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学院中等部 7学年生
救援活動 ①
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フェアールカク辺境伯への挨拶は無事に終わった。というか、辺境伯の方が早々に切り上げた。
私は場所を借りて、手早く着替えを済ませた。その間にサミュエル先生が、医療や浄化が必要な場所を聞いておいてくれた。
「サミュエル先生、お待たせいたしました」
「すっかり雰囲気が変わったね。行こうか」
案内のフェアールカク辺境領の兵士の後に付いていく。護衛としてエリックとリオンとシェリーも一緒だし、ダニエル様とマリアさんも一緒だ。
案内されたのはルカク連峰に程近い、ロマンサ北方国の避難民の居住区。その中でも治療が必要な人が多い区画だった。
「じゃあキャシーちゃん、手分けして治療していこうか」
サミュエル先生と手分けをして、治療を始める。全体的に栄養失調の人が多い。後は逃げる時にだろうか?転倒時に出来た怪我を放置した事による感染症。
髪や目が黒く、皮膚が変色した人もいる。その人達には希望を聞いて浄化をかけていった。ほとんどは特に体調に変化は無いけれど、やっぱり以前の色に戻りたいと言う人だった。けれど中には居たのよね。皮膚だけ治してほしいとか言う人。それは無理だと答えたら、ひどく落胆された。
変色の治癒率は、私が8割、サミュエル先生は5割程。人の他にもペットらしき動物の浄化も頼まれてしまった。
「お願いします!!」
「お願いしますって、これって熊よね?」
そう。頼まれたのは黒い熊さん。毛色も黒くて目も黒いから、迫力がね。大きさは四つ足で私の身長と同じ位。立ち上がったら3メートル位あった。
大人しいのよ?ちゃんとハーネスもリードも着けているし。ごっつい革製だけど。愛嬌もある。でもやっぱり怖いのよ。
「ちょっと待っていてくれるかな?人を先に治してしまいたいし」
サミュエル先生がそう提案してくれた。熊さんの飼い主は納得してくれたんだけど、周りの人に次々に熊さんの浄化を頼まれた。なんとこの熊さん、ルカク連峰を越える時に襲ってきた、ロマンサティグルーや熊や狼から人々を守ったらしく、みんな感謝してるんだって。
人の治療と浄化が終わらないと、熊さんの浄化は出来ない。学院で浄化したのはウサギさんだったし、小さかったからそこまで魔力も使わなかったけど、この熊さんだとどれ位魔力を使うんだろう?
熊さんの前に人間の治療をしないとね。1区画が終わると、次の区画へ。
そこにはロマンサ北方国のストボヤールと呼ばれる特権階級の人達が居た。スタヴィリス国で言う貴族階級だ。
「ほぉ、公爵に侯爵か。そのような身分の者が働いているとは」
グベールニヤと呼ばれているのが、スタヴィリス国で言う公・侯・伯辺りまで、ウエーズドと呼ばれているのが伯・子・男らしい。伯爵階級は2つの階級に跨がっていて、単純に分けられないんだって。
目の前にいるのはグベールニヤのダヴィート・コンドラショフ様。この方は足を痛めていて、歩くのが困難だとの事。ストボヤールだからと私達が呼ばれた。ファレンノーザ公爵も側にいる。こっちは身分証明と非公式な協議の為なんだって。ダヴィート・コンドラショフ様が治ったら、フェアールカク辺境伯と3人で話し合いをする予定らしい。
「光魔法使いとは珍しい。このように幼い子供まで働いておるとは」
幼い子供……。良いですけどね。
「彼女はデビュタントを終えてますよ。未成年ではありますが」
「おや、これは失礼した」
「いいえ。お気になさらず」
サミュエル先生に促されて、ダヴィート・コンドラショフ様の足を治すと、目を丸くして避難の際に持ち出したという、ペトリファイドのペンダントをくれた。赤みを帯びたペトリファイドの中に金色が閉じ込められていて、ロマンサ北方国ではこういったペトリファイドを「ペルクナスの心臓」と呼ばれているそうだ。
