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三章
6,皇太后宮
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紅梅は奥の宮から、皇太后宮へと住まいを移した。倒木がそのまま放置され、雨漏りがする奥の宮とはまるで別世界だ。
皇后時代の侍女はもういないので、今は女官と宦官が紅梅の身の回りの世話をしている。
釉薬を施された瓦は太陽の光を反射してきらきらと輝き、柱も回廊の欄干も磨き上げられている。
けれど皇太后宮の主である紅梅は、浮かない顔をしている。
「やっぱり決明子でうがいをするのね」
紅梅は装いも奥の宮にいた頃の質素な衣とはまったく違う。広袖の長衣には鳥の刺繍が施され、肩には絹の薄い被帛を掛けている。唇に紅もきっちりと引いて、丁寧に結い上げた髪には珊瑚の珠が揺れる簪を挿している。
まるで別人だ。
「口内炎が再発なさいましたからね。きっと心が参っていらしたのでしょう」
瑞雪は決明子の煎じ汁を碗に入れて渡した。艶のある碗は手になめらかで、うがい薬で使っていいものかと躊躇してしまう。
「あら、わたくしは元気よ。奥の宮のように雨漏りもしませんからね」
と言いつつも、やはり紅梅の目の下には隈ができている。しかし奥の宮で瑞雪が甘やかさなかったからだろう、紅梅は自分で煎じ汁を水で薄めた。
これまでの皇太后を瑞雪は名前でしか知らない。多分、紅梅は歴代の皇太后の中でも異色だろう。
「そういえば紅梅さまは星宇さんが白貂であることをご存じなんですよね」
「ほりゃあへ」
煎じ汁を口に含んでいるので、何を言っているのやら。たぶん「そりゃあね」かな、と瑞雪は見当をつける。
「文護が助けた白貂をわたくしの所に連れてきたのよ。そうしたらあなた、びっくりするじゃない」
瑞雪が用意した深い盆に、紅梅は煎じ汁を口から出した。
「あんなに可愛くてふわふわな子供の白貂がですよ、がっしりした青年になったんですから」
「確かに驚きますよね。わたしも最近知って、びっくりしました」
「しかも全裸」
あ、やっぱりそこは気になるところなんだ。
「さすがに恥ずかしかったんでしょうね。白貂くんはしゃがんで鳴いていましたよ。文護ったら『おにいちゃんをたすけてあげて』ってわたくしに頼みこんでね。そんなの放っておけないでしょう?」
「泣いていたのではなく?」と瑞雪は問うた。
「ええ『にゃ……』って鳴いていましたね。貂ってあんな鳴き方をするのかしら、初めて聞いたのよ」
はは、と瑞雪は苦笑いを浮かべた。
「文護が白貂くんに『星宇』って名前を付けたの。姓の『厳』は、まぁ適当にわたくしが」
貂の肉に病を癒す力があるのかを、小さな文護は学者に尋ねたそうだ。貂は生薬でも薬膳でもない、天雷を守ったのは間違いではなかった。
そもそも先帝の死因は、斉一桐が長期服用してはならぬ山梔子と甘草を与え続けたことによるものだ。
「あの尚食の女官は、陛下のことを好いていたのですよ。陛下も、侍女でもないのに甲斐甲斐しく世話をしてくれる女官を可愛く思っていたみたいね」
妃嬪に召し上げるという話もあったそうだ。おそらくはただの口約束だろうが、一桐にとっては人生で最大の喜びであったに違いない。
でも、と紅梅の表情に翳が落ちる。
「尚食は、わたくしの侍女であった宋舞の足を不随にし、あなたの叔母さまに罪を被せ、さらに文護まで毒牙にかけようとしました。すべて陛下への恋心が原因であれば、あまりにも愚かでした」
「はい」と瑞雪はうなずいた。
一桐は誰にも弔われることすらなく、犯罪者の埋葬地に葬られた。尚食を務めた彼女の死を悼む者はいない。皇帝暗殺を企てた咎は、斉の親族にも及んだのだから。
「そうそう、奥の宮の倒木は片付けさせておきましたよ」
口元を手巾で拭きながら、紅梅は話題を変えた。
「星宇が人になる前に、まだ小さな貂の姿で土砂崩れに巻き込まれたそうね」
「はい。わたしの手紙を叔母さまに……先代の薬命司に届ける途中のことだったそうです」
「そうね。あなたの願いを叶えたいという信念が、あの子を人の姿に変えさせたのでしょうね。璠欣然のことは、わたくしもよく知っています」
紅梅がまだ皇后であった頃、決明子のうがい薬を薄めたのは欣然だ。
「あの子……星宇があなたの元に戻る前に宮城を訪れて捕まってしまったのは、わたくしに手紙を届けるためだったのですよ」
「手紙ですか?」
「ええ、欣然からのね」
棚に置いてある黒い漆塗りの箱の蓋を紅梅は開いた。管理のずさんな奥の宮ではなく、ずっと皇太后宮に置いてあったのだろう。蓋は虹色が遊ぶ螺鈿で飾られていた。
中から取り出されたのは、黄ばんだ紙片だった。瑞雪はそれを慎重に開く。
「薬命司は廃止されましたが、尚食の斉一桐が復活させると約束してくれました。姪の璠瑞雪はいずれ薬命司となるでしょう。それは厳しくつらい道です。私は大事な姪に重責を背負わせてしまいました。皇后陛下、どうか姪を導いてくださいますようお願い申し上げます」
紅梅が見せてくれた紙には、やはり竹の筆で細かな文字が綴られていた。そして、天雷が咥えた牙の痕も。
叔母は一桐に嵌められたことを知らなかったはず。なのに、頼っているのは紅梅だ。
どこかで瑞雪を一桐だけに預けるのを危惧していたのか。親友に違和感を覚えていたのか。
「この手紙があったから、紅梅さまはわたしに薬膳料理を頼まれたんですね」
息子の命を守るため奥の宮で女官たちの動向を見続けていた紅梅は、瑞雪のことも見守ってくれていた。
「瑞雪。あなたを薬命司に縛り付けてしまったことを、欣然は後悔しているのですよ」
ぼろぼろの紙なのに。紅梅はずっと大事に保管してくれていたのか。
瑞雪が知らぬ、紅梅と欣然の絆が確かにあるのだ。主従でもなく、けれど確かな信頼が二人の間には存在する。
「わたしは薬命司に縛り付けられているとは思いません」
叔母の無念を晴らしたいと思った。叔母の願いを叶えたいと思った。
けれどそれは決して義務ではなかった。叔母の友人と信じて疑わなかった一桐を頼り、自分で選んで後宮に入ったのだ。
「でしたら欣然に手紙を書いてあげるといいわね」
ふっと紅梅が微笑んだ。
「星宇は欣然の居場所を知っていますからね。きっと手紙を届けてくれるでしょう。ああ、あなたも同行するといいわ」
紅梅は名案とばかりに、ぱんっと手を叩いた。
「そうそう。ついでに欣然に届け物をしてもらおうかしら。南方は手つかずの地ですからね。暮らし向きも大変でしょう?」
「わたしが叔母さまのところに?」
考えてもみない提案だった。瑞雪は呆然と立ち尽くした。
叔母さまに会える? まるで夢の中のように現実味がない。
「布の反物がいいかしら? 何反ほど揃えましょう? 衣を縫うには針と糸も必要だし。おしゃれもしたいわよね、簪に刺繍を施した沓もいいかも。京師で人気のお酒とあとは……」
「持ち運びできる量ではありませんよ」
瑞雪は苦笑した。
それに刺繍された繊細な沓を叔母が履く機会などないと思うのだが。それでも紅梅は楽しそうに贈り物をあれこれと考えている。
瑞雪は、荷車をロバに曳いてもらいながら、はるか南を目指して旅をする様子を思い描いてしまった。
自分の隣を歩くのは星宇。いや、もしかすると子供の頃のように、白貂となった天雷を首に巻くのかもしれない。
かつて叔母が絶望と共に、そして小さな天雷が定かな行先も分からずに進んだ道。死を運ぶ虫がいる南方で生き抜いている叔母は逞しく、やはりどこまでも瑞雪の憧れだ。
「欣然にはいろいろ届けてあげたいじゃない。何しろ慎ましい生活って大変なのよ。瑞雪、あなたは寝ているときに雨漏りで顔が濡れるなんて経験ないでしょう?」
「ありませんけど」
「わたくしはあるわ。雨水が頰に落ちてきて、びっくりして飛び起きるのよ。きっと欣然もあるわね。南方はにわか雨ですら土砂降りになるっていうじゃない」
紅梅は叔母に妙なところで親近感を覚えているようで、用意する品物を書き留めるために墨をすり始めた。
皇后時代の侍女はもういないので、今は女官と宦官が紅梅の身の回りの世話をしている。
釉薬を施された瓦は太陽の光を反射してきらきらと輝き、柱も回廊の欄干も磨き上げられている。
けれど皇太后宮の主である紅梅は、浮かない顔をしている。
「やっぱり決明子でうがいをするのね」
紅梅は装いも奥の宮にいた頃の質素な衣とはまったく違う。広袖の長衣には鳥の刺繍が施され、肩には絹の薄い被帛を掛けている。唇に紅もきっちりと引いて、丁寧に結い上げた髪には珊瑚の珠が揺れる簪を挿している。
まるで別人だ。
「口内炎が再発なさいましたからね。きっと心が参っていらしたのでしょう」
瑞雪は決明子の煎じ汁を碗に入れて渡した。艶のある碗は手になめらかで、うがい薬で使っていいものかと躊躇してしまう。
「あら、わたくしは元気よ。奥の宮のように雨漏りもしませんからね」
と言いつつも、やはり紅梅の目の下には隈ができている。しかし奥の宮で瑞雪が甘やかさなかったからだろう、紅梅は自分で煎じ汁を水で薄めた。
これまでの皇太后を瑞雪は名前でしか知らない。多分、紅梅は歴代の皇太后の中でも異色だろう。
「そういえば紅梅さまは星宇さんが白貂であることをご存じなんですよね」
「ほりゃあへ」
煎じ汁を口に含んでいるので、何を言っているのやら。たぶん「そりゃあね」かな、と瑞雪は見当をつける。
「文護が助けた白貂をわたくしの所に連れてきたのよ。そうしたらあなた、びっくりするじゃない」
瑞雪が用意した深い盆に、紅梅は煎じ汁を口から出した。
「あんなに可愛くてふわふわな子供の白貂がですよ、がっしりした青年になったんですから」
「確かに驚きますよね。わたしも最近知って、びっくりしました」
「しかも全裸」
あ、やっぱりそこは気になるところなんだ。
「さすがに恥ずかしかったんでしょうね。白貂くんはしゃがんで鳴いていましたよ。文護ったら『おにいちゃんをたすけてあげて』ってわたくしに頼みこんでね。そんなの放っておけないでしょう?」
「泣いていたのではなく?」と瑞雪は問うた。
「ええ『にゃ……』って鳴いていましたね。貂ってあんな鳴き方をするのかしら、初めて聞いたのよ」
はは、と瑞雪は苦笑いを浮かべた。
「文護が白貂くんに『星宇』って名前を付けたの。姓の『厳』は、まぁ適当にわたくしが」
貂の肉に病を癒す力があるのかを、小さな文護は学者に尋ねたそうだ。貂は生薬でも薬膳でもない、天雷を守ったのは間違いではなかった。
そもそも先帝の死因は、斉一桐が長期服用してはならぬ山梔子と甘草を与え続けたことによるものだ。
「あの尚食の女官は、陛下のことを好いていたのですよ。陛下も、侍女でもないのに甲斐甲斐しく世話をしてくれる女官を可愛く思っていたみたいね」
妃嬪に召し上げるという話もあったそうだ。おそらくはただの口約束だろうが、一桐にとっては人生で最大の喜びであったに違いない。
でも、と紅梅の表情に翳が落ちる。
「尚食は、わたくしの侍女であった宋舞の足を不随にし、あなたの叔母さまに罪を被せ、さらに文護まで毒牙にかけようとしました。すべて陛下への恋心が原因であれば、あまりにも愚かでした」
「はい」と瑞雪はうなずいた。
一桐は誰にも弔われることすらなく、犯罪者の埋葬地に葬られた。尚食を務めた彼女の死を悼む者はいない。皇帝暗殺を企てた咎は、斉の親族にも及んだのだから。
「そうそう、奥の宮の倒木は片付けさせておきましたよ」
口元を手巾で拭きながら、紅梅は話題を変えた。
「星宇が人になる前に、まだ小さな貂の姿で土砂崩れに巻き込まれたそうね」
「はい。わたしの手紙を叔母さまに……先代の薬命司に届ける途中のことだったそうです」
「そうね。あなたの願いを叶えたいという信念が、あの子を人の姿に変えさせたのでしょうね。璠欣然のことは、わたくしもよく知っています」
紅梅がまだ皇后であった頃、決明子のうがい薬を薄めたのは欣然だ。
「あの子……星宇があなたの元に戻る前に宮城を訪れて捕まってしまったのは、わたくしに手紙を届けるためだったのですよ」
「手紙ですか?」
「ええ、欣然からのね」
棚に置いてある黒い漆塗りの箱の蓋を紅梅は開いた。管理のずさんな奥の宮ではなく、ずっと皇太后宮に置いてあったのだろう。蓋は虹色が遊ぶ螺鈿で飾られていた。
中から取り出されたのは、黄ばんだ紙片だった。瑞雪はそれを慎重に開く。
「薬命司は廃止されましたが、尚食の斉一桐が復活させると約束してくれました。姪の璠瑞雪はいずれ薬命司となるでしょう。それは厳しくつらい道です。私は大事な姪に重責を背負わせてしまいました。皇后陛下、どうか姪を導いてくださいますようお願い申し上げます」
紅梅が見せてくれた紙には、やはり竹の筆で細かな文字が綴られていた。そして、天雷が咥えた牙の痕も。
叔母は一桐に嵌められたことを知らなかったはず。なのに、頼っているのは紅梅だ。
どこかで瑞雪を一桐だけに預けるのを危惧していたのか。親友に違和感を覚えていたのか。
「この手紙があったから、紅梅さまはわたしに薬膳料理を頼まれたんですね」
息子の命を守るため奥の宮で女官たちの動向を見続けていた紅梅は、瑞雪のことも見守ってくれていた。
「瑞雪。あなたを薬命司に縛り付けてしまったことを、欣然は後悔しているのですよ」
ぼろぼろの紙なのに。紅梅はずっと大事に保管してくれていたのか。
瑞雪が知らぬ、紅梅と欣然の絆が確かにあるのだ。主従でもなく、けれど確かな信頼が二人の間には存在する。
「わたしは薬命司に縛り付けられているとは思いません」
叔母の無念を晴らしたいと思った。叔母の願いを叶えたいと思った。
けれどそれは決して義務ではなかった。叔母の友人と信じて疑わなかった一桐を頼り、自分で選んで後宮に入ったのだ。
「でしたら欣然に手紙を書いてあげるといいわね」
ふっと紅梅が微笑んだ。
「星宇は欣然の居場所を知っていますからね。きっと手紙を届けてくれるでしょう。ああ、あなたも同行するといいわ」
紅梅は名案とばかりに、ぱんっと手を叩いた。
「そうそう。ついでに欣然に届け物をしてもらおうかしら。南方は手つかずの地ですからね。暮らし向きも大変でしょう?」
「わたしが叔母さまのところに?」
考えてもみない提案だった。瑞雪は呆然と立ち尽くした。
叔母さまに会える? まるで夢の中のように現実味がない。
「布の反物がいいかしら? 何反ほど揃えましょう? 衣を縫うには針と糸も必要だし。おしゃれもしたいわよね、簪に刺繍を施した沓もいいかも。京師で人気のお酒とあとは……」
「持ち運びできる量ではありませんよ」
瑞雪は苦笑した。
それに刺繍された繊細な沓を叔母が履く機会などないと思うのだが。それでも紅梅は楽しそうに贈り物をあれこれと考えている。
瑞雪は、荷車をロバに曳いてもらいながら、はるか南を目指して旅をする様子を思い描いてしまった。
自分の隣を歩くのは星宇。いや、もしかすると子供の頃のように、白貂となった天雷を首に巻くのかもしれない。
かつて叔母が絶望と共に、そして小さな天雷が定かな行先も分からずに進んだ道。死を運ぶ虫がいる南方で生き抜いている叔母は逞しく、やはりどこまでも瑞雪の憧れだ。
「欣然にはいろいろ届けてあげたいじゃない。何しろ慎ましい生活って大変なのよ。瑞雪、あなたは寝ているときに雨漏りで顔が濡れるなんて経験ないでしょう?」
「ありませんけど」
「わたくしはあるわ。雨水が頰に落ちてきて、びっくりして飛び起きるのよ。きっと欣然もあるわね。南方はにわか雨ですら土砂降りになるっていうじゃない」
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