『鉄壁の生徒会長は、秘密の同居人に抗えない。』

nao

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パニックは終わらない

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 ~プロローグ:境界線が溶ける夜~

​「……湊くん、もう、我慢しなくていいんだよ?」

​月明かりだけが差し込む深夜の自室。
僕の腕の中にいるのは、学校中の男子が憧れる「清楚な高嶺の花」こと、白石ひよりだ。
だが、今の彼女にその面影はない。

僕が貸した大きすぎる白Tシャツは肩からはだけ、露わになった鎖骨と、しっとりと汗ばんだ柔らかな肩のラインが月光に濡れている。
裾からは、驚くほど白く瑞々しい生足が伸び、僕の膝に熱を帯びて絡みついていた。

「っ……ひより、離れろ。……俺は、お前が思っているような聖人君子じゃない」

​僕は彼女の肩を掴んで押し戻そうとするが、指先に伝わる吸い付くような柔肌の感触に、脳の芯が痺れる。
昼間は「鉄壁の如月」として、生徒会室で規律を説いている自分が、今は一人の少女の、甘い石鹸の香りと無防備な露出に、理性をズタズタに引き裂かれている。

「知ってるよ。……湊くん、本当はすごく寂しがり屋で、独占欲が強いこと」

​ひよりが僕の首筋に顔を埋め、熱い吐息を吹きかける。
その瞬間、廊下から「あら、まだ起きてるのかしら?」という母・志津子の楽しげな足音が聞こえてきた。

バレれば終わりだ。
厳格な生徒会長の地位も、平穏な日常も。
けれど、腕の中で震えるひよりの腰の細さと、僕を求める熱い肌の誘惑に、僕はもう抗うことができなかった。

「……後悔しても、知らないからな」

​僕は彼女をベッドに押し倒し、その眩しすぎる白い肌を、自分だけのものにするために闇へと沈んでいった。

これが、僕と彼女の「秘密の同居生活」の、行き着く先だ。
なぜこんなことになったのか。
時計の針を、あの「最悪で最高の共同生活」が始まった日へと巻き戻そう。

 ~第一章:嵐を呼ぶ引っ越し蕎麦~

​「……は?」

​夕食のテーブルに置かれた引っ越し蕎麦を前に、僕、如月湊は箸を止めた。
視線の先には、満面の笑みを浮かべる母・志津子。そして、その隣で少し窮屈そうに、でもどこか楽しげに座っている白石ひよりの姿があった。

「だからね、湊。ひよりちゃんのパパとママ、急に海外赴任が決まったじゃない? 準備ができるまでの間、ひよりちゃんをうちで預かることにしたの。今日からここは、ひよりちゃんの家でもあるのよ!」

​志津子はまるで「明日の天気は晴れよ」とでも言うような軽さで、僕の人生を左右する決定事項を告げた。

「待てよ、母さん。ひよりは……白石さんは、学校でも有名な『高嶺の花』だぞ? そんな女子と同級生の男が一つ屋根の下で暮らすなんて、正気の沙汰じゃない!」
「あらぁ、湊。あんたたち、昔は一緒にお風呂に入って『おままごと』してた仲じゃない。今さら何を照れてるのかしら?」

​志津子の容赦ない追撃に、顔がカッと熱くなる。
隣を見ると、ひよりがクスクスと肩を揺らしていた。

「湊くん、そんなに嫌? 私、湊くんとなら楽しく過ごせると思ったんだけどな」

​そう言って、ひよりは僕の顔を覗き込んできた。
学校での彼女は、常に背筋を伸ばし、誰に対しても丁寧な言葉遣い。だが、今僕の目の前にいる彼女は、少し首元が緩んだ部屋着姿で、透き通るようなデコルテを無防備に晒している。

​「……嫌なわけじゃない。ただ、立場を考えろと言ってるんだ。僕は生徒会長だ。不純異性交遊なんて噂が立てば……」
「固いわねぇ。誰も見てない家の中くらい、羽を伸ばせばいいのに」

