3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

厄哭の石を持ち歩こう

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 先生との話し合いの10日後の授業後、ディザスターラメンティ厄哭の石がダニエルさんによって私の元に届けられた。

「もしかして、ダニエルさんが取りに行ってくださったのですか?ありがとうございます」

「別にいいけどよ。その、なんだっけ、中身。お嬢ちゃんはよく平気だな」

「哀しみは伝わってきますが、特に不快にはなりませんが?」

「ここまで持ってくるだけでも、破壊衝動みたいな……、うまく言えねぇけど、めちゃくちゃに暴れたくなった。お嬢ちゃんがそれを持ったら嘘みたいに消えたけど」

「そうなのですか?」

 私がディザスターラメンティ厄哭の石から感じるのは、孤独や悲しみだ。ダニエルさんの言うように破壊衝動に駆られる事はないし、他の人が言うように憎悪感を感じる事もない。

 これ、どうしよう。持ち歩くなら何か袋状の物が要るけど、シャトレーヌ腰下げ式アクセサリーレティキュール手提げバッグしかないわよね。ララさんはぬいぐるみと同じようにって言っていたらしいし。

 でも、苦手なのよね、お裁縫。この世界にはソーイングマシーンミシンはある。私は前世はともかく、今世では触った事がない。手縫いだと縫い目に笑われているような気になるし。ハハハハハって。縫い目が揃わないのよ。

 どうしようかしら。

 寮に帰る道の途中で悩んでいたら、ガブリエラ様に声をかけられた。

「キャスリーン様、こんな所でどうなさいましたの?」

 まぁ、寮までの帰り道のど真ん中で、立ち尽くしていたら不審に思うわよね。

「ガブリエラ様、握り拳の大きさの物が入る何かと聞いて、何が思い浮かびます?」

「キャスリーン様がお持ちの箱とか、後はドローストリングバッグ巾着袋でしょうか?」

ドローストリングバッグ巾着袋……」

「ご入り用ならお作りいたしますけれど?」

「お願い出来ますでしょうか?」

シャトレーヌ腰下げ式アクセサリーレティキュール手提げバッグ、どちらになさいます?」

「早く作れるのはシャトレーヌ腰下げ式アクセサリーですわよね?」

「そうですわね。ではシャトレーヌ腰下げ式アクセサリーでよろしいでしょうか?キャスリーン様に似合う刺繍もお入れいたしますわね」

「ありがとうございます」

 ガブリエラ様にディザスターラメンティ厄哭の石の詳しいサイズを言うと、何度も頷いていた。本当は実物を見せた方が良いのだろうけどね。ディザスターラメンティ厄哭の石を他の人に見せて、どんな影響が出るか分からないし、止めておいた。

 5日後、ガブリエラ様からシャトレーヌ腰下げ式アクセサリーが手渡された。しっかりした厚手の生地で作られた、パステルグリーンのシャトレーヌ腰下げ式アクセサリーで、可愛らしい花々が刺繍してある。

「スゴいですわ」

「お針子部にちょうどいい布がございましたの。お気に召されたようですわね。ホッといたしましたわ」

 腰に巻いたチェーンベルトにドローストリングバッグ巾着袋を付ける。まだ中には何も入っていないけれど、違和感もなくて小花の刺繍も可愛らしい。

「お似合いですわ」

「ガブリエラ様のおかげですわね」

 この中にディザスターラメンティ厄哭の石を入れて、いろんな景色を見せてあげたい。学院の中だけだけど、それでも今までタウンハウス王都フェルナー邸の私の部屋の奥に押し込んであったし、連れ出してやったら楽しいよね?

 って、ディザスターラメンティ厄哭の石を生物のように考えちゃってるけど、こういう事で良いのかしら?

