25 / 32
二章
10、星宇の過去【3】
しおりを挟む
「そうして私は南方へと走った。何分にも幼い白貂の身であったからな。何年かかったかは覚えていない」
文護の側に立つ星宇は、苦い笑みを浮かべた。
だから瑞雪には分かってしまった。想像を絶するほどの苦難の道であったことを。
「集落の近くを進んでいる時、嵐のせいで土砂が崩れた。私はあっという間に飲み込まれた」
文護は悲鳴を上げた。瑞雪は口を手で覆い、叫びそうになるのを堪える。
土臭いにおいと、生臭いにおい。山の斜面からぱらぱらと落ちてくる小石。それらが土砂崩れの前兆であると、天雷が知るはずもなかった。
一瞬で土砂に埋もれ、息を吸おうとすれば濡れた土が鼻に入り込んだ。
苦しい、苦しい。石と石のわずかな隙間に天雷は流れたようで、小さな貂の体は潰されずに済んだが。それもただ死ぬまでの時間が伸びただけだ。
——おてがみ、きえちゃう。おばさまにとどけるって、きめたのに。
呼吸をしようとすれば、土砂の中でぜぇぜぇと肺が鳴るばかり。しだいに天雷の頭はぼうっとしてきた。
真っ暗で光もないのに、なぜか瑞雪の姿が見えた。氷雨に濡れていた天雷を助け、凍えた体を温めてくれた。欣然と一緒に山羊の乳をくれた。
瑞雪こそが天雷の生きる意味だ。
あの子に笑ってほしかった。欣然からの返事が来れば、きっと瑞雪は安心するから。毎朝、頬に涙の筋が残らなくてもいいように。
もし、自分までがいなくなったら瑞雪はどれほど悲しむだろう。絶望しか残らないのではないか。
——いやだ、そんなの。
瑞雪が待っている。一番大事な主を、これ以上泣かせるわけにはいかない。
——ルイシュエはぼくのことがすきなんだもん。
暗く閉ざされた土砂の中、光など届かぬはずなのに。天雷の目の奥で光がはじけた。澄みきった透明な粒と、しっとりと光る淡い翠の粒が一面に見える。
故郷の山の景色だ。これまで一度も思い出すことなどなかったのに。
——ぜったいにしなない。ルイシュエのところにかえるんだ! だってぼくはルイシュエがだいすきなんだもん。
脳内に浮かんだ水晶と翡翠の山が鮮烈な光を放つ。その光は天雷の姿を包み、さらに厚い土砂の向こうにまで届いた。
『おい、土が光っとうぞ』
『なんや、どうした』
男たちの焦る声が聞こえた。さっきまでは届かなかったはずの人の声、地面を叩く雨の音が騒がしい。
——あれ? あしがへんだ。
天雷は前脚を伸ばした。手が大きい、指も長い。開いたてのひらに、バタバタと重い雨が落ちてくる。手首と腕を伝い流れる雨、天雷の腕には白い毛が生えていなかった。
『ちょお、兄ちゃん。大丈夫か。生き埋めになっとったんか』
『ほら、土砂から引き出すぞ。早よ村に運んでやらんと』
土砂崩れの様子を見るために、村人が集まっていたのだろう。けれど彼らが目にしたのは、泥の中から生まれたような青年だった。
『にゃ……にゃあ』
人となった天雷が発した声に、緊迫していた村人たちがどっと笑う。笠をかぶり手も足も泥にまみれているのに、辺りには根が露になった木が倒れているのに。あまりにも楽しそうに男たちは天雷の肩を叩いた。
『兄ちゃん、面白いなぁ』
『なんやけったいな言葉やなぁ。けど命拾いしてよかったな。あんた、運がよかったで』
男たちに泥から引きずり出してもらいながら、天雷は首を傾げた。
貂は化けるのがうまいというが、何がどうして人になったのか。あと、自分は子供のつもりだったのに、もしかして違った?
◇◇◇
「私は人として旅を続けながら、言葉を覚えていった。野宿をし、時に畑仕事を手伝い日銭を稼いだ」
直立したままの星宇が、ちらっと瑞雪に目を向ける。黒水晶の瞳には愁いを帯びた翳が滲んでいた。
「ただ、気を抜くと白貂に戻ってしまう。その逆もあるが。だから熟睡はできない」
常に眠りは浅く、周囲に気を張っているのだと星宇は告げた。白貂の姿で深く眠ってしまえば、毛皮を剥ぐために殺されてしまうのだと。
「欣然殿にようやく会え、瑞雪への返事ももらった。私が天雷であると信じてもらうのは大変だったが。まぁ、何とか……」
おそらく星宇は叔母の目の前で、白貂に変化≪へんげ≫したのだろう。
「人としての名前はあるの? と欣然殿に尋ねられ。私は『おい、あんた』と『兄ちゃん』の二つの名があると答えた」
瑞雪には想像できる。「どこから何を教えればいいのか」と頭を抱える叔母の姿が。ちょっと微笑ましいが、ここまで天雷を人らしく教育してくれたことはかなり申し訳ない。きっと大変だっただろう。
「厳しかった……欣然殿は。人の姿で鼠を追うな、人の姿で机の下に隠れるな、食事の時は箸を持てとうるさくて。私はかなり参ってしまった」
——あなたは星宇。白貂の天雷では瑞雪のいる伊河に戻れません。必ず狩られます。星宇が貂であることがばれないように暮らしなさい。
——にゃ、にゃあ……。
——猫じゃないの! 人の言葉でしゃべりなさい。
何しろ天雷の命がかかっているのだ。叔母も必死だっただろう。
「猫の鳴き真似の方が楽だった」
ため息とともに星宇はこぼした。
「叔母さまが元気そうで安心したわ。ありがとうね、天雷」
「……星宇だ。しばらく欣然殿と暮らした私は、瑞雪の元に戻ろうとした。だが」
「ごめんなさいっ!」
突然、文護が謝った。皇帝とは思えぬほどに、深く頭を下げる。しかも謝罪の相手は星宇と瑞雪だ。
何事かと、瑞雪は呆気に取られて口を開いた。
「じつはおとうさまが、びょうきをなおすために、テンをつかまえたんです」
文護が申し訳なさそうに肩をすぼめる。
「テンって『こうせん』っていうれいじゅうなんでしょう?」
黄仙。霊獣。その言葉が愛らしい天雷と結びつくのに、瑞雪は数瞬を要した。
「そうなの?」と瑞雪は星宇に尋ねた。岷国の辺境ではイタチを黄仙という霊獣として崇めると聞いたことがあるが、京師の伊河では鶏を盗む厄介者だ。
「違う。そもそも私は白貂であって、イタチではない」
うん、そうだよね。
けれど先帝は、武官や宦官に命じて病を治す動物を捜させていたとこのとだ。そして捕まえたのが、白貂の姿に戻っていた天雷であった。
「こうせんはありがたいれいじゅうだから、かごにいれて、さいだんにまつるって。おとうさまが」
「天雷を祭壇に?」
こくりと文護はうなずいた。
「ぼくは、はんたいしたんです。でもおとうさまは小さなかごにティエンレイをとじこめて。おせんこうのけむりがすごくて、ティエンレイがくるしそうにしてたから」
だから文護は籠ごと天雷を奪ったのだそうだ。
「ぐったりしてたからたすけたのに。お前のせいでわざわいがおこるって、ぼくはおこられて。そのあと、おとうさまのぐあいがわるくなって……」
天雷を助けたからなのか、と文護は自分を責めたという。
「だからぼくはイェチンにききにいったんです。イェチンはむずかしくてこわいことを、たくさんしってるから」
ああ。それで文護は、苦手なはずの妖怪の話を葉青から聞いていたのか。天雷も父も、どちらも助けたくて。
葉青は白貂は化けるのがうまいけれど、病気を治す力はないと教えてくれた。文護はさらに学者にも確認したそうだ。
民間伝承とその裏付け。そして皇帝である父や側近への説得。文護は未熟だし、宰相の力を借りねば執務も難しいが。
それでも自ら難局を打開しようと動いている。幼いながらも文護は周囲への交渉を繰り返してきたのだ。
「ようやくおとうさまが、ティエンレイのことを『いらない』っていったの。だから、ぼくがつれてかえったんです」
するとさっきまで愛らしい白貂だった天雷が、素っ裸の青年に変化したのだという。
困った文護は、次は皇后である母親に相談した。『おとうさまにばれたら、ぜったいにティエンレイがころされちゃう』と。
そして皇后の計らいもあり、厳という姓を与えられた星宇は護衛となった。理由は一つ、護衛であれば常に文護の目が届くから。元が貂であることもごまかせるだろう、と。
皇后——今の皇太后がどのような人か瑞雪は知らない。だが、なかなか豪気な婦人のようだ。
「ありがとうございます、陛下。天雷を救ってくださって」
冷めてしまった碗を手にして、瑞雪は微笑んだ。
「ようやく天雷に会えて、元気な姿を見て、すごく嬉しいんです。本当に、本当に大事な子なんです」
立ったままで控えている星宇が、視線を逸らした。けれどその瞳は潤んでいた。
文護の側に立つ星宇は、苦い笑みを浮かべた。
だから瑞雪には分かってしまった。想像を絶するほどの苦難の道であったことを。
「集落の近くを進んでいる時、嵐のせいで土砂が崩れた。私はあっという間に飲み込まれた」
文護は悲鳴を上げた。瑞雪は口を手で覆い、叫びそうになるのを堪える。
土臭いにおいと、生臭いにおい。山の斜面からぱらぱらと落ちてくる小石。それらが土砂崩れの前兆であると、天雷が知るはずもなかった。
一瞬で土砂に埋もれ、息を吸おうとすれば濡れた土が鼻に入り込んだ。
苦しい、苦しい。石と石のわずかな隙間に天雷は流れたようで、小さな貂の体は潰されずに済んだが。それもただ死ぬまでの時間が伸びただけだ。
——おてがみ、きえちゃう。おばさまにとどけるって、きめたのに。
呼吸をしようとすれば、土砂の中でぜぇぜぇと肺が鳴るばかり。しだいに天雷の頭はぼうっとしてきた。
真っ暗で光もないのに、なぜか瑞雪の姿が見えた。氷雨に濡れていた天雷を助け、凍えた体を温めてくれた。欣然と一緒に山羊の乳をくれた。
瑞雪こそが天雷の生きる意味だ。
あの子に笑ってほしかった。欣然からの返事が来れば、きっと瑞雪は安心するから。毎朝、頬に涙の筋が残らなくてもいいように。
もし、自分までがいなくなったら瑞雪はどれほど悲しむだろう。絶望しか残らないのではないか。
——いやだ、そんなの。
瑞雪が待っている。一番大事な主を、これ以上泣かせるわけにはいかない。
——ルイシュエはぼくのことがすきなんだもん。
暗く閉ざされた土砂の中、光など届かぬはずなのに。天雷の目の奥で光がはじけた。澄みきった透明な粒と、しっとりと光る淡い翠の粒が一面に見える。
故郷の山の景色だ。これまで一度も思い出すことなどなかったのに。
——ぜったいにしなない。ルイシュエのところにかえるんだ! だってぼくはルイシュエがだいすきなんだもん。
脳内に浮かんだ水晶と翡翠の山が鮮烈な光を放つ。その光は天雷の姿を包み、さらに厚い土砂の向こうにまで届いた。
『おい、土が光っとうぞ』
『なんや、どうした』
男たちの焦る声が聞こえた。さっきまでは届かなかったはずの人の声、地面を叩く雨の音が騒がしい。
——あれ? あしがへんだ。
天雷は前脚を伸ばした。手が大きい、指も長い。開いたてのひらに、バタバタと重い雨が落ちてくる。手首と腕を伝い流れる雨、天雷の腕には白い毛が生えていなかった。
『ちょお、兄ちゃん。大丈夫か。生き埋めになっとったんか』
『ほら、土砂から引き出すぞ。早よ村に運んでやらんと』
土砂崩れの様子を見るために、村人が集まっていたのだろう。けれど彼らが目にしたのは、泥の中から生まれたような青年だった。
『にゃ……にゃあ』
人となった天雷が発した声に、緊迫していた村人たちがどっと笑う。笠をかぶり手も足も泥にまみれているのに、辺りには根が露になった木が倒れているのに。あまりにも楽しそうに男たちは天雷の肩を叩いた。
『兄ちゃん、面白いなぁ』
『なんやけったいな言葉やなぁ。けど命拾いしてよかったな。あんた、運がよかったで』
男たちに泥から引きずり出してもらいながら、天雷は首を傾げた。
貂は化けるのがうまいというが、何がどうして人になったのか。あと、自分は子供のつもりだったのに、もしかして違った?
◇◇◇
「私は人として旅を続けながら、言葉を覚えていった。野宿をし、時に畑仕事を手伝い日銭を稼いだ」
直立したままの星宇が、ちらっと瑞雪に目を向ける。黒水晶の瞳には愁いを帯びた翳が滲んでいた。
「ただ、気を抜くと白貂に戻ってしまう。その逆もあるが。だから熟睡はできない」
常に眠りは浅く、周囲に気を張っているのだと星宇は告げた。白貂の姿で深く眠ってしまえば、毛皮を剥ぐために殺されてしまうのだと。
「欣然殿にようやく会え、瑞雪への返事ももらった。私が天雷であると信じてもらうのは大変だったが。まぁ、何とか……」
おそらく星宇は叔母の目の前で、白貂に変化≪へんげ≫したのだろう。
「人としての名前はあるの? と欣然殿に尋ねられ。私は『おい、あんた』と『兄ちゃん』の二つの名があると答えた」
瑞雪には想像できる。「どこから何を教えればいいのか」と頭を抱える叔母の姿が。ちょっと微笑ましいが、ここまで天雷を人らしく教育してくれたことはかなり申し訳ない。きっと大変だっただろう。
「厳しかった……欣然殿は。人の姿で鼠を追うな、人の姿で机の下に隠れるな、食事の時は箸を持てとうるさくて。私はかなり参ってしまった」
——あなたは星宇。白貂の天雷では瑞雪のいる伊河に戻れません。必ず狩られます。星宇が貂であることがばれないように暮らしなさい。
——にゃ、にゃあ……。
——猫じゃないの! 人の言葉でしゃべりなさい。
何しろ天雷の命がかかっているのだ。叔母も必死だっただろう。
「猫の鳴き真似の方が楽だった」
ため息とともに星宇はこぼした。
「叔母さまが元気そうで安心したわ。ありがとうね、天雷」
「……星宇だ。しばらく欣然殿と暮らした私は、瑞雪の元に戻ろうとした。だが」
「ごめんなさいっ!」
突然、文護が謝った。皇帝とは思えぬほどに、深く頭を下げる。しかも謝罪の相手は星宇と瑞雪だ。
何事かと、瑞雪は呆気に取られて口を開いた。
「じつはおとうさまが、びょうきをなおすために、テンをつかまえたんです」
文護が申し訳なさそうに肩をすぼめる。
「テンって『こうせん』っていうれいじゅうなんでしょう?」
黄仙。霊獣。その言葉が愛らしい天雷と結びつくのに、瑞雪は数瞬を要した。
「そうなの?」と瑞雪は星宇に尋ねた。岷国の辺境ではイタチを黄仙という霊獣として崇めると聞いたことがあるが、京師の伊河では鶏を盗む厄介者だ。
「違う。そもそも私は白貂であって、イタチではない」
うん、そうだよね。
けれど先帝は、武官や宦官に命じて病を治す動物を捜させていたとこのとだ。そして捕まえたのが、白貂の姿に戻っていた天雷であった。
「こうせんはありがたいれいじゅうだから、かごにいれて、さいだんにまつるって。おとうさまが」
「天雷を祭壇に?」
こくりと文護はうなずいた。
「ぼくは、はんたいしたんです。でもおとうさまは小さなかごにティエンレイをとじこめて。おせんこうのけむりがすごくて、ティエンレイがくるしそうにしてたから」
だから文護は籠ごと天雷を奪ったのだそうだ。
「ぐったりしてたからたすけたのに。お前のせいでわざわいがおこるって、ぼくはおこられて。そのあと、おとうさまのぐあいがわるくなって……」
