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学院初等部編
学院生活スタート
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入学の挨拶をしたのがもう1人の副会長らしい。お義兄様は生徒会執行部役員席に座っていた。いつもの穏やかな微笑みを浮かべているけど、私には分かる。あれは不貞腐れている顔だ。
それぞれのクラスが発表されて、移動する。イザベラ・ウォーリィ侯爵令嬢とは一緒のクラスだった。その他にも友達がたくさんいた。担任の紹介と説明が終わってみんなで寮に向かおうとしていたら、ローレンスお義兄様が入口で待っていた。
「キャシー」
「ローレンスお義兄様?どうなさったの?」
「迎えに来た」
「迎えにって、今からは 寮に行く位ですわよね?」
「父上がお呼びだ」
「え?お義父様が?」
ローレンスお義兄様の後に付いて行く。人気の無い教員棟に進んでいくと、ひとつの扉の前で立ち止まった。
「ローレンスです。キャスリーンを連れてきました」
「入りなさい」
中からお義父様の声がした。お義兄様がドアを開けると中には、お義父様とお義母様と声をかけてきた男性がいた。
「キャスリーン、こちらに」
お義父様に呼ばれて、隣に座る。ローレンスお義兄様はお義母様の隣に座った。
「紹介しよう。サミュエル先生の連絡役のダニエル・ハーレィだ」
「ハーレィ様?」
「ダニエルで良いですよ。キャスリーン嬢。サミュエル様との連絡を請け負います。ブレシングアクアの受け取りも私にお願いします」
「かしこまりました。週に1度でよろしいのですわよね?それでしたら曜日と時間を決めておいた方が良いと思いますけれど」
「決めておかずとも呼んでいただければ……」
「ダニエル様が、学院でどのような名目での滞在かは存じ上げません。ですが、週に1度とは申せその度に双方が探さねばならぬのでしょうか?非常に効率の悪いやり方だと申し上げねばなりません。呼んでいただければと申されましたが、どういう理由で?頻繁にダニエル様を呼び出していれば悪評が立つのは私です。それにブレシングアクアの作成者が私だと、公表はしていないのですわよね?隠し持つにしても限度がございます」
ダニエル様がポカンと私を見ていた。
「はっ、ははは……。サミュエル様が言っておられた意味が分かりました」
「サミュエル先生が?」
「キャスリーン嬢を甘く見るなと。幼くともキャスリーン嬢は1歩も2歩も先を考えていると言っておられました。申し訳ございません」
「いいえ。それでどうなさいます?」
「学院での立場は庶務担当となります。フェルナーご令息が在学中はご一緒に時間と場所を決めて受け渡した方が良いと思います。フェルナーご令息様、お願いしてもよろしいでしょうか?」
「無論。妹を男性と2人切りにさせる訳にいきません」
「ご嫡男様のご卒業後は、次男様にという事になりますが」
「次男には話しておく」
お義父様が言った。細かな打ち合わせをして寮に帰る頃には外は暗くなっていた。
「キャシー、くれぐれも気を付けるんだよ?」
「それはそのような意味で?やり過ぎないように?」
「キャシーは興味を持つと、のめり込むからね。家にある歴史書なんて暗記するほど読んでたよね」
「さすがに丸暗記は無理ですわ」
お義兄様に女子寮まで送ってもらって、寮母の先生に挨拶する。寮母の先生も事情は聞いているのか軽い注意だけで済んだ。
部屋では同室のガブリエラ・グクラン辺境伯令嬢様が待っていた。
「遅かったのね」
「急に呼び出されてしまって」
「知ってるわよ。フェルナー令息が呼びに来たの事はみんなが話してたもの。ねぇ、キャシーちゃんって光魔法が使えるのよね?」
「えぇ。一応の基礎は一通り出来るけど」
「私なんて植物だけだし、たいした事はないよね」
「どうして?植物魔法って便利だと思うけど。薬師さんとかには垂涎の魔法だと思うわよ?」
「そうなんだけど」
「それに植物魔法って、繊維業でも重宝されるじゃない」
「地味だと思わない?」
「お花を咲かせられるでしょ?私には出来ないから羨ましい」
「キャシーちゃんに羨ましいって言われると、なぁんか複雑。可愛くて頭も良くて、希少魔法を持ってて」
「それに転生者だし?」
「そうよ!!」
「でもお役に立てる記憶って無いのよね」
「そうなの?『テンセイシャ』の記憶って、この世界を発展させるって聞いてたんだけど」
「私の記憶は専門的なものだから。その制度が確立されてないと無駄だし、すでにあっても無駄なのよ」
「あぁ。そうなのね」
ガブリエラ・グクラン様は例のお茶会に出席していない。少し身体が弱かったから領地で療養してたんだって。ご両親から相談された王家が私のブレシングアクアを少し飲ませたら、たちまち健康になったらしい。本人はその事を知らなくて、教会所属の光魔法使いのブレシングアクアだと思っている。