​志津子がニヤニヤしながら、僕の茶碗に大盛りのカツを乗せる。
「ほら、スタミナつけなさい。これからいろいろ『大変』になるんだから」

​その言葉の意味を、当時の僕はまだ理解していなかった。
ひよりは僕の隣に座り直し、わざとらしく僕の腕に自分の腕を擦り寄せてくる。
「よろしくね、湊くん。……私、寂しがり屋だから、夜中に部屋に行っても怒らないでね?」

​ブラウス越しに伝わる柔らかい感触と、彼女の瞳に宿る小悪魔的な光。
僕の理性が、「鉄壁」の仮面を被り続けるのは不可能だと、本能が警鐘を鳴らし始めた瞬間だった。

​その夜、自分の部屋に戻った僕は、壁一枚隔てた隣の部屋から聞こえる衣擦れの音に、一睡もできなかった。
こうして、僕の地獄のような(そして密かに甘い)居候生活の幕が開いたのだ。

 朝の洗面所は、理性の死地

翌朝。寝不足で重い頭を抱え、僕は顔を洗おうと洗面所の扉を開けた。
だが、その瞬間、僕の思考はホワイトアウトした。

「……あ、湊くん。おはよう」

​そこにいたのは、鏡の前で髪を整えるひよりだった。
だが、その姿は僕の想定を遥かに、そして残酷なまでに超えていた。

彼女は、真っ白なバスタオルを一枚、胸元に巻きつけているだけだったのだ。

「っ……!? な、お前、何して……っ!」
「え? お風呂上がりだけど……あ、もしかして、入る前にノックしなかったの、怒ってる?」

​ひよりは首を傾げ、悪びれる様子もなく僕の方へ一歩歩み寄る。
その拍子に、バスタオルの上端が、重力に逆らうような瑞々しい胸の膨らみに食い込み、さらなる厚みを強調した。

​バスタオルから露出した肩のラインは、朝の光を浴びてしっとりと濡れ、透き通るような白さを放っている。首筋から鎖骨にかけて流れる水滴が、深い谷間へと吸い込まれていくのを、僕は瞬きすら忘れて凝視してしまった。

​さらに、バスタオルの裾から伸びる、モデルのようにすらりとした生足。
膝から太ももにかけて、**柔らかそうで弾力のある「女の子の肌」が、隠すものもなく晒されている。
歩くたびにバスタオルの隙間が揺れ、その「絶対領域」が覗きそうになるたび、僕の心臓は限界を突破して警鐘を鳴らし続けた。

「……な、なんだ、その格好は! 早く服を着ろ!」
「えー? だって、まだお肌のケアが終わってないんだもん。それに湊くん、昨日の夜も私のこと見てたでしょ?」

​ひよりは僕の動揺を楽しむように、わざと距離を詰めてくる。
お風呂上がりの温かい蒸気と、甘いシャンプーの香りが、狭い洗面所に充満した。
彼女の火照った肌の熱が、僕の腕に触れそうになる。

「あらあら、朝から元気ねぇ、二人とも!」

​そこへ、カメラを構えた志津子がひょっこりと顔を出した。

​「湊、鼻血が出そうよ? はい、ひよりちゃん、そのまま動かないで! 『新妻の朝』っていうタイトルで保存しちゃうから!」

「母さん! やめろ!!」

​僕は叫び、ひよりの肩を強引に掴んで(その時の指先に触れた柔肌の驚くべき柔らかさに、さらにパニックになりながら)、彼女を脱衣所へと押し戻した。

「……湊くん、手が震えてるよ?」

​クスクスと笑うひよりの、上気した頬と、妖しく光る瞳。
僕は自分の部屋へ逃げ帰り、壁に頭を打ち付けた。
鉄壁の生徒会長? 冷静沈着? そんなものは、バスタオル一枚の彼女の前では、紙屑以下の価値しかなかった。

