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三章
5、皇帝と皇太后
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シャンシャン、と鈴の音が鳴った。皇帝の乗る輿が来たのだ。廊下の窓が星宇によって蹴破られ、厨房の窓も開いているので、その涼し気な音は大きく聞こえる。
「陛下がいらしたわ。皆、整列なさい。ちゃんとお迎えして」
時宜が迅速に指示を出す。
「あの、時宜さん。廊下の惨状と尚食さまはどうしますか?」
「そのままで。陛下が何をしにいらしたか考えれば、現状は変えない方がいいわ」
さすがは掌膳の部署の主席女官。部下が言うことを聞かないと愚痴っていたのに、いざとなれば時宜の指示に誰もが従う。
星宇も瑞雪を肩から降ろした。
鈴の音が止まった。文護が輿から下りるのだろう。だが、すぐに少し高い鈴音が近づいてくる。
「どういうこと?」
「さぁ?」と女官たちが顔を見合わせる。
輿に乗るような貴人は今の白苑後宮にはいない。しかも輿に鈴をつけることができる者は限られている。
そう妃嬪や側室ではなく、皇后や皇太后。
幾多の足音がしんとした尚食局に響く。その足音は皆がいる廊下へと近づいてきた。
「こ、皇太后が来たのだ。あいつが、あの女狐が戻ってきたのだ」
床にへたり込んだ一桐が、そのまま後ずさった。
「失礼ね、女狐だなんて。泥棒猫に言われたくないわ、斉一桐」
「ね? 文護」と小さな皇帝に声をかけるのは、奥の宮でひっそりと暮らす元紅梅であった。
紅梅が皇太后?
信じられないが、確かに紅梅は文護の肩に手を置いている。母親でなければ、そんな親しい態度をとることはできない。
化粧っ気もなく、髪に挿す簪も少ない紅梅よりも、一桐の方が派手で華やかだ。瑞雪に我儘ばかり言っていた紅梅と姿は同じなのに、今日の彼女は貫禄が違う。
女官の誰もが壁に並んで跪いている。その中を文護と紅梅は進んだ。
「尚食、斉一桐。そなたは朕に毒殺を企んでいると聞いた。相違ないか?」
文護の言葉は、いつもの舌足らずで、たどたどしい話し方ではない。七歳の子供の姿ではない。
「わ、私……は」
一桐は慌てて跪いた。だが、その膝は震えて体がぐらついている。
「私はただ陛下のご病気を治したかったのです。貂は何にでも化けることができ生命力が高いのです。貂の毛皮は遍く世を治める皇帝にこそふさわしい。気高い白貂を陛下に献上しようとしましたのに……」
ぎりりと奥歯を噛みしめ、一桐は目の前に立つ文護と紅梅を睨みつける。この世の憎しみを煮詰めたような濁った眼で。
「この子供と女狐が止めたのです。ようやく、ようやく邪魔者が消えたと思ったのに。我が世がやってくると、陛下と私の世が訪れると思ったのに」
一桐はこぶしで床を叩きつけた。砕けた壺のかけらで怪我をしようとも構うことなく。
「白貂さえ召し上がってくだされば、毛皮さえかぶっていただければ。貂の持つ強力な魂を得ることができ、陛下はお元気になられるはずだった。なぜ止めたっ!」
「止めるでしょう?」と、紅梅は静かに返した。
「先帝に……陛下に毒を飲ませ続けていたのは一桐、あなたなのだから。あなたは信用ならないのだから」
紅梅が瑞雪を手招きする。行っていいものかと迷ったが、瑞雪は紅梅に従った。
「瑞雪さん。これが何か愚か者に教えてあげて」
紅梅から手渡されたのはくすんだ橙色の実と細い棒状のもの。乾燥した実は下部はふっくらとしていて、上部は細い。ただ時を経て干からびてしまっている。
「以前見せていただいた梔子の実、山梔子ですね。こちらは甘草。共に生薬です」
「これはね、先帝の太医と薬師が処方した陛下の薬よ。瑞雪さん、あなたは話してくれたわね、山梔子を長年飲み続けるとどうなるか」
瑞雪は息を呑んだ。
「もしかして、先帝の死因は」
床にへたり込んだままの一桐に、瑞雪は視線を向けた。尚食の仕事はあくまでも食材や料理の献立の管理。生薬は扱わない。
「陛下がお元気になられぬから、私はもっと薬湯を飲めばと」
「一桐さま、なぜそんな愚かなことを! 山梔子も甘草も自己判断で長く服薬すれば、重篤な病気を引き起こすのに」
甘草を長く摂取し続ければ、筋力が低下してだるさを覚える。さらに進めば麻痺や意識障害も。さらに山梔子は五年以上服用すると腸閉塞や腹膜炎を起こすことがある。
