1 / 10
婚約破棄編
1
しおりを挟む
どこまでも澄み渡る青い空に白く棚引く雲が流れてゆく。
長閑な空の下そこにはふらりと立ち寄った人を威圧する様な、威厳を持った荘厳な城が佇んでいた。
此処は侯爵家。
一帯を治める領主であり、歴々と続く名家である。
代々領民、領地を維持し、対外的に事業を展開し、領地内外にその名を示してきた。
当主はプレンツ王国国内の高官であり、現在は宰相の地位にある。
侯爵家自慢の華やかな庭園で自己の派閥内から年頃の令嬢を招き、お茶会が開かれている。
お抱えの庭師が丹精込めて育てた美しい花が咲き誇る絢爛な庭で、華美なドレスを纏い、令嬢達がお互い含ませた囁きに華を咲かせていた。
令嬢達の視線の先、一人の令嬢が背筋を伸ばし、派手に主張せず人柄を思わせる上品なドレスに身を包み、微笑みを浮かべている。
令嬢の向かいの席が空席なので、誰かを待っているのかも知れない。
回数をこなしているのか慣れたものなのか、待ちの姿勢も堂に入り、呼び出された相手から放置されていたが、気にせず余裕を見せ令嬢達からの憐れみの視線も視界に入って無い。
幾ら待っても婚約者は現れる気配すら無く、令嬢の身が他の人の場合であれば独りを持て余していただろう。
令嬢は自分の婚約者から呼ばれていた。相手は話が有るからとお茶会の席で、衆人環視の中を指定してきたのだ。
呼びつけた本人は始まっているのにも関わらずまだ姿を見せてもいない。
周りの視線と囁きに、持っている扇子がミシリと音を立て、いよいよ令嬢の忍耐力が崩れそうになり始めた時。
令嬢達のお喋りが急に静かになる。
令嬢達の目線を追って、令嬢はふと会場の入口に視線を向けた。と、二人の美男美女が仲睦まじくお互い寄り添って佇んでいる。それを見た令嬢の扇子を持つ手が震えていた。男は、令嬢の婚約者、女は令嬢の姉だった。
令嬢は思う。怒りが込み上げそうになったが、でもある程度はこんな事になるだろうと予想は出来ていた。
いつかは姉が自分の婚約者に何かするのではないかと思っていたから。
侯爵家令嬢の名前はエリス·グラナド。
母親譲りの栗色の髪。栗色の瞳。
こじんまりとした鼻、小さな唇。
全体的な雰囲気で実際の年齢より若く見えた。若く見えるせいでバカにされたり、なおざりにされる事も多々あり、それがコンプレックスだった。
プレンツ王国のグラナド侯爵家の次女であり、厳格な父親、使用人を管理し律する母親、父を補佐する兄、美しく聡明で要領も良い姉。が家族だ。エリスから見たら古風なこれぞ貴族です! というお手本を示す家族に囲まれて、この中にありながらもエリスは侯爵家らしからぬ、質素なドレスを纏っている。
見た人を惹きつける姉と違って平凡な見た目であり、貴族的な価値観に反発を持ち、庶民よりの感覚を好んだ。
エリスの姉、リディア·グラナド。
グラナド家長女のリディアは誰もを虜にする容姿だった。
父親譲りのプラチナブロンドの長いサラサラな髪、ぱっちり二重の大粒な碧い瞳。
きめが細かく透き通る白い肌。
ぽってりとした肉感的な唇に形の良い鼻。美しい造形の顔立ち。
胸は大きく、腰は細く。
繊細な刺繍が美しい綺羅びやかなドレスを好んで着ている。
王国の学園での成績も上位で、魔力も優れ両親からの自慢の娘だった。
それに比べて自分はどうだろう?
容姿も地味で、魔力も少ない。
学園の成績も中間より少し上、作法も完璧では無い。
これでは両親の期待も外れるというもの。
そして姉リディアはエリスの行動を何かと邪魔し、蔑み嘲笑う。
仲良くしていた令嬢に有る事無い事吹き込んで、エリスから離れさせ孤立させる。
学園の教師を引き込んで他の生徒と差別させじわじわと追い詰めてゆく。
何故妹にそんな事を?