 今は授業前だし、寮には戻れない。ガブリエラ様が寮を出る前に渡してくれたら、ドローストリングバッグ巾着袋に入れて持ってこられたのに。

 そんな事を考えていたら、マリアさんに怪訝そうに見られてしまった。

「キャスリーン様?」

「明日からが楽しみですわ」

「楽しみですか?」

 ディザスターラメンティ厄哭の石ドローストリングバッグ巾着袋に入れた状態でも、結界を張っておいた方が良いのかしら?

「マリアさん、今日の授業後、サミュエル先生にお会い出来ますかしら?」

「大丈夫だと思いますが、予定を伺っておきます」

 その日の授業後にサミュエル先生の部屋に行ったら、私のよく知るお客様が居た。第2王子だ。

「やぁ、光の聖女様、お邪魔してるよ」

「第2王子殿下にご挨拶申し上げます」

「今日は報告をと思ってね」

「報告ですか?」

「サフィアのお腹に新しい生命が宿ったよ」

「おめでとうございます。サフィア様にもお祝いをお伝え願えますか?」

「もちろんだよ。それでね、ロシュフォール嬢にもお礼を言っておいてもらえないかと思って」

「喜んで承りますわ。セシルさんも喜ぶと思います」

「それを伝えたくてね。長居をさせてもらった。サミィ兄様、お邪魔しました」

「気を付けて帰りなさい。王宮に戻る時期は、相談に乗るからね」

「お願いします」

 第2王子が帰っていった。

「サミュエル先生は、第2王子殿下に慕われておられるのですね」

「慕うというか、王子教育の教師もやっていたからね。逆らえないだけじゃないかな?言って聞かない時には、容赦なく鞭や拳骨で躾たし」

 暴力反対。でもこれが普通だったりするのよね。

「それで、どうしたんだい?」

ディザスターラメンティ厄哭の石を入れて持ち運べる、ドローストリングバッグ巾着袋を作っていただきましたの」

「自分で作ったんじゃなく?」

わたくし、お裁縫は苦手ですの。ソーイングマシーンミシンは触った事がないですし、手縫いだと縫い目に笑われているような気になるんですもの」

「縫い目に笑われるって面白い表現だね」

「それはどうでも良いのですわ。このドローストリングバッグ巾着袋ディザスターラメンティ厄哭の石を入れて持ち歩く場合、結界も張った方が良いですわよね?」

「そうだね。今は入ってないんだよね?」

「はい」

「じゃあ明日。明日にはブレシングフォグ聖恵霧ディザスターラメンティ厄哭の石に吹き掛けてみよう。キャシーちゃんの側にあれば、そう心配ないと思うんだよね」

「その根拠は?」

「ダニエルだよ。ダニエルはディザスターラメンティ厄哭の石を持っていた間の衝動が、キャシーちゃんが持ったら消えたと言っていた。私はね、そういう感覚は本人にしか分からないと思っている。だから言葉にして出した感情表現を信じているんだ。ま、本心を取り繕う人に囲まれていたというのも、言葉にして出した感情表現を信じる一因だけどね」

「そのわりには、先生ご自身は感情を隠されますわよね?」

「大人だからね。特に外交ではいちいち露骨な感情を出していたら、足を掬われる」

「大袈裟なほど感情を出す方も、本心は掴みにくいですけれど?」

「そうだね」



 翌朝、起床し朝食をいただいたら、ディザスターラメンティ厄哭の石ドローストリングバッグ巾着袋に入れて、結界術を掛けてから、腰のチェーンベルトに付ける。今日の結果次第で、今後の方針が決まる。

 少し緊張して学院に行った。

教室では時に何もなかった。いつも通りの授業、いつも通りの友人とのお喋り。チェーンベルトに付けたドローストリングバッグ巾着袋についても聞かれたけど、ガブリエラ様の作品だと答えると、ガブリエラ様にいくつか注文が行っていた。ガブリエラ様ってば、嬉しそうに注文を受けるのよね。材料費と少額の手間賃で引き受けていたけど、そのお金はお針子部に還元するらしい。






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