 禁断の朝食と、薄着の小悪魔

洗面所での騒動から数分後。僕は食卓につき、目の前の光景に絶望していた。

「はい、湊! 朝からしっかり栄養を摂って、ひよりちゃんをエスコートしなきゃね!」

​志津子が意気揚々と差し出したのは、朝食の概念を覆す「山盛りガーリックステーキと卵黄乗せ納豆」だった。強烈なニンニクの香りが、昨夜からの寝不足で過敏になった鼻腔を直撃する。

「……母さん、朝からこれは無理だ」
「何言ってるの、体力が持たないわよ? あ、ひよりちゃん、着替え終わった?」

​志津子の視線に釣られて入り口を振り返った瞬間、僕は持っていた箸を落とした。

「お待たせ、湊くん。……やっぱりこの部屋、ちょっと暑いね」

​現れたひよりは、バスタオルこそ巻いていなかったが、ある意味それ以上に凶悪な格好をしていた。
上は、薄い生地の淡いピンク色のキャミソール。細い肩紐が、彼女の華奢で滑らかな肩を強調し、動くたびに胸元のレースが危うく揺れている。

​さらに衝撃的だったのは、その下だ。
驚くほど短いデニムのショートパンツ。バスタオルの時よりも、彼女のすらりと伸びた生足の曲線がはっきりと強調されている。
椅子に座る際、太ももの柔らかな肉がわずかに広がり、湊の視界を眩しいほどの「白さ」で埋め尽くした。

(……な、なんだ、その格好は。さっきより面積が狭いじゃないか……!)

​「湊くん、そんなに私の足、気になる?」
​ひよりはわざとらしく足を組み替え、ショートパンツの裾から覗く、吸い付くような柔肌の「絶対領域」を僕の方へ向けた。
さらには、キャミソールの脇からチラリと覗く脇のラインと、そこから続く柔らかな胸のカーブ。
バスタオル姿が「隠された美」なら、今の彼女は「溢れ出す生命力」そのものだ。

​「ほら湊、見惚れてないで食べなさい! ほら、ひよりちゃんも『あーん』してあげて?」
「うん。湊くん、はい、ステーキ。……元気出して?」

​ひよりがフォークで肉を掬い、僕の唇に近づける。
キャミソール越しに伝わる彼女の体温と、ショートパンツから伸びた生足が、テーブルの下で僕の膝に偶然を装って触れた。

「……っ!!」

​強烈なニンニクの風味と、ひよりの剥き出しの肌の熱。
胃の底から沸き上がるようなエネルギーと、目の前の小悪魔的な誘惑。
僕の体温は一気に上昇し、心拍数は最高潮に達した。

​「湊、顔が真っ赤よ? スッポンエキスも追加しちゃおうかしら」
「……いらない!! 学校に行く!!」

​僕は皿を空にするやいなや、逃げるように玄関へ向かった。
背後から聞こえる、志津子の高笑いと、ひよりの「待ってよ、湊くん!」という甘い声。
僕の平穏な学校生活は、登校前からすでに「終わって」いた。

 ~第二章:隠せない火照りと、完璧な「高嶺の花」~

通学路を歩く僕の体は、朝のスタミナ料理のせいで異様に熱かった。
胃の底から熱がせり上がり、首筋がじりじりと火照る。

「おーい、湊! 待てよ!」

​後ろから走ってきたのは、親友の颯太だ。あいつは僕の隣に来るなり、怪訝そうに鼻を鳴らした。

​「……なんだよお前、顔真っ赤だぞ。それに、なんか……すげー元気そうな匂いがする。お前、朝から何食ったんだ?」
「……うるさい。ただの食い過ぎだ」

​必死に平常心を装うが、耳元まで赤いのは自分でもわかる。
そんな僕たちの前に、校門の方から一人の少女が歩いてきた。

「あ、如月くん、神崎くん。おはようございます」
​そこにいたのは、清楚な微笑みを浮かべた白石ひよりだった。
さっきまで家でキャミソールとショートパンツ姿だった彼女は、今、完璧な「高嶺の花」としての装いに身を包んでいる。

