マイナス100Lvの最強国王

青浜ぷりん

文字の大きさ
16 / 20
二章 望む来訪者、望まぬ来訪者

十六話 終了

しおりを挟む
「トウゴ様!!」

 マノンはゼェゼェと息を切らしながら走ってきた。
 駄目だ、マノンを戦いの場に巻き込んではいけない。

「マノン……来るな、こいつには勝てない……来ちゃ駄目だ」

「そんな……」

 マノンは俺の腹の傷に目をやり、そう呟いた。
 一体何を思っているだろうか。
 この村を守ると豪語した英雄気取りの人間が、あっけなく腹を切られている。
 自分を心配して駆けつけてくれた者に、敵の強さをただ蹲って説くことしか出来ない哀れな男を目の前に、マノンは何を思っているだろう。

「トウゴ様!! 逃げてください!! その傷は駄目です……治癒しなきゃ」

「マノン……もう逃げれないんだ。こいつと一対一の戦いを申し込んだ。だから、せめて最後まで戦わせてくれ。ごめん、ごめんな」

「おお、お前、女ができたのか? 中々美人じゃねぇか。こんな奴いたっけな。まぁいい、とにかく引っ込んでな。これはトウゴ様が申し込んだ戦いだ。分かるだろ? ここで戦いを放棄して逃げることが、どれだけカッコ悪いか。せめてこいつの戦いっぷりを見届けてやれ」

「ッ――」

「大丈夫、腹の傷は治癒させてやる。もう一度ギャラリー有りで戦おう。士気が上がって強くなるかもしれん」

 ソワンの言葉に、マノンは心なしか一瞬安心したような顔をした。
 ただ、俺にはそれすら情けなかった。
 敵に情けをかけられる所を好きな女に見られる。
 穴があったら入りたいと思ったが、チャンスをくれるのならやるしかないと思った。
 次は勝てるかもしれない。次こそは。

「リーラ……」

 情けない声で魔法を唱える。
 傷が徐々に癒えていく。

「お、もう一戦承諾してくれたか。ま、無理するなよ? あんまり女の前で醜態を晒したくないだろ?」

「ちょっと、ソワン!! 何やってるの、早くしなさいよ!! 何治癒させてるのよ!!」

 退屈そうにしていたベラが半ギレで叫んだ。
 戦闘を開始してからまあまあな時間が経っているので、恐らく痺れを切らしたのだろう。

「チッ……分かってるよ!! 悪い、トウゴ様と、……マノン? だっけ。うちの魔法使いと部下が退屈してそうだから、早めに決めさせてもらうことにするわ」

「完全に舐めてるな……油断するなよ、ソワン」

 ガクガクと痙攣する脚で体を支え、精一杯の威嚇をした。
 
「お、威勢が戻って来たか。さぁ、早く始めるぞ。お前から来てみろ!」

「言われなくてもやってやるよ……ヒーラッ……!」

 ゴオッ――!!

「あ? 何だそれ」

「……あれ」

 ヒーラを使うと、炎の渦がソワンに到達する前に風に溶けて消えた。
 力が入らない。何でだ。
 まだ戦えるのに。さっき治癒したじゃないか。
 今魔法を出せなければ、本当に何も出来ずに終わる。
 
「……ああ、成る程な。お前はもう限界だったんだ。傷は治せても、精神は回復してないな。残念」

「っえ?」

 ソワンは淡々と冷静に、今起きている状況を分析した。
 
「戦闘ではよくあることだ。圧倒的な力の前に戦意喪失する。相手を圧倒的格上だとみなしてしまったらもう無理だ。戦闘を続行出来なくなる。まぁ、仕方ないことだ」

「……あ」

 先程から震えが止まらない。
 そうか、これは痙攣じゃない。
 恐怖か。俺の体が勝てないと、戦いを拒んでいるんだ。

「トウゴ様……もういいです、もうこれ以上……」

 マノンは今にも泣きだしそうな顔で呟いた。

「ソワン様!! お願いです、私はどうなってもいい。だから、トウゴ様だけはお助け下さい!! お願いします、お願いします!!」

「無理だ。悪いが、ディエゴ様の決定で罪人六宮冬悟の確保は確定事項だ。これはもう覆らねぇよ」

 必死な形相でソワンに懇願するマノン。
 俺はそれをただ見ていることしか出来ない。
 
 これ以上情けないことがあるだろうか。
 守らなければならないものに守られて。
 俺はこれまで一体、何をしてきたんだ。

「ぉお、お……う、おおおおおッ!!!」

 歯を食いしばれ。まだやれる、まだやらなければならない。
 守れ、守れ、守れ。
 せめて最後、全ての力を出し切って。

「おおおおおおおおおッ!!!」

 叫べ、渾身の力で叫べ。
 全身に血を巡らせろ。
 地面にしっかり足を付けて、魔法を繰り出せ。

「おおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

 バリバリバリ――!!
 手に雷が生じる。
 行け。このまま放て。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!! ヴェーら……あ」




 ザシュッ――――!!

「あああばば」

 ――ザシュザシュザシュ!
 ズシュ、ズバン!
 ザシュザシュザシュザシュ!
 
 血飛沫が綺麗だ。
 目の前が真っ赤。
 でもここまでやらなくてもいいじゃない、とおれはおもった。

「適切な鍛錬を行わず、威勢だけで強くなろうとする。俺はそういうやつが嫌いだ。自分が血反吐を吐いて鍛錬した時を思い返すと尚更な。……つっても、流石にやりすぎたか? 治癒だけでどうにかなるか、これ? まぁ別にいいか。ピンピンした状態で連れてこいなんて言われてないしな」

「ッ――ああッ……ガフゲホッ」

 視界が朦朧とする。
 終わった。
 全てが終わった。
 まぁ、勝てないことは最初から分かってた。
 もし奇跡的にソワンに勝てても、ベラと部下達を相手しなければいけない。
 最初から不可能だったんだ。
 
 でも、楽しかったな。
 マノンと、トリスタン村長と、村の皆と過ごした日々。
 皆に感謝しないと。

 ――グシャリ!
 髪を乱暴に引っ張られ、俺は門へと連れて行かれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...