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プロローグ
第2話 出会いと始まり
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「――――ん」
愛実の意識が浮上し、重たい瞼を開けた。
瞬間、目に映った景色に驚き、飛び起きる。
「な、なに、ここ…………」
愛実は、今まで寝た事がないほど大きなベッドの上で横になっていた。
周りは、自分がいつも寝ている部屋ではない。
豪華で、位の高い人が住んでいそうな部屋。
ヨーロッパなどにあるような洋風なお屋敷の一室で、愛実は眠っていた。
テレビでしか見ない光景に口をあんぐりとさせていると、扉がコンコンと叩かれる。
返事が出来ずにいると、扉が勝手に開かれた。
現れたのは、目元に白い布を付けている黒髪の男性。
燕尾服を身に纏い、革靴を鳴らしながら起きたばかりの愛実に近づく。
その手には、ワゴン。上には、湯気が上がっているポットと、ホットサンドが乗せられていた。
「あ、あの……」
「起きたようで何よりです。お食事をご用意しております」
低く、冷たい声。
何も言えずにいると、スムーズに男性が準備を始めた。
「こちらをどうぞ」
お盆に乗せたカップとホットサンドを渡す。だが、状況を呑み込めていない愛実は、受け取らない。
というより、受け取れない。
働かない頭のまま男性を見上げるが、追加の説明がない。
どうすればいいのかわからないまま、愛実はお盆を渋々受け取った。
「何かございましたらお申しつけください」
腰を折り、先ほど使ったポットなどを片づける。
優雅で、心躍る光景だが、今の愛実には楽しむ余裕はない。
受け取った、湯気の立っているカップとホットサンドを見て、ゴクンと喉を鳴らす。
膝に置き、小さな声で「いただきます」と手を合わせる。
ホットサンドに手を伸ばし、口に運ぶ。
その時、品定めするように男性が愛実の持つホットサンドを見た。
――――ガキン
「いったぁぁ!! え、な、な?」
食べようとしたホットサンドが信じられない程に硬かった。
パンだから簡単に食べられる。そう思っていた愛実にとっては、衝撃的な硬さだった。
「いかがいたしましたか」
「い、いえ、あの。硬くて………」
「硬い? そこまで焼いてはおりませんよ」
言いながら黒い手袋を口に咥え外し、差し出した。
ホットサンドを渡すと、自分の口に入れる。
絶対に硬くて食べられないよと思っていた愛実だったが、なぜか簡単に噛み千切る。
「え?」
「普通ですよ。どこも硬くはありません」
「で、でも…………」
さっきは硬かった。
そう言おうとしたが、しっかりと噛み千切られたホットサンドを見ては何も言えなくなる。
「どうして…………」
「よくわかりませんが、貴方はこちががお気に召さなかったようなので戻しますね」
「あっ……」
ホットサンドが乗せられたお皿ごと回収された。
「では、こちらもおそらく飲めないかと思いますので、いただきますね」
「あっ」
有無を言わさずカップまで回収され、手には何も残らなくなった。
何も言えず、何が起きているのかもわからない。
目の前の男性も誰かわからず、愛実は泣きそうになるのを必死にこらえた。
聞きたいこと、確認したいこと。
ここはどこなのか、貴方は誰なのか。なぜ自分がこんなところで寝ていたのか。
たくさん聞きたいことがあるのに、恐怖と困惑。あと、愛実の性格が口を開かせてくれない。
声をかけるとなんて言われるのか、どんなことを思われるのか。
よくわからない場所と言うのもあり、嫌な想像が頭を駆け巡る。
さっきから視線を落とし何も言わない愛実に、男性は一度手を止めて顔を向けた。
「いかがいたしましたか」
男性が問いかけるが、愛実は何も言えない。
喉がつっかえ、口を開くが声が出ない。
男性を困らせている。早く言わないと。聞かないと。
でも、どうしても喉が絞まり言葉が出ない。
愛実が一人焦っていると、コウヨウは先を読んで姿勢を正し答えた。
「――――ここは、コウセン。私はコウヨウ。貴方のお世話係となります」
「コウ、セン? コウヨウ、さん?」
「はい」
聞き返すと、コウヨウは頷く。
上から見下ろされ、愛実はこれ以上何も言えない。
顔を青くし、コウヨウを見上げる。
目をはずせずにいると、コウヨウは何を思ったのか、その場に片膝をついた。
「っ、え」
「これでいかがでしょう」
今度は、コウヨウが愛実を見上げる形となった。
圧がなくなり、愛実はほっと息を吐く。
まだ心臓がドクドクと音を鳴らすが、声を出すことはできるようになり、愛実は質問した。
「あ、あの。なんで、私はここにいるのでしょうか」
「アイ様が、貴女を見つけたからです」
「アイ様?」
「詳細は後日、お伝えいたします」
頭を下げ、首を振る。
気になるが、同じ質問を繰り返されると不機嫌になり怒り出す人を何度も見てきた愛実は、気になってもこれ以上聞けない。