優秀な姉からはパッとしない愚図な妹に映るのだ。
それがリディアの癪に触った。それだけだった。
エリスの兄の侯爵家嫡男のエリオット·グラナド。
姉と同じくプラチナブロンドの髪。栗色の瞳。父親似の甘い顔立ちに、全てに置いて要領良く立ち回る。将来は父から宰相の地位を引き継ぎ、家督を継ぐ予定だ。こんな優良物件を世の令嬢は見逃さなかった。兄は幼少の頃から縁談話を持ち込まれる事が多かった。そして、決まった婚約者は釣り合う家柄、器量良しな上にいつも笑顔の可愛い人だった。仲睦まじくまるで兄の為に生まれて来た人だった。兄は家を継ぐ為幼少の頃より厳しい教育を受けてきた。そして常識人に育った。ノブレス·オブリージュを信条とし、貴族としての振る舞いを求める。
エリスは兄から、淑女として侯爵家の名に恥じぬ役割を求められた。
楚々として派閥の令嬢の模範になり自ら手本を示す事。
将来の配偶者を立て、女主人となり邸や使用人を管理する様示した。
そんな当たり前の生き方に自由が無いと反発を覚えていく。
もっと自由に生きたい。
誰にも咎められず好きな事をしたい。
貴族の慣習も反故にし、平均的な能力が故に、美人で優秀な姉と比べられ、両親からの落胆と兄の鋭い視線、姉からの勝ち誇った笑みに、いつの頃からかエリスは全てをかなぐり捨てて侯爵家から逃げ出したいと思う様になった。
長閑な空の下そこにはふらりと立ち寄った人を威圧する様な、威厳を持った荘厳な城が佇んでいた。
此処は侯爵家。
一帯を治める領主であり、歴々と続く名家である。
代々領民、領地を維持し、対外的に事業を展開し、領地内外にその名を示してきた。
当主はプレンツ王国国内の高官であり、現在は宰相の地位にある。
侯爵家自慢の華やかな庭園で自己の派閥内から年頃の令嬢を招き、お茶会が開かれている。
お抱えの庭師が丹精込めて育てた美しい花が咲き誇る絢爛な庭で、華美なドレスを纏い、令嬢達がお互い含ませた囁きに華を咲かせていた。
令嬢達の視線の先、一人の令嬢が背筋を伸ばし、派手に主張せず人柄を思わせる上品なドレスに身を包み、微笑みを浮かべている。
令嬢の向かいの席が空席なので、誰かを待っているのかも知れない。
回数をこなしているのか慣れたものなのか、待ちの姿勢も堂に入り、呼び出された相手から放置されていたが、気にせず余裕を見せ令嬢達からの憐れみの視線も視界に入って無い。
幾ら待っても婚約者は現れる気配すら無く、令嬢の身が他の人の場合であれば独りを持て余していただろう。
令嬢は自分の婚約者から呼ばれていた。相手は話が有るからとお茶会の席で、衆人環視の中を指定してきたのだ。
呼びつけた本人は始まっているのにも関わらずまだ姿を見せてもいない。
周りの視線と囁きに、持っている扇子がミシリと音を立て、いよいよ令嬢の忍耐力が崩れそうになり始めた時。
令嬢達のお喋りが急に静かになる。
令嬢達の目線を追って、令嬢はふと会場の入口に視線を向けた。と、二人の美男美女が仲睦まじくお互い寄り添って佇んでいる。それを見た令嬢の扇子を持つ手が震えていた。男は、令嬢の婚約者、女は令嬢の姉だった。
令嬢は思う。怒りが込み上げそうになったが、でもある程度はこんな事になるだろうと予想は出来ていた。
いつかは姉が自分の婚約者に何かするのではないかと思っていたから。
侯爵家令嬢の名前はエリス·グラナド。
母親譲りの栗色の髪。栗色の瞳。
こじんまりとした鼻、小さな唇。
全体的な雰囲気で実際の年齢より若く見えた。若く見えるせいでバカにされたり、なおざりにされる事も多々あり、それがコンプレックスだった。
プレンツ王国のグラナド侯爵家の次女であり、厳格な父親、使用人を管理し律する母親、父を補佐する兄、美しく聡明で要領も良い姉。が家族だ。エリスから見たら古風なこれぞ貴族です! というお手本を示す家族に囲まれて、この中にありながらもエリスは侯爵家らしからぬ、質素なドレスを纏っている。
見た人を惹きつける姉と違って平凡な見た目であり、貴族的な価値観に反発を持ち、庶民よりの感覚を好んだ。
エリスの姉、リディア·グラナド。
グラナド家長女のリディアは誰もを虜にする容姿だった。
父親譲りのプラチナブロンドの長いサラサラな髪、ぱっちり二重の大粒な碧い瞳。
きめが細かく透き通る白い肌。
ぽってりとした肉感的な唇に形の良い鼻。美しい造形の顔立ち。
胸は大きく、腰は細く。
繊細な刺繍が美しい綺羅びやかなドレスを好んで着ている。
王国の学園での成績も上位で、魔力も優れ両親からの自慢の娘だった。
それに比べて自分はどうだろう?
容姿も地味で、魔力も少ない。
学園の成績も中間より少し上、作法も完璧では無い。
これでは両親の期待も外れるというもの。
そして姉リディアはエリスの行動を何かと邪魔し、蔑み嘲笑う。
仲良くしていた令嬢に有る事無い事吹き込んで、エリスから離れさせ孤立させる。
学園の教師を引き込んで他の生徒と差別させじわじわと追い詰めてゆく。
何故妹にそんな事を?