天雷を助けたからなのか、と文護は自分を責めたという。
「だからぼくはイェチンにききにいったんです。イェチンはむずかしくてこわいことを、たくさんしってるから」
ああ。それで文護は、苦手なはずの妖怪の話を葉青から聞いていたのか。天雷も父も、どちらも助けたくて。
葉青は白貂は化けるのがうまいけれど、病気を治す力はないと教えてくれた。文護はさらに学者にも確認したそうだ。
民間伝承とその裏付け。そして皇帝である父や側近への説得。文護は未熟だし、宰相の力を借りねば執務も難しいが。
それでも自ら難局を打開しようと動いている。幼いながらも文護は周囲への交渉を繰り返してきたのだ。
「ようやくおとうさまが、ティエンレイのことを『いらない』っていったの。だから、ぼくがつれてかえったんです」
するとさっきまで愛らしい白貂だった天雷が、素っ裸の青年に変化したのだという。
困った文護は、次は皇后である母親に相談した。『おとうさまにばれたら、ぜったいにティエンレイがころされちゃう』と。
そして皇后の計らいもあり、厳という姓を与えられた星宇は護衛となった。理由は一つ、護衛であれば常に文護の目が届くから。元が貂であることもごまかせるだろう、と。
皇后——今の皇太后がどのような人か瑞雪は知らない。だが、なかなか豪気な婦人のようだ。
「ありがとうございます、陛下。天雷を救ってくださって」
冷めてしまった碗を手にして、瑞雪は微笑んだ。
「ようやく天雷に会えて、元気な姿を見て、すごく嬉しいんです。本当に、本当に大事な子なんです」
立ったままで控えている星宇が、視線を逸らした。けれどその瞳は潤んでいた。
29
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
異国妃の宮廷漂流記
花雨宮琵
キャラ文芸
唯一の身内である祖母を失った公爵令嬢・ヘレナに持ち上がったのは、元敵国の皇太子・アルフォンスとの縁談。
夫となる人には、愛する女性と皇子がいるという。
いずれ離縁される“お飾りの皇太子妃”――そう冷笑されながら、ヘレナは宮廷という伏魔殿に足を踏み入れる。 冷徹と噂される皇太子とのすれ違い、宮中に渦巻く陰謀、そして胸の奥に残る初恋の記憶。
これは、居場所を持たないお転婆な花嫁が、自ら絆を紡ぎ直し愛と仲間を得て”自分の居場所”を創りあげるまでの、ときに騒がしく、とびきり愛おしい――笑って泣ける、ハッピーエンドのサバイバル譚です。
※本作は2年前にカクヨム、エブリスタに掲載していた物語『元敵国に嫁いだ皇太子妃は、初恋の彼に想いを馳せる』を大幅に改稿し、別作品として仕上げたものです。
© 花雨宮琵 2025 All Rights Reserved. 無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
後宮の隠れ薬師は闇夜を照らす
絹乃
キャラ文芸
旧題:後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。
※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛
タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。
しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。
前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。
魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる