3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

差し入れ

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 お泊まり会の最終日、ラッセル様とエドガーさんは、伝心機の販売促進の為に王城に向かった。私とセシルさんとリーサさんは教会に向かう。ララさんへの差し入れと、救児院や窮民院への差し入れや寄進も兼ねている。

 聞けばセシルさんは、度々こうした寄進をしているらしい。リーサさんも毎週末、教会に行っているんだって。

 前世からの習慣だったらしい。

「別に敬虔な信者って訳じゃなかったけど、小さい頃からの習慣ね」

「私も同じ。あ、思い出したらレチェフランが食べたくなってきたわ」

「レチェフラン?」

「濃厚で甘いプリンとでも言えば良いのかしら?コンデンスミルクを使うの」

「コンデンスミルクですか?かなり甘いんじゃ?」

「その甘さが良いのよ」

「ミルクジャムで代用しようかしら?それともコンデンスミルクを作っちゃう?」

「ミルクジャムとコンデンスミルクって違うのですか?イメージ的に同じ気がいたします」

 というか、コンデンスミルクって作れるの?

「似ているけど違うのよ。ミルクジャムは牛乳と砂糖をじっくり煮詰めて作るの。コンデンスミルクは牛乳を濃縮させて、砂糖を加えた物よ」

「砂糖をいつ加えるか、という違いでしょうか?」

「そうね。そう思っておけば大きな間違いではないわ」

 細かい所では違うんだろうな。セシルさんはドルチアーリアパティシエールだったっていうし、そういう事に詳しいと思う。

 救民院に着いた。セシルさんとリーサさんが救民院に向かうのを見送って、私はミリアディス様の元に向かう。

「キャスリーン様、来てくださいましたのね」

「ミリアディス様、お久しぶりでございます」

「ごめんなさいね、散らかってて」

「お手伝いいたしましょうか?」

「……お願い出来る?」

「はい。この書類、分けておきますわね」

 ミリアディス様の机に積み上げられていた書類を、重要度、緊急度別に分けていく。重要な急ぎの書類、重要でも急がない書類、重要じゃないけど急がないといけない書類、重要でも急ぎでもない書類に分けていくと、意外というべきか、重要でも急ぎでもない書類が1番多い。

「先に重要な急ぎの書類を、片付けないといけないわね」

「そうですわね。でもこれって……」

「あら、キャスリーン様の幸福の乙女に関する書類ね」

「なんですの?この『キャスリーン・フェルナーによる光の祝福』って。聞いておりませんでしてよ?」

わたくしも聞いてませんわ。誰か……逃げましたわね?」

「お逃げになりましたわねぇ」

 さっきまで居たミリアディス様付きの侍女が、いつの間にか居なくなっていた。

「光の祝福って、何をするのでしょう?」

「自由に考えていただいて、と書いてありますわよ?」

「というか、これって確かに急ぎですけれど、重要度は高いのでしょうか?」

「彼女にとっては重要なのではないかしら?」

 光の祝福ねぇ。どうしようかしら?

「ミリアディス様、フェルナー様、お茶にいたしませんか?」

 2人で書類を半分程捌いた時、逃げちゃってた侍女が、セシルさんとリーサさんが、差し入れに持っていったエッグタルトとフォーチュンクッキーを、幾つか持って現れた。

「クロエ、どこに行っていたの?キャスリーン様を放っぽって」

「お茶菓子を頂いてまいりました」

 お菓子が積まれたトレイを、ニコニコ顔で差し出すクロエさん。

「そのお茶菓子は、セシルさんとリーサさんの持っていた物ですわね。美味しいですわよ」

「お召し上がりになられましたの?」

「違うお菓子はいただきました。友人ですし、先程まで一緒でしたから」

「そうなのですね。キャスリーン様、一緒にお茶にいたしましょう?」

「書類をある程度片付けてからですわね」

「頑張ってしまいましょう」

「急に張り切られましたわね」

 さっきまでちょっとグチグチ言いながらだったのに。

 スピードアップして書類を捌き終わって、ミリアディス様とお茶を楽しむ。ミリアディス様判断でなくても良い書類は、可否を私が判断してそれぞれの箱に振り分けた。

「こうして見ると、年越しの祝い関連の書類が多いわね」

「次いでエドワード様とミリアディス様のご成婚関連ですわね」

「キャスリーン様に関する陳情書もございましたわねぇ。光の聖女様に任命されるのは喜ばしいけれど、『ずっとスタヴィリス国に居られるようにしてください』って、わたくしにどうせよというのでしょう?」