「ペルクナスの心臓、ですか?」
「我が国に伝わる雷帝の名がペルクナスだ。閉じ込められた金が稲妻のように見えるだろう?我が国ではペトリファイドは珍しくないが、ペルクナスの心臓と呼ばれる物はそこまで多くない。とはいえ、ありふれた物ではあるがな」
「このような物をよろしいのでしょうか?」
「子供が遠慮するでない。いや、子供ではないか。とにかく、ロマンサ北方国民を救ってくれているのだ。礼と思って受け取ってくれ」
チラッとサミュエル先生を見ると、頷かれた。
「ありがとうございます。大切にいたします」
ダヴィート・コンドラショフ様は満足げに頷くと、足の痛みが無くなったと喜びながら、ファレンノーザ公爵と談笑しながら立ち去っていった。
それを見送って、サミュエル先生が呟く。
「ペルクナスの心臓かぁ。ありふれた物と言っていたけど、十分希少で貴重な物だよ」
「私だって分かっております。ですからお伺いを立てましたのよ?」
「でも受け取らないと面倒……煩わしい事になりそうだったからね」
そうよね。ダヴィート・コンドラショフ様って、特権階級者としてプライドが高いタイプだと思ったもの。別に傲慢じゃない。でもどことなく「自分に逆らうなんて、あり得ない」「下々の事も気にかけてやっている」という感情が透けているというか、私達の事も見下している感じがひしひしと……。
「次に行こうか」
「はい」
まぁ、私とサミュエル先生のする事は変わらない。他の光魔法使い達と協力して、浄化と治療を進めるだけだ。
この場にはお医者様もいる。そのお医者様の指示で他の光魔法使い達は動いている。
私はサミュエル先生が側に居てくれるから、ある程度自分の裁量で動けている。治癒はたまにしか使っていない。私の役割は主に変色した人達の浄化だ。治癒をしているのはサミュエル先生と一緒にいてくれる光魔法使い達。
「私、お役に立てているのでしょうか?」
「光の聖女様が役に立っていないのなら、私達みんな、役立たずですよ」
「浄化を引き受けてくれるから、治癒に専念出来るんだってもんですよ」
皆さんの心遣いがありがたい。
その日の区画を終えて、熊さんの所に戻ってきた。今から熊さんの浄化を試みる。
ダヴィート・コンドラショフ様から頂いたペトリファイドは、服の中に隠して、お座りをしている熊さんの前に立つ。
さて、どうやって浄化しようかしら?ウサギさんは抱き上げて何度も撫でて浄化した。でも熊さんは大きすぎて抱えられないし、反対に抱えられてしまう気がする。
5人の兵士が、私と熊さんを囲んだ。抜いてはいないけど帯剣していて、不測の事態に備えてくれる。
サミュエル先生が結界で私達を囲んだ。
「えっと、熊さん?手を出してくれる?」
話しかけたら言った事が分かったように、片手を出してくれた。ついでに周りを取り囲んでいる人達が、ハラハラしているのが感じ取れてしまった。
熊さんの手を取る。大きいなぁ。私の手より大きい。両手で包み込むように……出来ないね。いいや。硬めの肉球に触れて、少しずつ浄化を発動する。
最初に戻ったのは目の色だった。爛々と輝く金色の瞳。でも穏やかで危険という感じじゃない。
次いで体毛の色が変わっていく。黒から明るい茶色へ。
集中しているから暑さは感じていないけど、頬を汗が滴っていくのが分かった。魔力もぐんぐん減っていく。
「キャシーちゃん、止めなさい」
サミュエル先生に制止された。
「止められません。もう少しだけ。お願いします」
「駄目だよ。顔色が悪い。これ以上は無理をさせられない」
熊さんがサミュエル先生の言葉を分かったように、手を引き抜いた。私を傷付けないようにそっと、ゆっくりと。
「熊さん?」
熊さんを見上げたらクラっとした。頭の部分が茶色っぽい金毛に変わっているのが見てとれた。
「その熊だって分かってる。キャシーちゃんに無理をしてほしい訳じゃないんだよ」
「……はい」
「良い子だね」
良い子って、この場合「大人の言う事を素直に聞く良い子」って事よね?
