3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 7学年生

救援活動 ②

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 結局その日は、宿舎として宛がわれた辺境伯の平屋の一室に、護衛のエリックとリオンによって、運び込まれてしまった。抵抗しても無駄なのは分かってる。あの後、立ってられなくて倒れそうになって、サミュエル先生とファレンノーザ公爵に支えられたから。側に居てくれたサミュエル先生はともかく、ファレンノーザ公爵はどこから飛んできたの?サミュエル先生の結界があったよね?

 そして今、私の座っているソファーの前に、仁王立ちになった2人がいる。

「キャシーちゃん、無理はしない約束だったよね?」

「はい。あ、でも……」

「言い訳はするでない。倒れたらどうするのだ?光の聖女様は自らの影響力を、もう少し考えられよ」

「……はい」

「返事は良いんだよね、返事は」

「可愛らしく従順そうに見えて、中身は正反対だからな」

公爵プリンスもそう思われますか?」

「ミザリア領でいやと言うほどな。このお嬢さんときたら、フラフラになりながら治療を続けようとするし、自分の事は後回しだ。何度ハラハラさせられたか」

「普段は淑女として立派にやれているし、我が身を省みない時はほとんど無いんですけどね。成績も優秀だし、何事にも一生懸命だし」

「学院ではそのような感じなのか?」

「外見に騙されるなというのは、学院でも変わりませんよ。光魔法使用時もかなり気を付けていますし」

 ファレンノーザ公爵とサミュエル先生が、話しているのを黙って聞いていた。どうでもいいけど、目の前で本人の事をあれこれ言わないで欲しい。「そんな事は無い」って何回叫びそうになったか。

 目の前で仁王立ちされていては、コッソリ逃げる事も出来ないんだよね。

 まぁ2人のお説教は愛のある物だと分かっているし、私の事を思ってくれているのも理解している。命を救う事に関して私が暴走してしまうのは、許して欲しいとは言わないけど、少しだけ理解して欲しい。きっとこの性格は直らないと思うから。

「キャシーちゃん?聞いてる?」

「聞いてます。反省もしてます。でもきっと次もやります」

「そこで自信満々に言い切らないでよ」

「反省はしてるんですよ?でも後悔はしてません」

「そこも言い切られては困るのだが」

 2人に苦い目で見られてしまった。

 翌日は最初に熊さんの浄化の続きから始めた。昨日の浄化を見ていた人達から、自分達は後回しで良いから、先にミハエル熊さんの浄化をと、ファレンノーザ公爵とサミュエル先生が頼まれたのだそうだ。ものすごく低姿勢で、でも強引に頼み込まれたと、サミュエル先生が笑っていた。過保護な人が増えて、監視の目が多い。サミュエル先生とファレンノーザ公爵の他にもエリックとリオンとシェリーも、領民やロマンサ北方国の人達の相手をしながら、私を見ているし。

「ミハエル、また手を出してくれる?」

 そっと熊さんの手が、私の手に乗せられた。本当に大人しくて良い子だ。

 熊さんの名前はミハエルだったそうで、私も今朝からその名前を呼んでいる。

 ミハエルの硬い肉球に触れて、浄化を始める。体毛の色が徐々に変わっていく途中で、その怪我に気が付いた。左大腿部の辺りに大きな噛み跡がある。

「ミハエル、これって治しちゃっても良い?」

 大きく首が縦に振られた。浄化を続けながら、治癒を行う。胸元に隠したペルクナスの心臓のペンダントから暖かい魔力が流れ込んできた。

 同時に脳裏に浮かぶ、黒と紫のマーブル状のモヤとそれを纏ったロマンサティグルー北方虎との戦い。ロマンサティグルー北方虎に噛み付かれながらも、その強靭な爪でロマンサティグルー北方虎を引き裂き、人々を守り戦い続けた。その光景がミハエル視点で浮かんだ。

