3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

聞き取り

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「失礼します。お客様が到着されました」

 神官に案内されて、エルフェ夫妻が入ってきた。今日はダニエルさんとマリアさんが同席しているから、怪訝な顔をされてしまった。

「申し訳ございません。わたくしの護衛ですの」

「護衛ですか。失礼ですが、キャスリーンさんはどういう?あ、いえ。

 『聞いていた?』誰からいつ聞いたのかしら?

「娘を心配した父親が、護衛を付けるなんて当然では?私も付けられた事がありますよ」

 ニコニコとセシルさんが言う。

「見ていただきたい絵をお持ちいたしました」

 額装された絵を、エルフェ夫妻に見せる。

「これは……」

「スゴいですね。ウェリムラ砂漠がこんなに細かく。実際に行った人が描いた絵ですか?」

「いいえ。聞いた風景を描いたそうです」

「なるほど。その人には絵の才能があるんですね」

「この絵って、プセロイン天主国の辺りだと聞かされたんですけど、どう思います?」

「そうですねぇ。確かにプセロイン天主国と名乗っている辺りですね」

「名乗っている、ですか」

「えぇ。国家として認められていませんから」

「プセロイン天主国と名乗っている辺りと仰いましたけど、あの辺りって自称国家が多くなかったでしたっけ?」

「そうなんですけどね。ここに掛かれている湖かな?湖と建物は自称プセロイン天主国の特徴なんです。他の所は壁の色が茶色いんですよ。湖もこんなに大きくない。それにハッキリしないけど、車を牽いているアエトルスもいる。アエトルスを使役しているのは、あそこだけです」

「アエトルスというんですか?」

「えぇ。変な動物ですよ。古代から生きていると言われてて、大きな顎門あぎとを持っていましてね。皮は硬くて防具にも使われます。あの辺りには闘技場も闘技兵も居ますからね」

「闘技兵?」

「戦うのですよ、見世物で。詳しくはありませんが、その為に連れてこられる人も居るとか。誘拐ですね。プセロイン天主国は平気で人を拐いますからね。よく逃げてくると聞いています」

「え?人が?」

「そうです。無理に連れてこられて逃げるんですよ。アサナド公国に入れば保護出来ますから。もちろんきちんと調べて、ですけど」

「誘拐される目的って、闘技兵にする為に?」

「後はコレクションとでもいうのでしょうか。あちらでは褐色肌が多いですから、ロパヨーマ大陸のような白い肌や金の髪は珍しいんです。だから側に置いて自慢するんですよ。知人から聞いた話だと、プセロイン天主国の王家、といっても勝手に名乗っているだけですが、その王女が見目美しい男性をはべらせているらしいです。そういった男性を献上する事によって、賄賂を贈ったと同じ扱いになるとか」

「コレクションって……」

「本人にとっては身を飾る装飾品のような物なんでしょう。その話を聞いた時には、ゾッとしましたよ」

「女性もそうですよ。プセロイン天主国は掠奪婚りょうだつこんを良しとする国ですもの。だから私はプセロイン天主国には近付いた事がないの」

 掠奪婚りょうだつこんって誘拐婚と同じだったわよね。

「プセロイン天主国って、どうして天主国というのかしら?」

「神が作った国だから、らしいですよ。本来はプセロイン天主国に全ての国がひれ伏すべきで、今は滅びに向かっているんだとか。あの国は頭がおかしいですからね。いつかは自分達が邪教の支配する他国を救って、君臨するんだ、なんて妄言を言っているようです」

「邪神って……」

「天父神シュターディル様と地母神マーテル様の事ですよ。ピュリオンヴェルッティ教の事は邪教だと教えられるらしいです」

「プセロイン天主国の宗教って、何なのでしょう?」

「プセロイン教ですよ。王家は神の末裔で、プセロイン天主国民は神の血を引いていて、他国の人間は神が使役する為に泥から作った泥人形らしいです」

「何それ」

「あの国は頭がおかしいんですって。まともな考えでは付き合えません」

 エルフェ夫妻からの情報はほぼ聞けたと思っていい。後はエルフェ夫妻の質問にこちらが答えたり、雑談をしたりした。

 ちなみに私はほとんど発言出来ていない。聞いていたのは主にセシルさん。私は例の絵を見せた時に発言しただけ。

 ローレンス様と思われる男性と、恋人のような距離感だった女性。2人が本当にローレンス様と恋人だったとしたら、私はどうすれば良いんだろう?

