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36.ハッピーハロウィン
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俺の誕生日の次の日。
朝から志保美先生が俺の病室にやってきた。
「おはよう、ハヤトくん! 今日は何の日でしょーか!」
「え? ハロウィンだろ?」
「ピンポンピンポーン! そういうわけで、ハヤトくんにはカボチャお化けになって貰いまーす!」
一体どういうわけかさっぱり分からないけど、志保美先生は手作りのカボチャのお面と青いゴミ袋で作ったマントを手渡してくれた。
「……何これ?」
「今日は病室を出る時は、この格好で歩いてね~」
「ええー、マジで?」
「マジよぉ。大丈夫、みーんな仮装してるから!」
「うへぇ」
「仮装してる大人に『トリックオアトリート』っていうと、幸せな事が起こるかもしれませーん! じゃーねー!」
志保美先生は簡単な説明だけしてさっさと出て行ってしまった。リナや守達にも仮装の衣装を渡しに行くんだろう。
ちょっと恥ずかしいけど、皆も本当に仮装してるのかどうか、見てこようかな。
俺はちょっとワクワクしながらオレンジ色の画用紙で作られた、カボチャのお面を被った。そして青いゴミ袋をマントのように装着すると、そっと廊下に出てみた。そこにはピンクのとんがり帽子を被った、可愛らしい魔女の姿がある。
「ん……? リナか?」
「あ、ハヤトお兄ちゃん!」
振り向いたリナの鼻はとんがっていた。帽子も鼻も画用紙で作られていて、鼻は輪ゴムで耳に引っ掛けてある。
「ハハッ、リナは魔女かー!」
「ハヤトお兄ちゃんはカボチャ男だー!」
廊下でリナとギャーギャー言っていたら、守と祐介も部屋から出てきた。勿論、二人とも志保美先生に作ってもらった衣装を着ている。
「マモちゃん、桃太郎だー!」
「祐介はドラキュラだな! カッコイイなーっ! 俺もそっちの方が良かったなぁ~」
清潔室の中だけじゃなくて、他の病室の子達も廊下に出てキャッキャと騒いでいた。入院患者全員分の衣装を用意するとか、志保美先生たち保育士は本当にすごいな。まぁ桃太郎も魔女もドラキュラもカボチャ男も、俺達以外に沢山いたけど。
「わー、皆かわいい!!ちょっと写真撮らせてー!」
斎藤さんや木下さんや池畑さんがスマホを持って出て来て、撮影会だ。俺も自分のスマホを取り出して撮ってもらった。
うーん、でもこれ、俺だけお面で顔が分かんないんだよな。まぁ良いんだけど。
「わっ! ねぇ、見て!」
リナが清潔室の向こう側から歩いてくる人達を指差して声を上げた。
行列だ。あれは、仮装行列。しかも大人の!
「ピータパンいるー!」
「あ! アリスとうさぎさんもいるよ! すごいっ、白雪姫もーっ!」
「ふっくせんちょー!」
ぞろぞろとやって来た仮装集団は、清潔室に中へと入ってきた。ここは一般人は入っちゃいけないはずなのに……と思ったら、その人達は。
「ピータパン、小林先生かよーっ! 白タイツ、似合わねーッ」
俺の言葉に周りにいた皆はどっと笑う。けど小林先生は恥ずかしがるでもなく、堂々とニヤついていた。
なんだかんだと、小林先生って人を笑かすのが好きなんだよな。
「わぁ、園田さんのアリス、可愛いーっ」
「ありがと、リナちゃんも魔女姿、可愛いよー!」
「仲本くんのフック船長、素敵ねぇ~。写真撮ってもいい?」
「はは、いいですよ」
結局また全員で写真撮影会だ。先生達のコスプレのクオリティがメチャクチャ高くて、皆ハイテンションになっている。
「あ、リナ。仮装してる大人に会ったら、何て言うんだった?」
池畑さんがハッと思い出したようにリナに聞いていた。そういえばすっかり忘れてたな。
「えーと、トリックオアトリート?」
「そう、それ! 先生達に言ってごらん」
「トリックオアトリートー!」
リナの言葉を聞いて、ピーターパン小林先生が小さな袋を取り出す。
「はい、どうぞ!」
「わー、ありがとう、小林先生!」
「ノンノン、今はピーターパンですよ」
「あはっ、ありがとうピーターパン!」
それを見た守と祐介も次々と「トリックオアトリート」と言い、アリス園田さんと白雪姫徳澤さんに何かを貰っている。俺も何か貰えるかな。
「Trick or Treat!」
「おー、颯斗くん、発音良い!」
そう言いながら袋を渡してくれたのは、優しそうなイケメンフック船長仲本さんだ。
「ありがとう!!」
「ありがとうー」
「あっとー!」
「ありがと!」
俺達が礼を言うと、先生達は清潔室を出て次の病室に向かって行った。リナ達は待ちきれず、すぐに袋の中を開けて覗いている。
「あ、折り紙! 色鉛筆もあるー!」
「飴も入ってたー!」
チビ達は折り紙と色鉛筆と飴みたいだ。俺も一緒かなと思いながら袋を開けてみる。
「シャーペンとノート……勉強しろってか……」
俺の袋に入っていたのは、大学ノートとシャープペンシルと、申し訳程度に飴がひとつだった。
や、うん、まぁ……有難いんだけどね。
「ハヤトお兄ちゃん、リナの折り紙とかえっこしてあげようか?」
「あ、いや、大丈夫。ちょうどノート欲しかったところだし、折り紙はリナの方が得意だろ」
「じゃあ、また何か作ってあげるね!」
「うん、頼むな」
そう言うと、リナは嬉しそうに笑って頷いた。魔女っ子コスプレだから、可愛さ二割り増しだな。
皆いつもパジャマか楽な服装だから、ちょっといつもと違う格好するって気分が変わって明るくなれる。先生達のコスプレにも笑わせて貰ったしな。
俺達はそれからもしばらく、清潔室の中で笑いあっていた。ハロウィンってあんまりやった事ないから、ものすごく新鮮だったな。
朝から志保美先生が俺の病室にやってきた。
「おはよう、ハヤトくん! 今日は何の日でしょーか!」
「え? ハロウィンだろ?」
「ピンポンピンポーン! そういうわけで、ハヤトくんにはカボチャお化けになって貰いまーす!」
一体どういうわけかさっぱり分からないけど、志保美先生は手作りのカボチャのお面と青いゴミ袋で作ったマントを手渡してくれた。
「……何これ?」
「今日は病室を出る時は、この格好で歩いてね~」
「ええー、マジで?」
「マジよぉ。大丈夫、みーんな仮装してるから!」
「うへぇ」
「仮装してる大人に『トリックオアトリート』っていうと、幸せな事が起こるかもしれませーん! じゃーねー!」
志保美先生は簡単な説明だけしてさっさと出て行ってしまった。リナや守達にも仮装の衣装を渡しに行くんだろう。
ちょっと恥ずかしいけど、皆も本当に仮装してるのかどうか、見てこようかな。
俺はちょっとワクワクしながらオレンジ色の画用紙で作られた、カボチャのお面を被った。そして青いゴミ袋をマントのように装着すると、そっと廊下に出てみた。そこにはピンクのとんがり帽子を被った、可愛らしい魔女の姿がある。
「ん……? リナか?」
「あ、ハヤトお兄ちゃん!」
振り向いたリナの鼻はとんがっていた。帽子も鼻も画用紙で作られていて、鼻は輪ゴムで耳に引っ掛けてある。
「ハハッ、リナは魔女かー!」
「ハヤトお兄ちゃんはカボチャ男だー!」
廊下でリナとギャーギャー言っていたら、守と祐介も部屋から出てきた。勿論、二人とも志保美先生に作ってもらった衣装を着ている。
「マモちゃん、桃太郎だー!」
「祐介はドラキュラだな! カッコイイなーっ! 俺もそっちの方が良かったなぁ~」
清潔室の中だけじゃなくて、他の病室の子達も廊下に出てキャッキャと騒いでいた。入院患者全員分の衣装を用意するとか、志保美先生たち保育士は本当にすごいな。まぁ桃太郎も魔女もドラキュラもカボチャ男も、俺達以外に沢山いたけど。
「わー、皆かわいい!!ちょっと写真撮らせてー!」
斎藤さんや木下さんや池畑さんがスマホを持って出て来て、撮影会だ。俺も自分のスマホを取り出して撮ってもらった。
うーん、でもこれ、俺だけお面で顔が分かんないんだよな。まぁ良いんだけど。
「わっ! ねぇ、見て!」
リナが清潔室の向こう側から歩いてくる人達を指差して声を上げた。
行列だ。あれは、仮装行列。しかも大人の!
「ピータパンいるー!」
「あ! アリスとうさぎさんもいるよ! すごいっ、白雪姫もーっ!」
「ふっくせんちょー!」
ぞろぞろとやって来た仮装集団は、清潔室に中へと入ってきた。ここは一般人は入っちゃいけないはずなのに……と思ったら、その人達は。
「ピータパン、小林先生かよーっ! 白タイツ、似合わねーッ」
俺の言葉に周りにいた皆はどっと笑う。けど小林先生は恥ずかしがるでもなく、堂々とニヤついていた。
なんだかんだと、小林先生って人を笑かすのが好きなんだよな。
「わぁ、園田さんのアリス、可愛いーっ」
「ありがと、リナちゃんも魔女姿、可愛いよー!」
「仲本くんのフック船長、素敵ねぇ~。写真撮ってもいい?」
「はは、いいですよ」
結局また全員で写真撮影会だ。先生達のコスプレのクオリティがメチャクチャ高くて、皆ハイテンションになっている。
「あ、リナ。仮装してる大人に会ったら、何て言うんだった?」
池畑さんがハッと思い出したようにリナに聞いていた。そういえばすっかり忘れてたな。
「えーと、トリックオアトリート?」
「そう、それ! 先生達に言ってごらん」
「トリックオアトリートー!」
リナの言葉を聞いて、ピーターパン小林先生が小さな袋を取り出す。
「はい、どうぞ!」
「わー、ありがとう、小林先生!」
「ノンノン、今はピーターパンですよ」
「あはっ、ありがとうピーターパン!」
それを見た守と祐介も次々と「トリックオアトリート」と言い、アリス園田さんと白雪姫徳澤さんに何かを貰っている。俺も何か貰えるかな。
「Trick or Treat!」
「おー、颯斗くん、発音良い!」
そう言いながら袋を渡してくれたのは、優しそうなイケメンフック船長仲本さんだ。
「ありがとう!!」
「ありがとうー」
「あっとー!」
「ありがと!」
俺達が礼を言うと、先生達は清潔室を出て次の病室に向かって行った。リナ達は待ちきれず、すぐに袋の中を開けて覗いている。
「あ、折り紙! 色鉛筆もあるー!」
「飴も入ってたー!」
チビ達は折り紙と色鉛筆と飴みたいだ。俺も一緒かなと思いながら袋を開けてみる。
「シャーペンとノート……勉強しろってか……」
俺の袋に入っていたのは、大学ノートとシャープペンシルと、申し訳程度に飴がひとつだった。
や、うん、まぁ……有難いんだけどね。
「ハヤトお兄ちゃん、リナの折り紙とかえっこしてあげようか?」
「あ、いや、大丈夫。ちょうどノート欲しかったところだし、折り紙はリナの方が得意だろ」
「じゃあ、また何か作ってあげるね!」
「うん、頼むな」
そう言うと、リナは嬉しそうに笑って頷いた。魔女っ子コスプレだから、可愛さ二割り増しだな。
皆いつもパジャマか楽な服装だから、ちょっといつもと違う格好するって気分が変わって明るくなれる。先生達のコスプレにも笑わせて貰ったしな。
俺達はそれからもしばらく、清潔室の中で笑いあっていた。ハロウィンってあんまりやった事ないから、ものすごく新鮮だったな。
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