3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

夏期休暇

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 医師資格取得試験申し込みに必要な書類は、医師2名からの推薦状と身分を証明出来る物。私の場合は貴族籍の写し。それから修行していた機関の証明書。

 医師2名の推薦状はフェルナー家お抱えの医師、ウェイド医師と、もうひとりは救民院の医師先生、どちらかに頼もうと思っている。貴族籍の写しは、役所的役割の総官庁の窓口に行けば良い。代理だと本人確認に時間がかかるらしく、必ず本人が申請するように言われた。修行していた機関の証明書は救民院、もしくは教会かしら?

 すべき事、行かなければならない所、期日をまとめていく。こういうタスク管理って大切よね?

 夏期休暇直前に、ピアスの販売業者が9学年の教室を訪れた。ファーストピアスとして見せられたのは、前世でいう半貴石やパワーストーン系の石の付いたピアス。ローズクォーツ、ラピスラズリ、タイガーアイ、水晶、アクアマリン、アメシスト、ガーネット、トルコ石、トルマリン、オパール、シトリン等々。ポストやキャッチは金で出来ていると言われた。

 私達も見せてもらったけど、トップ部分の石は小さいながらもある程度の大きさがあって、トップ部分の石は色とりどりで、男性も女性も目をキラキラさせていた。お値段もそこまで高くない。数万rqリクァ程度だ。100rqリクァが10円位かしら?

「色々ございますわね」

「ファーストピアスじゃなくても、ここで買っておいても良さそうですわ」

「キャスリーン様なら、どれを選ばれます?」

わたくしは……そうですわね。あの青いトルマリンですかしら」

「なぜですの?」

「トルマリンは微弱なパルスと遠赤外線の効果で身体の中の血液循環を良くして、筋肉の硬さを良くするような働きがあるといわれておりますの」

 鉱物事典に書いてあったのよね。たぶん書いたのは転生者。カラーリングしてあったけど、パライバトルマリンやパパラチアサファイアなんかもあったもの。そのままのネーミングで。パパラチアはともかく、パライバは地名だったと思ったんだけど。