 ミハエルの痛み、苦しみ、恐怖と、人々を守りたいという想いが伝わってくる。自らも黒と紫モヤに纏わりつかれ、破壊行動を刺激されながら、それでも人々を守る事を選んだミハエル。

「キャシーちゃん?」

「光の聖女様?」

 そっとミハエルの手が私を撫でた。硬い体毛はすっかり黒から変化して、明るい茶色へ戻っている。

「ミハエルは強いね」

 グルッとミハエルが低く鳴いた。お返事みたいで可愛い。金色の目が私を見た。直後に顔が近づいて生暖かい大きな舌が、私の顔を舐めた。

「きゃあぁ」

「キャシーちゃんっ」

 嫌な感じはしないけどびっくりした。うーん、顔がベタベタする。水魔法の清浄で顔を綺麗にして、風魔法で乾かした。

「キャシーちゃん、ちょっとこっちにおいで」

 お座りをして私に手を振るミハエルを置いて、ファレンノーザ公爵とサミュエル先生が私を物陰に引っ張り込んだ。

「どうなさったのですか?」

「光の聖女様、その胸元に隠しているのは、昨日のペンダントだな?」

「はい。昨日頂いたペルクナスの心臓のペンダントです。これを着けていると、暖かくて気持ちいい感じがするんです」

「暖かくて気持ちいい?」

「先程も助けてくれるかのように、魔力が流れ込んできました」

ペトリファイド琥珀から魔力が流れ込む?聞いた事がないが」

「キャシーちゃん、魔力にはまだ余裕があるよね?」

「はい」

「今回のロマンサ北方国の件とは無関係……。関係あるのかな?ひとり怪我人を診て欲しいんだ」

「怪我人ですか?サミュエル先生が診察されたんですよね?」

「本人の希望だよ。に頼みたいっていうね」

わたくしに?」

「学院の先輩に当たるからね。私はほとんど関わっていないし」

「分かりました」

「では俺はその間辺りを見回ってこよう」

 ファレンノーザ公爵は大股で歩いていった。

 サミュエル先生に案内されたのは、フェアールカク辺境伯の領城というか砦みたいな堅牢な建物の中。

「ブランジット様、申し訳ございません」

「いいよ。キャスリーン・フェルナー嬢光の聖女様を連れてきた。案内してやってもらえるかな?」

 執事と思わしき男性に案内された先は、大きな一室。執事と交代した侍女の後ろをサミュエル先生と付いて行くと、寝室に案内された。広いなぁ。侯爵邸と同じ位?辺境伯なら当然かな。

「ブランジット先生、来てくださいましたのね」

キャスリーン・フェルナー嬢光の聖女様を連れてきたよ」

 サミュエル先生に紹介されたから、挨拶をする。

「キャスリーン・フェルナーでございます」

「ご無理を申しました。わたくし、ソフィア・フェアールカクと申します。ローレンス様とは同級として、良くしていただきましたのよ」

 ねぇ。なんとなく敵がい心というか、敵意を感じる。

「本日はどうなされたのでしょうか?」

「ロマンサ北方国の皆様が、押し寄せてこられましたでしょう?わたくし、怖くって。それでね。この地に光の聖女様が来られたと伺いまして。お目通りをと」

 何が言いたいの?

「先生、フェアールカク様はどこかお悪いのじゃございませんでしたの?」

「そうなんだよね。山歩きをしていて足を滑らせて、骨折をしてね。骨折は治したんだけど、高熱が下がらなかったのと、今は心拍数や呼吸数の増加、目眩めまいとふらつきを頻繁に訴えていてね」

「心拍数と呼吸数の増加に目眩めまいとふらつき……。フェアールカク様、少し失礼いたします」

 少し強引にフェアールカク様の手を取る。それと分かるほど、熱い。脈拍を測ると、聞いた通り速かった。

 そのまま光魔法を使う。

「フェアールカク様、意識が朦朧もうろうとしたり、瞬間的に意識が飛んだり、短時間の意識消失はございませんか?」

「え?えぇ。ございますわね」

「キャシーちゃん?診断は?」








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