3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 7学年生

サプライズ

 目が覚めると、ちゃんとベッドで寝ていて、驚いた。昨日はリーサさんに抱き付いて泣いちゃって……そのまま寝ちゃったの?もしかして。うわぁ、恥ずかしい。

 ドレッサーで確認すると、目が少し腫れている。泣いちゃったし仕方がないんだけど。さっさと治癒をかけて、着替える。

 前ボタンがたくさん付いた可愛いワンピースに、フワフワのカーディガンを羽織って準備をしていると、リーサさんのお屋敷のメイドさんが入ってきて、私を見てものすごぉくガックリしていた。

「あの?」

「光の聖女様のお目覚め顔を、拝見出来ると思ったのにぃぃ」

「ご、ごめんなさい。学院で1人で出来るようにって生活してるから」

「いいえ、良いんです。ちょっと願望が漏れ出ただけですから。おはようございます。よくお休みになられましたか?」

「えぇ。こんなにぐっすり眠れたのは、久しぶりだわ」

「それは良うございました。朝食までもう少し時間がございますが、どうなさいますか?温かいお飲み物もご用意出来ますが」

「お白湯をいただける?」

「白湯、ですか?」

「いつもね、お白湯を飲んでいるの。お願い出来る?」

「はい」

 備え付けられている、ボーンアッシュ磁器のティーポットからティーカップに注いでくれた白湯を、ゆっくりと時間をかけて飲む。こんな時間も久しぶりな気がする。ローレンス様が行方不明になってから、夜も眠れていなかったし白湯も飲んでいなかった。

「リーサさん達は?もう起きていらっしゃるかしら?」

「リーサ様は起きていらっしゃいます。セシル様とララ様は夢の世界からまだ戻られておられません」

「そう。皆様、昨日は遅かったのかしら?」

「さほどは。光の聖女様がお休みになられて少しして、皆様お部屋に戻られました」

 朝食のダイニングに行くと、リーサさんが配膳を手伝っていた。

「おはようございます、リーサさん。昨日は申し訳ございませんでした」

「良いのよ。良く眠れた?」

「はい。久しぶりに」

「良く顔を見せてちょうだい。良いわね。居座っていたクマさんが消えているわ」

 頬を挟んでじっくりと私の顔を見たリーサさんに、にっこりと微笑まれて頭を撫でられた。

「うふふ。今日はお客様がいらっしゃるの。おしゃれして可愛くなりましょうね」

「お客様ですか?」

「えぇ。さ、朝食を食べてしまいましょう。お寝坊さん達は放っておいてね」

 朝食はスクランブルエッグとソーセージと小さなパンケーキのような物。

「プラツキっていうのよ。ジャガイモと小麦粉で作るパンケーキね」

 少しだけ食べてみた。優しい味がする。

「美味しいです」

「全部食べられそう?」

「全部食べたら、たぶん昼食は食べられないです」

「そう。無理はしないで?」

「はい。このパンケーキ1枚だけでも良いですか?」

「えぇ。食べられるのならそれで良いわ。無理だけはしないで」

「ありがとうございます」

 リーサさんと朝食を終えて少しすると、セシルさんとララさんが起きてきた。

「早くない?2人共」

「そうですか?」

「眠れたみたいね。良かったわ」

「ご心配をおかけしました」

「そんな事、気にしなくて良いのよ」

 セシルさんとララさんが朝食を食べている間に、少しだけ離れてローレンス様の無事を祈る。

 この場にローレンス様が居ないのが寂しい。この場は転生者ばかりだから居なくて当然なんだけど。

「キャスリーンちゃん」

「キャシーちゃん」

「キャスリーンちゃん、気は済んだ?」

「申し訳ございません。お待たせしていますか?」

「そんな事無いわよ。さ、お着替えしましょ。メイクもヘアアレンジもね」

わたくしだけですか?」

「みんなよ、みんな。こっちに来てちょうだい」

 案内された部屋には、トルソーに着せられたドレスが4着、待っていた。

「これがキャスリーンちゃん、こっちがララちゃん、これがリーサで、これが私の」

「これって……」

「夏にね、注文を受けたの。姉妹コーデよ」

 注文って誰から?

 私のドレスはイエローとライトブルーのオーガンジーで、パステルイエローのドレスに淡いブルーを重ねてあった。イエローとブルーが重なっているからグリーンにも見える可愛いドレスだ。差し色なのかウェストマークがサファイアブルーで、ローレンス様の瞳を思い出してしまった。

「じゃあ、お願いね」

 メイド達が、それぞれに着付けていく。背中にある小さなボタンをメイドにかけてもらって、自然と背筋が伸びていく。

 ヘアメイクも施してもらって、4人の変身が終わった頃、玄関のチャイムが鳴った。

「あ、いらっしゃったみたいね」

「お客様ですか?」

「えぇ。間に合って良かったわ」

 私は今日のお客様が誰なのかを知らない。ララさんとセシルさんは何かを知っているようで、ちょっとワクワクした顔をしている。

「やぁ、お邪魔するよ」

「いらっしゃいませ、ラッセルさん。レオナルドさん。後ろの方は……え?」

「紹介するよ。炎の聖人であられるヴァルター・バルテン様だよ」

「はっ、はじめまして。ちょっと、ラッセルさん、聖人様がいらっしゃるなんて聞いてなかったんだけど」

 炎の聖人と紹介されたのは、お義父様と同じ位の年齢の、燃えるような赤い髪を持った浅黒い肌の男性だった。横にも縦にも大きくて、私だと見上げなければ目線が合わない。

「聖人などと呼ばれちゃあいるが、ただの火魔法の得意なオヤジだと思ってくれりゃ良い。綺麗所がこんなに居るとは驚い……た。は?」

 炎の聖人様と目が合った。

「貴女が光の聖女候補の方か?」

 炎の聖人様に膝を付いて話しかけられた。

「はい。はじめまして。キャスリーン・フェルナーと申します」

「俺はヴァルター・バルテン。炎の聖人だ。しかし小さいな。ちゃんと食べているか?」

 ひょいっと抱き上げられて、座らせられた。

「聖人様だからって、その人に触れんじゃねぇよ」

「良いじゃねぇか。しかし軽いな。どこも悪くねぇか?」

「あの、今は少し……」

「何があった?キャス……。フェルナー嬢」

「……」

 答えられなくて俯いてしまった。

「レオナルドさん、ちょっとこっちへ」

 リーサさんがレオナルドさんを連れて、部屋を出た。

「ラッセルさんは知っているのよね?」

「概要は聞いたけどね。フェルナー嬢、大丈夫かい?」

「ちょっと大丈夫じゃありません」

「そうだろうね。無理はしないようにね」

「何の話だ?カミーユ」

「ちょっとデリケートな問題なんだよね」

「言いにくい事か?」

「彼女の前ではね」

「ふむ」

 炎の聖人様はジッと私を見た後、私を降ろしてソファーに座らせた。

「しばし離れる。良い子にしていると良い」

 完全に子供扱いされているよね。

 炎の聖人様とラッセル様が隣室に消えて、入れ替わりにレオナルドさんとリーサさんが戻ってきた。

「フェルナー嬢……」

「気を使われると、かえって辛くなると思うわよ。キャスリーンちゃんは頑張って頑張って、今、必死に自分を保っているの。私だったら泣き喚いてとんでもない事になっていると思うわ。母が亡くなった時、そんな感じだったし」

「あんたも波乱万丈な人生を歩いているよな」

「キャスリーンちゃんには負けるわ」

「勝ち負けの問題かよ」

「違うわよ。何を言ってるの?」

「俺が悪いのかよ!?」

「そうよ。女に恥をかかせるものじゃないわ。こういう場合は黙って全ての罪を引き受けるのが、良い男ってものよ」

「良い男というか、都合の良い男だろ?」

「分かってるじゃない」

「なんだって女には口で勝てねぇんだか」

「そんなの、神様が男に力を、女に頭脳を与えたからに決まってるわ」

「ちょっと待て。その言い方だと男は総じて馬鹿って事にならないか?」

「やぁねぇ。被害妄想よ。男が馬鹿なんて思っていないわ。少しだけしか」

「思ってんじゃねぇか」

 私は何を見せられているのでしょう?夫婦めおと漫才?




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