「ガビーちゃん、明日の準備は済んだ?」
「うん。たぶん?」
「もぅっ。一緒に点検しましょ」
それぞれの部屋から明日の準備物を持ってきて、点検していく。寮は2人部屋だけど、個々人の部屋があってそれなりに広い。リビングのような共用スペースと2部屋でひとつの寮の部屋になっている。2Lとでも言えばいいのか。もっと上位の公爵令嬢や侯爵令嬢クラスだと、この2Lを1人で使う。下位の男爵、子爵令嬢クラスだともっと狭い個室の3L部屋を3人でだったりする。
「キャシーちゃんは手際が良いわよね」
「うーん、練習したし。侍女は連れていけないって聞いてたから」
「でも、キャシーちゃんは侍女付きの部屋も選べたんでしょ?」
「家格的にはね。だけどこうやって誰かと一緒っていうのも楽しそうだったし、お義兄様にこういう経験も大事だって聞いてたから」
明日は説明がメインになると言っていた。教科別の教師の紹介に自己紹介、セシリア様に伺った授業外交流の説明もされるらしい。
制服はあるけれど、膝下ミディ丈で、令嬢には少し抵抗がある長さだから、足が隠れるタイツは必須だし、着用も自由。派手でなければ私服でもかまわない。とはいっても初等部の低年学年はたいていが制服を着用している。お義兄様達によると、中等部に上がる直前、初等部4年辺りから私服の生徒が増えてくるんだって。
ガビーちゃんと確認を終えて、就寝準備をする。
「ガビーちゃん、寝る前のブレシングアクアは飲んだ?」
「うん、大丈夫。お母様も心配性なんだから。もう大丈夫って言っているのに」
「大切な娘が苦しんでいるのを、見ているだけって辛いんじゃない?」
「そうかなぁ?」
「きっとそうよ」
ガビーちゃんは今は健康だけど、幼少期に病弱だったからって、毎晩寝る前にブレシングアクアを飲んでいる。寮に毎週届けられるようにご両親が手配されたらしく、ガビーちゃんはブチブチ言いながら抵抗はしていない。
「ブレシングアクアかぁ」
「どうしたの?」
「私がこうやって飲んでるって事は、その分誰かが飲めないって事よね?」
「まぁ、そうなるわよね」
「やっぱり飲まない方が良いんじゃないかな?」
「でも、ご両親が手配されていかれたんでしょう?」
「うん」
「気になるなら相談してみたら?」
「誰に?」
「先生の誰かとか、救護室の先生とか。それからご両親」
「キャシーちゃん、付いていてくれる?」
「良いけど、ガビーちゃんがちゃんと言葉にするのよ?私は横にいるだけ。それでいい?」
「うまく言えるかな?」
「大丈夫。さ、寝ましょ。明日からは自分で起きなきゃだし」
それぞれのクラスが発表されて、移動する。イザベラ・ウォーリィ侯爵令嬢とは一緒のクラスだった。その他にも友達がたくさんいた。担任の紹介と説明が終わってみんなで寮に向かおうとしていたら、ローレンスお義兄様が入口で待っていた。
「キャシー」
「ローレンスお義兄様?どうなさったの?」
「迎えに来た」
「迎えにって、今からは 寮に行く位ですわよね?」
「父上がお呼びだ」
「え?お義父様が?」
ローレンスお義兄様の後に付いて行く。人気の無い教員棟に進んでいくと、ひとつの扉の前で立ち止まった。
「ローレンスです。キャスリーンを連れてきました」
「入りなさい」
中からお義父様の声がした。お義兄様がドアを開けると中には、お義父様とお義母様と声をかけてきた男性がいた。
「キャスリーン、こちらに」
お義父様に呼ばれて、隣に座る。ローレンスお義兄様はお義母様の隣に座った。
「紹介しよう。サミュエル先生の連絡役のダニエル・ハーレィだ」
「ハーレィ様?」
「ダニエルで良いですよ。キャスリーン嬢。サミュエル様との連絡を請け負います。ブレシングアクアの受け取りも私にお願いします」
「かしこまりました。週に1度でよろしいのですわよね?それでしたら曜日と時間を決めておいた方が良いと思いますけれど」
「決めておかずとも呼んでいただければ……」
「ダニエル様が、学院でどのような名目での滞在かは存じ上げません。ですが、週に1度とは申せその度に双方が探さねばならぬのでしょうか?非常に効率の悪いやり方だと申し上げねばなりません。呼んでいただければと申されましたが、どういう理由で?頻繁にダニエル様を呼び出していれば悪評が立つのは私です。それにブレシングアクアの作成者が私だと、公表はしていないのですわよね?隠し持つにしても限度がございます」
ダニエル様がポカンと私を見ていた。
「はっ、ははは……。サミュエル様が言っておられた意味が分かりました」
「サミュエル先生が?」
「キャスリーン嬢を甘く見るなと。幼くともキャスリーン嬢は1歩も2歩も先を考えていると言っておられました。申し訳ございません」
「いいえ。それでどうなさいます?」
「学院での立場は庶務担当となります。フェルナーご令息が在学中はご一緒に時間と場所を決めて受け渡した方が良いと思います。フェルナーご令息様、お願いしてもよろしいでしょうか?」
