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婚約破棄編
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どこまでも澄み渡る青い空に白く棚引く雲が流れてゆく。
長閑な空の下そこにはふらりと立ち寄った人を威圧する様な、威厳を持った荘厳な城が佇んでいた。
此処は侯爵家。
一帯を治める領主であり、歴々と続く名家である。
代々領民、領地を維持し、対外的に事業を展開し、領地内外にその名を示してきた。
当主はプレンツ王国国内の高官であり、現在は宰相の地位にある。
侯爵家自慢の華やかな庭園で自己の派閥内から年頃の令嬢を招き、お茶会が開かれている。
お抱えの庭師が丹精込めて育てた美しい花が咲き誇る絢爛な庭で、華美なドレスを纏い、令嬢達がお互い含ませた囁きに華を咲かせていた。
令嬢達の視線の先、一人の令嬢が背筋を伸ばし、派手に主張せず人柄を思わせる上品なドレスに身を包み、微笑みを浮かべている。
令嬢の向かいの席が空席なので、誰かを待っているのかも知れない。
回数をこなしているのか慣れたものなのか、待ちの姿勢も堂に入り、呼び出された相手から放置されていたが、気にせず余裕を見せ令嬢達からの憐れみの視線も視界に入って無い。
幾ら待っても婚約者は現れる気配すら無く、令嬢の身が他の人の場合であれば独りを持て余していただろう。
令嬢は自分の婚約者から呼ばれていた。相手は話が有るからとお茶会の席で、衆人環視の中を指定してきたのだ。
呼びつけた本人は始まっているのにも関わらずまだ姿を見せてもいない。
周りの視線と囁きに、持っている扇子がミシリと音を立て、いよいよ令嬢の忍耐力が崩れそうになり始めた時。
令嬢達のお喋りが急に静かになる。
令嬢達の目線を追って、令嬢はふと会場の入口に視線を向けた。と、二人の美男美女が仲睦まじくお互い寄り添って佇んでいる。それを見た令嬢の扇子を持つ手が震えていた。男は、令嬢の婚約者、女は令嬢の姉だった。
令嬢は思う。怒りが込み上げそうになったが、でもある程度はこんな事になるだろうと予想は出来ていた。
いつかは姉が自分の婚約者に何かするのではないかと思っていたから。
侯爵家令嬢の名前はエリス·グラナド。
母親譲りの栗色の髪。栗色の瞳。
こじんまりとした鼻、小さな唇。
全体的な雰囲気で実際の年齢より若く見えた。若く見えるせいでバカにされたり、なおざりにされる事も多々あり、それがコンプレックスだった。
プレンツ王国のグラナド侯爵家の次女であり、厳格な父親、使用人を管理し律する母親、父を補佐する兄、美しく聡明で要領も良い姉。が家族だ。エリスから見たら古風なこれぞ貴族です! というお手本を示す家族に囲まれて、この中にありながらもエリスは侯爵家らしからぬ、質素なドレスを纏っている。
見た人を惹きつける姉と違って平凡な見た目であり、貴族的な価値観に反発を持ち、庶民よりの感覚を好んだ。
エリスの姉、リディア·グラナド。
グラナド家長女のリディアは誰もを虜にする容姿だった。
父親譲りのプラチナブロンドの長いサラサラな髪、ぱっちり二重の大粒な碧い瞳。
きめが細かく透き通る白い肌。
ぽってりとした肉感的な唇に形の良い鼻。美しい造形の顔立ち。
胸は大きく、腰は細く。
繊細な刺繍が美しい綺羅びやかなドレスを好んで着ている。
王国の学園での成績も上位で、魔力も優れ両親からの自慢の娘だった。
それに比べて自分はどうだろう?
容姿も地味で、魔力も少ない。
学園の成績も中間より少し上、作法も完璧では無い。
これでは両親の期待も外れるというもの。
そして姉リディアはエリスの行動を何かと邪魔し、蔑み嘲笑う。
仲良くしていた令嬢に有る事無い事吹き込んで、エリスから離れさせ孤立させる。
学園の教師を引き込んで他の生徒と差別させじわじわと追い詰めてゆく。
何故妹にそんな事を?
