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学院中等部 9学年生
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セシルさんが代表して、アルベール様とテレーズ様から聞いた話をしてくれた。
「似た人物ね」
「ミニアチュールは見ていただいたのですが、似ていると仰っておられました」
「そもそもどういう状況で見たんだろうね。見たって事は、会話はしていないと思うし」
「船の窓から見たと言っていました。船は魔術車のような物だと」
「ロシュフォール嬢も知らない?」
「存じ上げませんね。アウレリア国のアサナド公国方面には、行った事がありませんから」
「そうなんだ?」
「トリコローレアサナド公国店はございましたけど、私は行っていません」
「全てはそのエルフェ夫妻に会ってからか。その夫妻はたぶん、民間人だね。アサナド公国の閣僚に会ったけど、何人か民間人も伴っていると言っていた」
「あぁ、そうだ。フェルナー嬢、このハンカチに見覚えは?」
「ハンカチですか?」
ラッセル様に見せられたのは、フェルナー家の紋章の入った白いハンカチ。紋章は拙い刺繍で、紋章の下にフェルナーと文字が刺繍されている。
「……私が刺繍を習い始めた頃に、ローレンス様に差し上げたハンカチです」
「間違いないかい?」
「はい。フェルナーのスペルが間違っておりますでしょう?ローレンス様に指摘されるまで気付かなくて、落ち込みましたもの」
「スペル?あぁ、Fernarになってるね」
「eがaになってしまっているのですわ。読めなくはないとローレンス様は笑っておられましたけれど」
「ラッセルさん、これは?」
「今回のアサナド公国の使者達のひとりから手渡された。短い金の髪の青年に、知人が託されたらしい」
「数人の手を経ているみたいですよ。とにかくスタヴィリス国の王城にと頼まれたと言っていましたから」
「フェルナー宰相は首を傾げていたけどね。紋章はフェルナー家の物だけどって」
「お義父様にはお見せしておりませんもの。ローレンス様が予約されましたから」
「フェルナー嬢が知っているかもしれないと、フェルナー侯爵から預かってきたんだよ」
「この数字は何でしょう?」
ハンカチに数字の羅列が書いてあった。書いてあった数字は『196815181217 2224215124 4254211223124≡』
「何だろうね?これ。最後の3本線は『合同』を指す記号だと思うんだけど」
「漢数字の三という可能性もございますわ」
「カンスウジ?前世で使っていた文字か」
「はい。ローレンス様にお話しした覚えがございます。あの頃はもっとはっきり前世の事を覚えていて、その話をしましたもの」
「それでも意味が、ねぇ」
「数字の意味が分かりませんわね」
「2ヶ所スペースが空いているけど、関係あるのかな?」
「スペース、スペースか。暗号か?」
「暗号で有名な物だと、シーザー暗号とか?換字式暗号、転置式暗号、共通鍵暗号、公開鍵暗号もあるね」
「スキュタレーも暗号でしょうか?」
サミュエル先生の問いに、ラッセル様とエドガーさんが答える。
「複合型とも考えられますわね」
「複合型か。そうなるとちょっと厄介だね」
「エドガー様が仰られたスキュタレーは外しても良いと思います。リボン状になっておりませんし」
「共通鍵と公開鍵も外して良いかもね」
「シーザー暗号は、どういう暗号だい?」
サミュエル先生の疑問に、ラッセル様が答える。
「各文字を一定の数だけずらして暗号化する、単一換字式暗号の一種だよ。Aを1つずらしてBにするとかね。helloを3つずらしにするとkhoorになる。そんな感じだね」
「なるほど。それならシーザー暗号も外して良いのでは?」
「それがね、そうも言い切れないんだよ」
「何故?と聞いても?」
「換字式暗号や転置式暗号をさらにシーザー暗号で解くという暗号も存在するからだよ。フェルナー嬢が言った複合型だね」
「となると、換字式暗号がもっとも有力か。やれやれ。変換表が欲しくなるね」
「しかし、その暗号をローレンス君は知っていたのかい?」
「小さい頃に換字式暗号は、遊びで使ったりしていました。シーザー暗号も同じくです」
「では、ランベルト君も知ってる?」
「どうでしょう?ローレンス様が使ってくれたのは、私に文字を教える為と仰っておられましたが」
「それにかこつけて独り占めか。まったく……」
サミュエル先生が呟いた。とりあえず、換字式暗号で数字を変換してみる事にした。ラッセル様が「変換表が欲しい」と言っていたけれど、まさしくそんな感じだ。
「とりあえず解けたけれど、やっぱりもう一段階ありそうだね」
そこに並んだ文字は、『SFHORLQ VXUELD DYDULWLD』。読めないし意味を成していないアルファベットの羅列だ。
今日はもう遅くなったので、いったん暗号は置いておく事にした。
「キャシーちゃん、ちょっと確認しておきたいんだけどね」
「はい。ローレンス様が女性と一緒だったという件ですよね?」
「そうなんだけど。ローレンス君はキャシーちゃん一筋だったから、そういった間違いは起こしていないと思うんだよ」
「私もローレンス様を信じてはいますわ。ですが、人生は何が起こるか分かりません。お義父様にも聞かれましたけれど、もし、ローレンス様が責任を取らざるをえない状況になっていて、ローレンス様がそちらを選んだら、私は身を引きます」
「キャシーちゃん……」
「その時は泣かせてくださいませ?」
ちょっと笑って言う。上手く笑えたかしら?
「いくらでも。そういう事態にはならないと思うけどね」
「えぇ」
「キャシーちゃんももうちょっと、ワガママを言って良いと思うんだけどね」
「ワガママですか?」
「ローレンス君を優先しているでしょ?自分を優先して良いんだよ?」
「そうですわね。ただ……」
「なんだい?」
「私には分からないのです。物や人に執着する気持ちが。ローレンス様の事は好きです。でもそれが恋愛対象の好きなのか、家族としての好きなのか。1度結論は出たはずなのですが、また迷ってきてしまいました」
「難しい問題だよね。私にもその辺りは分からないんだよ。アドバイスのしようがない。ごめんね」
「いいえ。これは私自身で解決しないと、いけない事だと思いますから」
ローレンス様が無事に帰ってきて、その時自分がどう思うのか。それが分からない。ただ、無事に帰ってきて欲しい。痛みや苦しむ事無く、帰ってきて欲しい。今はそう願うばかりだ。そこに恋愛感情があるのかが不明なのよね。
翌日、セシルさんとリーサさんと一緒に、教会に赴く。今日もエルフェ様ご夫妻は来ていらっしゃるだろうか?教会には毎日来ると言っていたから大丈夫だと思うけれど。
サミュエル先生は後から救民院に行くと言ってくれた。私も救民院に行きたいんだけど、はたしてまともに治療出来るかどうか、ちょっと自信が無い。
「キャスリーンさん、収納ピアスから絵を取り出しておいた方が良いわ。収納ピアスは他に知られていないでしょうし」
「はい」
リーサさんに言われて、絵を取り出しておく。
「オアシスって感じよね」
「これがウェリムラ砂漠としても、エルフェ夫妻が目撃したのがローレンス様だとしたら、もう脱出しているのよね?」
「そうなるわね」
セシルさんとリーサさんが話をしているのを、ボンヤリと聞いていた。
教会に着いて、聖堂に入る。
「フェルナー様、こちらへ。お客様がお待ちです」
顔見知りの神官に、聖堂脇の小部屋に案内された。
「ここ……」
かつてシェーン様と、解呪のブレシングアクアを作った部屋だ。作ったのは私ひとりだけど、シェーン様はずっと見守っていてくれた。
やだな。思い出しちゃった。
「似た人物ね」
「ミニアチュールは見ていただいたのですが、似ていると仰っておられました」
「そもそもどういう状況で見たんだろうね。見たって事は、会話はしていないと思うし」
「船の窓から見たと言っていました。船は魔術車のような物だと」
「ロシュフォール嬢も知らない?」
「存じ上げませんね。アウレリア国のアサナド公国方面には、行った事がありませんから」
「そうなんだ?」
「トリコローレアサナド公国店はございましたけど、私は行っていません」
「全てはそのエルフェ夫妻に会ってからか。その夫妻はたぶん、民間人だね。アサナド公国の閣僚に会ったけど、何人か民間人も伴っていると言っていた」
「あぁ、そうだ。フェルナー嬢、このハンカチに見覚えは?」
「ハンカチですか?」
ラッセル様に見せられたのは、フェルナー家の紋章の入った白いハンカチ。紋章は拙い刺繍で、紋章の下にフェルナーと文字が刺繍されている。
「……私が刺繍を習い始めた頃に、ローレンス様に差し上げたハンカチです」
「間違いないかい?」
「はい。フェルナーのスペルが間違っておりますでしょう?ローレンス様に指摘されるまで気付かなくて、落ち込みましたもの」
「スペル?あぁ、Fernarになってるね」
「eがaになってしまっているのですわ。読めなくはないとローレンス様は笑っておられましたけれど」
「ラッセルさん、これは?」
「今回のアサナド公国の使者達のひとりから手渡された。短い金の髪の青年に、知人が託されたらしい」
「数人の手を経ているみたいですよ。とにかくスタヴィリス国の王城にと頼まれたと言っていましたから」
「フェルナー宰相は首を傾げていたけどね。紋章はフェルナー家の物だけどって」
「お義父様にはお見せしておりませんもの。ローレンス様が予約されましたから」
「フェルナー嬢が知っているかもしれないと、フェルナー侯爵から預かってきたんだよ」
「この数字は何でしょう?」
ハンカチに数字の羅列が書いてあった。書いてあった数字は『196815181217 2224215124 4254211223124≡』
「何だろうね?これ。最後の3本線は『合同』を指す記号だと思うんだけど」
「漢数字の三という可能性もございますわ」
「カンスウジ?前世で使っていた文字か」
「はい。ローレンス様にお話しした覚えがございます。あの頃はもっとはっきり前世の事を覚えていて、その話をしましたもの」
「それでも意味が、ねぇ」
「数字の意味が分かりませんわね」
「2ヶ所スペースが空いているけど、関係あるのかな?」
「スペース、スペースか。暗号か?」