「……瑞雪、お前も欣然と同じことを言うのか」
ぽつりと一桐がこぼした。
「薬は体に良いものであろう? 甘草も山梔子も薬なのであろう? 良いものを摂ってなぜ陛下はお亡くなりになったのだ?」
目の奥がちかちかとして、瑞雪は頭が痛んだ。
どう説明すればいい? いや、きっとどんなに言葉を尽くしても一桐は聞き入れない。
叔母が一桐に陥れられたのは、先帝のためにと薬湯を煎じ続ける一桐を諫めたからだろう。薬命司なら当然のことだ。
適量であれば命を救う薬であっても、度を越せば命を奪う毒となる。だが、一桐は信じてくれなかった。
邪魔者である欣然を後宮から排斥するために、皇后の侍女である宋舞に毒を持ったと偽装したのだ。
一桐は良かれと思って真心から病弱な先帝を救おうとした。太医も薬師も当てにならぬから、と。
長年飲み続けた甘草と山梔子は、先帝の体をさらに蝕んだ。そして一桐は次は迷信に従った。
イタチはいくつもの魂を持っている。ならば化けるのが上手い貂も同様であろう。白貂の毛皮は皇帝の象徴、きっとその肉も皇帝の為にある、と。
「一桐さまは、ずっと文護陛下の命を狙っていたんですね」
文護さえいなければ、先帝は白貂の肉を食べることができたのに、と。文護が止めたせいで、先帝は死んでしまったのだと。
「だからわたしを、薬命司を後宮に招いたんですね」
瑞雪は後宮に猛毒である莨菪を持ち込んではいない。鎮痛薬ではあるが、猛毒なので管理を厳重にしなければ悪用されるからだ。薬膳料理を作る薬命司には必要のない生薬だ。
それでも一般の人には分からない。どの生薬を薬命司は使い、どれを使わないのかなど。
「前回は叔母さま、今回はわたしが毒を盛ったことにさせるために。わたしは身元が確かではないのに、すんなりと後宮に入れたのですね」
絶望で目の前が真っ暗になる。
一桐の親切で叔母の名誉を回復できる機会を得たと、喜んでさえいたのに。その行きつく先は皇帝、文護の暗殺の罪を着せられるだなんて。
「斉一桐。聞きなさい」
瑞雪は鋭く命じた。
もう尚食局の長官でも、叔母の友人でもない。一桐はただの乱心した女だ。
「先帝を殺したのは間違いなくあなたです」
「やめなさい。聞きたくありません。私は陛下をお助けしたのです。欣然が嘘ばかりついて陛下に薬湯を届けるなと、そんな嘘をつくから」
両耳を手でふさいで一桐は首を振った。
「暗殺だなんて、尚食さまが乱心したの?」と女官たちが顔を引きつらせながら、囁きあっている。
いいや、乱心したのではない。一桐の中では自分の行いはすべて正義なのだろう。
ほどなく一桐は捕まった。
大理寺は極刑を下した。しかも二人の皇帝に対する暗殺と暗殺未遂だ。
一桐は「私は暗殺などしていない」と何度も訴えたが、却下された。皇太后である紅梅が保管していた山梔子と甘草、それにふつうの女官では持ち込むことのできない莨菪が証拠となった。
一桐の配慮のせいで長らく苦しんだ先帝のために、一桐も簡単には死なせてもらえなかった。
熱く焼いた鉄の鏝を毎日のように押し当てられ、癒えぬ火傷と痛みに苦しみながら、ひと月かけて処刑されたのだ。
星宇が飛び込んだ尚食局の廊下の窓も修理され、日常が戻ってきた。
空席となった新しい尚食の座には、孫時宜が昇進した。あの日から不思議なことに女官たちが瑞雪に謝りに来た。
薬命司の部屋に、宿舎の部屋に、食堂で。
中でも毒殺の犯人に仕立て上げられるはずだった呉杏杏は、瑞雪の前にひれ伏した。
「どうかあたしを踏んでください」
にぎやかな食堂で床にしゃがんだ杏杏を、盆を手にした女官たちが呆然と眺めている。
昼食に豆角と豚の蒸らし麺を食べていた瑞雪は箸を落としてしまった。
「あたしを助けてくれたのに。あたしは薬命司さまを転ばせようとしましたっ」
うん、それは覚えている。
「踏んであげたら?」と隣の席に座る時宜が興味なさそうに言い放った。
豆角はくたくたに煮てあるので色は悪い。豚の脂と甘めの醤油で味付けがしてあり美味しいのだが、さすがは元掌膳。時宜は「この彩りの悪さは陛下にお出しできないのよね」と批評している。
「謝っただけじゃ足りなくて、踏んでもらわないと気が済まないんでしょ? 何なら杏杏を椅子にしたらいいじゃない」