 サミュエル先生には『もし、ローレンス様が責任を取らざるをえない状況になっていて、ローレンス様がそちらを選んだら、わたくしは身を引きます』なんて言ったけど、取り乱さずに2人を祝福出来るだろうか?

 ハッキリ言って自信は無い。一応婚約者として過ごした年数もあるし、明確に恋心を自覚していた時もある。今は曖昧だけれど、いざローレンス様に会って、どういう感情を抱くのかは分からない。

「キャスリーンさん、エルフェさんご夫妻を案内したいのだけど、誰か呼んでもらえる?」

「少々お待ちください」

 エルフェさんご夫妻は、ヴィリス語を話している。曖昧な所はセシルさんが説明しているようだけれど、意思疏通には問題ないようだ。それなら言葉の問題はないだろう。近くにいた神官に案内を頼むと引き受けてくれた。

「キャスリーンさんはこれからどうするの?」

「救民院に行こうと思っておりましたが。リーサさん達はどうなさいます?」

「ちょっと買い物に行こうと思ってるの。メイク道具とかね。セシルが一緒に行くと言ってくれたから」

「そうですか」

「キャスリーンさんも行く?」

「申し訳ございませんが」

「無理はしないのよ?」

「はい」

 リーサさん達と別れて、救民院に向かう。

「キャシーちゃん、お話し合いは終わった?」

「はい。ララさん、今日はどんな感じですか?」

「今は重症患者は居ないわね。軽症患者ばかり。ピアーズ君も来ているわ。彼、頑張っているわよ。すっかり救民院のアイドル扱いになってるわ」

「学院でもそんな感じですわよ。年上のお姉様達に可愛いと言われてテレておりますわ」

「あら、じゃあ男性に敵意を向けられたりとか?」

「それが、男性生徒は庇護欲をそそられるようで、ピアーズ君を守ると張り切っている方もおられます。侯爵令息様がピアーズ君を気に入って、先輩先輩と慕っておりますのよ」

「え?侯爵令息って、年下なの?」

「年齢的にはそうですわね。最初は光魔法使いだからと絡みにいっていたようですが、今じゃピアーズ君の良いサポート役ですわ」

「それってピアーズ君は、嫌がってないの?」

「パフォーマンス的に自分の方が年上だって怒っておりますが、本気ではないので放置です。ピアーズ君は最近男爵令息になったばかりなので、色々と教えてもらっているようですわ」

「良い関係なのね」

「えぇ」

「それで?キャシーちゃんは何を悩んでいるのかしら?」

「……お分かりになります?」

「当然よ。前世年齢では負けているとはいえ、この世界では、私の方が年上だもの。人生経験も私の方が上のはずよ?」

「そうですわね」

 とはいえ、今の時点で話しても良いものか、判断に迷うのよね。

「もう少しお待ちくださいませ」

「話しても良くなったら聞かせてね?」

「はい。あ、そういえばララさん。光の祝福と聞いて、何を思い浮かべますか?」

「光の祝福?天からの光とか、光った何かが降ってくるとか、かしら?」

 天からの光と、光った何かが降ってくる……。あ。思い付いた。

「ララさん、少し手伝ってくださいませ」

「良いけど、今から?」

「いいえ。今すぐでなくとも。どこか吹き抜けのある高い場所を知りませんか?」

「鐘塔じゃ駄目?あそこ、内部は吹き抜けよ。階段は壁沿いだし」

「中に入れますか?」

「開放されているから入れるわ。人気は無いけど」

「人気が無い?なぜですか?」

「階段がキツいのよ。眺めは良いけどてっぺんまで登るのは、1度で良いわ」

 登って懲りたんですね?



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