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架唯
「死にたくない!!」
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明人と架唯が屋上で話してから一週間経った今日。架唯はまた学校の屋上で夕日を眺めていた。
「話をするだけ。それは気まずいけどできない事じゃない。でも、感情、つまり今の私を閉じ込めるって……」
明人の説明をこの一週間、何度もブツブツと呟きながら考えていた。それでも全てを理解できておらず、今も頭を抱え込んでいる。
「もしあの人の言う通りにしたら、本当に成仏出来るのかな。でも、成仏したら私は忘れられるんだよね。友達や家族に……」
今まで学校の様子を窓の外から彼女は見ていた。
最初は友達も悲しんだり、涙を流している様子があったが、今はもう楽しそうに話している。もうその場から、架唯という存在が消えてしまったように。その様子を彼女は今まで見てしまっていた。
クラスの人はもう架唯の事を忘れている──そう感じていた。幽体では涙が出ないのか、それとも今の彼女が出来ないのか。今にも涙が出そうな表情を浮かべているのに、涙が流れる事は無い。
「今の私が成仏したら、みんなの記憶から忘れられる……。そんなの、いやだ」
頭の中で自分のいない世界を想像してしまい、恐怖が彼女の身体を包み込む。震える体を自身の両手で抱え止めようとするが、止まらない。
「忘れ、られたくない……」
柵に座りながら俯き、震える声でか細く呟いた。その時、後ろからドアが開く音が聞こえ、それと同時に人の声も静かな屋上に響いた。
「またこの時間かよ。お前ここに今の時間、何か思い出があんのか?」
屋上の出入口には明人が気だるげに立っていた。まるで見えているような口ぶりだが、視線は定まっていない。いるであろうと思いながら、明人は架唯に話しかけていた。
架唯は声が聞こえすぐに振り向いたが、その際に屋上の柵に座っていたためバランスを崩し、後ろへと落ちそうになってしまった。
「っぶな……」
なんとか柵にしがみつき、落ちすに済む。冷や汗を流しながら、柵から降りた。
「君は幽体なのだから、落ちたところで飛べるのではないのかい?」
「あ、そうでした」
カクリの言葉に納得し、架唯は安心したように額の汗を拭う。
「あの、前に言っていた事なんですが──」
架唯は前回の説明について聞こうと、明人を見上げ口を開く。だが、それは最後まで続かなかった。明人と目線が合わないため、確認するためカクリを見直す。
「あの、前回みたいに話せないの? てか、さっき私を見たから声をかけたんじゃないの?」
「明人と話がしたいのかい?」
「えっ。う、うん」
「そうかい。明人よ、話をする意思はあるらしいぞ」
カクリが手を伸ばし明人と視覚を共有しようとしているが、身長差があるので彼が立っている状態だと到底届くはずがない。せいぜい明人の腰あたりまでだ。
「おい、届かん」
「あぁ? 小さいな、めんどくせぇ」
手を伸ばしているカクリを見下ろし、明人はまた膝をつきカクリと視覚を共有した。
「おぉ、見えた見えた。なんだお前、辛気くせぇ顔しやがって」
「前回の貴方に言われた言葉を考えていたの。私、成仏したら忘れ去られるのかなって事も」
明人と目線を合わせるため、架唯は彼に近付き目の前でしゃがんだ。
「そんなもん。忘れられたらお前の存在はその程度だったで終わるだけだろうが。まぁ、人間の記憶はそんな簡単に──」
「それが嫌だから悩んでるんでしょ!!」
架唯は明人の言葉に苛立ち、いきなり叫び始める。
壁や地面にヒビがはいり、彼の周りには小石や砂埃などが舞う。だが、二人も冷静に周りを見回すだけで逃げようとしない。
「私は忘れられたくないの!! 私を無い者として考えないで! 私はちゃんとこの世に存在していたんだから!!!」
架唯は明人の言葉で感情が高鳴り、興奮状態になってしまった。周りの事などお構いなく頭を支えながら叫びまくる。
それにより、先程ヒビが入ってしまった壁は崩れそうになって、地面も抜けそうになった。
「人の話は最後まで聞くものだ…………」
今の現状を見回し、大きく溜息を吐く。明人は仕方がないと、小瓶を懐から取りだし架唯へと向けた。
「仕方がねぇ。強制的にお前の匣を頂くぞ」
風で明人の隠れていた右目が露になり、五芒星が姿を現した。口元には何故か笑みが浮かんでおり、カクリも彼の言葉に反応し尻尾と耳を出す。両手を架唯へ伸ばし、匣を小瓶の中へと入れようと操作し始めた。
「やめて! 私は!! 私はまだ消えたくない!」
彼女は最後の力を振り絞りながら叫び、助けを乞うように手を伸ばした。だが、それは意味がなく、やがて叫び声が小さくなる。架唯の存在が徐々に姿を変え、光の玉へとなり、小瓶の中へと吸い込まれるように入って行った。
明人は小瓶に蓋をし、地面に手を付く。息が荒く汗がボタボタと流れ落ち、地面を濡らす。体力的にも限界が近くなっていた。
「では、一度部屋に戻るか」
「少しは休ませろやふざけんな」
カクリは疲れておらず呼吸すら乱れていない。明人の横に立ち、余裕そうな表情を浮かべながら口にした。
「何度も言っているだろう。明人の体力が無さすぎなのだ」
「お前の体力が化け物なんだろうが」
「はぁ」と息を吐き、明人は壁や地面のヒビに気をつけながらふらつく体を立ち上がらせる。