麺を食べながら時宜は床に這いつくばる杏杏を見やった。その背中に座って、食事をしろというのか? とんでもない考えだ。
「いや、食欲なくなるって」
和解したわけでもないし、友達になったわけでもないのに。時宜は自然と食事の時や退勤時には瑞雪の側にいるようになった。
「陛下がいらしたわ。皆、整列なさい。ちゃんとお迎えして」
時宜が迅速に指示を出す。
「あの、時宜さん。廊下の惨状と尚食さまはどうしますか?」
「そのままで。陛下が何をしにいらしたか考えれば、現状は変えない方がいいわ」
さすがは掌膳の部署の主席女官。部下が言うことを聞かないと愚痴っていたのに、いざとなれば時宜の指示に誰もが従う。
星宇も瑞雪を肩から降ろした。
鈴の音が止まった。文護が輿から下りるのだろう。だが、すぐに少し高い鈴音が近づいてくる。
「どういうこと?」
「さぁ?」と女官たちが顔を見合わせる。
輿に乗るような貴人は今の白苑後宮にはいない。しかも輿に鈴をつけることができる者は限られている。
そう妃嬪や側室ではなく、皇后や皇太后。
幾多の足音がしんとした尚食局に響く。その足音は皆がいる廊下へと近づいてきた。
「こ、皇太后が来たのだ。あいつが、あの女狐が戻ってきたのだ」
床にへたり込んだ一桐が、そのまま後ずさった。
「失礼ね、女狐だなんて。泥棒猫に言われたくないわ、斉一桐」
「ね? 文護」と小さな皇帝に声をかけるのは、奥の宮でひっそりと暮らす元紅梅であった。
紅梅が皇太后?
信じられないが、確かに紅梅は文護の肩に手を置いている。母親でなければ、そんな親しい態度をとることはできない。
化粧っ気もなく、髪に挿す簪も少ない紅梅よりも、一桐の方が派手で華やかだ。瑞雪に我儘ばかり言っていた紅梅と姿は同じなのに、今日の彼女は貫禄が違う。
女官の誰もが壁に並んで跪いている。その中を文護と紅梅は進んだ。
「尚食、斉一桐。そなたは朕に毒殺を企んでいると聞いた。相違ないか?」
文護の言葉は、いつもの舌足らずで、たどたどしい話し方ではない。七歳の子供の姿ではない。
「わ、私……は」
一桐は慌てて跪いた。だが、その膝は震えて体がぐらついている。
「私はただ陛下のご病気を治したかったのです。貂は何にでも化けることができ生命力が高いのです。貂の毛皮は遍く世を治める皇帝にこそふさわしい。気高い白貂を陛下に献上しようとしましたのに……」
ぎりりと奥歯を噛みしめ、一桐は目の前に立つ文護と紅梅を睨みつける。この世の憎しみを煮詰めたような濁った眼で。
「この子供と女狐が止めたのです。ようやく、ようやく邪魔者が消えたと思ったのに。我が世がやってくると、陛下と私の世が訪れると思ったのに」
一桐はこぶしで床を叩きつけた。砕けた壺のかけらで怪我をしようとも構うことなく。
「白貂さえ召し上がってくだされば、毛皮さえかぶっていただければ。貂の持つ強力な魂を得ることができ、陛下はお元気になられるはずだった。なぜ止めたっ!」
「止めるでしょう?」と、紅梅は静かに返した。
「先帝に……陛下に毒を飲ませ続けていたのは一桐、あなたなのだから。あなたは信用ならないのだから」
紅梅が瑞雪を手招きする。行っていいものかと迷ったが、瑞雪は紅梅に従った。
「瑞雪さん。これが何か愚か者に教えてあげて」
紅梅から手渡されたのはくすんだ橙色の実と細い棒状のもの。乾燥した実は下部はふっくらとしていて、上部は細い。ただ時を経て干からびてしまっている。
「以前見せていただいた梔子の実、山梔子ですね。こちらは甘草。共に生薬です」
「これはね、先帝の太医と薬師が処方した陛下の薬よ。瑞雪さん、あなたは話してくれたわね、山梔子を長年飲み続けるとどうなるか」
瑞雪は息を呑んだ。
「もしかして、先帝の死因は」
床にへたり込んだままの一桐に、瑞雪は視線を向けた。尚食の仕事はあくまでも食材や料理の献立の管理。生薬は扱わない。
「陛下がお元気になられぬから、私はもっと薬湯を飲めばと」
「一桐さま、なぜそんな愚かなことを! 山梔子も甘草も自己判断で長く服薬すれば、重篤な病気を引き起こすのに」
甘草を長く摂取し続ければ、筋力が低下してだるさを覚える。さらに進めば麻痺や意識障害も。さらに山梔子は五年以上服用すると腸閉塞や腹膜炎を起こすことがある。
「……瑞雪、お前も欣然と同じことを言うのか」
ぽつりと一桐がこぼした。