他にも分らないことがたくさんあるため、違う質問をした。
愛実の意識が浮上し、重たい瞼を開けた。
瞬間、目に映った景色に驚き、飛び起きる。
「な、なに、ここ…………」
愛実は、今まで寝た事がないほど大きなベッドの上で横になっていた。
周りは、自分がいつも寝ている部屋ではない。
豪華で、位の高い人が住んでいそうな部屋。
ヨーロッパなどにあるような洋風なお屋敷の一室で、愛実は眠っていた。
テレビでしか見ない光景に口をあんぐりとさせていると、扉がコンコンと叩かれる。
返事が出来ずにいると、扉が勝手に開かれた。
現れたのは、目元に白い布を付けている黒髪の男性。
燕尾服を身に纏い、革靴を鳴らしながら起きたばかりの愛実に近づく。
その手には、ワゴン。上には、湯気が上がっているポットと、ホットサンドが乗せられていた。
「あ、あの……」
「起きたようで何よりです。お食事をご用意しております」
低く、冷たい声。
何も言えずにいると、スムーズに男性が準備を始めた。
「こちらをどうぞ」
お盆に乗せたカップとホットサンドを渡す。だが、状況を呑み込めていない愛実は、受け取らない。
というより、受け取れない。
働かない頭のまま男性を見上げるが、追加の説明がない。
どうすればいいのかわからないまま、愛実はお盆を渋々受け取った。
「何かございましたらお申しつけください」
腰を折り、先ほど使ったポットなどを片づける。
優雅で、心躍る光景だが、今の愛実には楽しむ余裕はない。
受け取った、湯気の立っているカップとホットサンドを見て、ゴクンと喉を鳴らす。
膝に置き、小さな声で「いただきます」と手を合わせる。
ホットサンドに手を伸ばし、口に運ぶ。
その時、品定めするように男性が愛実の持つホットサンドを見た。
――――ガキン
「いったぁぁ!! え、な、な?」
食べようとしたホットサンドが信じられない程に硬かった。
パンだから簡単に食べられる。そう思っていた愛実にとっては、衝撃的な硬さだった。
「いかがいたしましたか」
「い、いえ、あの。硬くて………」
「硬い? そこまで焼いてはおりませんよ」
言いながら黒い手袋を口に咥え外し、差し出した。
ホットサンドを渡すと、自分の口に入れる。
絶対に硬くて食べられないよと思っていた愛実だったが、なぜか簡単に噛み千切る。
「え?」
「普通ですよ。どこも硬くはありません」
「で、でも…………」
さっきは硬かった。
そう言おうとしたが、しっかりと噛み千切られたホットサンドを見ては何も言えなくなる。
「どうして…………」
「よくわかりませんが、貴方はこちががお気に召さなかったようなので戻しますね」
「あっ……」
ホットサンドが乗せられたお皿ごと回収された。
「では、こちらもおそらく飲めないかと思いますので、いただきますね」
「あっ」
有無を言わさずカップまで回収され、手には何も残らなくなった。
何も言えず、何が起きているのかもわからない。
目の前の男性も誰かわからず、愛実は泣きそうになるのを必死にこらえた。
聞きたいこと、確認したいこと。
ここはどこなのか、貴方は誰なのか。なぜ自分がこんなところで寝ていたのか。
たくさん聞きたいことがあるのに、恐怖と困惑。あと、愛実の性格が口を開かせてくれない。
声をかけるとなんて言われるのか、どんなことを思われるのか。
よくわからない場所と言うのもあり、嫌な想像が頭を駆け巡る。
さっきから視線を落とし何も言わない愛実に、男性は一度手を止めて顔を向けた。
「いかがいたしましたか」
男性が問いかけるが、愛実は何も言えない。
喉がつっかえ、口を開くが声が出ない。
男性を困らせている。早く言わないと。聞かないと。
でも、どうしても喉が絞まり言葉が出ない。
愛実が一人焦っていると、コウヨウは先を読んで姿勢を正し答えた。
「――――ここは、コウセン。私はコウヨウ。貴方のお世話係となります」
「コウ、セン? コウヨウ、さん?」
「はい」
聞き返すと、コウヨウは頷く。
上から見下ろされ、愛実はこれ以上何も言えない。
顔を青くし、コウヨウを見上げる。
目をはずせずにいると、コウヨウは何を思ったのか、その場に片膝をついた。
「っ、え」
「これでいかがでしょう」
今度は、コウヨウが愛実を見上げる形となった。
圧がなくなり、愛実はほっと息を吐く。
まだ心臓がドクドクと音を鳴らすが、声を出すことはできるようになり、愛実は質問した。
「あ、あの。なんで、私はここにいるのでしょうか」
「アイ様が、貴女を見つけたからです」
「アイ様?」
「詳細は後日、お伝えいたします」
頭を下げ、首を振る。
気になるが、同じ質問を繰り返されると不機嫌になり怒り出す人を何度も見てきた愛実は、気になってもこれ以上聞けない。
他にも分らないことがたくさんあるため、違う質問をした。
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