「エドワード様の方にも、同様の書類が届けられているそうですわ。リチャード様が仰っておられましたけれど」

「そうなの?エドワード様ったら、何も仰ってくれないんだもの」

「ミリアディス様、わたくしの事で申し訳ございません」

「キャスリーン様はお気に病まなくとも良いのですよ?キャスリーン様に責任などございませんもの」

 お茶の時間が終わりかけた頃、ミリアディス様の部屋のドアが、激しくノックされた。

「ハイレント様、申し訳ありません。失礼いたします。ハイレント様」

「いったい何事ですの?騒々しい」

 クロエさんが怒りを込めた声で対応する。

「申し訳ありません。こちらにフェルナー様はいらっしゃいますでしょうか」

「フェルナー様ならいらっしゃいますけれど」

「エドワード様が至急お越しいただきたいと」

「エドワード様が?キャスリーン様、わたくしもまいりますわ」

「はい。お呼び出しの内容はどういった事でしょう?」

「それは見当も付きませんけれど」

 ミリアディス様と一緒に、エドワード様の執務室に向かう。

「エドワード様、ミリアディスですわ。キャスリーン様をお連れいたしました」

「入ってください」

 中からエドワード様とは違う男性の声がした。ミリアディス様と顔を見合わせる。

「ミリィ、入ってかまわない。というか、入ってくれ」

 エドワード様の声がした。ミリアディス様、ミリィって呼ばれてるのね。

 ドアを開けると、中にはエドワード様とエドワード様位の年齢の男女と、ガッシリとした体格の見るからに護衛だと分かる男女が居た。

「こちらはアルベール殿とテレーズ殿。それから護衛の方々だ。アサールイ大陸のアサナド公国の方だ。アルベール殿、テレーズ殿。彼女が私の婚約者、ミリアディス・ハイレント。こちらの女性がキャスリーン・フェルナー嬢です」

「アルベール・エルフェと申します。こちらは妻のテレーズ。よろしくお見知りおきを」

「ミリアディス・ハイレントと申します」

「キャスリーン・フェルナーでございます」

「フェルナー嬢、ローレンスが見つかったかもしれない」

「えっ?本当ですか?」

「今頃王城にも話が行っていると思う。ただし、確実じゃない」

「どういう事でしょう?」

「アルベール殿、テレーズ殿。話していただけますか?」

「こちらの女性に、で良いんですね?アサナド公国はアウレリア国の隣にある小さな公国なのですが、ご存じですか?」

「不勉強で申し訳ございません。アウレリア国のお隣ですか?」

「アウレリアは知ってらっしゃる?」

「友人にアウレリア出身の方がいらっしゃいます」

「ほぅ。それならウェリムラ砂漠の事は?」

「国家承認されていない、自称国家が、多いと、聞いて、おります」

 ウェリムラ砂漠と聞いて、ドキリと心臓が跳ねた。ローレンス様が居ると思われる場所だ。ドク、ドクと心拍が速くなる。緊張で指先が冷たくなっていく。

「キャスリーン様?大丈夫ですか?」

 見かねたらしいミリアディス様が、声をかけてくれた。

「申し訳ございません。救民院に友人がいるので、呼んでもよろしいでしょうか?」

「え?あ、うん。呼ばせようか?」

「ララさんと一緒に居ると思います」

「分かった」

 エドワード様が侍従かな?男性に言い付けた。セシルさんが来るまでに落ち着かないと。意識的に深呼吸を行う。大丈夫。大丈夫。

「キャスリーンちゃん、どうしたの?ちょっと、大丈夫?」

 セシルさんとリーサさんが来てくれた。






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