 完璧なギャップ

​朝の、あの無防備に肌を晒していた姿とは正反対だ。
校則通りに整えられた濃紺のブレザーは、彼女の細い腰のラインを上品に引き立てている。
首元にはピシッとアイロンのかかった白いブラウス。一番上のボタンまで留められたその襟元は、家で見たあの瑞々しい鎖骨をあえて隠すことで、逆に禁欲的な色気を醸し出していた。

風に揺れるチェック柄のプリーツスカートは、膝上数センチの絶妙な丈。
家で見せていた剥き出しの太ももは、今は清潔感のある紺のハイソックスに包まれている。だが、歩くたびにその境界から覗く白く柔らかな膝の裏側が、昨夜の密着した熱を思い出させ、僕の視線を吸い寄せた。

「……湊。おい、湊!」
「っ! な、なんだよ」
「お前、ひよりちゃんを凝視しすぎだろ。気持ちはわかるけどよ」

​颯太に肘で小突かれ、心臓が跳ね上がる。
ひよりは僕の動揺を見透かしたように、ほんの少しだけ口角を上げた。

​「如月くん、顔色が優れないようですが……。昨日の夜、あまり眠れなかったんですか?」

​丁寧な口調の裏に、確実な「毒」と「誘惑」が混じっている。
僕の脳裏には、さっきのキャミソール姿と、今この清楚な制服姿が重なり合い、わけのわからない熱気が全身を駆け巡った。

「……放っておいてくれ。白石さんこそ、忘れ物はないか?」
「ええ。湊くんの……いえ、大切なものは全部持っていますから」

​ひよりが僕にだけ聞こえるような微かな声で囁き、僕の横を通り抜ける。
その時、彼女のブレザーの裾が僕の腕をかすめ、あの甘い石鹸の香りが鼻を突いた。

朝のスタミナ料理による火照りと、完璧な制服姿の彼女への独占欲。
僕の「鉄壁」は、学校が始まる前からすでに崩壊寸前だった。

 保健室のカーテン越し、加速する熱帯夜

午後の授業中、僕の限界はついに訪れた。
朝から体内で荒れ狂っていたニンニクと卵黄、そしてステーキのエネルギーが、知恵熱となって僕の脳を焼き焦がしていたのだ。

「如月くん、顔が真っ赤よ? 保健室で休んできなさい」

​先生に促され、僕はふらつく足取りで保健室へと向かった。
静まり返った室内。僕は一番奥のベッドに潜り込み、冷たいシーツに火照った体を押し付けた。

​(……くそ、母さんのやつ、何を混ぜたんだ……)

​意識が朦朧とする中、保健室の扉が静かに開く音がした。
「失礼します……。あの、少し気分が悪くて……」

​その声に、僕は心臓が止まるかと思った。白石ひよりだ。
「あら白石さん、あなたまで? 今日は顔が赤い生徒が多いわね。……いいわ、如月くんの隣のベッドを使いなさい。私は職員会議で少し席を外すから、何かあったら呼びなさいね」

​保健医が出ていく音がし、室内には僕とひよりの二人だけになった。
シャッ、とカーテンが開く音がして、僕のベッドの横に彼女が立っていた。

​「……ひより、お前……なんでここに」
「湊くんが心配で。……それに、私もなんだか、体が熱くて」

​ひよりは、おしとやかな「高嶺の花」の仮面を脱ぎ捨て、熱っぽい瞳で僕を見下ろしていた。
彼女は「お邪魔します」と小さく囁くと、僕の制服の裾を掴み、狭いベッドの中に滑り込んできた。

「っ……!? おい、誰かに見られたら……!」
「大丈夫。……先生もしばらく戻ってこないよ。……ねえ、湊くん、すごく熱い」

​ひよりが僕の胸元に顔を埋める。
制服のブレザー越しに伝わる、彼女の柔らかな胸の膨らみと、激しい鼓動。
彼女も仮病だと言っていたが、その肌は朝のキャミソール姿の時よりもずっと熱く、桃色に上気している。