「次は奏恵か。くそっ。俺の苦労も考えろや」
文句を言いながら、傷ついた屋上を無視し、その場から姿を消した。
次の日から屋上は、立ち入り禁止になっていた。
「話をするだけ。それは気まずいけどできない事じゃない。でも、感情、つまり今の私を閉じ込めるって……」
明人の説明をこの一週間、何度もブツブツと呟きながら考えていた。それでも全てを理解できておらず、今も頭を抱え込んでいる。
「もしあの人の言う通りにしたら、本当に成仏出来るのかな。でも、成仏したら私は忘れられるんだよね。友達や家族に……」
今まで学校の様子を窓の外から彼女は見ていた。
最初は友達も悲しんだり、涙を流している様子があったが、今はもう楽しそうに話している。もうその場から、架唯という存在が消えてしまったように。その様子を彼女は今まで見てしまっていた。
クラスの人はもう架唯の事を忘れている──そう感じていた。幽体では涙が出ないのか、それとも今の彼女が出来ないのか。今にも涙が出そうな表情を浮かべているのに、涙が流れる事は無い。
「今の私が成仏したら、みんなの記憶から忘れられる……。そんなの、いやだ」
頭の中で自分のいない世界を想像してしまい、恐怖が彼女の身体を包み込む。震える体を自身の両手で抱え止めようとするが、止まらない。
「忘れ、られたくない……」
柵に座りながら俯き、震える声でか細く呟いた。その時、後ろからドアが開く音が聞こえ、それと同時に人の声も静かな屋上に響いた。
「またこの時間かよ。お前ここに今の時間、何か思い出があんのか?」
屋上の出入口には明人が気だるげに立っていた。まるで見えているような口ぶりだが、視線は定まっていない。いるであろうと思いながら、明人は架唯に話しかけていた。
架唯は声が聞こえすぐに振り向いたが、その際に屋上の柵に座っていたためバランスを崩し、後ろへと落ちそうになってしまった。
「っぶな……」
なんとか柵にしがみつき、落ちすに済む。冷や汗を流しながら、柵から降りた。
「君は幽体なのだから、落ちたところで飛べるのではないのかい?」
「あ、そうでした」
カクリの言葉に納得し、架唯は安心したように額の汗を拭う。
「あの、前に言っていた事なんですが──」
架唯は前回の説明について聞こうと、明人を見上げ口を開く。だが、それは最後まで続かなかった。明人と目線が合わないため、確認するためカクリを見直す。
「あの、前回みたいに話せないの? てか、さっき私を見たから声をかけたんじゃないの?」
「明人と話がしたいのかい?」
「えっ。う、うん」
「そうかい。明人よ、話をする意思はあるらしいぞ」
カクリが手を伸ばし明人と視覚を共有しようとしているが、身長差があるので彼が立っている状態だと到底届くはずがない。せいぜい明人の腰あたりまでだ。
「おい、届かん」
「あぁ? 小さいな、めんどくせぇ」
手を伸ばしているカクリを見下ろし、明人はまた膝をつきカクリと視覚を共有した。
「おぉ、見えた見えた。なんだお前、辛気くせぇ顔しやがって」
「前回の貴方に言われた言葉を考えていたの。私、成仏したら忘れ去られるのかなって事も」
明人と目線を合わせるため、架唯は彼に近付き目の前でしゃがんだ。
「そんなもん。忘れられたらお前の存在はその程度だったで終わるだけだろうが。まぁ、人間の記憶はそんな簡単に──」
「それが嫌だから悩んでるんでしょ!!」
架唯は明人の言葉に苛立ち、いきなり叫び始める。
壁や地面にヒビがはいり、彼の周りには小石や砂埃などが舞う。だが、二人も冷静に周りを見回すだけで逃げようとしない。
「私は忘れられたくないの!! 私を無い者として考えないで! 私はちゃんとこの世に存在していたんだから!!!」
架唯は明人の言葉で感情が高鳴り、興奮状態になってしまった。周りの事などお構いなく頭を支えながら叫びまくる。
それにより、先程ヒビが入ってしまった壁は崩れそうになって、地面も抜けそうになった。
「人の話は最後まで聞くものだ…………」
今の現状を見回し、大きく溜息を吐く。明人は仕方がないと、小瓶を懐から取りだし架唯へと向けた。
「仕方がねぇ。強制的にお前の匣を頂くぞ」
風で明人の隠れていた右目が露になり、五芒星が姿を現した。口元には何故か笑みが浮かんでおり、カクリも彼の言葉に反応し尻尾と耳を出す。両手を架唯へ伸ばし、匣を小瓶の中へと入れようと操作し始めた。
「やめて! 私は!! 私はまだ消えたくない!」
彼女は最後の力を振り絞りながら叫び、助けを乞うように手を伸ばした。だが、それは意味がなく、やがて叫び声が小さくなる。架唯の存在が徐々に姿を変え、光の玉へとなり、小瓶の中へと吸い込まれるように入って行った。
明人は小瓶に蓋をし、地面に手を付く。息が荒く汗がボタボタと流れ落ち、地面を濡らす。体力的にも限界が近くなっていた。
「では、一度部屋に戻るか」
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カクリは疲れておらず呼吸すら乱れていない。明人の横に立ち、余裕そうな表情を浮かべながら口にした。
「何度も言っているだろう。明人の体力が無さすぎなのだ」
「お前の体力が化け物なんだろうが」
「はぁ」と息を吐き、明人は壁や地面のヒビに気をつけながらふらつく体を立ち上がらせる。
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