優秀な姉からはパッとしない愚図な妹に映るのだ。
それがリディアの癪に触った。それだけだった。
エリスの兄の侯爵家嫡男のエリオット·グラナド。
姉と同じくプラチナブロンドの髪。栗色の瞳。父親似の甘い顔立ちに、全てに置いて要領良く立ち回る。将来は父から宰相の地位を引き継ぎ、家督を継ぐ予定だ。こんな優良物件を世の令嬢は見逃さなかった。兄は幼少の頃から縁談話を持ち込まれる事が多かった。そして、決まった婚約者は釣り合う家柄、器量良しな上にいつも笑顔の可愛い人だった。仲睦まじくまるで兄の為に生まれて来た人だった。兄は家を継ぐ為幼少の頃より厳しい教育を受けてきた。そして常識人に育った。ノブレス·オブリージュを信条とし、貴族としての振る舞いを求める。
エリスは兄から、淑女として侯爵家の名に恥じぬ役割を求められた。
楚々として派閥の令嬢の模範になり自ら手本を示す事。
将来の配偶者を立て、女主人となり邸や使用人を管理する様示した。
そんな当たり前の生き方に自由が無いと反発を覚えていく。
もっと自由に生きたい。
誰にも咎められず好きな事をしたい。
貴族の慣習も反故にし、平均的な能力が故に、美人で優秀な姉と比べられ、両親からの落胆と兄の鋭い視線、姉からの勝ち誇った笑みに、いつの頃からかエリスは全てをかなぐり捨てて侯爵家から逃げ出したいと思う様になった。
長閑な空の下そこにはふらりと立ち寄った人を威圧する様な、威厳を持った荘厳な城が佇んでいた。
此処は侯爵家。
一帯を治める領主であり、歴々と続く名家である。
代々領民、領地を維持し、対外的に事業を展開し、領地内外にその名を示してきた。
当主はプレンツ王国国内の高官であり、現在は宰相の地位にある。
侯爵家自慢の華やかな庭園で自己の派閥内から年頃の令嬢を招き、お茶会が開かれている。
お抱えの庭師が丹精込めて育てた美しい花が咲き誇る絢爛な庭で、華美なドレスを纏い、令嬢達がお互い含ませた囁きに華を咲かせていた。
令嬢達の視線の先、一人の令嬢が背筋を伸ばし、派手に主張せず人柄を思わせる上品なドレスに身を包み、微笑みを浮かべている。
令嬢の向かいの席が空席なので、誰かを待っているのかも知れない。
回数をこなしているのか慣れたものなのか、待ちの姿勢も堂に入り、呼び出された相手から放置されていたが、気にせず余裕を見せ令嬢達からの憐れみの視線も視界に入って無い。
幾ら待っても婚約者は現れる気配すら無く、令嬢の身が他の人の場合であれば独りを持て余していただろう。
令嬢は自分の婚約者から呼ばれていた。相手は話が有るからとお茶会の席で、衆人環視の中を指定してきたのだ。
呼びつけた本人は始まっているのにも関わらずまだ姿を見せてもいない。
周りの視線と囁きに、持っている扇子がミシリと音を立て、いよいよ令嬢の忍耐力が崩れそうになり始めた時。
令嬢達のお喋りが急に静かになる。
令嬢達の目線を追って、令嬢はふと会場の入口に視線を向けた。と、二人の美男美女が仲睦まじくお互い寄り添って佇んでいる。それを見た令嬢の扇子を持つ手が震えていた。男は、令嬢の婚約者、女は令嬢の姉だった。
令嬢は思う。怒りが込み上げそうになったが、でもある程度はこんな事になるだろうと予想は出来ていた。
いつかは姉が自分の婚約者に何かするのではないかと思っていたから。
侯爵家令嬢の名前はエリス·グラナド。
母親譲りの栗色の髪。栗色の瞳。
こじんまりとした鼻、小さな唇。
全体的な雰囲気で実際の年齢より若く見えた。若く見えるせいでバカにされたり、なおざりにされる事も多々あり、それがコンプレックスだった。
プレンツ王国のグラナド侯爵家の次女であり、厳格な父親、使用人を管理し律する母親、父を補佐する兄、美しく聡明で要領も良い姉。が家族だ。エリスから見たら古風なこれぞ貴族です! というお手本を示す家族に囲まれて、この中にありながらもエリスは侯爵家らしからぬ、質素なドレスを纏っている。
見た人を惹きつける姉と違って平凡な見た目であり、貴族的な価値観に反発を持ち、庶民よりの感覚を好んだ。
エリスの姉、リディア·グラナド。
グラナド家長女のリディアは誰もを虜にする容姿だった。
父親譲りのプラチナブロンドの長いサラサラな髪、ぱっちり二重の大粒な碧い瞳。
きめが細かく透き通る白い肌。
ぽってりとした肉感的な唇に形の良い鼻。美しい造形の顔立ち。
胸は大きく、腰は細く。
繊細な刺繍が美しい綺羅びやかなドレスを好んで着ている。
王国の学園での成績も上位で、魔力も優れ両親からの自慢の娘だった。
それに比べて自分はどうだろう?
容姿も地味で、魔力も少ない。
学園の成績も中間より少し上、作法も完璧では無い。
これでは両親の期待も外れるというもの。
そして姉リディアはエリスの行動を何かと邪魔し、蔑み嘲笑う。
仲良くしていた令嬢に有る事無い事吹き込んで、エリスから離れさせ孤立させる。
学園の教師を引き込んで他の生徒と差別させじわじわと追い詰めてゆく。
何故妹にそんな事を?
優秀な姉からはパッとしない愚図な妹に映るのだ。
それがリディアの癪に触った。それだけだった。
エリスの兄の侯爵家嫡男のエリオット·グラナド。
姉と同じくプラチナブロンドの髪。栗色の瞳。父親似の甘い顔立ちに、全てに置いて要領良く立ち回る。将来は父から宰相の地位を引き継ぎ、家督を継ぐ予定だ。こんな優良物件を世の令嬢は見逃さなかった。兄は幼少の頃から縁談話を持ち込まれる事が多かった。そして、決まった婚約者は釣り合う家柄、器量良しな上にいつも笑顔の可愛い人だった。仲睦まじくまるで兄の為に生まれて来た人だった。兄は家を継ぐ為幼少の頃より厳しい教育を受けてきた。そして常識人に育った。ノブレス·オブリージュを信条とし、貴族としての振る舞いを求める。
エリスは兄から、淑女として侯爵家の名に恥じぬ役割を求められた。
楚々として派閥の令嬢の模範になり自ら手本を示す事。
将来の配偶者を立て、女主人となり邸や使用人を管理する様示した。
そんな当たり前の生き方に自由が無いと反発を覚えていく。
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