優秀な姉からはパッとしない愚図な妹に映るのだ。
それがリディアの癪に触った。それだけだった。
エリスの兄の侯爵家嫡男のエリオット·グラナド。
姉と同じくプラチナブロンドの髪。栗色の瞳。父親似の甘い顔立ちに、全てに置いて要領良く立ち回る。将来は父から宰相の地位を引き継ぎ、家督を継ぐ予定だ。こんな優良物件を世の令嬢は見逃さなかった。兄は幼少の頃から縁談話を持ち込まれる事が多かった。そして、決まった婚約者は釣り合う家柄、器量良しな上にいつも笑顔の可愛い人だった。仲睦まじくまるで兄の為に生まれて来た人だった。兄は家を継ぐ為幼少の頃より厳しい教育を受けてきた。そして常識人に育った。ノブレス·オブリージュを信条とし、貴族としての振る舞いを求める。
エリスは兄から、淑女として侯爵家の名に恥じぬ役割を求められた。
楚々として派閥の令嬢の模範になり自ら手本を示す事。
将来の配偶者を立て、女主人となり邸や使用人を管理する様示した。
そんな当たり前の生き方に自由が無いと反発を覚えていく。
もっと自由に生きたい。
誰にも咎められず好きな事をしたい。
貴族の慣習も反故にし、平均的な能力が故に、美人で優秀な姉と比べられ、両親からの落胆と兄の鋭い視線、姉からの勝ち誇った笑みに、いつの頃からかエリスは全てをかなぐり捨てて侯爵家から逃げ出したいと思う様になった。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【短編】将来の王太子妃が婚約破棄をされました。宣言した相手は聖女と王太子。あれ何やら二人の様子がおかしい……
しろねこ。
恋愛
「婚約破棄させてもらうわね!」
そう言われたのは銀髪青眼のすらりとした美女だ。
魔法が使えないものの、王太子妃教育も受けている彼女だが、その言葉をうけて見に見えて顔色が悪くなった。
「アリス様、冗談は止してください」
震える声でそう言うも、アリスの呼びかけで場が一変する。
「冗談ではありません、エリック様ぁ」
甘えた声を出し呼んだのは、この国の王太子だ。
彼もまた同様に婚約破棄を謳い、皆の前で発表する。
「王太子と聖女が結婚するのは当然だろ?」
この国の伝承で、建国の際に王太子の手助けをした聖女は平民の出でありながら王太子と結婚をし、後の王妃となっている。
聖女は治癒と癒やしの魔法を持ち、他にも魔物を退けられる力があるという。
魔法を使えないレナンとは大違いだ。
それ故に聖女と認められたアリスは、王太子であるエリックの妻になる! というのだが……
「これは何の余興でしょう? エリック様に似ている方まで用意して」
そう言うレナンの顔色はかなり悪い。
この状況をまともに受け止めたくないようだ。
そんな彼女を支えるようにして控えていた護衛騎士は寄り添った。
彼女の気持ちまでも守るかのように。
ハピエン、ご都合主義、両思いが大好きです。
同名キャラで様々な話を書いています。
話により立場や家名が変わりますが、基本の性格は変わりません。
お気に入りのキャラ達の、色々なシチュエーションの話がみたくてこのような形式で書いています。
中編くらいで前後の模様を書けたら書きたいです(^^)
カクヨムさんでも掲載中。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
聖女になんかなりたくない! 聖女認定される前に…私はバックれたいと思います。
アノマロカリス
恋愛
この作品の大半はコメディです。
侯爵家に生まれた双子のリアナとリアラ。
姉のリアナは光り輝く金髪と青い瞳を持つ少女。
一方、妹のリアラは不吉の象徴と言われた漆黒の髪に赤い瞳を持つ少女。
両親は姉のリアナを可愛がり、妹のリアラには両親だけではなく使用人すらもぞんざいに扱われていた。
ここまでは良くある話だが、問題はこの先…
果たして物語はどう進んで行くのでしょうか?
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
「証拠なら全て記録してあります」——記録魔法しか取り柄がないと捨てられた令嬢、婚約破棄の場で三年分の不正を読み上げる
歩人
ファンタジー
伯爵令嬢アネットの唯一の魔法は『記録《レコード》』——見たもの聞いたものを
一字一句記憶する地味な能力。婚約者の侯爵子息ヴィクトルは「戦えない魔法など
無価値だ」と婚約破棄を宣言する。だがアネットは微笑んだ。「承知いたしました。
では最後に一つだけ——」。彼女が読み上げ始めたのは、ヴィクトルが三年間で横領した
軍事費の明細。日付、金額、共犯者の名前、密会の会話。全て『記録』済み。
満座の貴族が凍りつく中、王宮監察官が静かに立ち上がった。
「……続けてください、アネット嬢」。
婚約破棄の舞台は、そのまま公開裁判になった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる