3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

聖女様指導?

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 わあぁぁぁという歓声が上がる。ポーラ・ローガン様は信じられないといった風に口元に両手を当てて、コラット・フォーテスキュー様は当然といった風に小さく頷いて、ラドルファス・フォスター様はガッツポーズのように片腕を高々と上げた。

 会長様からの合図で、私とマリアン・セルディン様が舞台袖から出る。

 まずは護衛役のコラット・フォーテスキュー様とラドルファス・フォスター様にきらびやかな佩刀と白いマントが授与された。護衛役は全員が軍服っぽい服装だからよく似合う。元の制服が軍服っぽいのよね。

 次いでポーラ・ローガン様に、私がティアラを乗せ、白いマントをその肩にかけた。

「フェルナー様……」

「よくお似合いですわ。自信をお持ちくださいませ」

「はい。頑張ります」

 ポーラ・ローガン様が正面を向いた。私とセルディン様が下がると、ポーラ・ローガン様がカーツィーを行う。その後ろでコラット・フォーテスキュー様とラドルファス・フォスター様がボウ・アンド・スクレープをすると、会場から大きな拍手が贈られた。

「フェルナー嬢、お疲れさまでした」

 閉会式も終わり、舞台袖でお互いを労う。

「皆様こそ、お疲れさまでございました。これで終了でしょうか?」

「聖女様役に基本的な事を指導していただけると、嬉しいのですが」

「基本的な事と仰られましても」

「心構えとか?」

 聖女役のポーラ・ローガン様と、コラット・フォーテスキュー様と、ラドルファス・フォスター様がやって来た。

「会長、聖女様と護衛の出番は、武術魔法披露会の表彰式とプレ社交会の開会宣言と、卒業式の最後のセレモニーで良いんですよね?」

「えぇ。それでお願いします」

「あの、フェルナー様、色々と教えてください」

「お教え出来る事があれば」

 微笑んで言うと、ポーラ・ローガン様がポッと頬を染めた。あら、可愛い。

「お2方の剣って、本物ですか?」

「いいえ、あれは模造剣です。王宮騎士団のドレス・ソード儀礼用の剣を参照に、用意しました。散りばめてあるのは色ガラスなんですよ」

「まぁ、王宮騎士団の?」

 騎士団の総督はファレンノーザ公爵だけれど、王宮騎士団とは管轄が違うらしい。王宮騎士団は前世でいえば近衛が当てはまると思う。それでも総督の仕事は、王宮騎士団にまで及ぶと聞いた。

「実際には抜けないのですよ」

「そうなのですか?」

 ジィッと見ていたら、コラット・フォーテスキュー様が佩刀を外した。

「持ってみますか?」

「良いのですか?」

「えぇ。光の聖女様に触っていただけたなんて、なんとなく格が上がる感じがしますし」

「あ、じゃあ私のも」

 ラドルファス・フォスター様までそう言って、腰に下げた剣を外した。

 許可を貰ったから、抜き方をレクチャーしてもらって、実際にコラット・フォーテスキュー様の剣を鞘から抜いてみ……。動かない。何度やっても動かない。ラドルファス・フォスター様のも同様だ。全く動かない。

「動きません」

「でしょうね」

 したり顔でコラット・フォーテスキュー様が頷く。

「模造剣ですから、抜けたら大変です。剣身が無いのですから」

「え?」

「鞘と柄に隙間が無いでしょう?殴る事なら出来ますが、剣の形をしているだけの豪華な棒ですよ」

「そうなのですね。存じ上げませんでしたわ」

 豪華な棒って言い方はどうかと思うけどね。竹光とかいう物でもないらしい。

「フェルナー様、ご指導いただけるとの事でしたが」

 ポーラ・ローガン様が言う。

「指導と申しましても、ローガン様のお作法は完璧だと思いますけれど?」

 ローガン様は2歳下だけど、ローガン侯爵家の次女で元々のお作法はお家で叩き込まれていたから、完璧なのよね。

 芸術祭が終わると、次は武術魔法披露会の準備だ。武術魔法披露会の表彰式で、ローガン様は最初のお役目がある。表彰された人達への記念品の贈呈だ。護衛役の2人はそのアシスタントのような事をするらしい。