「暗号で有名な物だと、シーザー暗号とか?換字式暗号、転置式暗号、共通鍵暗号、公開鍵暗号もあるね」
「スキュタレーも暗号でしょうか?」
サミュエル先生の問いに、ラッセル様とエドガーさんが答える。
「複合型とも考えられますわね」
「複合型か。そうなるとちょっと厄介だね」
「エドガー様が仰られたスキュタレーは外しても良いと思います。リボン状になっておりませんし」
「共通鍵と公開鍵も外して良いかもね」
「シーザー暗号は、どういう暗号だい?」
サミュエル先生の疑問に、ラッセル様が答える。
「各文字を一定の数だけずらして暗号化する、単一換字式暗号の一種だよ。Aを1つずらしてBにするとかね。helloを3つずらしにするとkhoorになる。そんな感じだね」
「なるほど。それならシーザー暗号も外して良いのでは?」
「それがね、そうも言い切れないんだよ」
「何故?と聞いても?」
「換字式暗号や転置式暗号をさらにシーザー暗号で解くという暗号も存在するからだよ。フェルナー嬢が言った複合型だね」
「となると、換字式暗号がもっとも有力か。やれやれ。変換表が欲しくなるね」
「しかし、その暗号をローレンス君は知っていたのかい?」
「小さい頃に換字式暗号は、遊びで使ったりしていました。シーザー暗号も同じくです」
「では、ランベルト君も知ってる?」
「どうでしょう?ローレンス様が使ってくれたのは、私に文字を教える為と仰っておられましたが」
「それにかこつけて独り占めか。まったく……」
サミュエル先生が呟いた。とりあえず、換字式暗号で数字を変換してみる事にした。ラッセル様が「変換表が欲しい」と言っていたけれど、まさしくそんな感じだ。
「とりあえず解けたけれど、やっぱりもう一段階ありそうだね」
そこに並んだ文字は、『SFHORLQ VXUELD DYDULWLD』。読めないし意味を成していないアルファベットの羅列だ。
今日はもう遅くなったので、いったん暗号は置いておく事にした。
「キャシーちゃん、ちょっと確認しておきたいんだけどね」
「はい。ローレンス様が女性と一緒だったという件ですよね?」
「そうなんだけど。ローレンス君はキャシーちゃん一筋だったから、そういった間違いは起こしていないと思うんだよ」
「私もローレンス様を信じてはいますわ。ですが、人生は何が起こるか分かりません。お義父様にも聞かれましたけれど、もし、ローレンス様が責任を取らざるをえない状況になっていて、ローレンス様がそちらを選んだら、私は身を引きます」
「キャシーちゃん……」
「その時は泣かせてくださいませ?」
ちょっと笑って言う。上手く笑えたかしら?
「いくらでも。そういう事態にはならないと思うけどね」
「えぇ」
「キャシーちゃんももうちょっと、ワガママを言って良いと思うんだけどね」
「ワガママですか?」
「ローレンス君を優先しているでしょ?自分を優先して良いんだよ?」
「そうですわね。ただ……」
「なんだい?」
「私には分からないのです。物や人に執着する気持ちが。ローレンス様の事は好きです。でもそれが恋愛対象の好きなのか、家族としての好きなのか。1度結論は出たはずなのですが、また迷ってきてしまいました」
「難しい問題だよね。私にもその辺りは分からないんだよ。アドバイスのしようがない。ごめんね」
「いいえ。これは私自身で解決しないと、いけない事だと思いますから」
ローレンス様が無事に帰ってきて、その時自分がどう思うのか。それが分からない。ただ、無事に帰ってきて欲しい。痛みや苦しむ事無く、帰ってきて欲しい。今はそう願うばかりだ。そこに恋愛感情があるのかが不明なのよね。
翌日、セシルさんとリーサさんと一緒に、教会に赴く。今日もエルフェ様ご夫妻は来ていらっしゃるだろうか?教会には毎日来ると言っていたから大丈夫だと思うけれど。
サミュエル先生は後から救民院に行くと言ってくれた。私も救民院に行きたいんだけど、はたしてまともに治療出来るかどうか、ちょっと自信が無い。
「キャスリーンさん、収納ピアスから絵を取り出しておいた方が良いわ。収納ピアスは他に知られていないでしょうし」
「はい」
リーサさんに言われて、絵を取り出しておく。
「オアシスって感じよね」
「これがウェリムラ砂漠としても、エルフェ夫妻が目撃したのがローレンス様だとしたら、もう脱出しているのよね?」
「そうなるわね」
セシルさんとリーサさんが話をしているのを、ボンヤリと聞いていた。
教会に着いて、聖堂に入る。
「フェルナー様、こちらへ。お客様がお待ちです」
顔見知りの神官に、聖堂脇の小部屋に案内された。
「ここ……」
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