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学院中等部 9学年生
聞き取り
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「失礼します。お客様が到着されました」
神官に案内されて、エルフェ夫妻が入ってきた。今日はダニエルさんとマリアさんが同席しているから、怪訝な顔をされてしまった。
「申し訳ございません。私の護衛ですの」
「護衛ですか。失礼ですが、キャスリーンさんはどういう?あ、いえ。貴族とは聞いていたのですが」
『聞いていた?』誰からいつ聞いたのかしら?
「娘を心配した父親が、護衛を付けるなんて当然では?私も付けられた事がありますよ」
ニコニコとセシルさんが言う。
「見ていただきたい絵をお持ちいたしました」
額装された絵を、エルフェ夫妻に見せる。
「これは……」
「スゴいですね。ウェリムラ砂漠がこんなに細かく。実際に行った人が描いた絵ですか?」
「いいえ。聞いた風景を描いたそうです」
「なるほど。その人には絵の才能があるんですね」
「この絵って、プセロイン天主国の辺りだと聞かされたんですけど、どう思います?」
「そうですねぇ。確かにプセロイン天主国と名乗っている辺りですね」
「名乗っている、ですか」
「えぇ。国家として認められていませんから」
「プセロイン天主国と名乗っている辺りと仰いましたけど、あの辺りって自称国家が多くなかったでしたっけ?」
「そうなんですけどね。ここに掛かれている湖かな?湖と建物は自称プセロイン天主国の特徴なんです。他の所は壁の色が茶色いんですよ。湖もこんなに大きくない。それにハッキリしないけど、車を牽いているアエトルスもいる。アエトルスを使役しているのは、あそこだけです」
「アエトルスというんですか?」
「えぇ。変な動物ですよ。古代から生きていると言われてて、大きな顎門を持っていましてね。皮は硬くて防具にも使われます。あの辺りには闘技場も闘技兵も居ますからね」
「闘技兵?」
「戦うのですよ、見世物で。詳しくはありませんが、その為に連れてこられる人も居るとか。誘拐ですね。プセロイン天主国は平気で人を拐いますからね。よく逃げてくると聞いています」
「え?人が?」
「そうです。無理に連れてこられて逃げるんですよ。アサナド公国に入れば保護出来ますから。もちろんきちんと調べて、ですけど」
「誘拐される目的って、闘技兵にする為に?」
「後はコレクションとでもいうのでしょうか。あちらでは褐色肌が多いですから、ロパヨーマ大陸のような白い肌や金の髪は珍しいんです。だから側に置いて自慢するんですよ。知人から聞いた話だと、プセロイン天主国の王家、といっても勝手に名乗っているだけですが、その王女が見目美しい男性を侍らせているらしいです。そういった男性を献上する事によって、賄賂を贈ったと同じ扱いになるとか」
「コレクションって……」
「本人にとっては身を飾る装飾品のような物なんでしょう。その話を聞いた時には、ゾッとしましたよ」
「女性もそうですよ。プセロイン天主国は掠奪婚を良しとする国ですもの。だから私はプセロイン天主国には近付いた事がないの」
掠奪婚って誘拐婚と同じだったわよね。
「プセロイン天主国って、どうして天主国というのかしら?」
「神が作った国だから、らしいですよ。本来はプセロイン天主国に全ての国がひれ伏すべきで、今は滅びに向かっているんだとか。あの国は頭がおかしいですからね。いつかは自分達が邪教の支配する他国を救って、君臨するんだ、なんて妄言を言っているようです」
「邪神って……」
「天父神シュターディル様と地母神マーテル様の事ですよ。ピュリオンヴェルッティ教の事は邪教だと教えられるらしいです」
「プセロイン天主国の宗教って、何なのでしょう?」
「プセロイン教ですよ。王家は神の末裔で、プセロイン天主国民は神の血を引いていて、他国の人間は神が使役する為に泥から作った泥人形らしいです」
「何それ」
「あの国は頭がおかしいんですって。まともな考えでは付き合えません」
エルフェ夫妻からの情報はほぼ聞けたと思っていい。後はエルフェ夫妻の質問にこちらが答えたり、雑談をしたりした。
ちなみに私はほとんど発言出来ていない。聞いていたのは主にセシルさん。私は例の絵を見せた時に発言しただけ。
ローレンス様と思われる男性と、恋人のような距離感だった女性。2人が本当にローレンス様と恋人だったとしたら、私はどうすれば良いんだろう?
サミュエル先生には『もし、ローレンス様が責任を取らざるをえない状況になっていて、ローレンス様がそちらを選んだら、私は身を引きます』なんて言ったけど、取り乱さずに2人を祝福出来るだろうか?
ハッキリ言って自信は無い。一応婚約者として過ごした年数もあるし、明確に恋心を自覚していた時もある。今は曖昧だけれど、いざローレンス様に会って、どういう感情を抱くのかは分からない。
「キャスリーンさん、エルフェさんご夫妻を案内したいのだけど、誰か呼んでもらえる?」
「少々お待ちください」
エルフェさんご夫妻は、ヴィリス語を話している。曖昧な所はセシルさんが説明しているようだけれど、意思疏通には問題ないようだ。それなら言葉の問題はないだろう。近くにいた神官に案内を頼むと引き受けてくれた。
「キャスリーンさんはこれからどうするの?」
「救民院に行こうと思っておりましたが。リーサさん達はどうなさいます?」
「ちょっと買い物に行こうと思ってるの。メイク道具とかね。セシルが一緒に行くと言ってくれたから」
「そうですか」
「キャスリーンさんも行く?」
「申し訳ございませんが」
「無理はしないのよ?」
「はい」
リーサさん達と別れて、救民院に向かう。
「キャシーちゃん、お話し合いは終わった?」
「はい。ララさん、今日はどんな感じですか?」
「今は重症患者は居ないわね。軽症患者ばかり。ピアーズ君も来ているわ。彼、頑張っているわよ。すっかり救民院のアイドル扱いになってるわ」
「学院でもそんな感じですわよ。年上のお姉様達に可愛いと言われてテレておりますわ」
「あら、じゃあ男性に敵意を向けられたりとか?」
「それが、男性生徒は庇護欲をそそられるようで、ピアーズ君を守ると張り切っている方もおられます。侯爵令息様がピアーズ君を気に入って、先輩先輩と慕っておりますのよ」
「え?侯爵令息って、年下なの?」
「年齢的にはそうですわね。最初は光魔法使いだからと絡みにいっていたようですが、今じゃピアーズ君の良いサポート役ですわ」
「それってピアーズ君は、嫌がってないの?」
「パフォーマンス的に自分の方が年上だって怒っておりますが、本気ではないので放置です。ピアーズ君は最近男爵令息になったばかりなので、色々と教えてもらっているようですわ」
「良い関係なのね」
「えぇ」
「それで?キャシーちゃんは何を悩んでいるのかしら?」
「……お分かりになります?」
「当然よ。前世年齢では負けているとはいえ、この世界では、私の方が年上だもの。人生経験も私の方が上のはずよ?」
「そうですわね」
とはいえ、今の時点で話しても良いものか、判断に迷うのよね。
「もう少しお待ちくださいませ」
「話しても良くなったら聞かせてね?」
「はい。あ、そういえばララさん。光の祝福と聞いて、何を思い浮かべますか?」
「光の祝福?天からの光とか、光った何かが降ってくるとか、かしら?」
天からの光と、光った何かが降ってくる……。あ。思い付いた。
「ララさん、少し手伝ってくださいませ」
「良いけど、今から?」
「いいえ。今すぐでなくとも。どこか吹き抜けのある高い場所を知りませんか?」
「鐘塔じゃ駄目?あそこ、内部は吹き抜けよ。階段は壁沿いだし」
「中に入れますか?」
「開放されているから入れるわ。人気は無いけど」
「人気が無い?なぜですか?」
「階段がキツいのよ。眺めは良いけどてっぺんまで登るのは、1度で良いわ」
登って懲りたんですね?