 この頃になってようやく教師業に復帰してきたサミュエル先生は、私の後ろでニコニコと立つローガン様を見て、呆れたような顔になった。

「ずっと後ろを?」

「時間の許す限りですわね。サミュエル先生、お疲れさまでした」

「いやぁ、後始末は私だけでやったんじゃないからね。詳細は後で話すよ」

「教えていただけますの?」

「当事者だしね。今は話せないけど」

 ローガン様が居ますものね。

「それより、例の物はどうなったの?」

 例の物?ディザスターラメンティ厄哭の石の事かしら?

タウンハウス王都フェルナー邸わたくしの部屋ですわ。少しだけ色が薄くなりました」

「ここには持ってきてない?」

「はい」

「そうか」

「何か?」

「ララ嬢にも聞いてみたんだけどね。『持ち歩けばいいんじゃないですか?みたいに。いろんな景色を見せてあげるとか』って言われたんだよ」

「ぬい、ですか?」

 何それ?

「あのぉ、わたくしは戻りますわ。フェルナー様、また寮で」

 気を使ったらしいローガン様が足早に去っていく。

「空気は読めるようだね」

「他の方は巻き込めませんものね」

という物に心当たりは?」

「ございません。ララさんに聞いてみますか?」

「そうだね。そうしてもらえるかい?」

 伝心機に慣れていないサミュエル先生に、ちょっと笑ってしまいながら、サミュエル先生の部屋に移動して、ララさんに伝心機を使う。

『はい。キャシーちゃん、どうしたの?』

「申し訳ございません。今、お時間よろしいでしょうか?」

『えぇ。大丈夫よ』

「お聞きしたいのですが、ぬいって何なのでしょうか?」

『ぬいはぬいぐるみよ。え?それを聞きたかったの?推しぬいとか知らない?』

「存じ上げません」

『あ、あぁ、そうだったのね。雪花ちゃんのぬいとか作ってみたいんだけど』

「雪花の?出来ましたら、わたくしも欲しいですわ」

『張り切って作っちゃう。キャシーちゃんもね』

わたくしも?」

『うふふ。腕がなるわぁ』

何でしょう?この少しのイヤな予感は。

「お手柔らかにお願いいたします」

『着せ替えぬいも良いわよね』

「ララさん、そろそろ失礼いたしますわね」

『あら、ごめんなさい。じゃあね』

「ありがとうございました」

通話を切る。

「ぬいぐるみかぁ」

「らしいですわね。ディザスターラメンティ厄哭の石に他の景色を見せたり、話しかけたりって事ですわよね?ララさんの言い方だと」

「オシヌイってそういう事かい?」

「だったはずです。わたくしもうろ覚えなのですが」

「オシヌイのヌイは分かったけど、オシは?」

「推しは……。説明が難しいですわね。自分が応援している人、でしょうか」

「応援している人のぬいぐるみ?ってどんな感じだろうね?」

「2頭身位にデフォルメされていたと、記憶しておりますが」

「とにかくディザスターラメンティ厄哭の石を学院に持ってきた方がいいね。取りに行かせようか?」

「フランならば場所は知っておりますが」

「じゃあ、そうしよう」

そうしようって、誰が行くの?

「あの時の2人だけど、貴族の身分詐称で2年の労役と両手甲への犯罪紋刺青になったよ」

「2年ですか?たしか犯罪法では1年だったと思ったのですが」

「あちこちでヤラかしてたからね。それにキャシーちゃんへの侮辱罪も加わったし、なによりミークゴス伯爵が怒っててね。似たような家名を出して、我が家を侮辱されたも同然だと。労役後はミークゴス伯爵領で引き取るようだ」

私刑リンチとか考えておられませんわよね?」

「分からないね。法務官が釘は刺していたけど」



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