「薬は体に良いものであろう? 甘草も山梔子も薬なのであろう? 良いものを摂ってなぜ陛下はお亡くなりになったのだ?」
目の奥がちかちかとして、瑞雪は頭が痛んだ。
どう説明すればいい? いや、きっとどんなに言葉を尽くしても一桐は聞き入れない。
叔母が一桐に陥れられたのは、先帝のためにと薬湯を煎じ続ける一桐を諫めたからだろう。薬命司なら当然のことだ。
適量であれば命を救う薬であっても、度を越せば命を奪う毒となる。だが、一桐は信じてくれなかった。
邪魔者である欣然を後宮から排斥するために、皇后の侍女である宋舞に毒を持ったと偽装したのだ。
一桐は良かれと思って真心から病弱な先帝を救おうとした。太医も薬師も当てにならぬから、と。
長年飲み続けた甘草と山梔子は、先帝の体をさらに蝕んだ。そして一桐は次は迷信に従った。
イタチはいくつもの魂を持っている。ならば化けるのが上手い貂も同様であろう。白貂の毛皮は皇帝の象徴、きっとその肉も皇帝の為にある、と。
「一桐さまは、ずっと文護陛下の命を狙っていたんですね」
文護さえいなければ、先帝は白貂の肉を食べることができたのに、と。文護が止めたせいで、先帝は死んでしまったのだと。
「だからわたしを、薬命司を後宮に招いたんですね」
瑞雪は後宮に猛毒である莨菪を持ち込んではいない。鎮痛薬ではあるが、猛毒なので管理を厳重にしなければ悪用されるからだ。薬膳料理を作る薬命司には必要のない生薬だ。
それでも一般の人には分からない。どの生薬を薬命司は使い、どれを使わないのかなど。
「前回は叔母さま、今回はわたしが毒を盛ったことにさせるために。わたしは身元が確かではないのに、すんなりと後宮に入れたのですね」
絶望で目の前が真っ暗になる。
一桐の親切で叔母の名誉を回復できる機会を得たと、喜んでさえいたのに。その行きつく先は皇帝、文護の暗殺の罪を着せられるだなんて。
「斉一桐。聞きなさい」
瑞雪は鋭く命じた。
もう尚食局の長官でも、叔母の友人でもない。一桐はただの乱心した女だ。
「先帝を殺したのは間違いなくあなたです」
「やめなさい。聞きたくありません。私は陛下をお助けしたのです。欣然が嘘ばかりついて陛下に薬湯を届けるなと、そんな嘘をつくから」
両耳を手でふさいで一桐は首を振った。
「暗殺だなんて、尚食さまが乱心したの?」と女官たちが顔を引きつらせながら、囁きあっている。
いいや、乱心したのではない。一桐の中では自分の行いはすべて正義なのだろう。
ほどなく一桐は捕まった。
大理寺は極刑を下した。しかも二人の皇帝に対する暗殺と暗殺未遂だ。
一桐は「私は暗殺などしていない」と何度も訴えたが、却下された。皇太后である紅梅が保管していた山梔子と甘草、それにふつうの女官では持ち込むことのできない莨菪が証拠となった。
一桐の配慮のせいで長らく苦しんだ先帝のために、一桐も簡単には死なせてもらえなかった。
熱く焼いた鉄の鏝を毎日のように押し当てられ、癒えぬ火傷と痛みに苦しみながら、ひと月かけて処刑されたのだ。
星宇が飛び込んだ尚食局の廊下の窓も修理され、日常が戻ってきた。
空席となった新しい尚食の座には、孫時宜が昇進した。あの日から不思議なことに女官たちが瑞雪に謝りに来た。
薬命司の部屋に、宿舎の部屋に、食堂で。
中でも毒殺の犯人に仕立て上げられるはずだった呉杏杏は、瑞雪の前にひれ伏した。
「どうかあたしを踏んでください」
にぎやかな食堂で床にしゃがんだ杏杏を、盆を手にした女官たちが呆然と眺めている。
昼食に豆角と豚の蒸らし麺を食べていた瑞雪は箸を落としてしまった。
「あたしを助けてくれたのに。あたしは薬命司さまを転ばせようとしましたっ」
うん、それは覚えている。
「踏んであげたら?」と隣の席に座る時宜が興味なさそうに言い放った。
豆角はくたくたに煮てあるので色は悪い。豚の脂と甘めの醤油で味付けがしてあり美味しいのだが、さすがは元掌膳。時宜は「この彩りの悪さは陛下にお出しできないのよね」と批評している。
「謝っただけじゃ足りなくて、踏んでもらわないと気が済まないんでしょ? 何なら杏杏を椅子にしたらいいじゃない」
麺を食べながら時宜は床に這いつくばる杏杏を見やった。その背中に座って、食事をしろというのか? とんでもない考えだ。
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