神官に案内されて、エルフェ夫妻が入ってきた。今日はダニエルさんとマリアさんが同席しているから、怪訝な顔をされてしまった。
「申し訳ございません。私の護衛ですの」
「護衛ですか。失礼ですが、キャスリーンさんはどういう?あ、いえ。貴族とは聞いていたのですが」
『聞いていた?』誰からいつ聞いたのかしら?
「娘を心配した父親が、護衛を付けるなんて当然では?私も付けられた事がありますよ」
ニコニコとセシルさんが言う。
「見ていただきたい絵をお持ちいたしました」
額装された絵を、エルフェ夫妻に見せる。
「これは……」
「スゴいですね。ウェリムラ砂漠がこんなに細かく。実際に行った人が描いた絵ですか?」
「いいえ。聞いた風景を描いたそうです」
「なるほど。その人には絵の才能があるんですね」
「この絵って、プセロイン天主国の辺りだと聞かされたんですけど、どう思います?」
「そうですねぇ。確かにプセロイン天主国と名乗っている辺りですね」
「名乗っている、ですか」
「えぇ。国家として認められていませんから」
「プセロイン天主国と名乗っている辺りと仰いましたけど、あの辺りって自称国家が多くなかったでしたっけ?」
「そうなんですけどね。ここに掛かれている湖かな?湖と建物は自称プセロイン天主国の特徴なんです。他の所は壁の色が茶色いんですよ。湖もこんなに大きくない。それにハッキリしないけど、車を牽いているアエトルスもいる。アエトルスを使役しているのは、あそこだけです」
「アエトルスというんですか?」
「えぇ。変な動物ですよ。古代から生きていると言われてて、大きな顎門を持っていましてね。皮は硬くて防具にも使われます。あの辺りには闘技場も闘技兵も居ますからね」
「闘技兵?」
「戦うのですよ、見世物で。詳しくはありませんが、その為に連れてこられる人も居るとか。誘拐ですね。プセロイン天主国は平気で人を拐いますからね。よく逃げてくると聞いています」
「え?人が?」
「そうです。無理に連れてこられて逃げるんですよ。アサナド公国に入れば保護出来ますから。もちろんきちんと調べて、ですけど」
「誘拐される目的って、闘技兵にする為に?」
「後はコレクションとでもいうのでしょうか。あちらでは褐色肌が多いですから、ロパヨーマ大陸のような白い肌や金の髪は珍しいんです。だから側に置いて自慢するんですよ。知人から聞いた話だと、プセロイン天主国の王家、といっても勝手に名乗っているだけですが、その王女が見目美しい男性を侍らせているらしいです。そういった男性を献上する事によって、賄賂を贈ったと同じ扱いになるとか」
「コレクションって……」
「本人にとっては身を飾る装飾品のような物なんでしょう。その話を聞いた時には、ゾッとしましたよ」
「女性もそうですよ。プセロイン天主国は掠奪婚を良しとする国ですもの。だから私はプセロイン天主国には近付いた事がないの」
掠奪婚って誘拐婚と同じだったわよね。
「プセロイン天主国って、どうして天主国というのかしら?」
「神が作った国だから、らしいですよ。本来はプセロイン天主国に全ての国がひれ伏すべきで、今は滅びに向かっているんだとか。あの国は頭がおかしいですからね。いつかは自分達が邪教の支配する他国を救って、君臨するんだ、なんて妄言を言っているようです」
「邪神って……」
「天父神シュターディル様と地母神マーテル様の事ですよ。ピュリオンヴェルッティ教の事は邪教だと教えられるらしいです」
「プセロイン天主国の宗教って、何なのでしょう?」
「プセロイン教ですよ。王家は神の末裔で、プセロイン天主国民は神の血を引いていて、他国の人間は神が使役する為に泥から作った泥人形らしいです」
「何それ」
「あの国は頭がおかしいんですって。まともな考えでは付き合えません」
エルフェ夫妻からの情報はほぼ聞けたと思っていい。後はエルフェ夫妻の質問にこちらが答えたり、雑談をしたりした。
ちなみに私はほとんど発言出来ていない。聞いていたのは主にセシルさん。私は例の絵を見せた時に発言しただけ。
ローレンス様と思われる男性と、恋人のような距離感だった女性。2人が本当にローレンス様と恋人だったとしたら、私はどうすれば良いんだろう?
