3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

閨教育 ②

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「なんだか、疲れてしまいましたわ」

 教室に戻って、イザベラ様がグデッと机に身を投げ出す。いつもキリッとしているイザベラ様には珍しい姿勢だ。私達もこんな風になる事は無いのだけど、イザベラ様は特にいつも背筋をシャンと伸ばした美しい姿勢を保っている。

「お珍しいですわね、イザベラ様」

「男性の腕って、あんな感じなのですね」

「そうですわね。腕に限らずあんな感じだと思いますわ。ノーマン様も同様ですわよ?」

「キャスリーン様、マイクさんに触れても良いと言われた時に、よく最初に手を上げられましたわね」

「ミーア先生に頼まれておりましたから」

「え?」

わたくしは救民院で奉仕をしております。それに前世の記憶もございますから、腕に触れる位は何とも思いませんわ。それよりも称賛されるべきは、リリス様ですわ」

「私は、キャスリーン様が先に見本を見せてくださいましたから。頼まれていても、あのように行動は出来ません」

「ガブリエラ様は行かれませんでしたわよね?」

わたくしは、その……」

 ガブリエラ様は、薬草研究会でイグニレス・ゲイツに甘えて、腕をツンツンしたりしてますからねぇ。チラッと見ると、プイッとあらぬ方向を向かれちゃったけど。

「ガブリエラ様?」

「何でもございませんわ」

 ところで先輩方が言っていた、「けっこう攻めた内容」ってなんだったのかしら?あの程度って思ってしまうのは、前世の記憶があるから?みんなの興奮は覚めやらない状態だったけど、今日の授業はこれで終わりだ。男性生徒はまだ帰ってきていないけど、女性生徒はこれから自由時間だと言われている。さっきの授業内容についても、ミーア先生は個人的に質問があるなら、いつでも来てもらっても良いと言っていた。

 後はピアスか。夏期休暇直前にピアス販売の宝飾業者が、来てくれるのよね。私達は関係無いけど。

「キャスリーン様、リリス様。救民院には決まった日に行くんですの?」

「特に決まってはおりません。キャスリーン様は他のご用事でお忙しくされておりますけれど、私はほぼ毎日伺っております。あちらでお医者様のお話を伺うのも、勉強になりますし」

「ピアスはいつお渡ししましょうかしら?」

「1度集まりません事?」

「その時にピアスホールを開けますか?」

「誰の家で?という問題が残りますわねぇ」

 3人がわちゃわちゃと話し合っている。主に話しているのはイザベラ様とガブリエラ様だけど。

「キャスリーン様、何か気にかかる事でもございますの?」

「リリス様」

「先程から考えておられますよね?」

「えぇ。先程の授業なのですけれどもわたくしは少し足りないと思いましたの」

「足りないって、先程の、その夫婦生活についてですか?」

 リリス様が真っ赤になりながら、私を見る。

「そちらではございませんわ。もちろんそちらも大切ですけれど。端的に申しますと、女性が妊娠出産に至る過程と、その危険性ですわね」

「危険性ですか?出産で命を落とす女性は多いですけれど」

「その事を理解しているのは、そこまで多くない気がいたしますの」

「そうですね。私は医師資格の講座で知りましたけれど、知らない方も多いですよね」

 性感染症については、女性だけでなく男性も気を付けなければならないし、私でなくもっとも説得力がある人に頼んだ方がいい気がする。詳しいお医者様とか居ないのかしら?

 私ひとりで考えていても、どうにもならないんだけど。

「キャスリーン様、私が力になれる事があるなら、お申し付けくださいね?おひとりで悩まないでください」

「えぇ。ありがとうございます。その際はお声掛けいたしますわね」

 私とリリス様が話していると、イザベラ様とガブリエラ様の話し合いも終わったらしい。

「キャスリーン様、リリス様、決まりましたわ」

わたくしの家に集まりましょう。その時に我が家ウォーリィ家のお医者様に、ピアスホールを開けていただきましょう」

「お家の方にご相談せずともよろしいのですか?」

「4人お揃いのピアスを頼んだ時点で、話はしていますわ。もしかしたら、という不確かな物ですけれど。もう1度確認してみますわね」

「キャスリーン様とリリス様は、何をお話されていましたの?」

「先程の授業についてですわ。わたくし的に納得出来る内容ではございませんでしたので」

 帰寮の準備をして、教室を出る。

「納得出来ませんでしたの?」

「内容が希薄というか、肝心な部分が語られていない気がいたしまして」

「そうなのですか?」

「ミーア先生のお話は、すべての入口部分だと感じましたの。やはりデリケートな話題になってしまいますので、仕方がないと言ってしまえばそうなのですが」

「その内容、わたくし達にお教え願えませんか?」

「イザベラ様?」

「キャスリーン様が必要だと思われる内容なのでしょう?」

「それは……」

 正直に言うと、自分では知っておいてほしいと思う反面、いずれは経験から分かってくる事だから、私がやらなくても良いと思ってしまう。

「少し考えますわ。ミーア先生にもご相談したいですし」

「ブランジット先生には、ご相談されませんの?」

「サミュエル先生は男性ですから。感じ方も受け取り方も女性とは違うと思うのです」

 それに先生も困ってしまうと思うのよね。マリアさんを見ると、静かに肯首こうしゅされた。

「それでしたら今からミーア先生の元に、伺ってみませんか?」

「リリス様?」

「キャスリーン様は先程の授業の内容に、ご納得されていないのでしょう?それならばミーア先生に聞くのが1番良いと思うのです。ミーア先生も何か質問があれば、聞きに来てくださいと言っておられましたし」

「そうですけれど。ご迷惑ではないでしょうか?」

「大丈夫ですわよ。わたくし達もご一緒します」

「イザベラ様」

「キャスリーン様が必要だと思う内容ですもの。聞いておいた方が良いと思うのですわ」

「ガブリエラ様」

「そうと決まりましたら、着替えを済ませますわよ。各自、ペンとノートを持って集合ですわ」

「まぁ、イザベラ様ったら、意欲的ですわね」

 寮に帰って着替えを済ませたら、再度学院に向かう。

「キャスリーン様、希薄だと思われた内容はどんな事ですの?」

「女性の妊娠出産についてです。それとその危険性」

「危険性?」

「出産で命を落とす女性は多いのですけれど、あまり知られていないのです」

「そうですわね。わたくし達は知らない事が多いですわね。そういった事は教えられませんもの」

「あの家の奥様はお子さまの命と引き換えに、なんて話は聞きますけれど、数日は生きておられたと思っておりましたわ。実際にそう聞きましたし」

 救護室の前には何人かの女性生徒が中を覗いていた。

「皆様、何をなさっておられますの?」

 イザベラ様が声をかける。

「ウォーリィ様……」

「覗き見などはしたないですわよ?」

「ウォーリィ様達もそうではございませんの?」

わたくし達は純粋に先程の授業内容について、質問にまいりましたの」

「質問ですか?」

「えぇ。決して浮わついた気持ちではございませんわ」

 いまいち納得はしていなさそうだけど、場所を開けてくれた。ドアをノックすると、ミーア先生の声が聞こえて、みんなで中に入る。

「あらあら、皆様お揃いで。どうしたんですか?」

「キャスリーン様がお聞きしたい事があるそうです」

「そうだと思っていましたよ。フェルナーさん的に、あの内容は不満でしたか?」

「えぇ。肝心な事が話されていないと思いました」
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