​ひよりは僕の首筋に手を回し、指先で優しく「しるし」の跡をなぞった。
「……ここ、まだ赤いね。……湊くんの匂いと、おばさんの料理の匂いが混じって……私、おかしくなりそう」

​狭いベッドの中で、僕たちの制服が擦れ合う音だけが響く。
ひよりが身をよじるたび、スカートの裾が捲れ上がり、彼女の熱を帯びた太ももが、僕の足に密着する。
ハイソックスの隙間から覗く絶対領域の、吸い付くような肌の感触。

「……ひより、これ以上は……止められなくなるぞ」
「止めてなんて、言ってないよ。……二人だけの、秘密でしょ?」

​ひよりが僕の耳元で甘く囁き、僕の唇に自分の唇を近づける。
カーテン一枚隔てた向こう側は学校という日常。だが、この薄い布の内側では、僕と彼女だけの、誰にも邪魔されない熱い時間が流れていた。

​スタミナ料理の効果か、それとも彼女の誘惑のせいか。
僕は、自分の腕の中にいる「居候の少女」を、壊してしまいそうなほど強く抱きしめた。

 生徒会室の密室、波打つ誘惑

保健室から戻った後も、僕の体の火照りは引かなかった。
放課後、誰もいなくなった生徒会室で、僕は机に突っ伏して熱い息を吐いていた。
そこへ、ひよりが静かにやってきた。

「湊くん、大丈夫? まだ熱い?」

​ひよりは心配そうな顔で僕の額に手を伸ばす。
ひんやりとした指先が、僕の火照った肌に触れた瞬間、体の芯まで痺れるような快感が走った。

「……大丈夫じゃない。お前がここにいると、もっと熱くなる」
「ふふ……。ごめんね」

​謝りながらも、ひよりは僕の隣の椅子を引き寄せ、さらに距離を詰めてくる。
そして、そのまま僕の膝の上にそっと手を置いた。
​「ねえ、湊くん。……朝の続き、してもいい?」
​ひよりはそう言うと、ブレザーのボタンに指をかけ、ゆっくりと一つ、また一つと外していく。
最初に外れたボタンの下から、完璧に隠されていたはずの白いブラウスの胸元が、少しずつ露わになっていく。
薄手の生地が、彼女の豊満な胸の谷間を曖昧に、しかし確実に暗示し始めた。

「……ひ、ひより! ここは学校だぞ!」

​僕は焦って彼女の手を止めようとするが、ひよりは僕の手を掴み、そのまま自分の胸元へと押し当ててきた。
制服のブラウス越しに伝わる、柔らかな肌の感触と、激しく波打つ心臓の鼓動。
それは僕自身の心臓の音か、それともひよりのものか、もう判別がつかなかった。

「……大丈夫。誰も見てないよ。……湊くん、私だけを見て」

​ひよりは僕の目をまっすぐに見つめ、もう一つ、ボタンを外した。
さらに深く開いた胸元からは、白く滑らかな肌が覗き、朝のキャミソール姿を彷彿とさせる誘惑が僕の理性を揺さぶる。

​しかし、彼女はそこでぴたりと動きを止めた。
まるで僕の反応を試すように、じっと僕を見つめている。
僕が息を呑んで見つめていると、ひよりは再びブレザーのボタンに手をかけ、今度は一つ、元に戻した。

「……ふふ。焦っちゃった? でも、まだこれで終わりじゃないからね」

​そう言って、ひよりは悪戯っぽく微笑むと、もう一度、僕の首筋に顔を近づけた。
甘い吐息が、僕の耳元と、昨日の夜に僕が付けた「しるし」の跡に吹きかかる。

「ねえ、湊くん。このまま夜まで……私と一緒にいてくれる?」

​波のように押し寄せては引いていく誘惑。
僕の心臓は、彼女の魔性の魅力に完全に支配され、バクバクと激しく脈打っていた。
生徒会長としての理性も、世間の目も、もう僕の頭の中には存在しない。
ただ、目の前の彼女の、甘い誘惑に身を委ねたいという本能だけが残されていた。

