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39.部屋の片付け
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俺は今、病室の中にある物を運び安くするためにまとめている。
リナの使っていた部屋が空いたので、そっちに移動するんだ。
前日に清掃業者が入って、埃ひとつないピカピカの部屋にしてくれている。
「これ、とりあえず机の上に置いておくね、ハヤトくん」
「ありがとう、園田さん、徳澤さん」
「これで全部運び終わったかな?」
「オバちゃんもありがとう」
看護師の園田さんと徳澤さん、それに補助師のオバちゃんが俺の荷物を全部移動してくれた。俺は点滴が繋がっているから、軽いものを運んだだけだ。
「近いうちにアイソレーターが入るからね」
「分かった」
アイソレーターっていうのは大型の空気清浄機みたいなもので、リナもそれを使って病室を準無菌室にしてたんだ。ここの病院に無菌室はなくって、そういう機械を置いて無菌に近い状態にしておくらしい。
「それでね、ハヤトくん。言いにくいんだけど、荷物を減らして貰えるかな」
「え? 荷物を?どれくらい?」
「テレビ棚の中と、洋服タンスに入るだけにして、外に見える所に置かないで欲しいの」
「ええ!! マジで!?」
思わず声を上げると、園田さんは申し訳なさそうに笑っている。
「残念だけど、マジ。物に埃が被ると、掃除が大変だからね」
うーん成程、拭き掃除しやすいように片付けとかなきゃいけないんだな。
けどたったあれだけのスペースに全部納めろってか……
もう四ヶ月以上もここで住んでるから、色んな物が溢れかえってる。
机の上にもテーブルの上にも、ベッドの上にもあれこれ置いてあるものを……全部片付けてタンスや棚に入れろって? 無茶言うなぁ。
「あとね、アルコール消毒出来ないものは禁止だから、今度ご両親が来た時に持って帰って貰ってね」
「アルコール消毒出来ないもの? 例えば?」
「例えば、ぬいぐるみとか」
「そんなの持ってないしっ!」
即座に否定すると、園田さんは声を上げて「あはは」と笑う。
「ああ、それとこの部屋にはシャワーがついてるから、明日からここを使っていいよ」
「ホント? いつ入ってもいいの?」
「どうぞ、好きに入って」
やった、シャワー使い放題だ!
時間制限のあるお風呂は、ゆっくり出来なかったもんなぁ。これだけでもちょっと嬉しい。
「じゃあ、片付け大変だと思うけどお願いね」
「うん、分かった」
園田さんが出て行った後で、俺は自分の病室を見渡す。
どっから手をつけよう。やっぱ面倒臭いなぁ。
でもこれ、俺は一人だから何とかなりそうだけど、リナと池畑さんは苦労しただろうな。二人分の荷物を同じように棚とタンスに収納しなきゃいけなかったんだから、大変だったと思う。本当に必要最低限で暮らしていたんだろうな。
まぁいつまでも嫌がっていても仕方ないから、タンスの中を整理して教科書やノート、生活用品を押し込めた。テレビの上の棚はコップや皿や食料品を無理矢理入れ込む。入り切らなかった分は今度家に持って帰って貰おう。
翌々日、俺は清潔室から出られなった。
白血球が前処置に向けて低くなったためだ。病室はまだ出られるけどな。
この日は日曜で、母さんが来てくれた。これが最後の接触になるだろう。アイソレーターが入って前処置が始まったら、家族といえど病室には入れない。移植が終わって回復するまで、我慢する事になる。来週の日曜は父さんが来る予定だしな。
「持って帰る荷物はこれで全部?」
「うん。重いけど大丈夫? 母さん」
「これくらい何てことないない! それより、今度からはこうやって話せなくなるね……ハヤト、平気?」
「話せなくなるって言っても、扉越しでは大丈夫だよ。また……来てくれるんだろ?」
「当然でしょ!!」
母さんが怒ったように言うから、俺はちょっと笑ってしまった。
でも、本当は少し寂しい。今までも二週間に一回しか会えなかったけど……これからも変わらずそのペースだろうけど。扉越しにしか会えない、って言うのが悲しい。
だけどそんな事を言えるはずもなくて。中学二年生にもなって『抱きしめて欲しい』だなんて恥ずかしくて言えなくて。
俯いて何を言おうかと考えていたら、急に母さんが俺の肩に手を回してきた。
「頑張ろうね。もうちょっと。もうちょっとの辛抱だから……」
そう言って、ぎゅっと、ぎゅうっと包んでくれる。
俺の考えてる事、分かってくれてたのかな。
母さんはあったかくて柔らかくて、良い匂いがして。
でももうちょっとの辛抱っていうのは、母さんが自分自身に言い聞かせてるように聞こえたんだ。
「うん、もうちょっとの辛抱だよ、母さん」
って、俺がそう言うと。
「生意気」って苦笑いする母さんに、頭を軽く小突かれた。
リナの使っていた部屋が空いたので、そっちに移動するんだ。
前日に清掃業者が入って、埃ひとつないピカピカの部屋にしてくれている。
「これ、とりあえず机の上に置いておくね、ハヤトくん」
「ありがとう、園田さん、徳澤さん」
「これで全部運び終わったかな?」
「オバちゃんもありがとう」
看護師の園田さんと徳澤さん、それに補助師のオバちゃんが俺の荷物を全部移動してくれた。俺は点滴が繋がっているから、軽いものを運んだだけだ。
「近いうちにアイソレーターが入るからね」
「分かった」
アイソレーターっていうのは大型の空気清浄機みたいなもので、リナもそれを使って病室を準無菌室にしてたんだ。ここの病院に無菌室はなくって、そういう機械を置いて無菌に近い状態にしておくらしい。
「それでね、ハヤトくん。言いにくいんだけど、荷物を減らして貰えるかな」
「え? 荷物を?どれくらい?」
「テレビ棚の中と、洋服タンスに入るだけにして、外に見える所に置かないで欲しいの」
「ええ!! マジで!?」
思わず声を上げると、園田さんは申し訳なさそうに笑っている。
「残念だけど、マジ。物に埃が被ると、掃除が大変だからね」
うーん成程、拭き掃除しやすいように片付けとかなきゃいけないんだな。
けどたったあれだけのスペースに全部納めろってか……
もう四ヶ月以上もここで住んでるから、色んな物が溢れかえってる。
机の上にもテーブルの上にも、ベッドの上にもあれこれ置いてあるものを……全部片付けてタンスや棚に入れろって? 無茶言うなぁ。
「あとね、アルコール消毒出来ないものは禁止だから、今度ご両親が来た時に持って帰って貰ってね」
「アルコール消毒出来ないもの? 例えば?」
「例えば、ぬいぐるみとか」
「そんなの持ってないしっ!」
即座に否定すると、園田さんは声を上げて「あはは」と笑う。
「ああ、それとこの部屋にはシャワーがついてるから、明日からここを使っていいよ」
「ホント? いつ入ってもいいの?」
「どうぞ、好きに入って」
やった、シャワー使い放題だ!
時間制限のあるお風呂は、ゆっくり出来なかったもんなぁ。これだけでもちょっと嬉しい。
「じゃあ、片付け大変だと思うけどお願いね」
「うん、分かった」
園田さんが出て行った後で、俺は自分の病室を見渡す。
どっから手をつけよう。やっぱ面倒臭いなぁ。
でもこれ、俺は一人だから何とかなりそうだけど、リナと池畑さんは苦労しただろうな。二人分の荷物を同じように棚とタンスに収納しなきゃいけなかったんだから、大変だったと思う。本当に必要最低限で暮らしていたんだろうな。
まぁいつまでも嫌がっていても仕方ないから、タンスの中を整理して教科書やノート、生活用品を押し込めた。テレビの上の棚はコップや皿や食料品を無理矢理入れ込む。入り切らなかった分は今度家に持って帰って貰おう。
翌々日、俺は清潔室から出られなった。
白血球が前処置に向けて低くなったためだ。病室はまだ出られるけどな。
この日は日曜で、母さんが来てくれた。これが最後の接触になるだろう。アイソレーターが入って前処置が始まったら、家族といえど病室には入れない。移植が終わって回復するまで、我慢する事になる。来週の日曜は父さんが来る予定だしな。
「持って帰る荷物はこれで全部?」
「うん。重いけど大丈夫? 母さん」
「これくらい何てことないない! それより、今度からはこうやって話せなくなるね……ハヤト、平気?」
「話せなくなるって言っても、扉越しでは大丈夫だよ。また……来てくれるんだろ?」
「当然でしょ!!」
母さんが怒ったように言うから、俺はちょっと笑ってしまった。
でも、本当は少し寂しい。今までも二週間に一回しか会えなかったけど……これからも変わらずそのペースだろうけど。扉越しにしか会えない、って言うのが悲しい。
だけどそんな事を言えるはずもなくて。中学二年生にもなって『抱きしめて欲しい』だなんて恥ずかしくて言えなくて。
俯いて何を言おうかと考えていたら、急に母さんが俺の肩に手を回してきた。
「頑張ろうね。もうちょっと。もうちょっとの辛抱だから……」
そう言って、ぎゅっと、ぎゅうっと包んでくれる。
俺の考えてる事、分かってくれてたのかな。
母さんはあったかくて柔らかくて、良い匂いがして。
でももうちょっとの辛抱っていうのは、母さんが自分自身に言い聞かせてるように聞こえたんだ。
「うん、もうちょっとの辛抱だよ、母さん」
って、俺がそう言うと。
「生意気」って苦笑いする母さんに、頭を軽く小突かれた。
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