「無論。妹を男性と2人切りにさせる訳にいきません」
「ご嫡男様のご卒業後は、次男様にという事になりますが」
「次男には話しておく」
お義父様が言った。細かな打ち合わせをして寮に帰る頃には外は暗くなっていた。
「キャシー、くれぐれも気を付けるんだよ?」
「それはそのような意味で?やり過ぎないように?」
「キャシーは興味を持つと、のめり込むからね。家にある歴史書なんて暗記するほど読んでたよね」
「さすがに丸暗記は無理ですわ」
お義兄様に女子寮まで送ってもらって、寮母の先生に挨拶する。寮母の先生も事情は聞いているのか軽い注意だけで済んだ。
部屋では同室のガブリエラ・グクラン辺境伯令嬢様が待っていた。
「遅かったのね」
「急に呼び出されてしまって」
「知ってるわよ。フェルナー令息が呼びに来たの事はみんなが話してたもの。ねぇ、キャシーちゃんって光魔法が使えるのよね?」
「えぇ。一応の基礎は一通り出来るけど」
「私なんて植物だけだし、たいした事はないよね」
「どうして?植物魔法って便利だと思うけど。薬師さんとかには垂涎の魔法だと思うわよ?」
「そうなんだけど」
「それに植物魔法って、繊維業でも重宝されるじゃない」
「地味だと思わない?」
「お花を咲かせられるでしょ?私には出来ないから羨ましい」
「キャシーちゃんに羨ましいって言われると、なぁんか複雑。可愛くて頭も良くて、希少魔法を持ってて」
「それに転生者だし?」
「そうよ!!」
「でもお役に立てる記憶って無いのよね」
「そうなの?『テンセイシャ』の記憶って、この世界を発展させるって聞いてたんだけど」
「私の記憶は専門的なものだから。その制度が確立されてないと無駄だし、すでにあっても無駄なのよ」
「あぁ。そうなのね」
ガブリエラ・グクラン様は例のお茶会に出席していない。少し身体が弱かったから領地で療養してたんだって。ご両親から相談された王家が私のブレシングアクアを少し飲ませたら、たちまち健康になったらしい。本人はその事を知らなくて、教会所属の光魔法使いのブレシングアクアだと思っている。
「ガビーちゃん、明日の準備は済んだ?」
「うん。たぶん?」
「もぅっ。一緒に点検しましょ」
それぞれの部屋から明日の準備物を持ってきて、点検していく。寮は2人部屋だけど、個々人の部屋があってそれなりに広い。リビングのような共用スペースと2部屋でひとつの寮の部屋になっている。2Lとでも言えばいいのか。もっと上位の公爵令嬢や侯爵令嬢クラスだと、この2Lを1人で使う。下位の男爵、子爵令嬢クラスだともっと狭い個室の3L部屋を3人でだったりする。
「キャシーちゃんは手際が良いわよね」
「うーん、練習したし。侍女は連れていけないって聞いてたから」
「でも、キャシーちゃんは侍女付きの部屋も選べたんでしょ?」
「家格的にはね。だけどこうやって誰かと一緒っていうのも楽しそうだったし、お義兄様にこういう経験も大事だって聞いてたから」
明日は説明がメインになると言っていた。教科別の教師の紹介に自己紹介、セシリア様に伺った授業外交流の説明もされるらしい。
制服はあるけれど、膝下ミディ丈で、令嬢には少し抵抗がある長さだから、足が隠れるタイツは必須だし、着用も自由。派手でなければ私服でもかまわない。とはいっても初等部の低年学年はたいていが制服を着用している。お義兄様達によると、中等部に上がる直前、初等部4年辺りから私服の生徒が増えてくるんだって。
ガビーちゃんと確認を終えて、就寝準備をする。
「ガビーちゃん、寝る前のブレシングアクアは飲んだ?」
「うん、大丈夫。お母様も心配性なんだから。もう大丈夫って言っているのに」
「大切な娘が苦しんでいるのを、見ているだけって辛いんじゃない?」
「そうかなぁ?」
「きっとそうよ」
ガビーちゃんは今は健康だけど、幼少期に病弱だったからって、毎晩寝る前にブレシングアクアを飲んでいる。寮に毎週届けられるようにご両親が手配されたらしく、ガビーちゃんはブチブチ言いながら抵抗はしていない。
「ブレシングアクアかぁ」
「どうしたの?」
「私がこうやって飲んでるって事は、その分誰かが飲めないって事よね?」
「まぁ、そうなるわよね」
「やっぱり飲まない方が良いんじゃないかな?」
「でも、ご両親が手配されていかれたんでしょう?」
「うん」
「気になるなら相談してみたら?」
「誰に?」
「先生の誰かとか、救護室の先生とか。それからご両親」
「キャシーちゃん、付いていてくれる?」
「良いけど、ガビーちゃんがちゃんと言葉にするのよ?私は横にいるだけ。それでいい?」
「うまく言えるかな?」
「大丈夫。さ、寝ましょ。明日からは自分で起きなきゃだし」
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