 ~第三章:暴走するスタミナ、聖域の崩壊~

生徒会室の机に押し付けられ、ひよりの指先が僕のシャツのボタンにまで届こうとしていたその時、僕のポケットの中でスマートフォンが震えた。

「……っ、待て、ひより。通知が……」
「ダメ。今は、私だけを見てって言ったでしょ?」

​ひよりは僕の首筋に顔を埋めたまま離れようとしないが、鳴り止まない通知に僕は必死で手を伸ばし、画面を確認した。

【送信者:母さん】
『湊ぉ! 今日は一段と暑いわねぇ。二人のために、特製の「精力増強・極(きわみ)ディナー」を用意して待ってるわよ! 今夜はお母さん、友達とオールでカラオケだから、朝まで帰らないからね。戸締りだけはしっかりね(ハート)』

「……っ!!」

​母・志津子からの、あまりにも露骨な「招待状」。
その画面がひよりの目にも入った瞬間、彼女の動きが止まった。
沈黙が流れる生徒会室。窓の外では夕日が沈みかけ、室内を赤黒い色に染め上げている。

​ひよりが顔を上げると、その瞳は期待と、そして抑えきれない「熱」で潤んでいた。

「……おばさん、本当に私たちのこと、全部わかってるんだね」

​ひよりはそう言うと、外していたブラウスのボタンを、さらに一つ外した。
今度は「引く」気配など微塵もない。
あらわになった白い胸元の柔らかな肌が、夕日に照らされて黄金色に輝き、湊の視界を支配する。

「湊くん。……今夜は、誰も来ないんだって。……もう、我慢しなくていいんだよ?」

​ひよりが僕の胸元を力強く掴み、自分の方へ引き寄せる。
制服越しに伝わる彼女の全身の熱。 朝から蓄積されてきたスタミナ料理のエネルギーが、母からの「お墨付き」を得たことで、ダムが決壊するように溢れ出した。

「……ああ、わかった。……もう、限界だ」

​僕はひよりの腰を抱き寄せ、その華奢な体を机の上に押し上げた。
カチャリ、と音を立てて生徒会室の鍵をかける。
夕闇に包まれる聖域。
学校という日常の真ん中で、僕たちは母の策略通り、いや、それ以上に深く、互いの熱の中に堕ちていった。

 ~エピソード:秘密の同居人は、今夜も抗えない~

深夜。月明かりだけが差し込む如月家のリビング。
早退同然で帰宅し、志津子の「極ディナー」を平らげた二人は、ソファーで重なり合うように座っていた。

「……湊くん、まだドキドキしてる」
「お前のせいだ。あんな格好で誘惑するから……」

​ひよりは、学校での完璧な制服姿を脱ぎ捨て、再びあの薄いキャミソールとショートパンツに着替えている。
彼女は僕の胸板に耳を当て、僕の鼓動を確かめるように目を閉じた。

​「おばさん、明日もすごいお弁当作ってくれるかな?」
「……勘弁してくれ。これ以上スタミナをつけられたら、本当に僕の理性が消滅する」

​ひよりはクスクスと笑い、僕の首筋にある「新しいしるし」にそっと指先を滑らせた。

​「いいよ。消滅しちゃえば。……私が、湊くんの全部を繋ぎ止めてあげるから」

​母・志津子の手のひらで転がされていると知りながら、僕たちはこの甘くパニックに満ちた日常を、終わらせるつもりなど毛頭なかった。

​「鉄壁の生徒会長」の仮面は、クローゼットの奥にでもしまっておこう。
明日の朝、またあの最高に迷惑で、最高に愛おしい「朝の洗面所パニック」が始まるまでは。

 (完)
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