サミュエル先生には『もし、ローレンス様が責任を取らざるをえない状況になっていて、ローレンス様がそちらを選んだら、私は身を引きます』なんて言ったけど、取り乱さずに2人を祝福出来るだろうか?
ハッキリ言って自信は無い。一応婚約者として過ごした年数もあるし、明確に恋心を自覚していた時もある。今は曖昧だけれど、いざローレンス様に会って、どういう感情を抱くのかは分からない。
「キャスリーンさん、エルフェさんご夫妻を案内したいのだけど、誰か呼んでもらえる?」
「少々お待ちください」
エルフェさんご夫妻は、ヴィリス語を話している。曖昧な所はセシルさんが説明しているようだけれど、意思疏通には問題ないようだ。それなら言葉の問題はないだろう。近くにいた神官に案内を頼むと引き受けてくれた。
「キャスリーンさんはこれからどうするの?」
「救民院に行こうと思っておりましたが。リーサさん達はどうなさいます?」
「ちょっと買い物に行こうと思ってるの。メイク道具とかね。セシルが一緒に行くと言ってくれたから」
「そうですか」
「キャスリーンさんも行く?」
「申し訳ございませんが」
「無理はしないのよ?」
「はい」
リーサさん達と別れて、救民院に向かう。
「キャシーちゃん、お話し合いは終わった?」
「はい。ララさん、今日はどんな感じですか?」
「今は重症患者は居ないわね。軽症患者ばかり。ピアーズ君も来ているわ。彼、頑張っているわよ。すっかり救民院のアイドル扱いになってるわ」
「学院でもそんな感じですわよ。年上のお姉様達に可愛いと言われてテレておりますわ」
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「それが、男性生徒は庇護欲をそそられるようで、ピアーズ君を守ると張り切っている方もおられます。侯爵令息様がピアーズ君を気に入って、先輩先輩と慕っておりますのよ」
「え?侯爵令息って、年下なの?」
「年齢的にはそうですわね。最初は光魔法使いだからと絡みにいっていたようですが、今じゃピアーズ君の良いサポート役ですわ」
「それってピアーズ君は、嫌がってないの?」
「パフォーマンス的に自分の方が年上だって怒っておりますが、本気ではないので放置です。ピアーズ君は最近男爵令息になったばかりなので、色々と教えてもらっているようですわ」
「良い関係なのね」
「えぇ」
「それで?キャシーちゃんは何を悩んでいるのかしら?」
「……お分かりになります?」
「当然よ。前世年齢では負けているとはいえ、この世界では、私の方が年上だもの。人生経験も私の方が上のはずよ?」
「そうですわね」
とはいえ、今の時点で話しても良いものか、判断に迷うのよね。
「もう少しお待ちくださいませ」
「話しても良くなったら聞かせてね?」
「はい。あ、そういえばララさん。光の祝福と聞いて、何を思い浮かべますか?」
「光の祝福?天からの光とか、光った何かが降ってくるとか、かしら?」
天からの光と、光った何かが降ってくる……。あ。思い付いた。
「ララさん、少し手伝ってくださいませ」
「良いけど、今から?」
「いいえ。今すぐでなくとも。どこか吹き抜けのある高い場所を知りませんか?」
「鐘塔じゃ駄目?あそこ、内部は吹き抜けよ。階段は壁沿いだし」
「中に入れますか?」
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