私は場所を借りて、手早く着替えを済ませた。その間にサミュエル先生が、医療や浄化が必要な場所を聞いておいてくれた。
「サミュエル先生、お待たせいたしました」
「すっかり雰囲気が変わったね。行こうか」
案内のフェアールカク辺境領の兵士の後に付いていく。護衛としてエリックとリオンとシェリーも一緒だし、ダニエル様とマリアさんも一緒だ。
案内されたのはルカク連峰に程近い、ロマンサ北方国の避難民の居住区。その中でも治療が必要な人が多い区画だった。
「じゃあキャシーちゃん、手分けして治療していこうか」
サミュエル先生と手分けをして、治療を始める。全体的に栄養失調の人が多い。後は逃げる時にだろうか?転倒時に出来た怪我を放置した事による感染症。
髪や目が黒く、皮膚が変色した人もいる。その人達には希望を聞いて浄化をかけていった。ほとんどは特に体調に変化は無いけれど、やっぱり以前の色に戻りたいと言う人だった。けれど中には居たのよね。皮膚だけ治してほしいとか言う人。それは無理だと答えたら、ひどく落胆された。
変色の治癒率は、私が8割、サミュエル先生は5割程。人の他にもペットらしき動物の浄化も頼まれてしまった。
「お願いします!!」
「お願いしますって、これって熊よね?」
そう。頼まれたのは黒い熊さん。毛色も黒くて目も黒いから、迫力がね。大きさは四つ足で私の身長と同じ位。立ち上がったら3メートル位あった。
大人しいのよ?ちゃんとハーネスもリードも着けているし。ごっつい革製だけど。愛嬌もある。でもやっぱり怖いのよ。
「ちょっと待っていてくれるかな?人を先に治してしまいたいし」
サミュエル先生がそう提案してくれた。熊さんの飼い主は納得してくれたんだけど、周りの人に次々に熊さんの浄化を頼まれた。なんとこの熊さん、ルカク連峰を越える時に襲ってきた、ロマンサティグルーや熊や狼から人々を守ったらしく、みんな感謝してるんだって。
人の治療と浄化が終わらないと、熊さんの浄化は出来ない。学院で浄化したのはウサギさんだったし、小さかったからそこまで魔力も使わなかったけど、この熊さんだとどれ位魔力を使うんだろう?
熊さんの前に人間の治療をしないとね。1区画が終わると、次の区画へ。
そこにはロマンサ北方国のストボヤールと呼ばれる特権階級の人達が居た。スタヴィリス国で言う貴族階級だ。
「ほぉ、公爵に侯爵か。そのような身分の者が働いているとは」
グベールニヤと呼ばれているのが、スタヴィリス国で言う公・侯・伯辺りまで、ウエーズドと呼ばれているのが伯・子・男らしい。伯爵階級は2つの階級に跨がっていて、単純に分けられないんだって。
目の前にいるのはグベールニヤのダヴィート・コンドラショフ様。この方は足を痛めていて、歩くのが困難だとの事。ストボヤールだからと私達が呼ばれた。ファレンノーザ公爵も側にいる。こっちは身分証明と非公式な協議の為なんだって。ダヴィート・コンドラショフ様が治ったら、フェアールカク辺境伯と3人で話し合いをする予定らしい。
「光魔法使いとは珍しい。このように幼い子供まで働いておるとは」
幼い子供……。良いですけどね。
「彼女はデビュタントを終えてますよ。未成年ではありますが」
「おや、これは失礼した」
「いいえ。お気になさらず」
サミュエル先生に促されて、ダヴィート・コンドラショフ様の足を治すと、目を丸くして避難の際に持ち出したという、ペトリファイドのペンダントをくれた。赤みを帯びたペトリファイドの中に金色が閉じ込められていて、ロマンサ北方国ではこういったペトリファイドを「ペルクナスの心臓」と呼ばれているそうだ。
「ペルクナスの心臓、ですか?」
「我が国に伝わる雷帝の名がペルクナスだ。閉じ込められた金が稲妻のように見えるだろう?我が国ではペトリファイドは珍しくないが、ペルクナスの心臓と呼ばれる物はそこまで多くない。とはいえ、ありふれた物ではあるがな」
「このような物をよろしいのでしょうか?」
「子供が遠慮するでない。いや、子供ではないか。とにかく、ロマンサ北方国民を救ってくれているのだ。礼と思って受け取ってくれ」
チラッとサミュエル先生を見ると、頷かれた。
「ありがとうございます。大切にいたします」
ダヴィート・コンドラショフ様は満足げに頷くと、足の痛みが無くなったと喜びながら、ファレンノーザ公爵と談笑しながら立ち去っていった。
それを見送って、サミュエル先生が呟く。
「ペルクナスの心臓かぁ。ありふれた物と言っていたけど、十分希少で貴重な物だよ」
「私だって分かっております。ですからお伺いを立てましたのよ?」
「でも受け取らないと面倒……煩わしい事になりそうだったからね」
そうよね。ダヴィート・コンドラショフ様って、特権階級者としてプライドが高いタイプだと思ったもの。別に傲慢じゃない。でもどことなく「自分に逆らうなんて、あり得ない」「下々の事も気にかけてやっている」という感情が透けているというか、私達の事も見下している感じがひしひしと……。
「次に行こうか」
「はい」
まぁ、私とサミュエル先生のする事は変わらない。他の光魔法使い達と協力して、浄化と治療を進めるだけだ。
この場にはお医者様もいる。そのお医者様の指示で他の光魔法使い達は動いている。
私はサミュエル先生が側に居てくれるから、ある程度自分の裁量で動けている。治癒はたまにしか使っていない。私の役割は主に変色した人達の浄化だ。治癒をしているのはサミュエル先生と一緒にいてくれる光魔法使い達。
「私、お役に立てているのでしょうか?」
「光の聖女様が役に立っていないのなら、私達みんな、役立たずですよ」
「浄化を引き受けてくれるから、治癒に専念出来るんだってもんですよ」
皆さんの心遣いがありがたい。
その日の区画を終えて、熊さんの所に戻ってきた。今から熊さんの浄化を試みる。
ダヴィート・コンドラショフ様から頂いたペトリファイドは、服の中に隠して、お座りをしている熊さんの前に立つ。
さて、どうやって浄化しようかしら?ウサギさんは抱き上げて何度も撫でて浄化した。でも熊さんは大きすぎて抱えられないし、反対に抱えられてしまう気がする。
5人の兵士が、私と熊さんを囲んだ。抜いてはいないけど帯剣していて、不測の事態に備えてくれる。
サミュエル先生が結界で私達を囲んだ。
「えっと、熊さん?手を出してくれる?」
話しかけたら言った事が分かったように、片手を出してくれた。ついでに周りを取り囲んでいる人達が、ハラハラしているのが感じ取れてしまった。
熊さんの手を取る。大きいなぁ。私の手より大きい。両手で包み込むように……出来ないね。いいや。硬めの肉球に触れて、少しずつ浄化を発動する。
最初に戻ったのは目の色だった。爛々と輝く金色の瞳。でも穏やかで危険という感じじゃない。
次いで体毛の色が変わっていく。黒から明るい茶色へ。
集中しているから暑さは感じていないけど、頬を汗が滴っていくのが分かった。魔力もぐんぐん減っていく。
「キャシーちゃん、止めなさい」
サミュエル先生に制止された。
「止められません。もう少しだけ。お願いします」
「駄目だよ。顔色が悪い。これ以上は無理をさせられない」
熊さんがサミュエル先生の言葉を分かったように、手を引き抜いた。私を傷付けないようにそっと、ゆっくりと。
「熊さん?」
熊さんを見上げたらクラっとした。頭の部分が茶色っぽい金毛に変わっているのが見てとれた。
「その熊だって分かってる。キャシーちゃんに無理をしてほしい訳じゃないんだよ」
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