 私が青いトルマリンを選んだのは、ローレンス様の瞳の色に近かったから。ローレンス様の瞳の色はサファイアブルーで、こういった場には出てこないと思う。

「そうですの?」

「言われているだけですわ。でも、実際にホコリが付きやすかったりするそうですから、後はお心次第かと」

 鰯の頭も信心から、ってね。

 私は買わなかったけど、買っているクラスメートは結構居た。ハートラー領のルベライトを使った物もあって、けっこうな人気だった。

 ピアス販売が終わると、1週間後には夏期休暇を迎えた。

 タウンハウス王都フェルナー邸に帰ると、お義母様のハグが待っていた。なんだか久しぶりな気がする。

「おかえりなさい、キャシーちゃん」

「ただいま帰りました、お義母様」

「今ね、プレシャスペブル宝石商が来ているの。そろそろピアスを開ける時期でしょう?覗いてみない?」

「ファーストピアスは……」

「ファーストピアスじゃなくても、持っておいて損にはならないでしょ?」

 ならないけど。

「着替えだけ済ませてまいります」

「着替えたら、サロンにいらっしゃいね?」

 私室に入って着替える。今回フランが用意してくれていたのは、夏らしい明るめのサマードレス3着。

「フラン……」

「お嬢様のお気持ちも分かりますわ。でもお嬢様、気持ちを切り替えるというのも大切なのでは?」

「そうね。わたくしの気持ち次第。それは分かるのだけど」

 用意されていたドレスから、上半身が青いドレスを選ぶ。裾にいくにつれて空色になっていくから、そこまで暗くはないと思う。

「お髪を整えますね」

 フランが髪を整えてくれて、お義母様が待つサロンに行くと、プレシャスペブル宝石商とお義母様が待っていた。

 プレシャスペブル宝石商の前の宝石箱には、色とりどりの宝石で飾られた、大小のピアス。

 それから別のトレイに乗せられた、金とサファイアを使った大振りのピアス。

「こちらは購入を決めているの。キャシーちゃんへのプレゼントよ。もうひとつ選びなさい」

「もうひとつですか?」

「自分の気に入った物をね」

 気に入ったピアス。ムーンストーンかオパールかで迷っていると、お義母様に声をかけられた。

「どれで迷っているの?」

「ムーンストーンとオパールです」

「どちらも白い色ねぇ」

 お義母様と2人で悩んでいると、プレシャスペブル宝石商が助言してくれた。

「色の付いたムーンストーンもございますよ?」

 プレシャスペブル宝石商が違う宝石箱を開けた。

「こちらは半貴石と呼ばれる宝石でございます。私などは十分に美しいと思うのですが、世間の評価は格下となっておりまして」

「お義母様、わたくしはまだ学院生ですし、こちらでも良い気がいたしますわ」

「そうねぇ。じゃあ、こちらから選ぶ?」

「先程ムーンストーンと申されましたが、このような色の付いたムーンストーンもございます」

 オレンジっぽい石と、金色っぽい石のピアスを見せられた。でも私の目を引いたのは、柔らかく光るピンクの石が付いた、白っぽいピアス。

「このピンクのは?」

「ローズクォーツでございます」

 クォーツ、水晶か。柔らかなホワイトゴールドの丸い台に、シルバーの細い線とローズクォーツが配置してあって、小さな花束のようだ。強すぎない色で控えめなのも気に入った。

「これにします」

「そう?じゃあこれだけ頂くわ」

「ありがとうございます」

 ピアス用の宝石箱に入れてもらって、私室に持っていってもらうように、フランに頼む。

 プレシャスペブル宝石商が帰っていくと、少しだけお義母様とお茶をした。

「キャシーちゃん、夏期休暇中の予定は?」

「医師試験の申し込みに必要な書類を、揃えなければなりません。ですからウェイド先生への面会と、救民院でしょうか。後は貴族籍の写しを発行してもらう為に、総官庁の窓口に行きます。それからウォーリィ家でピアスホールを開けてもらいますの」

「そうだったわね。ウェイド先生が残念がっていたわよ?キャシーちゃんのピアスホールは、自分がって決めていたのにって言って」

「フォローしておきます」

「そうなさいな。それからアルウィンが心配してたわ。あれからどうなったのかって」

「早急に行かないとなりませんね」

「そうねぇ。ねぇ、キャシーちゃん。キャシーちゃんからも説得してくれない?アルウィンったら、奴隷身分からの解放は嫌だって言っていたらしいの。旦那様も困っていたわ。ランベルトは今は大変だし」

「領地でしたっけ?」

「あちらでしごかれてるみたいよ」

 ランベルトお義兄様とお義姉様アンバー様は、今、フェルナー領城に居る。あちらでの業務を学ぶ為だ。ランベルトお義兄様はスペア扱いだったから、領地経営は学んでいても、実践経験がない。だから代替わりの前に経験しておく事が必要となる。

「お義兄様も大変ですわね……。あ、そうだ。お義母様、わたくしも領地経営学を受講しても良いでしょうか?」

「キャシーちゃんも?忙しくなりすぎない?」

「医師試験に通ってしまえば、余裕が生まれます」

「1年あるのよ?」

「やっぱり来年の方が良いでしょうか?」

「そうね……。キャシーちゃんったら、医師試験を1回で合格するつもりなの?難しいって聞くわよ?」

「そのつもりで臨みますわ。失敗してもやり直しは利きますから」

「余裕ねぇ」

 余裕なんて無い。余裕があるように見せているだけだ。私が前世で学んでいたのは看護学で、医師とは勉強内容が似て非なる物だ。だから、ある程度はなんとかなっても行き詰まる事はしょっちゅうだし、その為に必死に勉強している。



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