれよな」

 そう言って、俺は手を下ろした。
 空を仰ぐと、そこにマツバがいるような気がして。
 俺は、太陽に笑いかけるようにして、その場を後にした。


 敬吾に送られて旅館まで戻ってくると、丁度夕食の時間だった。
 父さんも真奈美も皆も、心配してくれてたみたいだ。一様にホッとした顔で俺を迎えてくれた。

「よし、じゃあ食おうぜ!!」

 部活でもムードメーカーの智樹が、そう言って手を合わすと、さっさと食べ始めた。

「やべぇ、この海老の刺身うめぇええ!!」

 そう言いながら、智樹は舟盛りの刺身をごそっと自分のお皿に移し替えている。

「智樹!! お前、取り過ぎだろ!!」
「こんなのは早いもん勝ちだ!!」
「あ、ずるいぞ!!」

 舟盛り戦争が始まったのを、女子は呆れたように見ていて、父さんは楽しそうに笑っている。

「もう、颯斗……落ち着いて食べないと、変なところに入っちゃうよ?」
「智樹君も、いっぱい取り込むのは良くないと思うんだけど……」

 そんな真奈美や篠原の言葉を無視して、俺と智樹は食い争った。
 食われた悔しさなんか実はなくって、ただ面白くて。相手のおかずを狙って、ぎゃーぎゃー言いながら最後まで食べ進めたんだ。
 こんなに笑いながらご飯を食べたのは、初めてだったかもしれない。

「うげー、もう食えねー」
「うえっぷ……俺もー」
「ちょっと、二人とも食べ過ぎだよ!!」
「けど、すごく量が多かったわね。私も食べ過ぎちゃったわ」

 旅館のご飯はめちゃくちゃ美味しくて、皆も大満足だったみたいだ。
 少し腹がこなれてから、男女分かれて温泉に入り、その後は卓球で遊んだ。
 当然の事ながら俺と智樹は負けず嫌いなので、汗だくになりながら勝負した。最終的には俺が勝ったけどな。
 汗臭くなったから、仕方なくもう一回温泉に入って出た後、皆でトランプをして遊ぶ。
 何回目かの勝負の後、俺は勝ち上がりの札を置いて立ち上がった。

「ちょい喉乾いた。やってて、ジュース飲んで休憩してくる」
「おい、勝ち逃げは無しだぞ!」
「おー、戻って来たらまた負かしてやるよ!」

 悔しそうな顔する智樹を見て笑ってやる。背中の向こうの智樹は、さらに悔しがってるだろうな。
 俺は財布を持つと、旅館の廊下を歩いて自動販売機の前に立つ。
 ガチャンと音がして、スポーツドリンクを手に取ると、近くに置いてあったソファーにゆっくりと腰を下ろした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

医者兄と病院脱出の妹(フリー台本)

ライト文芸
生まれて初めて大病を患い入院中の妹 退院が決まり、試しの外出と称して病院を抜け出し友達と脱走 行きたかったカフェへ それが、主治医の兄に見つかり、その後体調急変

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...